119

決算委員会

01

1990/10/31

大渕絹子君 法令については非常に難しい手続あると思いますけれども、さっきの省令とか規則、行政をする規則の細かい書類の部分なんかは厚生省の方の管轄でどういうふうにも改正ができるというふうに思いますので、ぜひ前向きに取り組んでいただいて、現にこうして苦しんでいる親子がおるということも頭に置いて、よろしくお願い申し上げます。
   〔委員長退席、理事千葉景子君着席〕
 それでは次に、私は去年からこの課題をずっと取り上げてきているんですけれども、予防接種という問題についてひとつ触れていきたいと思っています。
 実は、昨年の四月からなんですけれども、はしかと風疹とおたふく風邪、これを一緒に予防接種をしようという、いわゆるMMRと言われるワクチンが厚生省によって導入許可がされたんですけれども、その導入をされた経過についてちょっとお聞かせいただけますでしょうか。
政府委員(寺松尚君)
 事実関係でございますので、私の方から御説明を申し上げたいと存じます。
 御承知のように、自然感染によりまして重篤な合併症とかあるいは後遺症というふうなものがございますおたふく風邪、風疹につきましては、感染症対策上これらの社会での流行を抑える必要があるということ、それからまた欧米では一九七〇年代から三種混合のワクチンをやっておりまして大変効果を上げておる、こういうふうなことがございます。
 そこで、厚生省といたしましては、昭和六十三年八月でございますけれども、公衆衛生審議会伝染病予防部会から、早急にMMRワクチンを導入し、その接種を積極的に進めるようにというふうな御答申をいただいたわけでございます。これに基づきまして、その年の十二月でございますが、予防接種実施規則の一部を改正いたしまして、平成元年四月より先生がおっしゃいましたように接種を開始したわけでございます。
大渕絹子君 アメリカ等では大変いい成績を上げているということですけれども、日本国内でその導入までの安全性の確認は、どういう形でどういう手順で行われたか。
政府委員(川崎幸雄君)
 ただいまのMMRワクチンを承認いたしました際に、申請者からは安定性の試験とかあるいは毒性試験、こういった基礎試験データ、さらには臨床試験データを提出していただきまして、これらのデータをもとにいたしまして医学、薬学の専門家で構成されております中央薬事審議会において品質とか有効性とか、これと同時に安全性についても十分御審議をいただいたわけでございます。
 そして、こういった承認申請に出されました臨床試験成績におきます副反応を見ますと、発熱、発疹を主とするものでございまして、いずれも軽度なものでございました。そして、その種類とか程度もいわゆる三種混合でない単味のワクチンの、それともほぼ同様でございました。また、問題となっておりますワクチンに由来すると判断される無菌性髄膜炎の発生もなかったところでございます。
大渕絹子君 それは大体どのくらいの人に行われましたか、その試験というもの。
政府委員(川崎幸雄君) 臨床試験でございますね。
大渕絹子君 はい。
政府委員(川崎幸雄君) 臨床試験は約千人を対象に行われております。

