PIONEER
T-858


パイオニアのカセットデッキCTシリーズからTシリーズ代わってから3代目のT-858です。
Tシリーズは、818から始まって正常進化を続けていたと記憶しております。
上の写真を見て「あれ?」って思われた方はスルドイ!
T-858には本来サイドウッドは付属しておりません。以前潰した(!)T-838のサイドウッドを取り付けております。
その潰した838は状態があまりにも悪かったため潰しましたが、今回のブツは比較的キレイでH/Oの店員さんもイチオシ?でしたので、つい捕獲してしまいました(^^;
キレイな機体なら、やる気も出てくるってもんです!!
が・・・


買ってきた直後の様子です。
わりとキレイで「ちょっと高かったけどイイ買い物をした!」って満足していたのですが・・・











さっそく本体を開けてみようとしたところ、過去に素人さんが開けたと思われる形跡が・・・。

フタを閉める時にネジ穴と勘違いしてネジを突っ込んだのでしょう。
なんとなく、ちゃらんぽらんな作業っぽくて、これだけで心配になってしまいました(^^;









よーく見ると、足が純正では無いモノが付いているではありませんか!!
あちゃぁ〜・・・
この時点で、かなり戦意喪失・・・。
だいたいね、足が外されている機体ってのは、修理を諦めて足だけ貰っておこうってパターンが多いんです。
今回のパイオニアの場合はちょっとゴージャスなデザインのハニカムインシュレーターですからね、取りたくなる気持ちもわからなくもないです。

オクのブツではなく、現物を手に取って買ってきたのにこのザマ・・・
オイラも、まだまだ甘いです(^^;




内部の様子です。
1枚の基板にすべての回路が実装されています。

幸い、基板はいぢくりまわされていないようで、一安心です。










でも、部品が妙にキチンと立っていますね(^^)
いじった人のレベルがわかります。
このくらいなら、フタ開けて→わからないので諦めて→足取って売り!ってパターンだったのかなと。
それなら、さほど程度は悪くないかなと。
この時はそう思いました。

私みたいに、中途半端に知っている輩が好き勝手いぢくりまわした機体だと、ホントに厄介ですから(^^;





メカ部です。
ベルトもヘタっています。
が・・・

なんか全体的に油っぽいんですよね・・・?!









よーく見てみると、あらゆる所が油まみれです!!
あちゃー・・・
間違いありません。
CRC556かなんかで上からシューってやられています(爆)

何故こんなヒドイ事をするのか・・・理解できません。
動きが悪いから油くれれば良くなるとでも思ったのでしょうか。
だとしたら、とんでもねぇ大馬鹿野郎ですっ!!
少しは考えろよ・・・まったく!




ハッキリ言って、これはもう潰しレベル。
しかし、過去にも838を潰していますし、時間にも余裕がある時期でしたので蘇生を試みる事にしました。

フロントパネルを取り外し、メカを取り出します。
ベッタベタです。







とにかくベッタベタで、作業がイヤになります(^^;
コレ、ホントに直せるのかなぁって。

樹脂パーツは外して脱脂作業を行います。










べっとりです。

金属パーツは脱脂するとサビる可能性がありますので、根気良く拭き取ります。

地道な作業です。









リール、センサー、スイッチ、その他モロモロ全部べっとりです。

さすがに、イヤになりました(^^;
予想以上の惨劇を目の当たりにして、やっぱり潰そうかと何度も思いました。

これは、ちょっとやそっとじゃ無理ですぞ!








ベルトもご覧の通り・・・。
スプレーすれば、こうなる事はどんな素人さんでもわかるはず。
バカとかアホとかいう以前に、何も考えていないんでしょうね。
せっかくの脳みそが無意味です。
普段の生活もこんな調子なんでしょうね、きっと。

もう、死刑っ!!







外せる物は極力外して脱脂します。
組んである部分は外さないとダメですね。油が浸透していますから。
素晴らしいですよ、556の浸透力は。











ヘッドまわりの被害は軽く、問題はありませんでした。
良かった・・・(^^)

磨耗もほとんどなく、状態は良いです。
これを見て、少し元気が出てきましたよ!









