アカイのカセットデッキGX-Z9100EXです。数有るカセットデッキの中でも背が高く高級感があるモデルであります。1989年製で当時の定価も10万円オーバーの高級機でした。
実は、アカイのデッキは気にはなっていたのですがイマイチ購入までは踏み切れずにいました。今回もジャンク品を入手し、復活させてみました。永年気になっていた製品が格安に入手することが出来ました(^^)
症状は、再生後3秒で停止してしまうというもの。ためしにカセットを入れて動作チェックしてみると、やはり3秒で停止してしまいます。しかし、なんかおかしいです。そのわずかに再生している間はFF/REWなどの操作を受け付けないのです。「なんでだろう?」とくり返しているうちに正常動作するようになてしまいました。「あれ?直っちゃった?!」と思っていたら今度はイジェクト出来なくなってしまいました。モーターの唸り音が聞こえるだけです...。こりゃ困ったぞ!
中を開けてみました。ずいぶんシンプルだと思いましたが、このスペースにはロジック回路だけしかありません。アナログオオーディオ回路はこの裏側に完全分離されているのです。
本体を裏返します。セラミック製のインシュレーターが付いています。当然のように銅メッキがふんだんに行われています。
こういうやってもあまり効果が無い事を目一杯やってるあたりがバブル期製品の特徴の一つであります。
でも、こういうのすごく好きです(^^)
ロワシャーシを外すと、出て来ました!アナログ回路です。
バイアス回路はシャーシで完全隔離されています。さすがはデッキメーカーです。
再生回路はオペアンプICを使わないディスクリート構成というなんとも贅沢な回路です。
隔離されているバイアス基板です。ドルビーHXプロを搭載していますが、定番のNEC製ICで済ませてあります。再生回路はディスクリートなんだから、できればココもディスクリートでやって欲しかったですね。
ま、HXプロをディスクリートでしっかりと組んだのはアイワ(XK-007/009など)くらいでしたから、普通 ですね。
ドルビーICはこれまた珍しい日立製のものを使っていました。この頃のデッキはほとんどがソニー製というのが一般
的でしたから、何か狙いがあっての事なのでしょうか?
ソニーと日立では音の傾向が違うと聞いた事があります。
イジェクト出来なくなったメカを良く見ると、ヘッドが下がりきらないためにイジェクト出来ないようです。人力で下げてやったところ無事カセットを取り出す事が出来ました。
さて?なんでだろう??懲りずにまたカセットを入れてチェックするとまた3秒で止まります。
原因はこのキャプスタンローラーのハウジングの軸が固着していためでした。前オーナーは強引にカセットを取り出したようで、このローラーに付いているはずのガイドが折れてなくなっています。
とりあえず、メカを取り外すためにフロントパネルを外します。
けっこう簡単に外せました。
しかし、コネクターはいくつか同一形状のものがありましたので、間違えて刺さないようにマーキングしておいた方が良いです。
一番怪しい所です。
本来ならスムースに動くはずですが、物凄くシブいです。このため、上がったら上がったっきり、下がったら下がったまんま...という状態になったわけです。
折れた破片がデッキ内にありました。
ガイドだけ取り寄せれば問題ないようです。軸の部分をアルコールで清掃して解決しました。
どうせ注文するなら消耗品も一緒に頼んでしまおうということでベルト、ピンチローラー、折れたガイドなどを手配しました。
しかし、発売から10年以上経過しているため、アイドラーローラーは供給不可とのことでした。残念。
メカをバラしてベルトを交換します。
交換ついでにフライホイールの汚れなどもキレイにします。けっこう汚れているもんです。
部品が無かったアイドラーローラーはヤスリとアルコールで鍛えてやります。これでバッチリ!
折れたガイドやピンチローラーを交換。これで交換作業は完了です。
ガイドの付いているピンチローラーを外したのでテープパス調整をします。
しかし、何故か波形が安定しません。周期的にドロップアウトして乱れます。X-Yリサージュ波形も周期的に直線/楕円をくり返します。組み間違えたのかと思い再度バラして組み直しましたが変化なし。ガタもありません。
困りました...。
原因判明!
