AKAI
GX-9



懐かしいアカイのGX-9です。
今までアカイといってもA&Dばかり紹介してきましたが、実は純粋なアカイのほうが音質も含め好みでして、記事にはしていないものの多数葬って・・・いやメンテして動態保存しています。

今回は、その中でもオートチューニング等の先進機能を搭載していたGX-9を紹介したいと思います。



84年頃の発売だったと思いますので、もう25年ですか・・・。
その割には状態の良いジャンク品をH/Oでゲットしてきました。

入手時の症状は、動作せず。当然、動きっこ無いです(^^;
メカはグリスが接着剤と化してカチコチです。
でも、キャプスタンベルトは溶けずに回っていました・・・!!








「Double Tuning Bias System」、これが最大の特徴ですかね。
この扉の奥に細かな調整用のツマミが隠されています。












早速バラします。

何度もやってますからね、慣れたもんですが、バラす度に何かあるんですよね。
ジャンクとは、そういうもんです。ハイ。










げっ!
こっ、これは・・・素人さんの手が入っている!!
まぁ、最近のH/Oのジャンク品もジャンカーに侵されていますから・・・

ちょっと前までの私なら、素人さんの手が入っている事が確認された時点で潰しを視野に入れて作業していましたが、ジャンカーによる重度の破壊品を復活させてきたお陰で根性とスキルが若干アップしてきました(^^;

気を取り直して、気を引き締めていきましょう!






とはいえ、被害という被害は無い模様・・・?
基板はいじくられた形跡がありません。

このモデルは、メカを取り出すにも上のロジック系基板を外す必要があるのですが、そこまで手が入っていません。

開けてみたものの、面倒そうだから諦めたのかな?
そう、諦める勇気も大切です(^^;







ロジック系の基板です。
メカの制御やレベルメーター等の回路が載っています。











その下にあるのが、いわゆるアナログ系ですね。

この基板に電源部から録音、再生、バイアスなど、ほぼすべての回路が実装されています。












再生イコライザは初段にデュアルFETを採用したディスクリート+オペアンプという贅沢な構成です。

2SK240が、時代を感じさせてくれますね。











こちらは録音系のバイアス回路です。

再生回路から対角線上に一番遠い位置に実装されています。











ドルビーNRは三洋製ですね。













電源部です。

制御系とアナログ系は別巻線では無かったです。共用電源ですね・・・。
実はこれ、今回初めて知りました(^^;
何度も手掛けている機体とはいえ、毎回新たな発見があるってもんです(^^)









新たな発見の記念に、コンデンサを交換しておきました。













基板の再度ハンダ等の作業が終了したら、次はいよいよメカのメンテです。













カセットスタビライザーが無いだけで、その他は基本的にGX-Z系と同じですね。
アカイといえばGXヘッドですが、私的にはヘッドよりメカのほうが魅力的ですね。
この後も長年に渡り採用されて行った完成度の高いメカです。











バラします。













やっぱり、あちこちのグリスがねっとりしています。

こうなると、給油だけでは改善できません。
極力分解して古いグリスを拭き取った上で新しいグリスと入れ替えが必要です。

間違っても、スプレーで適当にシューなんて事は厳禁です。やったら死刑ですっ!!
いや、笑い事では無いんですよ。H/Oでもカセットホルダー周辺が油でベットリしているアカイデッキを何度か見かけてますから・・・・・。





このメカで一番厄介な部分がココ。
本当は全部バラしてやりたい所ですが、樹脂製の軸に取り外し不能な金具が付いているので外せないのです。
無理にやって樹脂の軸を折ってしまったら即終了(潰し決定)ですので、ここは無理せずこのまま地道にグリス撤去作業を行います。

僅かな隙間にアルコールを染み込ませた画用紙を入れて、何度も何度もゴシゴシと。
メカの動きが軽くなるまで根性で磨き上げます。







アイドラーローラーはご覧のとおり。
薬品はもちろん、ヤスリでチョメチョメやっても無理です。
メーカーもこの世を去ってますから、他社他機種の中から使える物を探し出して使うしかありません。











最後にこのメカで最も重要でもあり見落としがちな部分を紹介しちゃいましょう。
カセットホルダーに付いている樹脂製のスプリングです。

カセットスタビライザーが装備されているメカでは問題になりませんが、GX-Z9000までのスタビライザー未搭載モデルではこのスプリングの力が経年で弱くなり、カセットを奥まで正しくセットする事が出来なくなります。
当然、この状態ではテープアライメントは正しく調整できません。
プロを謳っている修理業者でもこの事実を知らずに不完全な状態で「ナントカ調整」を施しトラブルを起こしています。

部品を交換するにも会社が無いので、私は加熱し広げて再利用する事でこのトラブルを回避させています。





組み付けて動作確認&調整です。

このメカは調整がしっかり出れば最高の安定性を発揮してくれますね。











外装を組み付けて完了です。













扉の中は録音レベルやバランス、NR切り替え、ヘッドホン端子等が装備されています。
出力レベル調整が装備されているあたりに時代を感じますね。

あ、ヘッドホン端子に僅かにハムが乗りますが、これは仕様です。
ラインアウトには出ていませんのでご安心を。









操作スイッチも大きく、動作も高速で快適です。
この当時に電動カセットホルダーというのは珍しかったのではないでしょうか。

電動ホルダーにオートチューニング、先進的なデザインに磨耗知らずのGXヘッドなどなど・・・
当時としては画期的な製品だったに違いありません。








  試聴など

歴代アカイデッキの中でも、素直な音だと思います。
A&Dになってからの音に馴染めなかった人には納得できる音ではないでしょうか。
高音が低音が輪郭が解像度がといった事よりも、音がすーっと流れるように出てくる感覚が好きな人向けですかね。
私もGX-9や93が好きですねぇ(^^)
いかにも「カセットの音」なのですが、デザイン的な錯覚?もあるのでしょうか。イイですねぇ(^^;
ハイファイ的表現という点では力不足ですが、音楽的には十分魅力のあるカセットデッキだと思います。

オートチューニングはなかなか早いです。
パイオニアCT-A1のオートBLEよりも短時間で完了します。
まぁ、パイオニアはバイアス+レベル+イコライザーの3要素を調整しているのに対してGX-9はバイアスのみですから早くて当然ですかね(^^;
まだキャリブレーションという機能が重要視されていなかった時代でしたから、この機能は画期的で驚いた人も多かったのではないでしょうか。
ボタン1つで調整完了ですからね。まるでロボット(^^;
でも、やっぱり、個人的には自動より手動のほうが楽しめるので、そうなるとGX-93になっちゃうんですよね。
そんなわけで、GX-93はゴールドのカッコイイ奴を所有しています。
GX-9も、もう1台シルバーが在るのでそっちも仕上げなきゃです!!