大渕絹子君 このMMRワクチンは、それぞれ開発をした会社が、違うところの製造会社のものを混合されているという報告を受けているんですけれども、はしかについては北里研究所ですか、それからおたふく風邪については阪大の微生物病研究会、それから風疹については武田薬品工業ということで、今私が申し上げた会社ではそれぞれ、それぞれの株、単株については研究をしているわけですけれども、これを三つの会社に振り分けたというのは何か理由があるんでしょうか。
政府委員(寺松尚君)
 今御質問は、MMRワクチンの使用に当たりましてなぜ統一株のみが使用されているのかということに関連をして御質問があったのかと思います。
 MMRワクチンにつきましては、今先生御指摘のように、麻疹はAIKC株、それからおたふく風邪は占部AM9という株、風疹はTO336株が混合されております。いわゆるこれを統一株と称しておるわけでございます。
 我が国におきましては、現在、これも委員御承知のとおりでございますが、麻疹につきましては四種類、それからおたふく風邪あるいは風疹につきましてはそれぞれ五種類のワクチンが製造承認を受けているわけでございます。これらのうち、最も実績が多くて効果が高い、かつ副反応も弱い、こういうものを選んで混合してその供給を図っておると承知しております。
大渕絹子君
 この統一されたMMRワクチンを販売をしている会社はどこでしょう。
政府委員(川崎幸雄君) ただいまおっしゃった三社それぞれが販売をいたしております。
大渕絹子君 それでは、それぞれの会社で、自分のところでないウイルス株はほかのところから買い入れてつくり上げるということになりますでしょうか。
政府委員(川崎幸雄君) おっしゃるとおり、それぞれ自社株を交換して製造しているということでございます。
大渕絹子君 厚生省が導入に踏み切ってから発注した数量を教えてください。
政府委員(川崎幸雄君) どれぐらい買い入れたかという数字はちょっと持ち合わせがございませんけれども、平成元年三月末から平成二年五月末までに、出荷数で申し上げますと百十九万人分でございます。
大渕絹子君 購入原価を教えてください。買い入れ原価。
政府委員(川崎幸雄君) ちょっと私どもでは把握いたしておりません。
大渕絹子君 接種時に市町村あてに出しております基礎価格の中に一万二千六百五十二円というのがありますけれども、これが購入価格と見てよろしいでしょうか。
政府委員(寺松尚君) 今薬務局長から申し上げましたように、個々のケースどのくらいの価格で買っているかは私ども承知しておりませんが、私どもが、この予防接種に係ります費用といたしまして、地方交付税で見ております積算は、今委員が申されたような価格で積算をされていると承知しております。
大渕絹子君
 このMMRワクチンの有効期限を教えてください。
政府委員(川崎幸雄君) 一年でございます。
大渕絹子君 有効期限一年の医薬品を百十九万人分購入をしているということですけれども、一昨年四月から導入をされて十月、厚生省から中止命令が出るまで――中止と言ったら語弊がありますかしら。でも、私たち母親側は、あれは中止命令というふうに受け取りましたですけれども、それまでに接種をされた人数を。
政府委員(寺松尚君) 私ども、四月から十月いっぱいぐらいまでの数字につきましては承知しておりまして、六十三万人が接種されたという数字になってございます。
大渕絹子君 六十三万人接種をされて、その後厚生省の通達が出てから今日に至るまで、接種者の数はどのように推移をしていますでしょうか。
政府委員(寺松尚君) その後の数字、特に平成二年になりましてからの数字でございますけれども、これにつきましては、御承知のように一年間の結果で数字が上がってくるものでございますので、それは平成三年になりますと明確になってまいります。
 ただ、私どもは、前回十月の末いっぱいまでの事故報告というのをいただいたことがございます。これは、その後の数字も依然としてとっておりまして、その数字は私ども今整理中でございます。したがいまして、被接種者の数につきましては、現在のところまだ持っておりません。
大渕絹子君
 それはちょっとおかしいんじゃないですか。厚生省から昨年、ああいう副反応が出ることによって大変な社会的な問題になって、何度も何度も通達が出されているこのMMRワクチンについて、その後の追求、調査というものがされていないというのはおかしいと思いますけれども、どのぐらい行われているかというのはきちっと把握をしておると思いますけれども、いかがですか。数は出ませんか。
政府委員(寺松尚君)
 先ほど御答弁申し上げましたとおりでございますが、私ども、先ほど申し上げました、MMRを使用いたしまして事故と考えられるようなケースにつきましては報告をいただいております。
 この動きがもしもどんどんふえておるとかというような数字でございますれば、至急に被接種者数を把握するべく調査をいたしたいと思っておるのでございますが、非常に減ってきておりまして、先ほども申し上げましたのですが、その事故の内容を今チェックをいたしておりまして、その結果もしも必要であれば、被接種者数を把握してみたいと考えております。
