研究室紹介
広報誌TSUKU COMM インタビュー「人と人との関係から社会の動きを予測する」
筑波大学「知」活用プログラム
倉橋研究室では、知的経営を目指して、以下のような研究を行っています。
- 社会シミュレーション
- 感染症モデル(エボラ出血熱、ジカ熱、風疹、新型コロナ...)
- 都市モデル(Compact City、施設配置、交通政策...)
- 知識伝達モデル(東アジア族譜分析、知識構造分析、協調学習...)
- シミュレーション経営学
- 人工市場(電力、両面性/プラットフォーム、共有経済、金融/システミックリスク...)
- 人工組織(リーダーシップ、ダイバーシティ、組織デザイン&ネットワーク...)
- ビジネスゲーム(店舗経営ゲーム、国際協調ゲーム、電力市場ゲーム、M&Aゲーム...)
- 経営知能情報学
- 知識発見(異常発見、熟練技能抽出、情報推薦...)
- 経営分析(費用構造分析、監査リスク、資金融資分析...)
- 人工知能研究
- 複雑適応システム
- 進化的最適化
- 逆シミュレーション
- エージェント強化学習
社会シミュレーション
さまざまな社会的課題の原因を把握し,解決策を探るためには,データ収集と分析だけでは不十分です.特に,社会における課題解決は実験が不可能な場合が多く,解決策の事前検証が困難となります.社会シミュレーション研究は,それを解決する有望なモデル化技術です.複数のエージェントをコンピュータ上に実装し,社会的課題を実験することができます.- 感染症モデル
現代社会は,常に多くの感染症リスクに直面しています.SARS,MARS,エボラ出血熱,デング熱,ジカ熱などを社会シミュレーション技術を使ってモデル化し,感染拡大を食い止めるための保健衛生政策を研究しています. - 都市動態モデル
人口減少が進む中,コンパクトシティなど都市の再設計が課題となっています.しかし,行政のトップダウンで,住宅を移転させたり,交通機関を変更したりすることは,大きな反発と経済リスクが伴います.本モデルでは,住民エージェントが自ら最適な交通手段を選択し,コンパクトシティを自然な形で形成していく方法を探ることができます.
ワーキングペーパー(新型コロナウイルス含む)はこちらです。
シミュレーション経営学
マーケティング、イノベーション普及、金融、経営戦略、経営組織、人材教育、環境問題、電力市場など、多岐にわたる経営や社会の課題を、Agent-based Modelling手法を用いて実験・分析・予測を行うのが、シミュレーション経営学です。 私達の研究室では、経営/社会シミュレーションモデルを構築するためのマルチエージェントプログラム環境 NetLogoの日本語化も進めています。- 電力市場モデル
日本でも電力市場の自由化が始まっています.しかし,上手な制度設計を行わないと,温暖化ガスを削減することは二の次となり,経済性を最優先する発電事業者が増えてしまいかねません.電力市場モデルは,参加型シミュレーションとして設計され,政府・発電事業者・アグリゲータ・需要家・消費者がGamingを行いながら,最適な制度設計の検証を行います.また,オランダのフローニンゲン大学と,エネルギー転換ゲームの共同研究を行っています. - シリアスゲーム/ビジネスゲーム
社会や経営における様々な課題をゲーミフィケーションを利用してモデル化し、人がゲームに参加することで社会や経営を疑似体験することができるものとして開発されてきました。どちらも、人工的な対立や協調状況の中でプレイヤーが活動し、教育を始め社会の諸領域の問題解決のために様々な分野で用いられてきています。
経営知能情報学
ファイナンスやマーケティングなどの経営課題を、企業内データ・インタビュー・質問紙などを用いて分析し、その背景にある真の姿をあぶり出すのが情報経営学です。データサイエンス教育プロジェクトの一環として、人工知能や統計分析によるデータマイニングおよびビッグデータ解析などの最新の手法を学びながら、実問題に取り組むことができます。不良債権の要因解明、顧客定着率の分析、協調フィルタリングを用いた情報推薦など、企業データを用いて経営リスクやチャンスの発見に貢献する研究を進めています。人工知能(データマイニング・進化計算・知識発見・情報推薦・異常予知)
データマイニングは、人工知能のひとつである機械学習を用いて大量のデータから意味のある情報を発見する手法です。企業や社会に蓄積したビッグデータの解析に威力を発揮します。進化計算手法を応用した学習分類子法を使って、操業時系列データや販売データなどからの知識発見や、顧客への情報推薦、異常予知などの研究も行っています。また、これらの最適化手法を社会シミュレーションに組み込む「逆シミュレーション法」の研究を行っています。 また、人工知能学会での「経営課題にAIを! ビジネス・インフォマティクス研究会」を中心に研究活動を行っており、他大学や企業・研究機関との活発な交流・連携を進めています。学生の研究事例(博士後期課程)
- 遍在的なコラボレーションのための基礎研究
