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決算委員会

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1989/11/08

 午後一時二十七分開議
中村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。上田哲君。
上田(哲)委員
 いわゆるMMR問題、麻疹、はしかですね、おたふく風邪、風疹の三種混合ワクチンの問題についてお伺いをいたします。
 今非常にお母さん方が心配をしているテーマでありまして、東京の国分寺とかあるいは静岡県とかがこの接種をとりあえず中止するというような事態が起きておりまして、このような自治体への全国からの自治体の問い合わせというものも数十件に達している、あるいはそれ以上かもしれません。
 四月から始まったこの接種で、今までのところで百二十五例の無菌性髄膜炎が出ている。非常にシリアスな事態だと思っておりますが、厚生大臣は、これは大変重大な、重要な問題だという御認識をお持ちですか。
戸井田国務大臣 御指摘のワクチンは、やはり国民の健康保持、予防という点から、当然この問題は厚生省としても重視をしていかなければならない、そういう認識の上に立っております。
上田(哲)委員 今回の事態がこういうふうになっているということについては、これは重大な問題だというふうな御認識でしょうね。
戸井田国務大臣 そのとおりであります。
上田(哲)委員 専門家である事務当局にお伺いをいたしますが、この事態、四月から始まったばかりだというのに、これまでのところ、無菌性髄膜炎百二十五例という事態は予想線上にあったものですか、意外な結果でありますか。
長谷川政府委員
 お答えいたします。
 先生御指摘のMMRワクチンにつきましては、そのワクチンの接種後におきまして無菌性髄膜炎が起こることはまれには起こる、しかし、まれに起こりましても、その起こっているものはワクチンに由来するものか、あるいは野生株の自然感染によるものかについては定かではない、おおむね自然感染によるものが多いであろうというようなことが、従前、いろいろの小児科の先生方を中心にして言われておった事例でございまして、そういう面で、先生からお話のございました百二十五例と申しますのは、ことしの四月以降に接種されました子供さんの数が大体五十万人おられるわけでございますが、その方々の中で、ワクチンを接種した後にいろいろ副反応が出ておった事例が都道府県の調査によりますと百二十五例あったということでございまして、百二十五例全部が全部無菌性髄膜炎であるかどうかについては、さらに詳細な検討が必要であろうというぐあいに思っているところでございます。
上田(哲)委員 全部が無菌性髄膜炎であるかどうか、あるいはその由来するところが野生ウイルスによるものか、そうした問題が判別の問題として今後に残りましょうけれども、そういうものが一般的に含まれるパーセンテージということにはならないだろうけれども、蓋然性の中でいって、それにしてもおっしゃるようにそうした事象が起こり得るという経験値はあるけれども、そういう推定値をはるかに超える数字である、その点で私は百二十五例というのは予想を超える事態であるというふうに見るべきではないかと思うのですが、その点はいかがですか。
長谷川政府委員 確かに先生お話ございましたように、五十万人に打ちまして、そのうち百二十五人の副反応の事例が出ておった。その中にかなり無菌性髄膜炎の患者さんもおられるとは思いますけれども、そういう面で、頻度から申し上げますと世界と比べましてもかなり頻度が高い、ちょっと予想を超えている割合の発生であるというぐあいに認識いたしております。
上田(哲)委員 私は、行政当局の認識としてかなり重要な問題だととらえなければならないと思うのですね。この辺のところは言葉の問題として少し私はすっきり、かっちり答えてもらいたいと思いますよ。
 例えば、アメリカでは二十年前からやっているとかあるいは十年前からやっているところもいろいろあるわけですけれども、これは必ずしもフィールドワークからいってイコールにはならないだろうし、イギリスでは去年から始めたとかいろいろなことはありましょうけれども、やはり一定の容認限度といいましょうか、ワクチネーションの限界というものがありましょう。しかし、そういう中でいうと、麻疹と風疹の問題はないのだから、この場合はおたふく風邪なのですから、おたふく風邪の占部株、この占部株ということがはっきりしているわけですから、この段階まできてこの数字というのは、私はやはり病理的に、学問的に、疫学的にかなり重要だというふうに考えているのが、例えば公衆衛生審議会の中でも当然な認識だと思うのですね。その認識を明確にひとつお答えいただきたいのです。
長谷川政府委員
