■04.8.5提出 阿部議員質問主意書と04.9.3答弁書(通算第5回質問)

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 平成十六年八月五日提出
質問第四六号

MMRワクチンと国の対応に関する質問主意書
提出者  阿部知子

MMRワクチンと国の対応に関する質問主意書


 二〇〇二(平成一四)年七月三一日(主意書一という)、同一一月一二日(主意書二)の質問に引き続き、二〇〇四(平成一六)年四月一五日(主意書三)、同年六月一五日(主意書四)の質問においてもなお課題が残る答弁であった。よってさらにMMRワクチンによる副作用被害多発に関する真相の解明と今後の予防接種行政及び薬事行政における安全性確保や信頼性の向上を願って以下の質問をする。
(以下、着色部分は答弁書)
 平成十六年九月三日受領
答弁第四六号

  内閣衆質一六〇第四六号
  平成十六年九月三日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 河野洋平 殿
衆議院議員阿部知子君提出MMRワクチンと国の対応に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
 平成元年九月末現在のはしかワクチンの在庫量(市場全体)を推計したうえで、その時点でMMRワクチン接種を中止し、従来の「はしか単独接種」への切り替えが可能であったか否か、ワクチン量以外の要素も含めて政府見解を述べるとともにその理由を説明せよ。
一について
 平成元年九月末当時の麻しんワクチンの在庫量を推計することは資料がないため困難であるので、乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチン(以下「MMRワクチン」という。)の使用を中止し、麻しんワクチンの単独接種への切替えが可能であったか否かについては、お答えすることは困難である。
 平成元年一二月一八日に開催された中央薬事審議会生物製剤調査会に提出された薬務局生物製剤課の資料にある「医薬品の有効性の限界近くに位置」の認識については、そもそも政策決定のために諮問する審議会に対し、基礎資料のみならずMMRワクチンの安全性もしくは有効性に関して、薬務局が自らの認識を示したことに同局の深刻な捉え方を伺わせるものである。あるいはその時期までに薬務局はMMRワクチンの使用見合わせを選択する方向に傾いていたと考えられるが政府の見解はいかがか。
二について
 御指摘の資料にある「医薬品の有用性の限界近くに位置」の意味するところについては、現時点において確認することは困難であるが、文面から推測するに、当時の認識として無菌性髄膜炎のリスクは存在し、使用上の注意の改訂による注意喚起での対応を検討したものの、ワクチンとしての有効性との比較衡量による「医薬品の有用性」はあるとの見解を示したものであって、当時の厚生省薬務局はMMRワクチンの使用を見合わせる選択を行う方向に傾いてはいなかったと考えている。
 平成元年四月MMRワクチン導入にあたり、「保護者が希望した場合使用することができる」とされた。しかし、大阪府高槻市の広報紙平成元年三月号(主意書三別紙)によれば、「はしかワクチンからMMRワクチンに切り替えた」と記載されていることからして、高槻市民にとって選択の余地なくMMRワクチンを強制されたのであり、類似の実態は他の自治体でも多数存在したことが、主意書三への答弁により明らかになった。それによると回答総数三、一五一のうち導入時広報紙が残っていた三〇一のうちの一一六市区町村において高槻市と同様であった。さらに正確に調査を行えば膨大な数になると考えられる。この、法令に反する、誤ったMMR推進策が被害者を増やした一因ともいえる。なぜこのような齟齬がおこったのか、導入に際して厚生省が都道府県を通じて指導した内容を明らかにした上で政府の見解を述べよ。
三について
 MMRワクチンの導入に際しては、「乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチンの接種について」(昭和六十三年十二月十九日付け健医感発第九十三号厚生省保健医療局疾病対策課結核・感染症対策室長通知。以下「昭和六十三年室長通知」という。)において、MMRワクチンについて「麻しんの接種のときにこれを希望者には使ってもよいこととするものであること。」との留意事項を示すとともに、「積極的な活用が図られるよう貴管下市町村長の指導に遺憾なきを期されたい。」と示し、周知していたものであり、MMRワクチンのみの接種を実施する旨広報する等の判断を行った市区町村においては、MMRワクチンは、一回の接種で麻しん、おたふくかぜ及び風しんの三疾病について免疫を付与することが可能であり、それぞれのワクチンによる副反応を強くしたりするおそれはなく感染症対策上有意義であるとの認識の下で、MMRワクチンの積極的な活用を図るとの昭和六十三年室長通知の趣旨を踏まえ、対応を行ったものと考えている。