メカの脱脂作業「だけ」で3時間以上かかりました。
あとは元通りに組み付けです。

ベルト3本とキャプスタンモーターは交換しました。
パイオニアの定番メニューですね。









ようやくメカの整備が完了!
いやぁ〜参った参った(^^;

CT-A9から受け継がれているリファレンスマスターメカ。
ダイキャスト部品が鉄板プレスになったりと各所にコストダウンが見られますが、カセットスタビライザーも装備され、それなりに完成された良いメカだと思っています。
でも、キャプスタンはダイレクト駆動にして欲しかったなぁ。
パイオニアのDCモーターはホントに持たないんだもん!






あとは電気系をメンテします。
お約束のハンダ割れ修正&強化です。

パイオニアはシャーシ裏面からの作業が出来ないので、基板を取り出す必要があります。
ちょっと面倒なんですよね。








オーディオ系の電源部。
音響用コンデンサに銅テープが巻き付けてあります。
けっこう手間かかっていると思いますよ。











再生イコライザです。

デュアルFETの2SK389による差動入力+オペアンプというパイオニア伝統の構成ですね。

コイル共振用のコンデンサには布テープが巻き付けてあります。
コンデンサに巻き巻きするのが好き好きなのねパイオニアさん。







その後ろ、再生ドルビー回路です。
奥にあるのは録音側のドルビー回路です。

銅版が貼り付けてありますが、恐らくCX20188あたりだと思います。










バイアス発振回路です。

ハニカム構造のBOXでしっかりシールドされています。
中にはバイアス発振回路とHX-PROのuPC1297Cが入っています。










入力端子直近にボリウムが装備され、銅メッキの箱でしっかりシールドされています。
いいですね。合理的な構造です。

これでボリウムがディテント型だったら文句無しなんですけどね(^^;










ボリウムにモーターが付いています。
CDプレーヤーに良くある可変出力ではありません。
なんとバイアス調整用のツマミが電動で動く構造なのです!

今まで見えなかったオートキャリブレーションが、見える&再調整出来るんです!
素晴らしい!早く直して動くところを見たい!








元通りに組み付けて動作チェック。
バッチリ!一発動作です!
メカも静かに動作し、安定しています。

今までの苦労が報われる瞬間です!









あとは、いつものように走行系と電気系を調整して完了です。

あともう一息!











購入時に付いていたヘンテコな足は純正品に交換します。
ええ、838の残骸です(^^;
サイドウッドも取り付けます。

捨てずに保管しておいて良かったです(^^)









完成です!!

いやぁ、なんとか潰さずに済みましたよ。
忙しい時期だったら、間違いなく潰してましたから。

838のサイドウッドを取り付けたら、ちょっと高級感がアップ!
違和感無いので、このままで使う事にしました。







外観の状態はなかなか良かったです。

ちょっと背の低いXK-S9000みたい(^^)











電動バイアス調整ツマミ、これ楽しいです!!

AUTO-BLEをはじめ自動調整ってあまり好かんのですが、この電動FLAT SYSTEMなら状態が一目でわかるし、後で再調整が可能です。
そういう意味では画期的な機構だと思います。









試聴

メカは古くからある物ですが完成度も高く、走行系は安定しており、音にもそれが現れている印象です。
銘機CT-A9Dと比較すると、A9Dの繊細で美しい高域にはかないませんが、デジタルソースを意識したのでしょうか。「押し」の強さなら858のほうが上です。
昔のパイオニアらしい音とでもいいましょうか、低域と高域にちょこっとアクセントのあるパワフルな音です。
そう書くと派手な音と思われるかもしれませんが、これが不思議と地味な感じでして、若い世代のマニア様にはあんまり受けないかも?
ボーカル域のクォリティはなかなかのものです。

この後はT-1000系に移り、コストダウンと共に電動キャリブレーション機能は廃止されてしまいました。
そう考えるとT-858は貴重な存在なのかもしれません。
デザインも音質もオーソドックスで私好み。
一時はどうなるかと思いましたが、諦めずに仕上げて本当に良かったと思えるデッキでした。