国道の両側に広がる刈羽原子力発電所
国道を挟んで右側(海側)に発電施設、左側にはサービスセンターなど事務棟が建てられているようが、、発電設備などの構築物は道からはまったく見えない

国道と旧道の分岐点
ここで旧道は海側に別れてゆくが、500mくらい先で消滅してしまう。刈羽原子力発電所があるのだ

出雲崎の国道352号線
旧北国街道がそのまま国道になっている感じである。海岸と丘陵にはさまれた狭い地帯を進んでゆく



奥の細道歩き旅 第2回
奥の細道歩き旅 白石〜槻木

やがて、道は柏崎港の脇を通る。柏崎港は漁港というよりも大きな物流港湾の性格が強く、大きな貨物船なども停泊できるように整備されている。さらに海浜通りを進んでゆくと、柏崎海浜公園、柏崎マリーナなどが続き、鯨波海水浴場なども見えてくる。

7月5日(陽暦8月19日)、出雲崎を出た芭蕉は柏崎に向かった。約六里の比較的楽な道のりのはずだった。柏崎には天屋弥惣兵衛という庄屋で豪商でもある俳人がいた。芭蕉は象潟で知り合った俳人低耳から紹介状をもらっていて、これを届けて宿を頼むつもりだった。しかし、曾良によると、芭蕉は「不快シテ出ヅ」ということになってしまった。結局、この日は次の宿場、鉢崎まで十里の道を歩いてしまうことになる。

鯨波海水浴場付近の様子
海岸線には港湾設備のほか海浜公園、マリーナ、海水浴場なども整備され、市民の憩いの場となっている

柏崎港の様子
古くから天然の地形を生かした商・漁港として利用されてきたが、 昭和46年に国際貿易港として開港されてから大規模に整備された

柏崎

刈羽原発を抜けると再び海に近づき、柏崎市郊外の住宅地域に入ってゆく。今日はほぼ午前中いっぱい雨が降り続いていたのだが、ようやく止んだので国道脇の公園のベンチで昼食にした。13時頃だった。昼食もすみ、また元気に歩き始める。国道352号線は柏崎駅の方向に曲がってゆくが、私は柏崎港を目指してまっすぐに県道を進む。道路脇に、「割烹 天屋旅館」の電柱広告があった。芭蕉とトラブルのあった天屋さんの末裔だろうかなどと考えながら通り過ぎた。
芭蕉は柏崎に着き、天屋(てんや)弥惣兵衛宅で宿を頼んだのだが、なぜか怒り出してしまった。原因としては、芭蕉の姿がみすぼらしく天屋弥惣兵衛がよほど失礼な態度をしたのだろうとか、紹介状を書いた低耳が信用のない人物だったせいだろうとか言われている。今となっては真相はわからないが、相手が二度も追いかけてきて引き止めるのも聞かず、芭蕉は怒って次の宿場まで歩いてしまうのである。漂泊の旅を心していたはずの芭蕉としては少々大人げないとも思えるのだが、このときの出来事が越後路全体に対するそっけなさの原因ともなっているようだ。

道を下ってゆくと青海川の集落があり、谷底には青梅川が流れている。この川にはシーズンには鮭が上ってくるという。海岸べりの一段高い場所にJR青海川駅がある。駅に着いたのは15:50頃。ちょうど16:01発の柏崎行きの電車があり、柏崎駅前のビジネスホテルに着いたのは16:20ころだった。

米山大橋東詰付近より青海川駅方面を望む
国道8号線は大きな谷を米山大橋で一跨ぎしてしまうが、昔の道はいったん谷底まで下りて再び登りなおす。JR青海川駅は下りきった海岸べりにある

