TEAC
V-7000

TEACが自社製メカを捨てsankyo製メカを搭載し、外観も含めダイナミックに変身した当時の最上位モデルV-7000です。
それまでの最上位だったV-9000までのメカは自社開発のもので、キャプスタン駆動はDDではなくDCモーターによる駆動でした。
DCモーター駆動というとアタマデッカチなマニア様はあまり喜ばないようですが、大径フライホイールやヒステリシステンションサーボなどTEACが長年熟成させてきた技術がギッシリ詰まった完成度の高いメカでした。その自社製メカを捨てポピュラーなsankyo製メカを採用した事には、それなりの理由があっての事だと思われます。
今回はその理由と新生TEACデッキの完成度を確認するためジャンク品を入手しバラバラにして解析修理を行いました。




入手時の症状は・・・忘れました(^^;
確か本体価格よりも送料のほうが高かったと思います。
外観がもっとキレイならソコソコの価格になるようですが、今回の目的は分解解析ですからなんでもバッチコイです。









本体左側に操作スイッチとカウンターが配置されています。

このへんのボタンは強度不足のようですね。モゲたり陥没したりといったブツをよく見かけます。








右側にはレベルメーターが配置され、回すツマミが中心に配置されています。

先代V-9000で姿を消した左右独立のキャリブレーション機能が再び復活しています。
NRの切り替えスイッチがスライド式になっているのが個人的には頂けないです。









サイドウッド・・・ではなく樹脂製のパネルです。
バブル期の高級ビデオデッキのような高比重の特殊樹脂製・・・ではなく、フツーのプラスチックな飾りです。
これは頂けませんねぇ。
こんなモノなら付けないほうがマシだったと思います。
TEACでもそう思ったのか、時期V-7010はキチンとサイドウッドになりましたね。






CD専用のダイレクト入力端子が装備されています。
当時のデッキに流行った装備でした。










天板を無理にこじ開けた跡があります。
素人さんの手が入ったブツである事は間違いないようです。

こういう開け方1つで、その人の技量がわかりますよね。
ちょっと手ごわそう。直せるかな??







ペナペナのプラスチック板を外します。
見れば見るほど悲しくなりますね。
バブル崩壊直前に多く見られた、ちょっとズレた高級志向でしょうか。
こんな物、無いほうがマシです。









内部の様子です。
左側が電源部と制御系、右側がアナログ信号系でシャーシで分離されています。












録音レベルとバランス用のボリウムは入力端子直近に配置され、長いロッドを介して接続されています。
当時のカセットデッキの多くが採用していた、信号経路を最短化させる手法です。










こちらはロジック部です。
オートキャリブレーションも付いていませんし、これといってとくに何もないです(^^;











デッキメカは厳重にシールドされています。
取り付け強度も十分確保されていると思います。

従来のTEACメカは横幅がけっこうありましたので、センターレイアウトにする事が出来なかったのでしょう。
コンパクトなsankyo製メカなら容易に実現できますので、このあたりが従来メカに見切りを付けた大きな理由ではないかと思います。
ま、コスト面のメリットのほうが物凄くあると思いますが(^^;





メカを取り外すためにフロントパネルを外します。











取り出したメカです。
こう見ると、見慣れた(飽きた?)sankyo製ですね。










ホルダーの開閉は電動式で、この部分の機構はTEAC独自のようです。











それまでのTEACにはあまり無かったDDキャプスタンモーターです。











整備するためカセットホルダーまわりを外します。
意外にも、バックテンションベルトはヘタっていたものの切れていませんでした。










バラしてお掃除して給油したりと、いつものメニューを施します。











V-9000までのヘッドは録再独立懸架でしたが、このモデルからポピュラーなコンビネーションヘッドに変更されました。
まぁ、このダイキャストベースはコンビネーションヘッド前提の設計ですから、当然の結果でしょうか。

カタログによると、TEAC伝統のコバルトアモルファスだそうですが、このメカに付いているヘッドは各社各機種どれも同じに見えてしまうのは私だけでは無いのではないでしょうか・・・。
製造元は、皆同じ??