もう一つのこのガイドまで破損していました。これじゃぁテープが安定して走行出来ません。
前オーナーはものすごく強引にカセットを取り出したのでしょう。ガイド左右ブっ壊すとはね.....(^^;
部品、あるかわからないけど注文です。無ければアウトです(汗)
注文したお店から供給不可との悲報が入りました。ま、もう無くなっちゃった会社の製品ですから仕方ないですよね。仕方ないのであとは部品取り目的でジャンク品を入手して修理するしかありません。
慌てて某オクでGX-Z6100のジャンク品を500円で入手しました。しかし、これはメカが全く別 モノで利用出来ませんでした(爆)これは後日復活させてみようと思います。
仕方がないので同機種系のジャンクを探すしかありません。
なんとなくH/Oへ行ってみたら、GX-Z7000がありました。見ての通
り(笑)完全なジャンク品です。
価格は1000円...ちと高いですが、某オクで入手するよりは送料がかからない分安いのでゲット!一緒にティアックの3ヘッド機V-770も500円でゲット。どうすんだよ....(^^;
とりあえずこれで直せるようになります!
このGX-Z7000は最初から部品取り目的でしたので、片っ端から使える部品を剥ぎ取りました。
オペアンプや使えそうなフィルムコンデンサなどなど.....これだけ活用してやれば、きっとこのZ7000も成仏してくれることでしょう(^^)
左がZ9100、右がZ7000、年代も型番も違いますが、基本的な部分は全く同じです。それだけ完成されたメカなのでしょう。
色は違いますが、無事移植完了しました。
だいたいの位置にセットして、仕上げはオシロで調整します。
測定機器をセットして調整です。
波形も安定しています。これなら問題ありません。テープパス&アライメント、ヘッドアジマスを調整し、内部の半固定抵抗の微妙なズレも細かく調整しました。
ただ、アナログ回路はひっくり返さないと出来ないので不便でした。
比較試聴用にGX-Z7100EXを用意してみました。2台重ねると、なんともいいもんですなぁ(笑)
一通り聴いてみて、どちらも低域方向にパワーのあるサウンドで、なにより走行系は見事に安定しています。ドロップアウトも少なくさすがといったところです。
驚いたのはZ7100EXとZ9100EXの音質差がほとんど無いことです。XK-007とXK-009の時は驚くほどありましたがこれとは全く逆です。うるさく言えば、Z7100で若干クールな表情になってしまう所をZ9100では温かみをうまく表現している...その差くらいですかね。低域の厚みも若干Z9100の方が上です。
やはり両機ともヘッドとメカが同じなので、このわずかな差は物量 投入の結果でしょう。それにしても高域が伸び悩んでいるのが気になります。低域方向にパワーを振っているのですが、抜けも分解能もイマイチ。全体的に細いというか薄いというか、そういう感じの音です。
一言で言えばカセットの音ですね。「ああ、カセットね」そういう音です。
けっこう辛口な事を書いちゃいましたが、音の質そのものはなかなか高いです。高域がどうのとかいうハイファイ的な音というより、音楽的というか...うまく表現出来ないのですが、そういう落ち着いた質の高い音が楽しめるデッキと思います。
しかし、どうしてもウチのメインであるアイワXK-007/009などと比較してしまうとその差は歴然で、全域での表現力やエネルギー感、特に高域の伸びという点でかなり劣っているのは事実。このことをベータま。さんに伝えたところ、ヘッドがフェライトだからではないかというアドバイスをいただきました。
驚きました。スーパーGXヘッドって、実はフェライトだったんですね。知りませんでした...。
高級デッキの定番であるアモルファスやパーマロイではなく、安価で性能の悪いフェライトを使うとは...。フェライトでは摩擦によるノイズが多いためガラスをコーティングするという凝った造り。おかげで耐久性はピカイチ!しかし、特性上2ヘッド機では磁気飽和を起こしてしまうため、苦肉の策として録音/再生それぞれ独立したギャップを持たせた「ツインフィールドスーパーGXヘッド」でなんとか対応させていたそうです。
しかし、なんでそこまでしてアカイは死ぬまでフェライトのGXにこだわり続けたのでしょうか??謎です。
今回のGX-Z9100EXですが、正直がっかりしました。ジャンクの本体と送料、修理用の部品代、Z6100と送料、ジャンクのZ7000代...全部合計すると1万円超えてしまいました。
これだけカネかけて修理して完璧な状態にしたのに、この結果でしたから...期待していただけにがっかりです。
当時、新品で買わなくて本当に良かったです。
しかし、カセットデッキの標準的な高級機の音っていうのはこういうものなのかもしれません。ティアックの高級機の音が、これをもっとヤンチャにした感じですしね。
このGX-Z9100EXの後に9100EVという機種を発売してアカイは消えてしまいました。EVは録音ヘッドと再生ヘッドのアジマスを独立調整させて搭載するという凝った造りになっていましたが、サイドパネルが樹脂製に変更されているのがどうしても納得できず、それだけの理由でサイドウッドのEXを選びました(^^;
やっぱり、高級機はサイドウッドですよ!背も高いし、カッコイイです。
音は好みではありませんでしたが、大切に使っていきたいと思います。