 次の四つの通知等について、末尾の各項について答弁を求める。
 (一) 昭和六十三年十二月十九日付、健医発第一四三三号各都道府県知事あて厚生省保健医療局長通知「予防接種実施規則の一部を改正する省令の施行等について」の「第一 予防接種実施規則の一部改正に関する事項 1 麻しんの予防接種の実施方法を次のように改正したこと(第二一条関係)麻しんの定期の予防接種に当たつて、同時に風しん及びおたふくかぜの予防接種を受ける旨の申し出があつた者については、乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチンを使用することができることとすること。」
 (二) 昭和六十三年十二月十九日付、健医感発第九三号各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生省保健医療局疾病対策課結核・感染症対策室長通知「乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチンの接種について」の「第一 接種に当たっての留意事項 1 今回の改正は麻しんワクチンに風しん及びおたふくかぜのワクチンを混合したワクチンが開発されたので麻しんの接種のときにこれを希望者には使ってもよいこととするものであること。」
 (三) 平成元年七月七日付、厚生省保健医療局結核・感染症対策室予防接種係から各都道府県予防接種担当者あて事務連絡「予防接種実施規則の一部を改正する省令の施行等について」の「1 麻しんの予防接種に当たって、同時に風しん及びおたふくかぜの予防接種を希望する旨の申し出があった者については、乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチンを使用することができることとしたこと。」
 (四) 平成元年十二月二十八日付、健医感発第一一二号各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生省保健医療局疾病対策課結核・感染症対策室長通知「乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチンの接種について」の「この度公衆衛生審議会伝染病予防部会より別添のとおり意見が出されたので、これに基づき、乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチン(以下「MMRワクチン」という。)の使用に関し、より安全なワクチンが開発されるまでの間、保護者からの申し出があった場合に限り、麻しんの定期の予防接種時にMMRワクチンを使用することとしたので、今後下記事項を留意の上実施されたい。」「1 麻しんの定期の予防接種時には麻しんワクチンを使用することを原則とするが、保護者からの申し出によりMMRワクチンを使用した場合にも、予防接種法上の取り扱いは、従来通り麻しんワクチンを使用した場合と同様とされたい。2 MMRワクチンの効果、副反応について周知を図るため、別紙『MMRワクチンの接種について』の内容を保護者に事前に周知するための広報活動を行うよう貴管下市町村を指導されたい。また、予防接種法に規定された予防接種法による健康被害に対する救済制度についても、周知が図られるよう貴管下市町村を指導されたい。3 保護者にMMRワクチンの接種機会を提供するため、医師会等関係機関と協議しつつ、MMRワクチン接種を実施する医療機関ができるだけ多く確保されるよう、貴管下市町村を指導されたい。」
 右の四つの通知等について、以下に質問する。
 ア (一)、(二)の通知が出された後、接種が開始されている七月になって(三)の事務連絡を出したことの意味は何か。この時点までに予期せぬ副作用の報告を受けていた故に「積極推進」の方針に揺らぎが生じた証ではないのか。七月七日は、厚生省が福島県より死亡例の報告を受けた日である。MMRワクチン接種後の副作用あるいは異常な症例について最初の報告を受けたのはいつであり、どのような内容(接種年月日、都道府県、診断名等)であったかを明らかにしたうえで政府見解を述べよ。
 イ また、(一)、(二)、(三)はともに麻しんワクチン接種を原則としているのであり、(四)の1の内容は基本的に同じであり、原則を再確認したにすぎないと理解され、(四)は、(二)に対応する結核・感染症対策室長通知であり、(一)の保健医療局長通知に示された方針に変更を加えるものではないと考えられるが、政府見解はいかがか。
四のアについて
