カメレオンズ・リップ観劇レポート
2004.2.19 シアターコクーン
作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演者:堤真一(ルーファス・T・ファイアフライ)、深津絵里(エレンデイラ/ドナ)、生瀬勝久(ナイフ・ハーフムーン)、余貴美子(ビビ・シングルカスク)、山崎一(ルドルフ・ハッケンブッシュ大佐)、犬山イヌコ(ガラ・トメート)、林田麻里(シャンプー・ニューワース)、木村悟(モーガン・スーパーブレンド医師)
ストーリーあらすじ:谷底にある別荘に一人で住んでいるルーファス。彼には姉のドナがいたのだが、ドナは小さい頃から嘘つきで、周囲の人を騙し続けていた。そんなドナがある日自殺(川に身投げ)をし、その遺体はあがっていなかった。ドナの命日の日にやってきたのは地元の親切な獣医に案内されたドナの元夫のナイフとその妻ガラ。一人で住んでいるはずのルーファスなのに、そこにはドナにそっくりのエレンデイラという女性が家事をしていた。そして同じく命日に花をたむけにやってきたドナの友人シャンプー。ドナにそっくりの女性を見つけてエレンデイラは崖に転落して重症。突如やってきたナイフ夫妻はルーファスの別荘を手に入れようと画策しているらしく、そのために女優のエレンデイラを整形させドナにそっくりにさせ、また同じく女優のビビと組んでルーファスを騙そうとしているようであった。そんな中、飼い犬がいなくなったと迷いこんできたのがハッケンブッシュ大佐。谷底の別荘で繰り広げられる嘘と茶番。いったい誰が嘘つきで、誰が真実を話しているのか?謎が謎を呼び、最後に残ったのは...
感想:ケラの作品らしく、やはり上演時間は長い(3時間10分)のだが、今回Finと流れてきた時にはもう終わり?というくらい早かった。お芝居のテンポが良かったのもあるが、出演者全員が芸達者で時間を感じさせられなかったからかもしれない。最初にストーリーテラー的な役割も果たしているルーファスが姉のドナと自分についての語りを行うのだが、声で堤真一とわかったのだが、見た目はえらく若くってかわいらしかった。これは役柄的に弟役のせいなのかもしれないが、えらくかわいかった。そして嘘つきの姉ドナとエレンデイラの2役をこなした深津さんだが、キャラわけがうまくって、別人なんだけど本当に別人?と思わせるところはさすが。ただ、絶叫的な台詞まわしになると、以前見た夜長姫とダブって見えてしまうのは、どうしてもつき物がついた系のお芝居をしてしまうからなのか?でも声も通るし、あの細いというか横から見たらぺっちゃんこの薄い体なのに、よくぞあれだけ動ける(何せルーファスとプロレスの技かけるし、追いかけっこするし、ずぶぬれの中で演技するし)なと感心しきり。それに早や代わりが凄くって、いったいいつドナとエレンデイラが変わっているのかよくわからなかった。そして個人的にはナイフ役の生瀬さんの声にぞっこん。いい声しているんだな、これが。そしてお芝居に余裕があるのか、ところどころおそらくアドリブを入れているのでは?(それは堤さんの反応から判断しているのだが)と思うシーンがちょいちょいと。ストーリー的には、いくら三流とはいえ弁護士なのに義理の弟のルーファスを騙して別荘を巻き上げようとしたり、案内してきた眼科医に安物の帽子を高くふっかけるわ、妻のガラは目が見えないふりをするわで怪しすぎ。(笑)それに妻のガラもハイテンションキャラというか分裂気味のキャラでぬいぐるみのチッチモンド君がおそらく子供代わりなのか、ずっとぬいぐるみに話し掛けてるわで、よくわからんし...妻と夫というよりは、騙すための相棒って感じだったのが、最後にガラに脳腫瘍ができているかもしれないという医師の言葉を聞いて、ガラの愛に目覚めて、隣町まで医者を呼びに行こうとナイフが出かけている間にガラは殺されてしまうというシュールな終わり方。しかもおそらく芝居はここで終わっているが、もし白黒つける終わり方だったら、おそらく戻ってきたナイフも殺されていただろうなと感じさせる終わり方。眼科医なんて狂言的まわし的な役どころで、かなり美味しい。最初にナイフ夫妻に騙され、穴に落とされ、気を失い、気がついて落とされた穴をはって出てきた屋敷では病人を見させられたり、挙句に銃の暴発で殺されるという葉茶目茶さ。(笑)しかもその落とされた穴というのがポイントで、そこには白骨化した死体と餓死した女性の死体。ここから芝居は大団円に向かっていくんだよな。この芝居の中で唯一真実を話しているのが、おそらくハッケンブッシュ大佐。彼は記憶を失って川辺で倒れていた女性を追ってこの屋敷にやってきたのであった。その女性は収容された病院で虚言癖を見抜かれ、収容所に入れられたが、その収容所で毒を患者たちにもって、そのまま逃走。その女性とはルーファスの姉のドナ。ということは、エレンデイラ=ドナ?ということはナイフ夫妻が送り込んだ本物の女優のエレンデイラは?穴の中で餓死している女性?ルーファスとドナに追い詰められて穴に落とされた大佐。ここで大佐に投げかけられる言葉に対してどう返答すれば助かるのか?と考えるも、結局ドナのかける言葉が嘘であれ本当であれ、どう答えてもそれは殺して欲しいという答えになってしまうし、真実を知ってしまった大佐には死しかないんだよな。大佐を殺して土砂降りの雨の中、抱き合うルーファスとドナ。結局ドナが嘘をつくようになってしまったというのは、父親に愛人がおり、その父親と愛人を銃で殺した母親がドナが銃をさわっていて暴発したせいにしたからなのか?そして白骨化した死体はルーファスとドナの母親のものだが、これはいつもルーファスが作るスープに毒を混ぜたからなのか?うーん、考えれば考えるほどわけがわからなくなってきて...(笑)シュールで痛いんだが、笑えるという不思議なお芝居。エレンデイラを殺したのはドナに間違いないとは思うのだが...結局誰が一番嘘つきなのか?という答えはこの作品を作ったケラということで...とにかく奥が深いお芝居でした。どうやらWOWOWで放送されるらしいので、じっくりともう一度見たいと思います。