■02年11月12日 阿部議員質問主意書(主意書2)

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平成十四年十一月十二日提出 質問第七号
MMRワクチン接種による被害発生の原因究明に関する質問主意書
提出者  阿部知子
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/155007.htm
本件については去る七月三十一日に第一回目の質問主意書を提出し、九月十日付けにて答弁書を受けましたが、尚不明な点やMMRワクチン接種による被害発生の原因究明に必要な事実関係を確認すべき事項があり、以下について質問する。
(以下着色部分は答弁書)
 平成十四年十二月二十日受領
答弁第七号
内閣衆質一五五第七号
  平成十四年十二月二十日
内閣総理大臣 小泉純一郎
衆議院議長 綿貫民輔 殿
衆議院議員阿部知子君提出MMRワクチン接種による被害発生の原因究明に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
一 先の答弁書、別表第二の被害事例について、平成元年四月MMRワクチン導入後まもなく(五月から七月にかけて)、死亡一例、難聴一例、無菌性髄膜炎・小児片麻ひ一例が発生している。しかもその三例は後にすべて被害認定がなされ救済されている。後の二例はいずれも障害児養育年金二級の認定がされるという重篤さであった。右の三例について、当時の保健医療局が報告を受けた年月日及び申請を受けた年月日を明らかにした上で、MMRワクチン接種との関係を認めたこれらの事例がどこでどのように検討されたのか、薬事行政、予防接種行政両面について、関係する会議・審議会等開催の事実経過を示せ。
一について
 先の答弁書(平成十四年九月十日内閣衆質一五四第一九○号)別表第二中の御指摘の三事例に関する事実経過は、次のとおりである。
 1 平成元年七月七日、福島県から、同年五月九日に乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチン(以下「MMRワクチン」という。)の接種を受けた者が同月十六日に急性心不全により死亡した旨の連絡を受けた。また、平成二年一月八日付けで被接種者の保護者から予防接種法(昭和二十三年法律第六十八号。以下「法」という。)に基づく死亡一時金及び葬祭料の請求があり、同月二十九日に福島県から厚生省へ進達された。
 当時、予防接種による健康被害の救済に係る厚生大臣の認定に当たっては、厚生大臣から公衆衛生審議会(以下「審議会」という。)へ諮問され、審議会から予防接種健康被害認定部会(以下「認定部会」という。)に付議され、認定部会の下に設置された特別委員会(以下「特別委員会」という。)で審議された後、認定部会で意見の取りまとめが行われ、審議会から厚生大臣へ答申されるという過程を経ていた。
 右の死亡事例についても、平成二年二月十五日に厚生大臣から審議会への諮問及び認定部会への付議が行われ、同年三月十四日に特別委員会で審議された。同日の審議では、認定の可否が「保留」とされたが、平成三年一月九日に行われた二回目の審議では、MMRワクチンの接種と突然死の因果関係を否定しきれないことから認定すべきものとされ、平成四年二月二十六日の認定部会での意見の取りまとめ及び審議会からの答申を経て、同年三月三十日付けで厚生大臣による認定が行われた。
 2 平成元年十月二十三日、東京都から、同年五月十七日にMMRワクチンの接種を受けた者に予防接種法施行令(昭和二十三年政令第百九十七号)に定める二級程度の聴力障害が残存している旨の報告を受けた。また、被接種者の保護者から法に基づく医療費及び医療手当の請求があり、平成元年十一月二十九日に東京都から厚生省へ進達された。平成二年一月二十九日に厚生大臣から審議会への諮問及び認定部会への付議が行われ、同年二月十五日の特別委員会での審議において、MMRワクチンの接種と両側性難聴の因果関係を否定しきれないことから認定すべきものとされ、同年三月二十八日の認定部会での意見の取りまとめ及び審議会からの答申を経て、同年五月二十二日付けで厚生大臣による認定が行われた。
 また、被接種者の保護者から法に基づく障害児養育年金の請求があり、同年三月二十六日に東京都から厚生省へ進達された。平成三年二月二十日に厚生大臣から審議会への諮問及び認定部会への付議が行われ、同年十月二十三日に認定部会の下に設置された等級委員会(以下「等級委員会」という。)での審議において、該当等級は二級とされ、同日の認定部会での意見の取りまとめ及び審議会からの答申を経て、平成四年一月二十四日付けで厚生大臣による認定が行われた。
 3 平成元年七月一日にMMRワクチンの接種を受けた者に無菌性髄膜炎及び急性小児片麻ひが生じたとして、被接種者の保護者から法に基づく医療費及び医療手当の請求があり、平成二年三月二十九日に兵庫県から厚生省へ進達された。同年五月二十二日に厚生大臣から審議会への諮問及び認定部会への付議が行われ、同年九月十二日の特別委員会での審議において、MMRワクチンの接種と無菌性髄膜炎及び急性小児片麻ひの因果関係を否定しきれないことから認定すべきものとされ、同年十月二十四日の認定部会での意見の取りまとめ及び審議会からの答申を経て、同年十二月十日付けで厚生大臣による認定が行われた。
 また、被接種者の保護者から法に基づく障害児養育年金の請求があり、平成八年四月十一日に兵庫県から厚生省へ進達された。同年六月五日に厚生大臣から審議会への諮問及び認定部会への付議が行われ、同月十九日の等級委員会での審議において、該当等級は二級とされ、同日の認定部会での意見の取りまとめ及び審議会からの答申を経て、同月二十八日付けで厚生大臣による認定が行われた。
 なお、当時、薬事行政を所管していた厚生省薬務局においては、これらの被接種者に係る個別の救済給付に関係する審議会等は開催していない。
また、福島県の死亡例については保護者から救済申請が出されて後約二年がかりで平成四年に救済が決定されている。なぜ、このように救済決定までに長期間を要したのか。
二について
 御指摘の事例については、一についてで述べたとおり、平成二年一月八日付けで死亡一時金及び葬祭料の請求があり、平成四年五月二十五日に給付決定が行われたものである。この間の対応状況を正確に把握できる資料は残っていないが、平成二年三月十四日の特別委員会での審議において一度保留とされ、審議結果を踏まえた追加資料を用意した上、更なる検討を行うことになったため、相応の時間を要したものと推察される。