渋谷和彦, 博士(システムズ・マネジメント) - 日本型雇用システムにおける新規学卒者採用市場の構造分析
森敬子, 博士(システムズ・マネジメント) - ノンパラメトリック手法を用いた金融危機発生メカニズムの解明に関する研究
瀬之口 潤輔, 博士(経営学) - Stable Fitting of Nonparametric Models to Predict Complex Human Behaviors
(複雑な人間行動を予測するための ノンパラメトリック・モデルの安定した適合)
高橋 力矢, 博士(工学) - スノーボール調査とネットワーク分析に基づくエージェントベース普及モデル
吉田 孝志, 博士(システムズ・マネジメント) - 市町村の情報システム経費に関する研究
小野 吉昭, 博士(経営学) - 金融機関の破綻連鎖とシステミックリスク指標の研究
橋本 守人, 博士(システムズ・マネジメント) - Urban Dynamics Modeling Scheme Considering Residents’ Daily Travel and Street Activeness
(居住者の交通行動と街のにぎわいを考慮した都市動態モデリング手法)
永井 秀幸, 博士(工学) - 動的なセルフサービス技術受容モデルに関する研究
上田 圭一, 博士(システムズ・マネジメント)
学生の研究事例(博士前期課程)
- エージェントアプローチによる温室効果ガス取引制度の分析
- エージェントアプローチによる新規学卒者採用市場の研究
- 実数値GAを用いたモデル推定における変数選択手法の提案
- シミュレーションによる官製談合の分析
- Social Bookmarkにおけるユーザの情報整理の個性にマッチした情報推薦手法
- 口コミ効果における社会ネットワークの影響の研究
- 市町村の情報システムの費用分析
- オンライン市場における同調行動と価格形成
- 複雑二重ネットワークモデルによる知識教授シミュレーションに関する研究
- 時系列データマイニングによる顧客定着率の分析
- 規範モデルを用いた複数組織デザインの研究
- 空港におけるセルフサービス機器利用普及のシナリオ分析
- にぎわい施設配置と交通施策を考慮した都市動態シミュレーション
- 肥満現象と社会規範のダイナミクス
- システミックリスクを低減するセーフティネットの研究
- 情報掲載サイトのコンテンツ順序決定評価モデル
- 高頻度取引が市場に与える影響の分析
- 警報に着目した熟練技能抽出手法の研究
- フォールトラインが組織の成果に及ぼす影響
- クラウドソーシングを活用した アイデア投稿サイトのデザイン
- エージェントシミュレーションによる トラック配送業の多重下請け構造の研究
- エージェントベースシミュレーションによるクラウドファンディング市場のプロモーション戦略分析
- エージェントシミュレーションによる農業経営の持続性検討
- 組織パフォーマンスにおける紐帯の非対称性
- 公開財務情報を利用した機械学習による監査リスク分析手法に関する研究
- 人工市場モデルを用いたプラットフォーム戦略に関する研究
- M&Aにおける適切な買収プレミアム算出のためのゲーミングシミュレーション開発と実践
- エージェント強化学習によるダイナミックプライシングを用いたシェアサイクル運用システムの研究
研究を通して学べること
経営や社会の課題に対して、最新の人工知能技術や統計解析手法を用いて分析を行うことで、その背景にある真の課題を発見する研究手法を学ぶことができます。 また、それらの分析結果に基いて、人工社会や経営モデルをコンピュータ上に構築し、施策・戦略の事前評価や将来予測などを行う手法を学ぶことができます。私達の研究室では、人工知能、エージェントモデル、データマイニング、機械学習、統計解析、複雑ネットワーク、進化計算などの基盤技術を習得し、それらを経営や社会の課題に適用する研究を通して、高度な経営分析スキルを見につけたビジネスリーダー・研究者・企業家などを育成することを目指しています。
研究室受賞歴
- 人工知能学会第12回全国大会論文集,大会優秀論文賞, 「人工社会モデルによる社会的インタラクションの分析」倉橋節也, 南潮, 寺野隆雄, 1998
- 情報処理学会第70回全国大会, 学生奨励賞, 「エージェントアプローチによる温室効果ガス取引制度の分析」大堀正人, 2008
- 経営情報学会, 2014年度論文賞,「市町村の情報システムの費用分析」, 小野吉昭, 倉橋節也, 2014
- 筑波大学, 2014年度学長表彰, 小野吉昭, 2014
- 社会情報学会, 2015年度大学院学位論文奨励賞, 「スノーボール調査とネットワーク分析に基づくエージェントベース普及モデル」吉田孝志, 2015
- IEEE Computer Society Japan Chapter, JAWS Young Researcher Award, 「エージェントベース都市動態モデリング - 交通施策が変える街のかたち」, 永井秀幸, 2016
- 筑波大学, 2016年度 筑波大学大学院システム情報工学研究科 研究科長表彰, 永井秀幸, 2017