 先生の御指摘ございました公衆衛生審議会の中の子防接種委員会から御意見いただいているわけでございますが、その御意見の中身といたしましては、まず一つには、早急に正確な実態把握を行い、「その結果を踏まえて再度委員会を開催し、当面の措置を検討する必要がある」というのが第一点でございます。第二点におきましては、これまでの調査によりますると、「MMRワクチン接種後、概ね数千人〜三万人に一人の割合で無菌性髄膜炎の発生している可能性があり、看過し得ないこと。」それから、麻疹、おたふく風邪とともに流行がおさまりつつあることから、正確な実態把握ができるまでの間、MMRワクチン接種は慎重に行う必要があるというような御意見をいただいておるところでございます。
 この御意見をいただきまして、私ども早急に各県にこの内容についての御通知を申し上げまして、慎重な配慮を求めているところでございます。
上田(哲)委員 権威である公衆衛生審議会伝染病予防部会予防接種委員会が「看過し得ない」と言っているのですよ。看過し得ない、見逃すわけにいかない事態であると指摘しているのですから、私は行政当局がもう少しこれは大変なことだという認識を明確に示されるべきだと申し上げているわけです。どうも表現が甘いのじゃないか。これは普通死にませんよ。しかし平均二週間余りの入院が必要なのですよ。子供ですから、子供にとって髄液を取るということは普通の認識にはないのですよ。普通の病気と考えてもらっては困るのです。これがこういう形になってきたということは、審議会でもはっきり「看過し得ない」と言っているのですよ。行政当局は看過し得ないと本当に思っているのですか。
長谷川政府委員
 ただいま御説明申し上げましたようなことで予防接種委員会からの御意見をいただいているわけでございますので、私どもといたしましては、予防接種委員会のお言葉にもございますように、都道府県に対しまして、先生お話ございましたように、子供さんから髄液を取ってウイルスを分離するのは非常に難しい話でございますけれども、そういう検体を取っていただきまして、国立予防衛生研究所の方へ検体を送っていただいて正確な検査をする、あるいは副反応発生事例の詳細調査というものを実施するなどいたしまして、MMRワクチン接種後の無菌性髄膜炎の正確な発生頻度の把握に努めてまいりたいということで、各都道府県の方にいろいろ調査をお願いいたしているわけでございます。
 そういうことで、このような調査の結果が判明するまでの間は、MMRワクチン接種につきましては慎重に行うようにということで指導いたしているところでございます。
上田(哲)委員 そんなことを聞いているのじゃないのですよ。これは占部株が悪いということははっきりわかっているのですよ。百二十五例の中にはエンテロウイルスだろうとかあるいは無菌性髄膜炎でないかもしれないとか、いろいろなことをおっしゃるのはそのとおりです。日本脳炎がはやっているときになら、日本脳炎でなくても日本脳炎だと誤診される数字も入ってくるというのは、行政当局としては当然な数値としていつもわかっていることですよ。百二十五例がイコールだとは言っていません。そして、これはみんな退院することができるのだということもある。そんなことはわかっているのですよ。例えば今度のこの百二十五例の中にはエコーウイルスもはっきりあるわけですからね。そういうエンテロウイルスの問題を考えれば、別に百二十五が全部イコールだとは言ってないが、こういうような場合に疑似症状も含めて、疑似診断も含めてわずかに四月から今日までの間に五十万の中で百二十五例も報告されたということになったら、ゆゆしき事態だと行政当局は思っているだろうなと私は聞いているんで、これから調べるだの調べないだのという話を聞いているのじゃない。調べるのは当たり前のことなんです。そこの認識をしっかりしてくれということを聞いているのです。簡単に答えてください。
長谷川政府委員 非常に重要な問題であると認識いたしております。
上田(哲)委員 そうなんですよ、大臣。そこから始まらなければしょうがないのです。そこを出発点にしていただかないと私は血の通った体制にならないと思うから、そこは非常に重要な問題だということを大臣から一言もう一遍言ってください。
戸井田国務大臣 医学の進歩というものも、ある意味では、昔はミルクで育てて、はしかでばっさりというような時代には、小さな生命が医学の進歩のまだ不十分な段階においてはたくさん死んでいったのです。しかし、そういったものを乗り越えて一方においては医学というものはだんだん進歩もしてきている。しかし、進歩をしても、一人の生命といえどもその生命に影響が起こる、あるいはその後の子供の健康に非常に大きな障害が残るとか、そういうことは数ではなくして、医学あるいは社会の進歩、人の幸せ、そういったものを追求していく世界においてはいつの時代でも重要な問題だと私は思います。
上田(哲)委員 余計なことですが、戸井田さんは中国残留孤児のために非常に献身的に努力されているのを私はよく知っていますから、小さな命を、特に子供の問題を大事にするということは一生懸命やってもらいたい。これは認識論として言葉が甘いから、私はそこをもう一遍しっかりしたところから出発してもらいたかった。