国道8号線、「道の駅 風の丘米山」付近
JR鯨波駅の先で国道8号線に合流する。ここから先はこの国道が日本海沿いを走ることになる

柏崎から青海川(おうみがわ)へ

県道は鯨波駅のすぐ脇を通り、やがて国道8号線と合流する。これからはこの国道8号線との長いお付き合いとなる。国道は山側の少し高い位置を走り、右手に日本海とJR北陸本線の線路を見下ろす形になる。「道の駅 風の丘米山」を過ぎると、前方に赤い大きな橋が見えてきた。米山大橋である。国道はこの橋で眼下に広がる青海川の集落を一跨ぎする。はるか下の海のすぐ近くにJR青海川駅が見える。橋の手前に青海川の集落に下ってゆく道がある。私は、今日の宿は柏崎駅前のホテルを予約してあるので、この道を下って青海川駅に出、電車で柏崎に向かうこととした。

夕日が丘公園
丘の頂上にある国道脇の小さな公園。大変見晴らしがよいので、晴れていればすばらしいだろう

日本海夕日ライン
国道352号線は登り坂になる。海側は断崖なので昔の道もこの丘を越えたのだろう

頂上の公園を過ぎると道は下り坂になり、再び海岸沿いを通るようになる。少し先で国道は山側にゆるく曲がってゆく。海岸沿いにも旧道が残っているようなので、この旧道を進んでみた。このあたりは大湊の集落だが、道はほんの500mくらい先で行き止まりになってしまう。この先には大きな刈羽(かりわ)原子力発電所があり、旧道はここで消滅してしまうのだ。仕方ないので、分岐点に戻り国道を進む。国道は原子力発電所の敷地を避ける形で大きく山側に迂回してゆく。

出雲崎から柏崎へ

民宿「勝見鉱泉」は、海からの強風をまともに受ける位置に建っている。宿の女将さんは「この辺は雪は積もりませんよ。みんな風に吹きとばされてしまうから」と笑っていた。特に今年は雪が少なく、ほとんど積もることはなかったという。
今日も朝から雨である。朝食がすんで、しばらく様子を見ていると小降りになり、やがて止んだので宿を出発した。8:15頃だった。宿の前の道は国道352号線だが、まだ朝早いので、交通量は少ない。この国道は柏崎市街で国道8号線に合流し、そこから先は国道8号線が海岸沿いを走ることになる。

五智国分寺

原発

刈羽

笠島

黒井

鉢崎

青海川

柿崎

北陸本線

国道8号線

国道8号線

北越急行

国道352号線

国道8号線

越後線

信越本線

信越本線

信越本線

柏崎

米山

高田

直江津

出雲崎

出雲崎から直江津

日本海

JR青海川駅ホーム
ホームのすぐ下は荒波押し寄せる日本海である

国道8号線米山大橋
青海川の集落より国道8号線米山大橋を見上げる天空の橋といった感じだ

歩いているうちに再び雨が降り出した。単調な道をタンタンと進んでゆくと、やがて道は登り坂になる。登りきったところが「夕日が丘公園」という見晴らしのよい公園になっている。今日はあいにく雨で視界が悪いが、晴れていればきっと眺めがよいだろう。

道はやがて柏崎市西山町に入り、国道沿いに立派な長屋門が見えてくる。「史跡 明治天皇行在所 明治天皇駐輦碑 長屋門 西山町教育委員会」という簡単な説明板が立っていた。明治はじめの北陸巡幸の際に、明治天皇がここで休息されたようだ。
海岸沿いの国道を進んでゆくと、北の佐渡方面の空が少し明るくなった。目を凝らすと、佐渡が島の島影がかすかに見えた。芭蕉も、明治天皇もそして多くの旅人たちも、佐渡の方角に目をやりながらこの道を通ったことだろう。

海岸通脇の「天屋旅館」の電柱広告
芭蕉が宿を断った「天屋」のあった辺りだろうか

柏崎市内国道脇の小公園
雨も止んだので、ここで昼食にした

国道脇より佐渡方面を望む(柏崎市内)
北の空がわずかに明るくなり、佐渡が島の輪郭をかろうじて確認することができた

明治天皇行在所、長屋門、駐輦碑
明治天皇北陸巡幸の際に休息した屋敷と立派な長屋門などが国道脇に残されている