スペーサー代わりのナットも健在です。
最後まで、この仕様だったようですね。










ピンチローラーも分解清掃します。











DDキャプスタンモーターのコンデンサもバラしたついでに交換しておきました。











ベルトも交換し、キャプスタンは完了です。













モードコントロールモーターも不具合が多いのでオーバーホールしておきます。









あんまり痛んでなかったようですが、せっかくなのでしっかりやっておきましょう。












リールモーターも不具合が多いので要対策です。











ほらね。












ピカピカに研磨します。











サクサクっとメカの整備は完了です。

ホルダー機構が目新しいだけで他はフツーのsankyoメカでしたね。









次は電気系を進めます。











基板を取り出して解析&メンテ開始です。











入力端子直近にRECボリウムとバランス調整のVRが配置され、シールド板でガッチリ囲まれています。
いいですね。
でも、できればボリウムはディテント型にして欲しかったなぁ〜(^^;








思ったとおり、裏面には当然のようにハンダ割れがあります。
もちろん、対策します。










ヘッドホンアンプ基板はコネクタを介してプラグインです。
ここはハンダが割れて当然ですね。











全体的に再ハンダを施しメンテは終了。
あとはじっくり回路を眺めるとしますかね(^^)










再生イコライザです。
デュアルFETによる差動入力+オペアンプというTEACとしては初の試み?となる構成でした。
従来のコイル共振による高域補償を廃しているあたり、ヘッドも全くの新設計と思われます。
いや、メカのみならずヘッドも他社から供給を受けているのかも・・・?
このメカでアモルファスヘッドという組み合わせは各社出てましたからね。





録音アンプ部です。
オペアンプ1発のごく普通なものです。










再生NR回路です。
チップは従来のCX20187から新しいCXA1330へと時代の流れと共に変更されています。










こちらは録音側ドルビー回路です。
入力端子直近に配置されています。
信号経路の最短化が徹底して行われているようです。









バイアス発振回路です。
石は毎度お馴染みのuPC1297Cが使われています。
高い周波数を扱うバイアス回路は、できるだけ基板の端に配置し相互干渉を抑えています。
ここまでやるなら、シールド板くらい欲しかったなぁって・・・。







録音アンプの隣にあるのは電源部。
出来れば、再生イコライザの近くに配置して欲しかったなぁと。
でも、そうすると録音系との配置の関係で干渉が予想されるなど別の問題が懸念されたりするものです。
どっちを取るかはエンジニアの姿勢次第で決まります。
このデッキは、信号経路の最短化と各部干渉の低減を第一に設計したのでしょう。








フロントパネル裏面です。

今回は、この部分はかるく再ハンダだけで済ませただけで、タクトスイッチは交換しませんでした。
何故かって?
それは・・・メンテが終わったら多分部品取り(潰す事)になるだろうなと思ってたから(^^;






一通り作業が終わりました。
あとは組み付けて調整です。










組み付け完了。動作もOKです。











バラバラにしたので走行系や電気系の調整を行い完了です。











外装を付けて完了です。

うーん、これでも外装は磨き上げたのですが、元々キズだらけなのであんまり・・・
やっぱりジャンクはジャンクですね(^^;







試聴

外観も内容も大幅に変更されたデッキですが、音の傾向も大きく変わったように感じます。
従来のTEACは元気の良い高域が印象的でしたが、このシリーズからは少し落ち着いた雰囲気になりました。
全体的に大人しく、無理な味付けはされていないのには好感が持てます。
V-970Xではちょっと苦手だった「ふわっ」っとした雰囲気も、V-7000ならうまい具合に出てきます。
従来のTEACサウンドに慣れ親しんだ方には違和感があるかもしれませんが、音質に関しては明らかに正常進化といえるのではないでしょうか。
ただ、「TEACらしさ」という点が薄れてしまったため、これといってあまり特徴が無く、結局のところ地味な存在になってしまったのかもしれません。
アイワやナカミチのように一線を超えた領域には程遠いのも事実ですし、同じメカを搭載したモデルと比較してもどんぐりの背比べみたいなもんです。

当時流行していたセンターメカなレイアウトを実現させるためだけに、熟成された自社開発のメカを捨て、新たな領域への第一歩を踏み出したという決断は、結果的には正しかったのかもしれません。
しかし、裏をかえせば、自社開発ではクリアできなかったという事になります。
メカの性能は、私的には従来のTEAC製のほうが優れていると思います。しかし、コストも相当かかっているのも事実ですので、結局はコストの問題が大きかったのかもしれません。

でもまぁカセットデッキとしての完成度は地味に高いので、そう見ればそれはそれでTEACらしい製品となるのでしょうかね。
sankyo製メカを搭載する事で終わったかのように書いてしまいましたが、TEACはこの後もこの基本構成でコストの制約に縛られつつも確実に進化を遂げて行きましたので、最終モデルの8030まで確認していきたいと思います。