 さて、ヒューマニズム論ではなくて疫学論としてはっきり聞きたいのだが、五十万人やって百二十五人だ。エンテロもあるだろう、それはいい。それはいいが、ワクチネーションの問題として、野生ウイルスの場合だったら三、四百人に一人云々ということが公衆衛生審議会から出ていますね。野生ウイルスならそうだろう。ワクチネーションすればずっと上がるだろう。これは当たり前のことなんです。野生感染でほっておくわけにいかないから、ワクチネーションをするとすれば、この場合どこまでならばいいんだと考えているのですか。
長谷川政府委員 先生のお尋ねは非常に難しい問題だというぐあいに思います。過去にいろいろなワクチンがございまして、ワクチン接種を行いますとそれだけの効能・効果は十分にあるわけでございますが、一方においては副反応という事例も起きてまいっております。そういう面で、副反応の発生頻度の問題、さらには副反応の程度の問題といいますものをいろいろ勘案して、予防接種行政を進めていかなければならない問題だと思います。
 そういう面で、個々のワクチンごとに判断が異なるかと思いますけれども、私ども、専門家集団でございます審議会の中の予防接種委員会に十分意見を聞きながら、そういう予防接種行政を進めてまいっておるということで御理解いただきたいと思います。
上田(哲)委員 理解できませんね。専門家としてはもう少し具体的に答えてもらいたい。
 今回はPCR法というのがこの夏に予防衛生研究所でできたわけですね。これまでわからなかった野生かワクチネーションかということがわかるようになった。これは七月なんです。そういうことになって、公衆衛生審議会が言っていることは、このPCR法によって鑑別法の精度を高めてみたところ、現在は十万人から二十万人に一人の割合で無菌性髄膜炎が発生している可能性があると言っているわけですよ。そうですね。十万人、二十万人に一人という数字で厚生省はいいと思っているのですか、そうでないのですか。
長谷川政府委員
 お答えいたします。
 PCR法につきましては、精度が十分とした場合に、先生お話しございましたように、十数万人に一人の割合で無菌性髄膜炎が発生している可能性があるというぐあいに予防接種委員会ではお話しでございます。おたふく風邪に自然感染した場合におきましては、ワクチンに比べましてはるかに高い率で無菌性髄膜炎が発生する。その一部は重篤な脳炎も併発することもあり得る。一方におきましては、これまでの調査の結果、ワクチン接種後の無菌性髄膜炎においては後遺症もなく予後は良好である、今後とも麻疹接種時にはMMRワクチンの接種を推進することが望ましいというぐあいに、九月の時点でございますが、予防接種委員会からそういうような御意見をいただいておりますので、それに基づきまして私ども予防接種行政を進め、今般さらに高い頻度で副反応が出てまいったということを踏まえまして、いろいろ調査をやっている段階にございます。
上田(哲)委員 まるっきり答弁にならないよ。あなた方が金科玉条にしている公衆衛生審議会の伝染病予防部会の予防接種委員会が、PCR法によってと言っているのですよ。PCR法というのは、あなたわかっているのかわかってないのか知らないが、つまり野生のウイルスにかかったのかワクチンによってかかったのかを判別できる方法ができたのです。だから、入っているかどうかなんて話をしていたのでは議論にならないじゃないですか。それによって分けてみたら十万人ないし二十万人に一人の割合で無菌性髄膜炎が出ておると言っておるわけですよ。そうでしょう。まじっているかまじってないかということはないのですよ、このPCR法によって。だから、はっきり鑑別をした結果、まさに野生ではなくてワクチネーションによって発生したのが十万人、二十万人に一人ということは、行政当局として多いと思っているのか多いと思ってないのかということを聞いているのです。
長谷川政府委員 十数万人に一人という頻度で無菌性髄膜炎が起こるということではございますけれども、私ども、ワクチネーションによりますメリットといいますか、子供が健康に育つための利益もあるわけでございますので、十数万人に一人というような割合でございますれば接種を続けてまいりたいというぐあいに考えておるところでございます。
上田(哲)委員 やっとそこへ来た。普通にほっておいたら、予防接種をしなかったら三、四百人に一人はかかるかもしれない。だから、ワクチネーションをすれば十万人ないし二十万人に一人は出るかもしれないが、今度これがわかったから、この程度ならいいと思っているなら、議論は別にして、それはあなた方の基準ですよ。それはそれとして議論を進めましょう。
 ところが、今やってみたら、どうもそれどころではなくて、おおむね数千人から三万人に一人、幅は随分広いけれども、数千人から三万人の幅で出ている可能性があると指摘されているわけでしょう。そうですね。これだったら困るのですか困らないのですか。
