
29.バルバコア
ヘレスでは、夏になるとバルバコアといってバーベキューパーティーがいたる家庭で行なわれ、家族や親戚、友人が集まって1日をゆっくりと楽しむ習慣がある。
昨年初めて私もこのバルバコアに招待された。というより、正確にいうと、お昼の2時頃突然連れて行かれた。
「ダビのお母さんの家でバルバコアがあるから、あんたも一緒に来なさい。さぁ、すぐ支度して!」
訳もわからぬまま車で連れて行かれた先は、広くてきれいな庭のある家だった。高い塀に囲まれた頑丈な門を通ると、半円型の白いテラスがあって、そこに顔見知りの親戚が一同に集まっていた。半数くらいの人は初対面だったにもかかわらず、みんな私のことを歓迎してくれた。友達が親戚の人を紹介してくれたが、人数が多すぎてとても覚えられない。
テラスには大きな机がどんと置かれ、そこを囲むようにみんなが座っていて、私は真ん中のいい席に座るよう勧められた。私の周りには、年配の人ばかりが座っていたため、ヘレス訛りのスペイン語が飛び交い、何をしゃべっているのかさっぱり分からず、自信喪失だ。
みんなから、肉やソーセージなどをどんどん皿に盛られ、それから豆のスープや、野菜サラダなんかを盛られ、お腹いっぱいのところにフルーツがでてきた。細長いスイカや、メロン、オレンジなど山のようにあって、とても全部食べきれない。断るのも悪いので、「ちょっとだけください」と言うと、5センチ幅以上ある大きなスイカを渡された。こっちでは、少しの量が日本とは違うということを思い出させてくれる量だった。しまった・・・・。これを全部食べたら死ぬかもしれない。ここで死ぬわけにはいかないので、隣のおじさんに半分助けてもらって、何とか食べきった。それにしても、スペイン人って、何でこんなに食べれるんだろうっていうくらい、本当によく食べる。
みんなお腹がいっぱいになると、今度はおしゃべりに花が咲いた。年配の人たちの話題にはついていけなかったので、若者の集まっているほうに移動した。あー、やっと何を話しているか理解できるようになったから、突然楽しくなる。
夕方5時過ぎになると、「甘いものを食べましょう!」と、ティラミスみたいなケーキと、フルーツがでてきた。さっきあんなに食べたのに、また食べるの????
胃がカルチャーショックを受ける。でも、いちじくの小さいのを発見して、ひとつ食べてみた。これが美味しくて、お腹すいていないのに、数個も食べてしまった。お腹がはちきれそう!絶対に3キロ以上は太ったと思う。みんなはフルーツより、甘いお菓子をたっぷり食べていた。日本で言うショートケーキ3個分くらいぺロリだ。日本のように砂糖は控えめなんてことはないから、すごい糖分だ。あれだけ食べれば、そりゃ太るわと思う。だって、本当にすごいもの。
そしてまたしゃべる。仕事のこと、家庭のこと、近所の人の噂、私がいたせいか日本のこともよく話題になった。
話が尽きると、お笑いのビデオを見ようということになって、リビングに移動した。日本のお笑いと違うけど、結構笑えた。
気付くと外は真っ暗だ。たくさんの人とスペイン語をたっぷりしゃべったから、頭がかなり疲れた。
私はいつ帰るんだろう?と思いながらも、友達に連れてきてもらっているので、大人しく待つしかない。
その頃、半分くらいの人はぞろぞろと帰っていったが、入れ替えにまた別の親戚の人達がやってきた。いったい、どれだけの親戚がいるんだろう?と驚く。
だれだれの兄弟のお嫁さんと、その従兄弟と・・・と説明を受けても、頭のメモリーがいっぱいで、とても覚えられない。
頭をいっぱい使ったせいか、小腹がすいてきた。もう夜10時過ぎだ。
日本だったら、簡単なそばやソーメンなんかを食べてあっさりだけど、ここスペインは違う。彼らはまた肉を焼きだした。うー、また肉はつらいかも・・・。遠慮しようかと思ったけど、「マァリィー、ご飯だからあんたも来なさい!」の一言で、断れなかった。私って意志が弱いかも。Noと言えない日本人って、私のことだわ。
11時過ぎて、友達の家族が重い腰をあげた。
「さぁ、そろそろ帰ろうか」
日本人だと、9時間も長居すれば、あっさり帰るだろうけど、スペイン人の場合は違う。ひとりひとりと抱擁して、今度いつ会おうとか名残惜しんで、帰ろうと言ってから玄関出るまで30分くらいはかかった。
楽しくて長い1日だった。
ヘレスの週末は、毎週こんな感じで時がゆっくりと流れていく。
明日のことは考えない。今日の今を楽しむのがスペインだ。
こうして脳みそがとろけそうになって、頭の構造がだんだん変化していく。
ストレスって、何だっけ?
2005.01.23.
|