 お尋ねの「予防接種実施規則の一部を改正する省令の施行等について」(平成元年七月七日付け厚生省保健医療局疾病対策課結核・感染症対策室予防接種係事務連絡。以下「事務連絡」という。)は、「予防接種実施規則の一部を改正する省令の施行等について」(昭和六十三年十二月十九日付け健医発第千四百三十三号厚生省保健医療局長通知。以下「局長通知」という。)及び昭和六十三年室長通知の内容を踏まえつつ、感染症サーベイランスにおいて、平成元年は無菌性髄膜炎が流行している趣があり、七月、八月を避けて麻しんの予防接種を実施することが望ましいことから、七月七日付けで各都道府県予防接種担当者に対して周知したものと考えている。
 なお、お尋ねのMMRワクチン接種後の副反応に関し最初に報告を受けた日及びその内容については、記録が保存されていないため、お答えすることは困難である。
四のイについて
 局長通知においては「麻しんの定期の予防接種に当たって、同時に風しん及びおたふくかぜの予防接種を受ける旨の申出があった者については、乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチンを使用することができることとすること。」と示しているが、局長通知を補足するものとして同日付けで発出された昭和六十三年室長通知においては、MMRワクチンについて「麻しんの接種のときにこれを希望者には使ってもよいこととするものであること。」との留意事項を示すとともに、「積極的な活用が図られるよう貴管下市町村長の指導に遺憾なきを期されたい。」と示しており、事務連絡についても積極的な活用を示した昭和六十三年室長通知を変更するものではないと考えられるのに対し、「乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチンの接種について」(平成元年十二月二十八日付け健医感発第百十二号厚生省保健医療局疾病対策課結核・感染症対策室長通知。以下「平成元年室長通知」という。)においては、MMRワクチン接種後に無菌性髄膜炎を発症する者の発生状況を踏まえ、従来の積極的な推奨を改め、MMRワクチンの効果、副反応等について周知したものである。
 厚生省はMMRワクチン実施の全期間において、自然感染おたふくかぜの無菌性髄膜炎とMMRワクチン後のそれについて比較し、評価をし続けたがその考え方は誤りである。はしか単味ワクチンの副作用発生の状況とMMRワクチン接種後の状況を比較して、MMRを継続するか、はしか単味ワクチンに戻すかを検討することこそ妥当だったといえる。あえて無菌性髄膜炎というリスクを持ち込んで予防接種法の対象疾病ではないおたふくかぜを考慮する必要はないのである。政府の見解はいかがか。また、左記三項について答弁を求める。
 (一) @昭和六三年末までの「はしかワクチン被接種者総数と認定被害者数」、及びA平成一五年末までの「はしかワクチン被接種者総数と認定被害者数」、B平成元年九月末までの「MMR被接種者数と認定被害者数」、及びC平成一五年末までの「MMR被接種者数と認定被害者数」を示した上で、それらの数値からはしかワクチンとMMRワクチンの安全性を比較し、それについて厚生労働省の見解を述べよ。
 (二) 本主意書前項四に示した通知(四)の2でいう別紙「MMRワクチンについて」の記述には、はしかワクチンとMMRワクチンの安全性の比較に関するものは一切なく、むしろ自然感染のおたふくかぜの脅威を強調し、安全性に強い疑いがかかったMMR後の副作用を過小に評価し、偏った情報提供によりMMR接種をすすめ、国民を誘導していると理解されるが政府見解はいかがか。
 (三) 詳しい数値は本項(一)への答弁に待つとして、平成五年末現在の予防接種健康被害認定者(『一九九四年国民衛生の動向』による)の内、麻しんワクチンによるものが五二人(麻しんは昭和五三年導入)であり、本主意書別表一にある平成元年八月末までの接種で四八人、九月末までの接種で八六人の被害認定があることからして、MMRによる被害認定の結果から類推するに、遅くとも九月段階ではMMR接種の危険性が麻しん単味接種のそれを大きく上回ったといえる。にもかかわらず予防接種法の対象疾病ではないおたふくかぜに固執し、MMR接種にこだわり被害を拡大し続けたのはなぜか。一、〇四〇人の被害者を出してもなおおたふくかぜ対策を講ずる必要と法的根拠がどこにあったのか、その理由を述べよ。
五の(一)について
 昭和六十三年末までの予防接種法上の定期予防接種による麻しんワクチン被接種者数は千六十万二千百六十九人、同年末までの同ワクチン認定被害者数は四十六人、平成十五年末までの同ワクチン認定被害者数は百十九人であり、平成元年九月末までのMMRワクチン認定被害者はおらず、平成十五年末までの同ワクチン認定被害者数は千四十人である。なお、定期予防接種によるワクチン被接種者数は、平成八年までは年単位で、平成九年度以降は年度単位で都道府県を通じて市区町村から報告を求めているため、平成十五年末までの麻しんワクチン被接種者数、平成元年九月末までのMMRワクチン被接種者数については把握していないが、平成五年四月二十七日にMMRワクチンの接種を見合わせる旨の通知を各都道府県衛生主管部(局)長あてに発出したことから、平成十五年末までのMMRワクチン被接種者数は平成五年末までの被接種者数と同一であると考えられ、その数は百八十三万千七十二人である。