MMRワクチンが副作用被害の問題を起こしながら、長年にわたり接種が強行されたことと対照的な事実が、先の答弁書「十六について」で確認されている。そこで引用されたDPTワクチンに関する「昭和五十年二月一日付 衛発第四十九号厚生省公衆衛生局長通知」をみると、同年一月三十日の死亡事故発生の二日後にこの通知が出され、一時中止の措置がなされている。迅速かつ当然のことではあるが、従前の薬害における行政的対応に比して大いに評価できるものである。それに比べ、後に救済される死亡例、重篤な症例があっても中止しなかったMMRワクチンに関する対応との違いはいかなる理由によるものか、政府の見解を示せ。
三について
 予防接種の継続、中止等の判断については、接種による発病防止の効果と副反応とを総合的に考慮し、最新の医学的知見に基づいて、慎重に行う必要がある。
 お尋ねのDPTワクチンの接種の一時見合せから再開に至る経緯については、先の答弁書十六についてで述べたとおりである。
 一方、平成元年当時のMMRワクチンの接種に係る経緯については、同年十月二十五日に審議会の伝染病予防部会予防接種委員会で取りまとめられた「MMRワクチン及びおたふくかぜワクチン接種後の無菌性髄膜炎について(意見)」を踏まえて、「乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチンの接種について」(平成元年十月二十五日付け健医感発第九十三号厚生省保健医療局疾病対策課結核・感染症対策室長通知)を発出し、都道府県に対して、MMRワクチン接種後の無菌性髄膜炎の発生状況についての調査結果が判明するまでの間、おたふくかぜの自然流行の状況を勘案しつつ、MMRワクチン接種の実施に慎重を期されたい旨を通知した。また、同年十二月二十日に審議会の伝染病予防部会で取りまとめられた「乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチンの接種等について(意見)」を踏まえて、「乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチンの接種について」(平成元年十二月二十八日付け健医感発第百十二号厚生省保健医療局疾病対策課結核・感染症対策室長通知)を発出し、MMRワクチンの使用に関し、より安全なワクチンが開発されるまでの間、保護者から申出があった場合に限り、麻しんの定期の予防接種時にMMRワクチンを使用されたい旨を通知したところである。
 このように、DPTワクチンの接種の一時見合せ及び再開並びにMMRワクチンの接種の慎重な継続は、それぞれの時点における医学的知見に基づいて行われたものであると認識している。
先の答弁書、別表第一に示されているとおり、平成二年にははしかの単味ワクチン製造量が前年に比して倍増している。ワクチンの公的接種という国の施策と、ワクチンの製造量に関しては、企業独自の判断だけではなくその必要量確保のために当然のことながら、国と業界の協力関係が必須であり、双方話し合いのもとで調整をしていると思われる。平成二年に、はしかの単味ワクチン製造量を増加させた事実経過(はしかワクチンの製造元、北里研究所、阪大微生物病研究会、武田薬品工業、千葉県血清研究所などと国の打ち合わせに関する事実経過)を明らかにした上で、平成二年に前年の製造量に比してなぜ倍増させたのかその理由について政府の見解を示せ。また、これに関連して元年度には製造していなかった「千葉県血清研究所」が新たに製造を開始しているが、その製造承認申請がいつなされ、いつ承認されたのかもあわせて示せ。
四について
 平成二年に乾燥弱毒生麻しんワクチンの製造量が増加した理由については、平成元年十月二十五日付けで「乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチンの接種について」を発出し、都道府県に対して、MMRワクチン接種後の無菌性髄膜炎の発生状況についての調査結果が判明するまでの間、おたふくかぜの自然流行の状況を勘案しつつ、MMRワクチン接種の実施に慎重を期されたい旨を通知したことから、MMRワクチンの需要が減少し、乾燥弱毒生麻しんワクチンの需要が増加することを予想して、乾燥弱毒生麻しんワクチンの増産を行った製造業者があったためであると考えられる。なお、当時、厚生省においては、財団法人細菌製剤協会に対して乾燥弱毒生麻しんワクチンの需要増加に対応できるかどうかを問い合わせ、MMRワクチン製造業者からMMRワクチン、麻しんワクチン等の供給について質問等を受け、また、国立予防衛生研究所に対して乾燥弱毒生麻しんワクチンの検定を優先的かつ迅速に処理するよう要望している。
 また、千葉県血清研究所が乾燥弱毒生麻しんワクチンの製造について承認申請を行ったのは昭和六十三年三月三十日であり、厚生大臣が承認を行ったのは平成二年三月七日である。
さらに、昭和六十三年から平成六年までの各年次について麻しん定期接種対象児の人口、はしか単味ワクチンの製造量、実接種人数、接種率などを示せ。平成元年、MMRワクチンの三件の重篤な副作用被害が発生した五月から七月の間に、従来のはしか単味ワクチン接種になぜ戻すことができなかったのかを示せ。また先の答弁書の「八について」でも述べられているとおり、MMRワクチンは、はしか定期接種に際して、保護者が希望した場合に使用することができるとされているものであるから、おおかたの保護者がはしか単味ワクチン接種を希望した場合も混乱なく接種できる体制でなければならないはずである。同時期に、従来のはしか単味ワクチン接種に戻すことが不可能だったとするならいつの時点で国が生産増を指示したなら、いつ頃から従来方式に戻すことが可能になったか政府の見解を述べよ。
五について
 昭和六十三年から平成六年までの間における麻しんの定期の予防接種の対象者数、接種者数及び接種率、乾燥弱毒生麻しんワクチンの製造量並びに乾燥弱毒生麻しんワクチンの接種者数及び接種率は、それぞれ別表第一から別表第三までのとおりである。
 また、平成元年五月から同年七月までの間に厚生省へ報告があったMMRワクチンの接種に係る健康被害については、症例の詳細が不明であったため、当時、MMRワクチンの使用の是非等について検討を行う状況にはなかったものと考えている。
別表第一から第三 ←(3つの表を加工した表とグラフ参照のこと 引用者注)