- 筑波大学, 2017年度 Best Faculty Member, 倉橋節也, 2018
- 2018年経営情報学会春季全国研究発表大会, 学生優秀賞, 「フォールトラインが組織の成果に及ぼす影響」, 熊田ふみ子, 2018
- 2018年度・第23回日本シミュレーション&ゲーミング学会論文賞, 倉橋節也, 2018
- 2018年計測自動制御学会システム・情報部門貢献表彰, 倉橋節也, 2018
- 2018年計測自動制御学会システム・情報部門論文賞, "How Do Children Learn and Teach? In-Class Collaborative Teaching Simulation on the Complex Doubly Structural Network" 國吉啓介, 倉橋節也, 2018
- Best Research Paper Award, "An Agent-Based Infectious Disease Model of Rubella Outbreaks", 13th International Conference on Agents and Multi-Agent Systems:Technology and Applications (AMSTA-19), KES International, Setsuya Kurahashi, 2019
- 計測自動制御学会 システム・情報部門 第22会社会システム部会研究会 学生賞, 稲垣仁美, 2020
- 計測自動制御学会 システム・情報部門 第22会社会システム部会研究会 学生賞, 矢嶋耕平, 2020
- 経営情報学会, 2020年度論文賞,「多様性が組織の成果に及ぼす影響ーフォールトラインによる考察ー」, 熊田ふみ子, 倉橋節也, 2020
- 人工知能学会 2020年度論文特別賞, 倉橋節也,「新型コロナウイルス(COVID-19)における感染予防策の推定」倉橋節也, 人工知能学会論文誌 Vol.35 (2020), No.3, pp. D-K28_1-8, 2021.6.25
- Best Research Paper Award, International Conference on Agents and Multi-agent Systems: Technologies and Applications 2021 (AMSTA2021) 「Asymmetry of ties in organizational performance, Hitomi Inagaki, 2021.8.3
- 計測自動制御学会2022 年システム・情報部門 部門論文賞, Hideyuki Nagai, Setsuya Kurahashi, Measures to prevent and control the spread of novel coronavirus disease (COVID-19) infection in tourism locations SICE Journal of Control, Measurement, and System Integration, Volume 15, Issue 2, pp.1-12, 2022, 2022 年 11 月 27 日
- 経営情報学会 優秀萌芽研究賞, 企業における対面コミュニケーションが生産性に及ぼす影響, 矢田 昇平,加藤 大望,倉橋 節也, 2022/5/29
- 人工知能学会 学生奨励賞, オフィス内の位置情報データから抽出する働き方の特徴とパフォーマンスの関係, 矢田 昇平、加藤 大望、倉橋 節也, 2022/7/26
- 人工知能学会, 研究会優秀論文賞受賞, 人間と機械学習モデルのインタラクションによるモデル改善手法, 新井 崇夫, 倉橋 節也, 2023.6.24
主な書籍
- 社会シミュレーション 世界を「見える化」する,共同執筆,東京電機大学出版局,2017
- New Frontiers in Artificial Intelligence, S. Kurahashi, Y. Ohta, S. Arai, K. Satoh, D. Bekki(Eds.), Lecture Notes in Artificial Intelligence, Springer, 2017
- Innovative Approaches in Agent-Based Modelling and Business Intelligence, S. Kurahashi, H. Takahashi(Eds.), Springer, 2018
連絡先
倉橋 節也日本国際学園大学 経営情報学部 仙台キャンパス
〒980-0022 宮城県仙台市青葉区五橋2丁目1-13
setsuya.kurahashi@japan-iu.ac.jp
筑波大学大学院 ビジネス科学研究群経営学学位プログラム
〒112-0012 東京都文京区大塚3-29-1(研究室:6階619)
kurahashi.setsuya.gf[at]u.tsukuba.ac.jp