TEAC
R-919X



TEACの3ヘッドリバースデッキR-919Xです。
発売当時定価89800円で、サイドウッドは別売りで5000円でした。
このモデルは当時新品購入しましたが速攻で手放した記憶があります(^^;

見ての通り、当時の最高峰モデルのV-970Xと瓜二つなデザインで、ぶっちゃけV-970Xをリバース化させたものです。
そのため基本性能もV-970Xと同等で、地味ですがハイグレードな音質を有しているリバースデッキとなっております。

3ヘッドでリバースというと、R-999XやアカイGX-R99などが有名なところですが、このR-919Xはシングルキャプスタン方式という事もあり、さほど人気はありません。
まぁ、それらはリバース専用メカを搭載していたため別格といえば別格ですが、クローズドループ・デュアルキャプスタン機構をを維持しつつリバースというのは技術的にもなかなか難しく、俊足で反転させる事が出来ず、また動作も不安定になりがちです。
事実、これらのデッキは故障も多く維持が大変です。

その点、このR-919Xは、従来のシンプルなシングルキャプスタンを採用したため、メカの安定性と高速動作を手に入れる事が出来ました。
シングルキャプスタンゆえの走行安定性の低下(ワウフラ増大)は、リールのバックテンション制御技術「ヒステリシス・テンションサーボ」により、ワウフラ0.03%というヘタなデュアルキャプスタンをも上回る走行安定性を確保しています。
なにより、人気がほっとんど無いのでジャンク相場も安く、気軽に入手する事が出来ます(^^)

今回は、そんな隠れた名機(迷機?)R-919Xを、V-970Xとの相違点を中心に紹介したいと思います。



今回もオクでジャンク品を入手しました。
ジャンク品をちょっとツツいて動くようにしてはすっとぼけて転売している類の人からのジャンク品でしたので、多分ベルト交換だけでは直らなかったのでしょうね。

まぁ、TEACのこの手のモデルはずいぶんやっていますので、なんとかなるだろうと面白半分で勝負に出てみました(^^)

さぁ、どうなる事やら・・・!





V-970Xとの外観上の違いについては、このあたりの操作スイッチが違う程度です。

リバースデッキですので再生ボタンが両方向にあるのはもちろん、ブランクスキップやリバースモードの切り替えなどが装備されています。

ちなみに、取り扱い説明書やリモコンも共通です。





内部の様子です。

外観同様、パっと見た感じではV-970Xとの差はわかりません。










メカもこの位置から見ただけでは判別できないでしょう。

バックテンション分の配線数が増えているので判別できますが、そこまで出来るようになればもう立派な病気です(^^;








いつものようにバラします。

このへんの作業はV-970Xと全く同じですので細かい部分は省略しますね。










操作パネル部です。

基盤は共通ですが、部品の実装が変更となっています。









V-970X/R-919Xどちらでも使えるように設計されています。
このようにして合理的にコストダウンさせています。










バックテンション制御回路です。

V-970XではS側リールのみ装備ですが、R-919Xはリバースデッキですので両リールに組み込まれています。
よって、制御回路も2つ分必要となります。
リールセンサからの回転信号でテープ残量に応じてブレーキ量を電気的に制御しています。

コスト的に見れば、V-970Xよりも高価であるのは間違いないです。それで定価は1万円ダウンですから超お買い得だったという事いなります。


取り出したメカです。
ここまでくれば回転ヘッドでリバースデッキだと判別できますね。










あれれ?
ブレーキが油まみれだぞ??
こんな事は通常絶対有り得ません。
明らかに第三者が誤った作業をしたに違い無いです。

カセットデッキに限らずなんでもそうですが、給油しても良い所と悪い所があります。手当たり次第給油する事は絶対やってはいけない事です。

最近のオクのジャンク品質の低下には・・・困ったもんです。




リールセンサの取り付け位置がおかしいです。
よく見ると、無理な力を加えたようで、基盤も破損しパターンが切れています。
恐らく、リールを手前に引いて外そうとしたのでしょう。

このデッキのリールは後ろ側から外します。こういう事は一目見ればわかるはずです。一目でわからなくても技術屋の端くれなら、ほんの少しでも考えればわかるはずです。
何も考えず、ただ利益の事だけを考えて作業すると、このような結果になるのです。

まったくねぇ、せっかくなんだから少しはアタマ使ってほしいですね。
中卒だって、ちゃんとやってるんだからさ!