(原本−Web上−では画像、引用者が転記)

別表第一
年度 麻しんの定期の予防接種対象者数 接種者数 接種率%
昭和63年度 1988年度 1,383,000 1,041,259 75.3%
平成1年度 1989年度 1,358,000 1,039,378 76.5%
平成2年度 1990年度 1,309,000 857,077 65.5%
平成3年度 1991年度 1,261,000 900,112 71.4%
平成4年度 1992年度 1,210,000 837,763 69.2%
平成5年度 1993年度 1,210,000 817,261 67.5%
平成6年度 1994年度 1,216,000 906,065 74.5%

別表第二
北里 武田 阪大 千葉
AIK-C株 シュワルツFF=8株 田辺株 TD97株 合計
昭和63年 1988年 811,895 271,530 224,420 1,307,845
平成1年 1989年 116,345 160,795 190,815 467,955
平成2年 1990年 589,565 227,425 103,945 64,595 985,530
平成3年 1991年 472,633 255,638 244,345 66,000 1,038,616
平成4年 1992年 393,845 211,790 242,695 67,600 915,930
平成5年 1993年 591,855 296,365 144,110 65,985 1,098,315
平成6年 1994年 540,745 456,205 284,653 132,665 1,414,268
北里: 北里研究所
武田: 武田薬品工業
阪大: 阪大微生物病研究会
千葉: 千葉県血清研究所

別表第三
乾燥弱毒生麻しんワクチン接種者数(注) 接種率%
年度 (推定数) (推定数)
昭和63年 1988年 1,041,259 75.3
平成1年 1989年 285,865 21.1
平成2年 1990年 424,721 32.4
平成3年 1991年 562,720 44.6
平成4年 1992年 548,892 45.4
平成5年 1993年 798,321 66.0
平成6年 1994年 906,065 74.5
麻しんの定期の予防接種者数から
MMRワクチンの接種者数を引いたもの
先の答弁書、別表第二にある、平成元年五月九日接種事例(福島県の死亡例)、平成元年五月十七日接種事例、平成元年七月一日接種事例及び平成三年四月二十四日接種事例が、薬務局が収集した事例である別表第三に含まれないのはなぜか。右の四例について、該当ワクチン製造企業には企業報告の義務が課せられている。にもかかわらず報告がなかったのか、また他に理由があるのか、いずれにせよ薬務局が深刻な症例をモニターしていなかったことになるがいかがか、政府の見解を示せ。
六について
 医薬品の製造業者等に対しては、当時、薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第六十九条第一項に基づく薬事法施行規則(昭和三十六年厚生省令第一号)第六十二条の二の規定により、副作用であると疑われる重篤な症例等に関する報告義務が課されていた。御指摘の四事例については、医薬品製造業者からの副作用報告は無かったところであるが、これがどのような理由によるのかは明らかではない。なお、医薬品の製造業者等からの報告が無く、医療機関の協力も無い場合に、厚生省において副作用症例を把握することは困難であったと考えている。
右質問する。