フラメンコの先生レナ−テ

* 強いドイツ女性 *
- ドイツ在住中のれぽ〜と 98年9月 -

 ドイツの昼のテレビは、討論番組がひじょうに多い。日本のようなメロドラマやワイドショーはない。日本の討論番組はタレントや自称評論家で成り立っているが、 ドイツではごく普通の視聴者がスタジオにきて討論するのである。テーマは番組によって日によって違うが「車のマナー」「政治」「失業問題」など日本でもありそ うな内容から、「家族の邪魔者」「信頼できない親」というヘビーな内容まで、 バラエティー豊かな番組構成となっている。  まだドイツに来て間もない頃、テレビを見ていたら、ある討論番組でごく普通のドイツ人女性二人がすごい剣幕な顔で言い合いをしていた。その当時、ドイツ語がさっぱり分からなかったので、何について討論しているのか分からなかったが、 その迫力におもわず見入ってしまった。すると、突然一人の女性がもう一人の女性につかみかかり殴ったのだ。言うまでもなく、番組内はパニックで、私も唖然として 見ていたのを今でも覚えている。

 デパートをはじめサービス業で働くドイツ女性にはサービス精神というものがほとんど無い。時として”私がやってあげてるのよ”的横柄な態度に腹を立てない日本人 はいないだろう。

 FrankfurtにHertie(ヘルティ)という大型デパートがあるが、私はそこの中に ある写真現像所をいつも利用していた。ある日、いつものように写真を取りに行った。 いつもいる中年ドイツ女性の店員に引き替え券を渡し、写真の入った袋をもらってからお金を払った。 普通の人はそのまま持って帰ると思うが、写真にはちとうるさい私は、その場で プリントを確認するようにしている。時としてミスプリントがあるからだ。 袋を開けて写真を見てみると、なんと全ての写真に2本の白いラインが入っているで はないの!これはいくらなんでもひどすぎると思い、店員に 「すみません、全部の写真に2本の白いラインが入ってます。もう一度プリントし直 して下さい。」と写真を見せたところ、その店員はネガを取り出してそれを見ながら 「ネガに2本の白いラインのあとがあるわね。ネガが悪いのよ。」と、詫びるどころ かネガのせいににしてそっぽをむくのである。 「でもこのネガを現像したのも、あなたの所でですよ。とにかく、全部やり直して下 さい。」 「ネガが悪いのよ。私は知らないわ!!」まったくお話にならない。
ドイツ人をはじめヨーロッパ人の多くは、めったなことでは謝らない。特に女性は。 自分がミスをしてもなかなか謝らないのだから、他人のミスを詫びるはずがない、と分かっていても、このままスゴスゴ帰るわけにはいかない。 30分くらいねばって、なんとか再プリントの手続きをすることに成功した。 信じられないのは、店にはちゃんと”プリントやり直し用紙”があったのだ。 そういうモノがあるのなら、最初から素直にやってくれればいいのにと、怒る反面 呆れてしまった。 もしかしたら人種差別かなと思い、この話をドイツ語の先生にしたら、 「ドイツのデパート店員の態度の悪さには我々ドイツ人でも腹を立てているのよ。 でも
ね、仕方のないことなのよ。ここはドイツなんだから。」

 私の親友パトリシアは、ドイツ女性の中では比較的穏やかな性格の持ち主だ。 彼女は現在、7年前からザールラント州に住む彼氏と遠距離恋愛中で、週末はお互いの家を行ったり来たりの週末同棲をしている。 ある日、フラメンコ教室で彼女に会ったら、めずらしく機嫌が悪い。
「どうしたの?」と聞いてみたら、
「先週末、彼がうちに泊まりに来ることになっていたのに、来なかったのよ。 すごく腹が立っているの。」
「なんで来れなかったの?」
「彼の妹が出産して、その赤ちゃんを見に行きたいとかで、、、、」
「妹の出産なら、しょうがないじゃない。」
「でもうちに来るって約束したのよ。約束を破るなんて許せない!!!」

 私の知る限り、彼女はわがままではないし、他のドイツ女性に比べると、 はるかにやさしくて思いやりがあって親切だ。そんな彼女でも彼に対してこうなのだから、他のドイツ女性がどんなに気が強いのか、想像ができる。  外国人女性と結婚したがるドイツ男性の気持ちを察するのであった。

 ドイツ女性は気が強いばかりか、身体も強い。  私のフラメンコの先生レナーテは去年の12月25日頃に女の子を出産した。 もともと太っていたし、体型を隠すようなダボダボのTシャツをいつも着ていた上、 臨月に入る11月下旬までバンバンフラメンコを踊ってい
たので、彼女が妊娠していることにずっと気付かなかった。 驚くことに、レナーテは出産後約1週間たった1月2日から通常通りのフラメンコの レッスンを開始したのだ。つまり、子育てをしながら、毎日3時間以上フラメンコを 踊るのである。 これにはさすがのドイツ人も 「早すぎる。身体は大丈夫なのか?」と心配していたが、彼女は今も元気にフラメ ンコを踊ってい
る。
 レナーテは特例だと思うが、それでも普通のドイツ人は出産後4、5日で退院し、 普通に家事をこなすという。日本では、一般的に”出産後1ヶ月は安静に”といわれているが、ここドイツでは違う。 身体が大きい分、回復力も日本人に比べるとかなり早いのである。 (しかし、レナーテはドイツ人にしては小柄な女性なのに、、、、、)  

恐るべし、ドイツ女性!


                              

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