クイックリバースデッキなので、リーダーテープ検出用のIRセンサが付いています。

っつーか、全体的に油まみれなんですけど・・・・・
ヤだなぁ、掃除が大変ですよ・・・。









油まみれだったブレーキは洗浄して表面も整えておきました。

給油して良いのは、支点の軸部分だけです(もちろん種類や塗布量はその場所によって異なります)。摩擦面は給油厳禁です!
ブレーキの意味がわかっている人なら、わかるハズなんですけどね。









ヘッドまわりはヘタな事はされていないようで一安心です。
安心して磨き上げます。










外したリール台ASSYです。
もちろん、油まみれです・・・。

先にも書きました通り、V-970XにはS側リールにしか搭載されていないバックテンションの電磁ブレーキがR-919Xには両リールに搭載されています。
奥の緑色のテープが巻かれた電磁石に与える電圧でブレーキ量が変わる仕組みです。






アイドラーも油まみれです。
本来ここも油は厳禁です。滑ってしまってはリールに動力を伝える事が出来ません。

ここまでベタベタだと脱脂も大変です。
まさかこんなにも酷いとは・・・ギアとアームの間にあるフェルトにも油が染み込んでいますし、もうホントに勘弁して欲しいです・・・(泣






薬漬けでピッカピカになりました。
ゴムもグリップ復活処理を行い完璧です。
いや、最も完璧な方法は交換なんですけどね。
そこはホラ、素人なのでご愛嬌(^^;









ピッカピカのリール台が完成です。
とんだ足止めでした・・・。

写真は撮っていませんが、このリールモーターも分解オーバーホールしています。
コミュテーターが真っ黒になっていますので、必ず対策しましょう。








ピッカピカに仕上げたリールASSYをピッカピカに整備したベースに組み込みます。

面倒なので説明を省略していますが(^^;、整備作業はV-970Xと同じメニューを施しております。









あとは一気に仕上げます。

ヘッドブロックは回転機構を持つためV-970Xほどの剛性はありませんが、専用設計のダイキャスト製が搭載されています。
一般的な2ヘッドリバースと違い、消去ヘッドは左右にそれぞれ搭載されています。
基本は3ヘッドですが、ヘッドの数で言えば4ヘッドかも??






回転ヘッドなので、ヘッドワイヤーは柔らかい線材で余裕を持って接続されています。

回転によるストレスは少なからずこのワイヤーにかかるので、長い目で見ればいずれは断線する可能性がある事は否めません。
しかし、ここがダメになったリバースデッキというのは今までに他社製で1例しか見た事がありませんし、断線する前にメカの寿命が尽きるでしょう。
あんまり神経質になると良くないですから、お気楽に行きましょう(^^)





思わぬトラブル続出でしたが、メカのメンテが完了しました。

興味本位ですっとぼけた転売野郎のジャンク品に手を出すのはもうやめようと改めて痛感した次第です(^^;
でもまぁ、スキルは確実にアップしたと思いますので、そう考えればお得でした!?








各基板もV-970Xの時と同様に、それぞれ再ハンダや劣化部品の交換等の作業を済ませていよいよ組み付けです。












組み付け完了です。

もうね、何台もやってますので慣れたもんですよ。










いつものように調整します。












磨きあげた外装を付けて完成です。











別売りだったサイドウッドを取り付けて高級感(満足感)アップ!

やっぱり、コレクションするならサイドウッドは必需品ですね!











かんたんインプレ


メカも回路もパーツグレードもV-970Xと同じですので、出てくる音も全くと言って良いほど同じです。
走行系の安定性という点ではデュアルキャプスタンのV-970Xが優れていますが、それ以外はほぼ同等です。

細かい事を言えば、回転ヘッドとはいえオートリバースですのでリバース再生時の音質差は少なからず確認できます。
このあたりが、V-970X以上にコストがかかったモデルであるにもかかわらず1万円も安く販売した理由の一つでしょう。
アナログデッキの老舗として、利便性重視のリバースデッキを最高峰モデルのV-970Xよりも高い価格設定にする事は出来なかったのでしょう。価格でランクを下げた代わりにサイドウッドを別売りにしたのは苦肉の策だったのかもしれません。

メカの動作はV-970X同様に少々振動を伴う大きめの動作音ですが、レスポンスは良好で私的には好感が持てます。
反転時間もリバースデッキとしては合格レベル。この速度はデュアルキャプスタンでは実現不可能です。

アナログからデジタルへの過渡期に生まれた、フラッグシップベースの3ヘッドリバースR-919X。
「dbxまで搭載された3ヘッドのクイックリバースデッキ」という点だけを見ても、このデッキの存在価値が見えてくるかと思います。
この後の後継モデルR-9000ではdbxが廃止されていますからね。
これより優れたリバースは他にも多く存在しますが、私の偏った世界ではリバースNo.1モデルです。
ちょっと褒め過ぎかな?
まぁそこは変人素人ですのでご愛嬌、という事で(^^;