YAMAHA
KX-T900
私の記憶が確かなら、当時のヤマハのダブルデッキ最上位モデルだったと思います。最上位 モデルだけあって、ヘッドはアモルファス、W録音Wリバースなんてのはよくある話ですが、このデッキはダブルデッキではなく「ツインデッキ」 と位置付けられています。
当時はカセットもバブルな時代でしたから、このような高級?ダブルデッキも各社取り揃えていたものです。しかし、どれも似たような仕様だったのも事実。このジャンルのデッキはメーカーの好みや外観で選ぶような感じだったように思えました。
そこでヤマハはダブルデッキから一歩踏み出した「ツインデッキ」思想を打ち出しました。
通常のダブルデッキはW録音でもドルビーNR回路は共通ですが、このデッキは各デッキが完全独立しており、ドルビーNRまでも独立搭載しています。なのでクロスドルビーダビングはもちろん、AデッキでドルビーBでエアチェック、BデッキはドルビーCでCDダビングなんていう事を同時にこなすことが出来るのです。
KX-1000と同じチタンカラーでカッコイイです!そう、カッコイイから欲しかった、欲しかったからポチっと...(^^;
ヤフオクを見ても、タマ数少なく、出てても動作しないジャンク品が当たり前で、かろうじて動いているだけの「完動品」となると結構なお値段になってしまうようです。
それならもちろん、ジャンク品を狙ったほうが賢いですよね(^^)
そんなワケで今回のブツも動作不安定というジャンク品でしたが付属品もあり、なにより本体の状態は極上でした。
ボタンがいっぱい!
いぢくりまわすのが好きな機械マニアにはたまらないボタン数ですね。
ヘッドホン出力もボタンで切り替えるという徹底した独立仕様ですが、ボリウムが無いのがちょっと痛いです(耳が)。
うーん、やっぱりカッコイイ!!
完全独立ツインデッキの証ですね。
でも、出来れば金メッキにして欲しかったなぁ。
天板の保護ビニールの残りが...!
つまり、過去に開けられた事が無いって事です。
いやぁ、こういう機体は嬉しいですね。このところ素人さんにいぢくり回された絶望的なジャンク品ばかりに当たってて参ってたところでしたので(^^;
気持ちよく、いぢれます!
早速内部を拝見です。
結構な配線量です。今までいじってきたヤマハとはちょいと雰囲気が違います。
2つのメカはガッチリと固定されています。
電源部です。アナログ用電源には音響用コンデンサが使われていました。さすがは高級機!って思いましたが、音響用部品を使っている箇所はココだけでした.....。
基板は2枚重ねで、上がコントロールロジック基板で、下がアナログ回路になっています。
とりあえず、メカを外すのでフロントパネルを外します。
ついでに、基板の再ハンダが出来るように底板を外しておきます。
多い配線が少々邪魔ですが、比較的簡単に外す事が出来ました。
2台取り出してメンテ開始です!
メカはアルプス製でした。当時のダブルデッキに多く搭載されていたものですね。
思った通 りベルトが伸びていました。
このメカはフライホイールの回転力でメカを動作させる為、メインベルトが伸びて回転力が弱まると動作不良に陥ってしまいます。
ベルトは無条件で交換ですね。
在庫の中から他社製ですが同じサイズの物を利用しました。
外したついでにフライホイールも磨いておきます。
リバース側のフライホイールは真鍮製ですね。フォワード側に比べ径が小さいぶんを比重でカバーしているようです。
アイドラーはギア式でした。
ギアに直接作用するブレーキがステキだ(謎)
幸いグリスの固着等は無かったのですが、念のため古いグリスはふき取って、セラミックグリスを塗布しておきました。
走行系は念入りに磨き上げます。
どうです?新品みたいでしょ!
プロはともかくアマチュアはこういう部分で差を付けなくちゃですね。
ロジック基板です。
ざっと点検してコネクター等の比較的ハンダ割れを起こしやすい部分に再ハンダしておきました。
メイン基板及び電源部の再ハンダを行います。
とくに背面の端子や電源部のトランジスタは要注意です。
一通 り作業が完了したら、元通りに組み付けます。
各デッキが正常動作するようになりました。
あとは各調整を行って完了です。
が、アジマス調整する「穴」が無くて、どうにも無くて出来なくて、仕方なくフロントパネルを外して調整しました。
どちらもフォワード側だけが大幅に狂っていました。ひょっとしたらこの部分は弱い仕様なのかもしれませんね。
うーん、それにしてもカッコイイ!!
メカの動作は鈍くさいですね。クイックリバースだけど全然クイックじゃないし(^^;
アイワの瞬速Wリバースデッキとは別世界。いや、アイワの出来が良すぎるだけなんですけどね。比較しちゃ可哀想ってもんです。
で、肝心の音ですが、元気の良い音ですね。
レンジは広くないのですが、高域に適度なアクセントを付けて若者を狙ったかのような音です。デザインやツインデッキという発想は斬新でしたが音はやっぱりダブルデッキですね。
...なんて、だいぶ厳しい事書いちゃいましたけど、3ヘッドのKX-1000と同じ価格で、音もタメ張るほど良かったら、KX-1000の存在意義が無くなってしまいますからね。
KX-1000は音で勝負、KX-T900は多機能で勝負といったところですかね。この割り切った作戦は、とても正しかったと思います。これはこれで良いデッキである事は間違いないです。
でも...でも、せめてバイアス調整くらいは付けて欲しかったなぁ...
すごく多機能でカッコいいデッキなんですけどね、もう少しココロを惹き付ける何かが欲しかった...そんな残念なデッキちゃんでした。