長谷川政府委員 ただいまの事例、百二十五名がすべてワクチン由来の無菌性髄膜炎であるということになれば非常に大きな問題であるというぐあいに思っております。そういう面で、ワクチン接種とこの無菌性髄膜炎と思われる症例との間の関係につきまして、現在いろいろ調査を進めておる段階でございます。
上田(哲)委員 まるっきり答えられないですね。
 もう一遍戻りますよ。野生ウイルスの場合は、PCR法によってこれははっきり入っていないのですから、いいですね。議論はそこに行ってもらっては困りますよ。ワクチネーションによって生ずる無菌性髄膜炎が十万人ないし二十万人に一人というならそれはワクチネーションをやる意味がある、あなた方ははっきりそう言われている。ところが今出てきたのは、公衆衛生審議会がはっきり調べた数値の推測としては、まさに数千人から三万人、ちょっと幅は広いけれども、数千人から三万人に一人出ている可能性がある。数千人から三万人ということになってきたら、このワクチネーションは実施することが適切であるのかないのかということを聞いているのです。
長谷川政府委員 現在わかっている範囲におきましては、五十万人に接種して無菌性髄膜炎と疑われる症例を含めまして副反応が百二十五例、それが大体数千人から三万人に一人の割合という形で発生しているのがわかっております。でございますから、その副反応の事例が、無菌性髄膜炎といいますか、ワクチン接種あるいは無菌性髄膜炎という形で診断が確定するといいますか、そこら辺がはっきりわかるようにいろいろな調査をやっておるということでございまして、現在のところそういう面での調査をいろいろ進めております。
 いずれにしましても、先生御指摘のように、数千人から三万人に一人の発生頻度ということになりますれば、これは非常に大きな問題でございますし、予防接種委員会の意見も十分聞きながら私ども今後対処していかなければならないというぐあいに思っております。
上田(哲)委員
 これは私が調べたのじゃないんだから、はっきりしてもらわなければいけない。こんなに回りくどい答弁しか出てこないというのは困るから、厚生大臣にも委員長にもぜひひとつもう一遍整理をしてお聞き取りをいただきたいのだが、十万人、二十万人に一人ならばよかろうと
明らかに厚生省は言っている。それはそれで置いておきましょう。ところが、まさに厚生省が指針を得ている公衆衛生審議会の委員会の結論として、はっきり、このPCR法という野生であるかワクチンによって出たのかということを鑑別できる方法によって調べた結果が、今回はこのMMRというワクチンをしたことによっておおむね数千人から三万人に一人の割合で無菌性髄膜炎が発生している可能性があると公式に報告が出ているのです。この中にエンテロが入っているか疑似のものがあるかもしれないなどという話はしていない。それがこれだけいる可能性がある。はっきり出ている。しかもはっきりした報告書の中で、だから「看過し得ない」と書いているのですよ。いいですか。公衆衛生審議会の接種委員会がはっきり、これだけの数字がある、看過できないと言っているのに、行政当局は看過できると思っているのですか。ほかの話をしないで、その認識をしっかり示してください。
長谷川政府委員
 十月の二十五日に予防接種委員会から御意見をいただいておるわけでございますが、この中におきまして、少し長文になりますけれども読み上げますと、「これまでのところ、都道府県等から報告された無菌性髄膜炎患者と思われる者の中で、予後不良なものはないが、今回の調査によると、MMRワクチン接種後、概ね数千人〜三万人に一人の割合で無菌性髄膜炎の発生している可能性があり、看過し得ないこと。」ということでございまして、これは都道府県からの報告のあった事例をそのまま見て数千人から三万人に一人ということでございまして、この都道府県の報告のあった事例すべてについてPCRをやって云々ということではないわけでございます。そういう面で、先生お話しのございました、百二十五例の報告例があったわけでございますが、これを全部PCR法によってきちんとワクチン由来の無菌性髄膜炎であるということがはっきりしますれば、これは非常に大きな問題でございますけれども、そういう面で、この百二十五例の事例自体が全部PCR法によってワクチン由来かあるいは野生由来かについての鑑別は現在やっているところでございまして、そういう面で、現在のところ、いわゆる臨床症状からの発生頻度ということで御理解いただきたいと思います。
上田(哲)委員 半分認めますよ。しかしこれは困ったな、こういう認識では。だから私は基本的な認識を求めたのです。これは大事件ですよ。重大な認識を持ってもらわなければ困るわけですよ。
