えっ!パワーリミッター!?


最近のリッタースポーツ車はエンジンが「異常に」高出力なので、排気デバイス、点火タイミング、インジェクションなどのマッピングで1〜3速あたりではフルパワーが出ないようになっている!
そもそものソースはここでした。そのコラムによると、'99のYZF-R1は1−3速にギアがある間は排気デバイスが開かないようになっているそうです。ということは...同じエンジンを使って「おとなしめ」にしてあるFazerが、同じようなパワー制限をやっていないハズはない!!
これはビックリ、これまで想像すらしていませんでした。そういわれてみれば、Fazerもまがりなりにも143psエンジン。1速なんぞでフルパワーを出したら最後、竿立ちになってもおかしくはないのですが、確かにそんなバケモノバイクにはなっていません。
こんなネタに飛びつかない手はない!ということで、調べてみました。(<ースキモノ?)
  1. 配線図より
  2. 切っちゃった...
  3. 結果はいかに!



配線図より

とりあえず、配線図を眺めてみます。
circuit diagram これは、サービスマニュアルから電気配線図の関係していそうなあたりを抜き出して多少見やすくしたものです。どこを見てもギアのポジションを見るセンサーはありませんので、スピードセンサーを見て判断しているハズです。スピードセンサーからの配線を図に太めの線でマークしてありますが、つながっているのはメーターアセンブリとイグナイターユニットです。スピードセンサーを外すと、当然スピードメータは動かないし、自己診断機能でタコメータが間欠的に4000rpmを指す(これをタコ踊りと言う...かも?(^^) )表示になりますが、メーターアッセンブリがエンジンをコントロールしているとは思えません。
やっぱり、EXUPもイグニッションもコントロールしているイグナイターユニットそのものが速度を関知して、速度だけかあるいは速度とエンジン回転数との比で判断してマップを切り替えているに違いありません。
問題は、それを騙せるかどうかです。スピードセンサーの出力はどうやらパルスで出ているようなので、むりやりウソのスピードを認識させるには、ちょっとした回路を追加しないと無理かもしれませんね。


切っちゃった...

ものは試し、スピードセンサーからイグナイターユニットにつながる配線をカットしてみました。もちろん、コネクターを付けてすぐにつなぎ直せるようにしています。
この状態でエンジンをかけても、特にエラーはでませんでした。おそるおそる試乗してみましたが変化なしです。ワタシの普段の乗り方だと、スタートしてクラッチがつながったらすぐに2速に上げてしまって、その後もせいぜい7000rpmくらいまでしか使わないので、その乗り方をしている限り違いは感じないようです。次に、Ivan'sキャブキットの再調整でも確認した6速3000rpmからの加速も見てみましたが、そこも変化なし。最後に、1速でレッドゾーン手前までのフル加速をやってみると...
ビックリしたぁ!
思ったより急にフロントアップして、思わずアクセルを戻してしまいました。
もしかして、単純にスピードセンサーからイグナイターへの配線カットだけで、低速でのパワー制限を解除できるのか!?
それとも、気のせいか? (^^;


結果はいかに!

何度かセンサーからの信号線をつなげたり外したりして乗ってみたのですが、どうも差があるのかないのかよくわからなくなってきました。
そこで、忠男レーシングさんで事情を話してスピードセンサー配線カットの効果をダイノで確かめてみました。
まずは、4速でセンサー信号ありとなしを計測してみましたが、まったく変化なし。ここまでは「確かにそうかな?」という結果です。問題は低速での変化なので、普通はやらない2速でのパワーチェックをお願いしました。

まずは、アイドリング+αからのフルスロットル。

2S Full Throttle

むむむ.....差がない!
青が信号あり、赤が信号なしですが、あえて言うなら極低回転でセンサー信号ありのほうが良いですね。馬力のピークを過ぎたあたりで信号ありのほうが暴れていて若干低くなっていますが、このあたりは2速の計測なのでちょっと滑りぎみなのかもしれません。

そこで、次にトルクがピークになるあたり、8000rpm一定回転からのスロットルオンを比較して頂きました。

2S from 8000rpm

さっきと同じく、青が信号あり、赤が信号なしですが、やっぱり明らかな差はないですね....(;_;)
またまた、出だしは信号ありのほうがほんの少し良いくらいで、ピークのところだけ若干信号なしのほうが良い(信号ありで135psなしで136psくらい。誤差範囲か?)かなぁ、という程度です。

結論。少なくとも2〜4速でスピードセンサーは関係なし!
ちょっと期待したんだけどな〜。いや、きっと1速では.....(往生際がワルイ)

でも、またまた勉強にはなりました。2速から6速までたいして最高出力(PS)は変わらないってことと、負圧式キャブレター(+イグナイターユニット?)ってのも結構スゴイ仕事をしているんだってのがわかったことです。
今回特にトルクは表示していませんが、6速のときよりパワーがまっすぐに上がっているのがわかると思います。7000〜8000rpmあたりのピークトルクはやや落ちているはずです。低いギアのほうが回転の上がりが速いので、キャブが送り込む混合気が増えるのが追いつかないから、らしいです。この特性なら、無理にリミッターを使わなくっても、低いギアで低回転からのスロットル全開ではフラットトルクになって竿立ちしにくいんじゃないでしょうか。
それから、8000rpmからのスロットル急開では、一時的ですが、普通に下から全開したときよりもパワーが出るんですね。これが激しいといわゆるドンツキなんでしょうけど、このくらいだと「火事場のくそ力」として加速感につながるんだと勝手に思っています。このあたりの回転数でパーシャルからスロットルを煽るとふわっとフロントが上がるのは、この火事場のくそ力も一役買っているのでしょう。
いや〜、バイクって本当に面白いですねぇ。(^^

最後に、忠男レーシングの皆様、こんな思いつき実験におつきあい頂きありがとうございました。

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