02.10.31 第1審弁論再開申立 報道

 新たな発症例もとに審理再開を要求 MMRワクチン訴訟

 はしかなどを予防する三種混合(MMR)ワクチンの予防接種後の89〜92年に死亡した児童の遺族ら3家族7人が国などに総額3億5000万円の損害賠償を求めた訴訟で、原告弁護団は31日、今年5月に結審した裁判の再開を大阪地裁(吉川慎一裁判長)に申し立てた。結審後、接種開始直後の発症例など、国が裁判で明らかにしなかった事実が判明したためという。弁護団は「判決に重要な影響を及ぼす内容だ」と主張し、証拠採用するよう求めている。

 MMR訴訟は93年12月の最初の提訴から8年半後の今年5月に結審し、判決言い渡し日が11月28日に指定されている。

 結審後の7月、訴訟支援者の要請で阿部知子代議士(社民)が、MMRワクチン接種による被害発生状況について質問書を国に提出。国は9月、答弁書で回答したが、国側が裁判所に出した準備書面にない事実が含まれていたという。

 答弁書によると、MMRワクチン接種が始まった89年4月から7月までの間に、接種を受けた児童が急性心不全で死亡したり、急性小児まひを発症したりした重篤な症例が3件起きていたことを、旧厚生省が福島県などからの報告で把握していたとされる。

 接種後の無菌性髄膜炎の発症例については、89年10月時点で国が知ったとされる前橋市医師会の調査結果として「1834人の被接種者のうち10人が発症」と答弁した。国が裁判で明らかにした内容は「1800人の被接種者のうち3人が発症」だった。

 また、ジフテリア予防など別の三種混合(DPT)ワクチンの接種で、副作用とみられる死亡例が75年1月までに2件報告された後、旧厚生省が翌2月、局長通知で各都道府県に接種を一時見合わせるよう要請していたことも分かった。

 国は93年4月に見合わせるまでMMRワクチンの接種を続けた。このため弁護団は、弁論再開申立書で「遅くとも、多数の副作用が厚生省に報告された89年10月の段階で、接種を見合わせることが十分できたことを示す有力な証拠だ。接種を続けた国の責任は重大だ」と指摘している。

 厚生労働省結核感染症課の担当者は「申立書は裁判所を通じて受け取った。裁判所の判断を待ち、それに従いたい」と話している。

(03:04) asahi.com 朝日新聞 11.1夕刊 大阪版