 五十万人と言われたが、まだたくさん母親がいるのですよ。子供を連れていく母親がどうしていいかわからないのがいっぱい日本じゅうにいるのですよ。あなたの方は慎重にやられると言っているだけでよくわからない。だから審議会が言っているのだって、数千人から三万人、こんなのは学校の数学の時間で言ったらめちゃくちゃな言い方ですよ。数千人から三万人なんてこんなめちゃくちゃな分母のとり方でも、こっちの端とこっちの端をとればこの中には入ってくるじゃないですか、PCRだって何だって。これを指摘しているのですよ。十万人、二十万人に一人ならば、議論はあってもまあそれはいいことにしましょう。しかし、数千人から三万人に一人、まさにワクチンをやったことによって無菌性髄膜炎になっている子供が出ていると、審議会がはっきり「可能性があり、」と言っているじゃないですか。だから看過できないと言っていることを、まだ十分にやっていないし、臨床の結果であってPCRが全部行われているわけではないからさほどではないということをあなたは言うのですか。そんな言葉じりで問題になっていたら、さっき大臣が言った一人の命という問題がなくなってしまうじゃないですか。そんなことを言ってもらっては困るのですよ。私はこんな議論をこんな段階でやりたくない。大事な問題だから、さっきも大臣が言われたように、一人の子供も不安にさせないために万全の措置を講ずるというのが当たり前のことじゃないですか。一人出たって考えなければならないところへ、審議会がはっきり看過できない、慎重にせよ、こういうふうに言っているときに、まだまだ完全にPCRが済んでいるわけじゃないから何とも言えないみたいなことを言っていて、世の中の母親の不安というものに対してあなた方は責任を持っているという気持ちになれますか。私はこういう言い方をしていてはいけないと思いますよ。答弁ありますか。わかっていればこれで進みますよ。どうですか。
長谷川政府委員
 先生御指摘のように、世のお母さん方は非常に心配しておるということを十分認識いたしております。そういう面で、このMMRワクチンにつきましては、接種に当たりましては十分地域の流行状況等を勘案しながら慎重に対処してほしいということで指導通知を出しておるところでございます。都道府県におきましては、その流行状況等見ながら、このMMRの三種混合のワクチンを使わずに単味のワクチンを使うとかいうような自治体もございますし、あるいはその流行状況も勘案して、そういう面で引き続き十分注意しながら接種をするというような体制をとっているところもいろいろございます。
 私どもとしましては、先生お話しのように、いつまでも都道府県の自主判断に任せるということでなしに、早くどちらかにすべきであるという考え方のもとに、いろいろな調査等やってできるだけ早く答えを出してまいりたいと思っております。
上田(哲)委員 五十万人接種したのですが、この後どれぐらいの数の人が接種の予定になっているんですか。
長谷川政府委員
 昨年の成績を申し上げますと、昨年ははしかの単独接種行っておったわけでございますが、この件数が大体百十万件でございます。そういう面で、この三種混合ワクチンMMRにつきましても、大体百万から百十万人の方々がお打ちになるだろうと思っております。
上田(哲)委員
 大変な数でしょう。大変な数が、今心配しながらどうしようかと思って考えているんですよ。これに対してどうしてやろうかという指針が十分でないということは、甚だおかしいでしょう。MMRはあなた方が推進したんですよ。そうでしょう。あなた方が推進したんですよ。あなた方が推進したことが、向こうに不安があってどうしていいかわからぬというようなことを、ほっといていいわけないじゃないですか。
 今の話で非常に困るのは、十分に慎重にやるように指導しておる。これはとんでもない話なんだ。大臣、ここに私は最大の問題があると思うので話を飛ばしていくのですけれども、そもそも四月から始まった。そして厚生省としてはぜひこれをおやりなさいということ、推進せよということで進めていたのですよ。ところがこういう状況があっちこっちで出てきた。例えば前橋のように、これは熱心だったからそういうことがわかってきたということもあるわけですから、それはそれで前橋を非難する気は何もないのですね。そういうことがあっちこっちにいっぱい出てきた。これは大変だということになってきた。たまたまさっき言った鑑別できるPCR法が出てきたのが、国立予研で七月ですね。これで鑑別できるようになった。ところがそのときにこういう時間のずれがある。厚生省が出したのは九月十九日ですね。九月十九日にはどうも臭いなということが少しにおっていたし、九月八日付で公衆衛生審議会から、これはちょっと臭いぞということがにおってきていた。しかし、公衆衛生審議会にもこれは問題があると思うのだが、ここでは公衆衛生審議会はまだ「MMRワクチン接種を推進されたい。」と書いているんだ。したがって、これを受けて九月十九日の厚生省から出た各都道府県あての通達によると、これもまだ推進なんだ。円滑に進めると書いてあるんです。そしてその次に出たのが十月二十五日なんです。この十月二十五日の厚生省の通達のもとになったのは、その前の公衆衛生審議会の意見があるわけですね。ここで「慎重」という言葉が出てきたんです。つまり、四月からこういう事例が起きていたけれども、七月にPCRが出てきたけ
