原子力事故防災

このページは
「原子力事故の防災とは何か」
「原子力事故についてどのように考えるべきか」
ということを考えていくことを目的としています。

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■東井 怜さんの考える「原子力事故防災」

《基本的な考え方》

[1] まず、 「防災」(事故が起きる前に準備しておく事)と「災害対応」(事故 がおきた時にどう行動するか?)の二面があることをきっちりおさえること

[2] 住民は自らの為に、代表に任せることなく、できるだけ全ての住民が防災計画作成 に加わること

[3]「災害対応」策は極力個人の自主判断にまかせる。

*千差万別の状況にあり、全く考え方も違う人々に統制のとれた行動を求めるのは 不可能であり、それぞれの住民の状況に応じた「防災」「災害対策」を用意するこ とも不可能である。例えば、5mSVで非難する人、10mSVを超えたら避難する人いろ いろでいい。国は上限のみを定める。

[4] 国・地方自治体は・・・

  • リアルタイムの情報提供(つつみ隠さずに・・)=放射能の線量、風速、風向など
  • 住民が自力で「災害対応」できるよう設備・システムを整える
  • 避難行動・退避行動は自力で、が原則なので行政は自力で動けない住民や施設の 救援に集中する。


《実効性ある具体的な防災計画例》

[1]鉄道設備
避難のための手段を用意することが必要。電車が最も有効。1時間に数本のダイヤ。 夜間も駅で待機。住民には無料バス。できれば地下鉄とし、地下プラットホームに。

[2]地階のある鉄筋コンクリート製駅舎及び建築物
地下はもっとも放射線遮蔽効果が高い。電車が不足しても、とりあえず駅舎に退避、 待機。酸素ボンベ、水、乾パンなど常備。避難カードを乗客に配り、下車駅で回収。 「何時にどこからどこまで」だけでも貴重な足跡。

[3]発電所の通勤用のバスを避難用に町内循環させる。
遮蔽性能のある車体とし、運転席に特に配慮。日常の通勤は自家用車をやめて極力 バス運行。

[4]移動放射線測定車、固定表示板で日頃から放射線量や気象情報をリアルタイム で掲示。さらにレベル毎に色分け表示など工夫。

[5]学校・幼稚園・保育園などは、クラス単位または学年単位で担任引率のもと避難 (避難先は平常から決めておく)


《最後に》

■ここに呈示してきたことはこれで充分ではないし、的確とも限らないだろう。事故 はあらゆるパターンがあり、予測線量当量の計算や災害想定が有効な場合もあろうが、 そうとばかりも限らないはず。地震に誘発された「原発震災」の際には、上述の提案も まるで役立たない。くり返すが、あくまで地域ごとに住民の主導のもと地域固有の防災 対策を作成してもらうようにすべきだ。

■原発サイト内でイベントを行なったり、見学者を入れることなどは即やめるべき。 乳幼児を含む住民のおまつり事や小中学生の原発見学の企画など多数行なわれている。

■広報協会など県の機関の原発推進あるいは「原発は安全」という安易な宣伝は やめるべき。正しい放射線の知識や除染の方法、防護法などを女川原発でのモニタリ ング用線源の事件などを教訓として地元住民への教育をしっかり立て直すべし。





■原発事故シミュレーションビデオ

ドイツのテレビ局が原発事故のシミュレーションを製作しました。具体的かつ細かく 描かれており、原発事故を考える上で非常に役立ちます。
このシミュレーションビデオの映像が日本のテレビ番組で紹介された時のビデオを 持っていますので、ご希望の方にはお譲りいたします。DVDもできます。
お名前・ご住所・お電話番号をご記入の上、
メールでお申し込み下さい。
※恐縮ですが、現在は画像の劣化のため取り扱っておりません。



■『T家の原子力事故避難マニュアル』発行・小金井市に放射能測定室を作った会


《あとがき》より

このマニュアルの基本的な考え方は「とりあえず」「自分で」「避難する」ということです。
「とりあえず」とは、その事故が明らかに健康に悪影響を及ぼすとの確信をもつ前にということです。
「自分で」とは、行政の判断や指示に頼らないということです。
「避難する」とは、できるだけ遠くへ事故の起きた施設から離れるということです。

 私たちは「コネティカット州原子力発電所非常事態対策ガイド」を翻訳・作成した後、日本での 実効性のある原子力防災対策を探し求めてきました。正直に言って答えは見つかっていません。 また、この地震大国・日本で見つけられるはずもありません。国や県などの防災計画はといえば、JCO事故を経験したにもかかわらず、非現実的なものであり、心もとないと言わざるを得ません。

 しかし、今日も原発が稼動し続けている中で、万が一の時に私達だったらどうするだろうと、考え悩み形にしたのがこのマニュアルです。

 ご理解いただきたいのは「我が家だけが助かればよい」という考えでこのマニュアルを作ったのではないということです。避難するタイミングや方法を行政まかせにし、大集団で行動することによって、浴びなくてすむ放射線まで浴びてしまう危険性があると考えたのです。

 このマニュアルでは、ある一つの家族を例にとりましたが、言うまでもなく家族のあり様も千差万別 ですし、その特殊性に応じて、家族ごと、あるいは職場、あるいは学校ごとに自主的にマニュアルを作成し、行政はできるだけそれをサポートし、調整するという方が現実的ではないでしょうか?

 チェルノブイリ級の事故が起きたら、市民がパニック状態になるのではないかというご批判があることは重々承知で、あえて問題提起させていただきます。また行政の責任を軽くしようという考えでもないことをつけ加えさせてください。

 このマニュアルをたたき台として、みなさんがそれぞれのマニュアルを考えてくださることを、さらにはこのようなことを考えなくて良い日が一日も早く来ることを願ってやみません。

                                          2003年 春
                             小金井市に放射能測定室を作った会

 このマニュアルをご希望の方にはお譲りいたします。
 一冊500円です。お名前・ご住所・お電話番号をご記入の上、メールでお申し 込み下さい。郵便振替用紙と共にお送りいたします。