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脳について(4)



〜 認知症の症状と進行(その2:後期)〜

 前回の続きで、主にアルツハイマー型認知症の後期の症状についてお話します。



【末 期】

1. 日常生活すべての面で要介助
・入浴しても、洗い方がわからずそのまま出てきてしまう。
・トイレに行っても、ズボンの下ろし方がわからない。
・トイレットペーパーをどう使うかがわからない。

2. 会話が全く通じなくなる
例)話した言葉を次々に忘れていく(口から言葉が出たときにはもう何を言ったのか忘れている)ので、会話が成り立たない。同じ言葉だけを何度も繰り返す場合もある。

3. 失禁するようになる
例)「おしっこしたい」という気持ちと、本当に膀胱に尿がたまっている感覚とが一致しなくなってくる。そのため、「トイレに行きたい」というのでトイレに行くが、全くおしっこが出ず、何も言わないときにズボンがいつの間にか濡れているということも起こりえる。そして、濡れた衣服は気持ちが悪いので、自分で脱ぐところまではできることが多い。しかし、その衣類の処理をどうしてよいのかわからずに、ごみ箱に捨てたりトイレに流したり(トイレが詰まる)、タンスにしまったり物干しに干したりする。

 同様に大便も漏らしてしまうようになる。廊下などで漏らしてしまうと、落ちてから気がついて、気にして拾う方もいる。拾っても、やはりどう処理してよいのかわからずにタンスにしまったりすることもある。

4. 清潔と不潔がわからなくなる
・お風呂に入らず髪も洗わないで過ごしていても平気になる。
・下着や服を何日も着替えなくても平気になる。
・また、清潔にすること(特に入浴)や衣服を着替えることを嫌がることもある。

5. 行動がうまくできなくなる
何かを行う能力が失われていく(失行という)。このため、

・歩くときどう足を運べばいいのかわからない。
・食事の時に食べ物と食べられないものの区別がつかない。
・スプーンを口に運ぶという行為がわからない。
・生存に必要な動作が何一つできなくなり、最後は寝たきりになってしまう。
(寝たきりから床ずれを生じ、皮膚から細菌が体内に入り込み、敗血症になって亡くなるということが昔は多かった。最近は褥創の処置が進歩して、そのようなケースは減ってきている)

6. 体の症状が出る
・「パーキンソニズム」という歩きにくい症状がでる。
 具体的には、バランスが悪く歩幅が狭く、前のめりになる。
・また、食べ物などがうまく飲み込めない「嚥下(えんげ)障害」という症状が出て、口の中のものが気管の方に入ってしまい窒息や肺炎を引き起こし、これが死因となることが多い。

7. 赤ちゃんのような症状が現れる
・鏡を見ても自分が映っていることが分からず、別の人がそこにいると思う。
・何でも口に持っていく。
・何でもつかんで離さない。


 以上挙げてきたのが、主な症状の例です。後期には種々の悲惨な症状が出てきて、介護される方のストレスも大変なものです。体の症状に関しては個人差があり、知能の障害がかなり強くても、最後まで元気に歩いて体も丈夫という方もいらっしゃいます。歩くのには全然問題がないが、飲み込みだけがうまくできないという方もいらっしゃいます。全ての症状が同じように出現するわけではないのです。

 また、今回挙げたのは主にアルツハイマー型認知症の症状ですが、脳血管性の中にもこういった症状が合併して出現するもの(混合型認知症)があります。そのほかに、レビー小体型認知症、ピック病、前頭側頭型認知症など、さまざまな特徴を持つ認知症があります。

 読んで下さり、ありがとうございました。

12-14-2002


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