 また、MMRワクチンと麻しんワクチンの副反応の種類や程度は多様であるため、単に認定被害者数をもって両ワクチンの安全性を比較することは不適当であると考えている。
五の(二)及び(三)について
 麻しんワクチンを単独で接種した場合、おたふくかぜに自然感染することも考えられ、MMRワクチンの評価に際して、自然感染したおたふくかぜの無菌性髄膜炎の発生状況とMMRワクチン接種後に起こるおたふくかぜウイルスによると思われる無菌性髄膜炎の状況を比較したことは誤りではないと考えている。
 平成元年十二月二十日に公衆衛生審議会伝染病予防部会が取りまとめた「乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチンの接種等について(意見)」において、MMRワクチン接種後に起こるおたふくかぜウイルスによると思われる無菌性髄膜炎については、「その症状はいずれも軽度であり、後遺症を残す恐れもないと思われる。一方、おたふくかぜに自然感染した場合には数十倍から数百倍の高い確率で無菌性髄膜炎が発生するほか、脳炎等の合併症や聴力障害等の後遺症を伴うことがあり、おたふくかぜによる死亡者が毎年数名報告されている。以上のことから、一般的にはMMRワクチンはおたふくかぜに自然感染した場合と比較すると効果のあるワクチンといえる」とされ、MMRワクチンの接種後の無菌性髄膜炎の発生頻度は、おたふくかぜに自然感染した場合の無菌性髄膜炎の発生頻度よりも低いこと、また、MMRワクチンは、一回の接種で麻しん、おたふくかぜ及び風しんの三疾病について免疫を付与することが可能であり、被接種者の肉体的、経済的及び時間的負担を軽減することができる点で、感染症対策上有意義であると考えられたことから、予防接種法(昭和二十三年法律第六十八号)第三条第一項に基づく麻しんの定期予防接種において、希望者にはMMRワクチンの使用を認めてきたものである。
 平成元年室長通知の別紙「MMRワクチンの接種について」の記述は、公衆衛生審議会伝染病予防部会におけるその時点の最新の科学的知見に基づいた客観的かつ専門的な審議の結果を踏まえ、適切な情報提供を行ったものであり、偏った情報提供ではないと考えている。
 主意書三への答弁において、社団法人北里研究所及び武田薬品工業株式会社のMMRワクチンについては、「医薬品の製造等の承認の整理について」(昭和四十六年六月二十九日付け薬発第五百八十八号厚生省薬務局長通知)に基づき承認書が両法人から厚生労働大臣へ返納されているとの答弁であったが、その「返納」とはいつのことであるか。明確に答弁せよ。
六について
 社団法人北里研究所のMMRワクチンの承認書については平成十五年十一月十三日に、また武田薬品工業株式会社のMMRワクチンの承認書については平成六年十月十七日に、それぞれ返納されている。なお、社団法人北里研究所のMMRワクチンについては平成四年十一月に、武田薬品工業株式会社のMMRワクチンについては平成五年四月に、それぞれ製造が中止されたと承知している。
 平成一五年一〇月に刊行された木村三生夫・堺春美・平山宗宏編『予防接種の手引き第九版』によると、現在承認審査がなされている米国メルク社製MMRワクチン(申請企業は(財)化学及び血清療法研究所)について、(一)添加物の改良がなされていない、(二)国産のはしか、おたふくかぜ、風しんワクチンよりも発熱の点で格段に劣る、(三)国産MMRで問題になった無菌性髄膜炎について検証するには臨床試験の接種例数が少ない、とされている。この著書の編者らは、国産MMRの推進にあたり、特に木村、平山らは共に公衆衛生審議会伝染病予防部会予防接種委員会あるいは中央薬事審議会生物製剤調査会委員の中核として承認・導入・中止などの政策決定に深く関わった人物であり、今もなお強い影響力をもつ専門家である。メルク社製MMRの審査にあたり右の指摘は重大であり、審査は慎重を期すべきと考えられる。右の指摘について政府の見解を述べよ。
七について
 御指摘のMMRワクチンについては、薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第二十三条の規定に基づく輸入承認に係る審査を行っているところであり、有効性、安全性等に係る情報に基づき、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、適切に承認審査を行ってまいりたい。