れども、厚生省は推進、推進で、九月にもまだ推進で出していた。そして十月二十五日になって「慎重」という言葉が出てきたんです。実際に、この問題についてはお母さん方が判断してやりなさい、都道府県で適当にやりなさいということになっているんですよ。「慎重」という言葉ぐらいいいかげんなことはないのです。行政用語としての「慎重」ということは、これはどういう意味なんですか。
長谷川政府委員
 MMRワクチンの安全性に関します正確な実態の把握のための調査が終了するまでの間、都道府県におきましては、その都道府県におきます流行状況等も勘案しつつ、当面、MMRワクチンにつきましては、その接種を見合わせることも含めましていろいろ検討して打っていただきたいという意味でございます。
上田(哲)委員
 つまり、役所用語で「慎重」というのは、見合わせてくれということなんですよ。これが最大の問題なんですよ。役所用語の「慎重」というのは、日常用語の「慎重」とは違うんです。そうっとやりなさいというんじゃないのです。見合わせてくれ、やめてくれということなんですよ。やめてくれということを言えばこれはわかる。ところが慎重にやりなさいなんという話ではこれはわからないでしょう。まず、都道府県はわかるか。都道府県は半分ぐらいわかる。都道府県は半分ぐらいわかるので、どうしようか、こうしようか。そこで例えば国分寺や静岡のようにやめたというところもある。お母さんはわからないですよ。やった方がいいか、やらない方がいいかわからないですよ。髄膜炎になったら困るじゃないか。当たり前でしょう。私はこういうやり方が問題だと言うんですよ。
 なぜこんな言い方になっているかという根底は幾つかあるのです。
 一つは、都道府県で予算を組んでそれで接種することになっているから、接種することになっている膨大な県民なり市民なりというものに対して急にやめたとは言えないですよ。だから、しようがないからそのまま行こうということになる。これは不安ですよ。
 もう一つは、これは悪意ではないけれども、MMRはやがておたふく風邪の株をかえてちゃんとしたものになったときに、一遍やめたと言っちゃうとまた復活することが非常に支障があるだろう。これは、行政上の指導としてそういうおもんぱかりをすることは悪意とは私は思いませんよ。しかし、それにしてもこれは、そんな先のことを考えることじゃなくて、目の前の問題として、自分の子供に注射をするのかしないのかという判断としては最終的には母親の判断ですよ。これは非常に困るわけです。慎重にということが取りやめてくれということであるというのなら、なぜそういうことをもっとはっきり言わないのですか。その理由は何ですか。
長谷川政府委員
 先生にお言葉をお返しをするようで申しわけございませんが、私ども、慎重な実施といいますものにつきましては、取りやめることも含めまして慎重に実施するということで、取りやめなさいという意味では全くございません。やめることを検討するのもいいでしょうし、引き続き実施するのも結構ですよ。ただ、それはあくまで都道府県がその地域におきます流行状況等を勘案して、地元の予防接種の協議会なりそういうところと十分意見を交わして、どういう形で実施するか慎重に考えてやっていただきたい。それも、あくまで私どもいろいろやっております現在の調査が終了するまでの間、慎重にやっていただきたい。
 私ども、今後MMRワクチンにつきましては、引き続き実施するかどうかについては、現在いろんな調査をやっておりますので、その結果が出るまでの間は、そういう面で自治体がそれぞれの関係のところとよく相談をし、慎重にやっていただきたいという意味で申し上げているところでございます。
上田(哲)委員 取りやめることも含めてといったら、取りやめることもあるわけですね。言葉のあやで議論してはいけないと私は思いますよ。「慎重」という言葉の中に、何%なのか知りませんけれども、取りやめを含めてとおっしゃるわけですね。取りやめた方がいいということも含むわけですね、何遍もおっしゃっているんだが。含むということは、取りやめることがいいという判断もちゃんとあるわけでしょう。取りやめた方がいいか取りやめない方がいいかという、そういう指示というのは適切だと思いますか。
長谷川政府委員 ワクチン接種と無菌性髄膜炎との関係が、現在得られているデータだけではなかなか判断が困難であるというような予防接種委員会の御意見もあるわけでございますので、そういう面で、その時点で取りやめなさいあるいは続けなさいということを予防接種委員会の意見を聞きながら私どもいろいろ考えたわけでございますが、予防接種委員会の方といたしましても、地域の流行状況等勘案しつつ慎重にやるというような御意見をいただいておりますので、その趣旨に沿って、私ども、都道府県の方に指導してまいっております。都道府県は都道府県におきまして、その地域におきます風疹なりあるいはおたふく風邪の流行状況というもの、それから今までいろいろやってきておりました経験等踏まえまして、専門の先生方の御意見を聞きながら、どのように対処するかを御判断いただくということでございまして、そういう面で、慎重にという意味は、都道府県にある程度の御判断をお任せしたと言われますればそのようになるわけでございますけれども、私ども、物を決めるに当たりましては、やはりきちっとしたデータなり何らかのものをそろえた上で、適宜対処してまいりたいというように考えておるところでございますので、そういう面で、このような表現で都道府県を指導しておるということでございます。