大渕絹子君
 事故、副反応が多く発生して、そして慎重にという通達が出された時点でこのMMRワクチンについては私は直ちに中止をして、また単株のワクチンに戻すべきだという主張をずっと持っているわけなんですけれども、そうはされない。
 それで、おたふく株の方の改善措置というのはとられていますか。そのMMRについて、全く同じものでまだ接種をされているというふうに聞きましたですけれども、これは間違いありませんか。
政府委員(川崎幸雄君) 現在使われておりますのも、昨年の場合と同様でございます。
大渕絹子君
 ワクチンの改良が進むまで単株に戻したらどうかという主張はこれからもずっとあるわけです。なぜなら、MMRワクチンが先ほど言いましたように一万二千六百五十二円かかるわけですね。ところが単株にしますと、はしかで六千二百五十円、風疹では千八百六十八円なんです。おたふく風邪をまぜることによって倍の価格、単価がかかっているんですね。しかも母親側は、このおたふくの入ったものは嫌だと拒否して、接種をしないという状況が今出てきているわけでしょう。現に昨年の四月に注文をした百万のワクチンについては六十三万しか使われていない。その後の残りのものは、もう有効期限が切れておるが、使えない状況というのが出てきているわけですよ。
 この部分に対しての損失の金額などというものは把握していますか。その数字。――私はちゃんと出すようにというふうにいらした方にお願いしてあるはずですけれども。この一連のMMRワクチンのこの事件によっての損失金額。
理事(千葉景子君) 御答弁ありませんか。
政府委員(寺松尚君) 先ほども申し上げましたように、今その数字を把握しておりませんが、委員がおっしゃいましたように、平成元年におきましては一万二千幾らであれしたわけでございます。平成二年につきましては、先ほども委員が御指摘されました室長通知が出まして、いわゆるこのワクチンをやります場合のメリットとそれからそれに伴います後遺症の問題ということにつきまして、今の段階では、麻疹を接種するときに、保護者と申しますか、そういう方の申し出によって接種をするようにという、慎重に接種をするように、こういうふうな趣旨の通知をいたしました。
 したがいまして、地方交付税等でしております……
理事(千葉景子君) ちょっと、質問の趣旨にきちっとお答えください。
政府委員(寺松尚君)
 はい。地方交付税では麻疹の価格という単価で今回は算定されております。
 それでは私の方で、数字は今のあれでございますけれども、ちょっと御説明を申し上げたいと思います。
 予防接種の実施に必要なワクチンにつきましては、各市町村及び契約医療機関がワクチンメーカーより購入しているものでありまして、これらはいろいろ売買契約と申しますかそのときの売買契約の内容によりまして異なりますが、昨年度MMRワクチンが有効期間中に返品された際には、メーカーが販売価格で買い取ったと私どもは聞いております。
大渕絹子君 質問はそうじゃないでしょう。
理事(千葉景子君) 質問については、その価格を御存じですかという御質問だったようですが。
政府委員(寺松尚君) 私どもは、損失があったとは聞いていないわけでございます。
大渕絹子君 損失なしですか。本当にいいですか、それで。その御答弁でよろしいですか。
政府委員(寺松尚君) 今申し上げているのは、実施責任者である市町村はという趣旨で申し上げたわけでございます。
大渕絹子君 予防接種法によりますと、市町村の負担というのは三分の一でしょう。あと県とそれから国とということになるでしょう。市町村はゼロということで、国はどうですか。
政府委員(寺松尚君) 先ほどから申し上げていますように、国は地方交付税で見ておる、こういうわけでございます。
大渕絹子君 ここのところは私ももう少しまた研究をしてきて、もう一度、この決算はいずれにしろ昨年のことでございますから、期間がまだ随分ありますので、詳しく調べましてまた追及をさせていただきます。これは国の損失がないというような御答弁というのはちょっとうなずけないと思いますよ。こういう事態の中で、ワクチンを引き取らざるを得ない、返品せざるを得ないというようなことが現実的に起こっておって、また国民からもこの接種はもう拒否され続けているような状況の中で、厚生省としても、中止までとは言わないけれども、慎重にということは、厚生省が慎重にということはもういわゆる中止命令と同様に私たち母親は受け取るわけです。そういう状況の中で進められているわけですので、ぜひこのことについてはまたこの次に、私もう一つ予定しております質問があるので追及ができませんけれども、私は予防接種で自分の子供がすごい副反応を受けた者の一人として、このことをずっと追及していきたいと思っていますので、またよろしくお願い申し上げます。
 それでは次に、実は、私この分野は全く新しい分野で、詳しい事情を知らないのにこういう場所で質問するのはどうかとも思いますけれども、一生懸命やっておりますHIVと人権・情報センターの人たちからの請願を受けました中での質問をさせていただきます。