 主意書三への答弁において「現在の医学的知見においては、MMRワクチンの接種と自閉症との間には因果関係は認められないものと考えている。」とあるが、厚生労働省はいつどのようなかたちで「現在の医学的知見」の検討を行ったのか。
 また、MMR被害者について「新たに調査を行う必要はないと考えている。」と答弁されているが、被害者家族が医学上の論争を踏まえて子供の観察ができるはずはなく、新たな救済申請により被害者の予後が把握できるなどという考え方は論外である。今まさに米国製MMRが承認されようとし、すでに一部専門家はそれによるはしか対策を提案している現状において、一、〇四〇名もの被害認定を行った国は、申請者のカルテ(仮に国は廃棄したとしても都道府県・市区町村には保管されている)の検討と、被害者本人の予後について追跡調査をすることが必要と考える。平成元年七月接種で無菌性髄膜炎と小児片麻痺の被害認定がなされ、その七年後の平成八年六月に障害児養育年金が認定された事例(主意書二への答弁より)は被害者の長期予後に注目すべきことを示唆している。また、平成一五年一一月二六日の疾病・障害認定審査会感染症・予防接種審査分科会において、MMRの被害が一件認定されている(詳細は不明)ことも同様といえる。予防接種法に規定された被害者への保健福祉事業の観点及び今後に新たな被害を発生させないために、さらには予防接種行政、薬事行政への信頼性を確保する上でも被害者の長期予後や自閉症に関する調査にとりくむべきと考えるが政府見解を述べよ。
八について
 お尋ねのMMRワクチンと自閉症の因果関係については、平成十年から平成十五年にかけての英国のワクチン・予防接種合同委員会(JCVI)、医学安全委員会(CSM)、米国の医学研究所(IOM)の独立委員会、米国小児科学会(AAP)の会議等で検討されたが、いずれもMMRワクチンが自閉症やその関連疾患の原因となるという仮説を裏付ける証拠は存在しないとの医学的知見で一致していることを踏まえ、厚生労働省としてはその因果関係はないと考えている。
 また、MMRワクチンの接種により健康被害を受け、予防接種法に基づく障害児養育年金又は医療費等の支給を受けた者の長期予後については、平成十六年四月現在において障害児養育年金等を受給中である者は、その障害の状態等に変化があった場合の届出を通じて、これ以外の者は、MMRワクチンの接種による疾病にかかった場合等における医療費等の支給申請を通じて把握することができるため、新たに被害者の長期予後や自閉症に関する調査を行う必要はないと考えている。
 厚生労働省が阪大微研会のMMRワクチンの製造法一部変更に関する薬事法違反の疑いをもつ動機は何か、いつ誰がどのように判断し、立ち入り調査にいたるのか説明せよ。
九について
 統一株MMRワクチンと財団法人阪大微生物病研究会の自社株MMRワクチン(以下「自社株MMRワクチン」という。)の無菌性髄膜炎の発生頻度が違うという報告を受け、平成五年四月二十八日に当時の厚生省薬務局が行った調査の指示に対し、平成五年五月十日に財団法人阪大微生物病研究会より同研究会製造のMMRワクチンの安全性データ、性状及び製造経過等に関し報告があったところである。同報告において、統一株MMRワクチンに用いられたおたふくかぜワクチン原液と、自社株MMRワクチンに用いられた原液とでは、製造工程に一部異なる部分があることが見いだされたため、当時の厚生省薬務局職員が事実関係等について明らかにする必要があると考え、薬事法第六十九条第一項に基づく調査を行うこととしたものである。
一〇  国は主意書一への答弁書以来随所で、MMRワクチンに関して、「逐次適切な行政判断をしてきており」と述べているが、一、〇四〇という被害認定者数から、不適切な判断を繰り返したことは明白である。昭和二三年予防接種法制定施行以来の予防接種において発生した被害について、MMR被害認定者数の全体に占める割合がどれほどかを示し、MMRワクチンによる副作用多発や大量の認定被害者を生み出した事に関し、どこに問題があったのか多面的に分析・評価をして責任の所在を明らかにせよ。
一〇について
 平成十五年末までに、MMRワクチンの接種により健康被害を受け、予防接種法に基づく医療費等の支給を受けた者は千四十人であり、同法に基づき予防接種による健康被害の救済措置が導入された昭和五十二年二月二十五日から平成十五年末までに医療費等の支給を受けた者の総数二千四百六十八人に占める割合は四十二・一パーセントである。
 また、MMRワクチンを含めワクチンの副反応の種類や程度は多様であるが、MMRワクチンの接種後に健康被害を受けた者の大半は後遺症を伴わない無菌性髄膜炎を発症したものであり、また、MMRワクチンの接種後の無菌性髄膜炎の発生頻度は、おたふくかぜに自然感染した場合の無菌性髄膜炎の発生頻度よりも低いと考えられていることから、右に述べた四十二・一パーセントという割合をもって問題があるものとは考えていない。
 右質問する。