上田(哲)委員 じゃ、具体的に聞きましょう。取りやめるところは、どこで取りやめた方がいいんですか。どこでは取りやめなくてもいいんですか。あなたの方で考えている、分布図でも何でも説明してください。具体例、一つでも二つでも結構です。
長谷川政府委員
 十月の調査の時点におきましては、この副反応の出方につきましていろいろの県について事例を調べました。その中におきまして、MMRの副反応の多い県あるいは発生しないというぐあいに届けられている県と、いろいろございます。そういう面で、それぞれの県におきます状況といいますものをいろいろ勘案していただいて、県の方で指導していただきたいというぐあいにお願いいたしておるところでございます。
上田(哲)委員 ですから、全国を統括する厚生省の判断として、この県はやめるべきだ、この県はやめなくていい、あったら例示してみてくださいというんですよ。
長谷川政府委員
 予防接種委員会の御意見の中で「地域の流行状況を勘案しつつ」ということがございますので、まずその地域におきます流行状況、はしかとそれからおたふく風邪の流行状況というのをにらんで、もしそういうものの流行状況がもう終わっているということであるならば単独接種という形になるかと思いますし、まだ流行が続いておるということであれば引き続き十分慎重に配慮しながらMMRワクチンの接種を続けるというような自治体もあろうかと思います。そういう面で、地域の流行状況といいますのは……
上田(哲)委員 そんなことはいい。つまり、具体的な例示はできないんでしょう。把握してないんですね。同じことを言われてもしようがないから。いや、なければいいんですよ。そこを責めようとは思わないから、例示できないんだったら、できないでいいんです。できないんですね。
 いや、できなきゃいいんですよ。できるんですか。できるんなら立ってください。そうでなければもう時間を節約しましょう。できるんですね。できないのなら怒りますよ。
長谷川政府委員 流行状況は、サーベイランス事業をやっておりますので、それぞれの自治体でどのような状況にあるかというのはわかります。それを踏まえて自治体が御判断するということになると思います。
上田(哲)委員
 例示できないなら立たなくていいと言ったじゃないですか。つまりわかってないのですよ。それはふまじめだ。私はここで防衛論争のような議論をしようと思っているわけじゃないんだ。あなたの非を鳴らそうと思っているわけじゃない。具体的に百万という子供を抱えた母親がわからないんだから、もっと親切な、丁寧な方法を考えなければいけないじゃないか。やらない方がいいということも含むんだなんということを「慎重」なんという言葉で流して、地域で勝手に考えるといったって、じゃ都道府県の衛生部がどういう権威と相談しますか。
 それは七月、八月という一番危険な時期というのは終わりましたよ。おたふく風邪の流行も峠を越していますよ。そんなことは私たちも全部知っていますよ。だからそういう意味では地域別のいろいろな状況はあるだろう。あるだろうが、それを全部「慎重」なんという言葉で全部おっ飛ばして、それで適当にやりなさいでは、母親の判断はできないですよ。こういう不安を、死にはしないだろう、重症にはならないだろう、二週間もすれば退院できるだろうからということで甘く見ているということでは、私は行政の任務は果たせないだろうということを言っているのですね。そうでしょう。局長もうなずいておられるから。私はここでそんなこと追及するために言っているんじゃない。やはりもっと温かみのあるというか、手の差し伸べられる立場で考えてもらわないといけないですよ。
 ちょっとアングルを変えますけれども、今、占部株が非常に悪いわけです。いろいろな外国の株もあるだろうが、一体いつごろになれば、まあ単味もあるだろうが、MMRという混合ワクチンという形で麻疹とおたふく風邪と風疹を一緒にするような形の復活に値するような新しい株、適切な株というものの採用は見通せるんですか。
北郷政府委員 占部株にかわる株の開発の問題でございますが、技術的な問題がございまして、私がいつと言うことは非常に困難でございますが、メーカーとも相談して、一生懸命早く、できるだけ安全なもの、それから外国の例も調べまして開発に努力いたしたいと考えております。
上田(哲)委員 そうすると、今のところは見通しは立たないのですか。
北郷政府委員 今申し上げましたとおり、技術の今後の見通しでございますので、確たることを申し上げることは残念ながら非常に困難でございます。
上田(哲)委員 再度伺いますが、それは見通しが将来にわたって立ちにくいということか、近時点では立たないということか、どういうことでしょう。
北郷政府委員 後段におっしゃいました近時点では立たない、こういう意味でございます。
上田(哲)委員 わかりました。
 ではもう一遍こっちを聞きますけれども、そうするとそれが近時点で立たなければ、おたふく風邪を外して単味でやるというようなこともあるのだろうと思いますが、そういうことですか。
長谷川政府委員 それぞれ単独のワクチンを使うということも考えております。
上田(哲)委員
 ではもう一つ聞きますけれども、PCRによって、そして最終的に公衆衛生審議会の結論にもゆだねるという手続を含めた上でこの検査、そして今おっしゃった、もう一遍MMR混合にするかあるいは単味でいくかというふうな結論が出るのはいつですか。
長谷川政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、現在それぞれの自治体で分離されましたウイルスについての、野生株かワクチン株かについての調査、あるいはその副反応の出方、症状等についての詳細な調査、それから、それ以降に接種されております方々の中における反応の出方といいますのをいろいろ調査をやっております。そういう面で、私ども十一月、十二月には都道府県からの報告をいただきまして、また予防接種委員会にお諮りいたしたいというぐあいに考えております。
上田(哲)委員
 これは大臣含めて結論に入りますが、このMMR、問題があるなら問題でありますけれども、そもそも私は、このワクチネーションそのものには賛成ですから、そういう意味では慎重な立場も含めながら、安全な適切なワクチネーションを進めてもらいたいという立場にもちろん立ちますよ。そこで、そういうことでいえば、その路線の中で、今日のこのようなあいまいな指示というのは間違いだと思うのですね。だから、例えて言うとおかしいけれども、これはほっておいたら野生ウイルスで三、四百人に一人かかるようなことであるよりも、適切な株によってワクチネーションすることが正しいということは一つの方向なのだから、ただしこのワクチネーションについては不安がある、この橋は渡った方がいいが、この橋を渡るについては、落ちて死ぬことはないけれどもけがをすることがある、もしもけがをする場合には今の制度によって医療補償もするのだが、しかしここはひとつ十分にそのことをわきまえてやっていただきたい。事情はこうなのだ、あるいはこれだけの期間があれば、もうしばらくお待ちいただければこういう形になるから、おたふく風邪は外して麻疹と風疹だけの単味のこともやるのだから、それならそれでできますよというような、わかりやすいノーティスをつけるべきだ。橋の前に立て札を立てることが当然な必要性があると私は思うのですよ。このままにして百万のお母さん方を不安の中に閉じ込めておくということはこれはやはりやるべきではない。そう遠くない時期にこの結論が出るのだろうと私は期待をしているから、直ちに――九月に出して十月に出してくるくる回っていて全然下がわからぬ。地方の自治体やなんかの衛生部かなんかに、地元のお医者さんの言うことを聞いて考えなさいなんということでは、これは責任を果たしていると言えないと思う。だから、その種の幾つかの要項を、このMMRにはこれだけの今問題点があります、そしてやがてこの見通しでこうなります、現在ならばこうなります、この種のことを明確にした、はっきりした指導通達を各自治体に出すべきだ、私はそう思うのですが、いかがですか。
戸井田国務大臣 今、上田先生の御指摘と政府委員とのやりとりを聞いておりまして、まさに高度の知識、技術、そういった判断が求められている問題でありますから、我々素人がどうこうということを言うことはいけないと思いますけれども、しかし、百万人からのお母さんたちが的確な指示がないために迷うという環境だけは、できるだけ早くそういったものを解消すべきだろうと思います。そのためには、やはり何といっても、今申したように、我々が素人の判断でやるべきものではなくて、きちっとした、公衆衛生審議会の中でも既に幾つかの検討と方向性が出ているようでもありますから、そういったところで、この十二月までの間にそういった各県からの報告等を聞きまして、そしてそれに基づいたさらに適切な指示ができるような方向を検討をしていきたい、かように思います。
上田(哲)委員 大変前向きになりましたので、最後にもう一遍だけ。
 速やかに、できるだけ早く、通達でなければ通知でいい、そういうものをすぐ出してもらいたいということについて御確認をいただきたい。
戸井田国務大臣 そのように考えております。
上田(哲)委員 わかりました。これは大変結構なことです。一日も早く通達ないし通知を出していただきたい。あいまいな、慎重ということではない具体的な指針を与えていただくことを刮目いたします。
 労働大臣、お待ちいただいておりますが、杉乃井ホテル、西日本で最大のホテル、