NEC

AVS-900

バブル期に発売されたNECのA/VセレクターAVS-900です。

当時定価79800円という高価な製品で、作りも性能も立派なものです。Y/C分離回路に加え混合回路までも搭載。セレクターとしての使い易さを追求し、なにより特筆すべき点はデジタルNRを搭載している点です。

また基本性能も優れていて、オーディオ回路は単品コンポ顔負けの構成となっており、映像回路の制御にはフォトカプラによる「オプトカップリング」という光駆動方式を採用し電気的に絶縁させているというとんでもない構成です。

今回のブツは某H/Oにて3000円で入手したものです。この手の製品はメカものではないのでそう壊れるものではないので楽勝でしょう!...と思ったのですが..........。

 

とりあえず、凄いヤニ環境で使われていたらしくパネルがヤニでコーティングされていました。

気持ち悪いのでパネルから徹底的にクリーニングしました。

 

 

 

 

 

表示管も大きく、見やすく分かりやすいです。

セレクターでここまで立派な表示管を使っているのはなかなか無いですね。

 

 

 

 

 

これがデジタルNR関係のスイッチです。

NRレベルは2段階に調整でき、静止画を楽しめるデジタルメモリーも搭載されています。

AVセレクターでこのような機能を搭載したものは他には無かったと思います。

 

 

 

 

リアパネルです。

S映像は入出力2系統と少なめですが、コンポジットが豊富で、更に何故か音声入力が充実しています。

多彩なアフレコはもちろん、ちょっとしたオーディオセレクターとしても使えますね。

 

 

 

 

まずは動作チェック!

機器を接続してみましたが、映像が出ません!!!

どうやっても、何しても映像が出力されません。これは明らかにおかしいです。おかしいのでフタあけて修理開始です。

 

なかなかしっかりとした作りです。

シールドしてあるのがデジタル回路です。

 

 

 

 

 

電源はオーディオ系とビデオ系でトランスから完全独立させるという徹底ぶり!!

こんなセレクター始めてです!

 

 

 

 

 

 

これがオプトカップリング回路です。フォトカプラを使用しています。

昔のCDプレーヤーであった「光伝送」と同じですね。制御系のノイズが信号ラインに飛び乗るのを未然に防いでいます。

 

 

 

 

 

その下にある基板がオーディオ系基板です。

映像基板とはシールド板をはさんで電源から完全独立させています。

 

 

 

 

 

 

音声切り替えには東芝の専用チップを使っているのは普通 ですが、JFETオペアンプによる入力バッファをそれぞれ搭載している点が偉いです。

出力系にはNJM5532やリレーなど高音質パーツが投入されています。

 

 

 

 

 

映像が出力されないものの電源のON/OFFで画像にポップノイズが出ているので出力系直近は動作しているようです。オシロやテスタ等であたっていった結果 、制御回路が怪しいという結論に達しました。

そこでまっ先にマイコンの出力を疑いました。切り替え信号出力をチェックしましたがキチンと出力されています。正常です。

 

 

 

 

次はマイコンの出力を受け止めるオプトカップリングのフォトカプラをチェックします。

 

 

 

 

 

 

この部分の基板裏面 を見ると何やらジャンパー処理されていました。接着剤の感じからして工場出荷時のもののようです。パターン切れを修復したようです。

怪しいので念入りにチェックしてみると、DATA信号ラインが1本断線していてフォトカプラが正常に動作していない事がわかりました。

しかし、この部分には接着剤がべったり付いているのでハンダが盛れません。

 

 

 

 

そこで、めんどくさいのでDATA信号をフォトカプラの端子へ直接ハンダ付けしてみました。

 

 

 

 

 

 

動作チェック!

電源オン!無事映像が出力されるようになりました。

しかし、絵がおかしいです。ひどいフリッカが出ています。更にモニターを選択しても出力されない時もあります。デジタルNRなどを選択すると派手に乱れてしまいます。

この件に関しましてふにょさんからアドバイスを頂きまして、電源のコンデンサがトラブルを起こし易く、これを交換しないと画像が不安定になりデジタルNRで画像も乱れるとのことです。まさに今回の症状にピッタリあてはまります。

そこで電源の電解コンをよく見てみる事にしました。

 

なんかコレ、凄いコトになっています!!

電解コンの表面が、ボコボコに変形しています!こんなの始めてみました(^^;

これはもう明らかにおかしいです。交換です!

 

 

 

 

外した電解コンです。

終わってますね。でも、コンデンサチェッカでESRを測定した限りでは良好です。ESRがOKでも容量 は抜け切っているのでしょう。

 

 

 

 

 

すべて105℃規格のものへ交換しました。

そしたら見事に直ってしまいました!デジタルNRも正常に動作し、すべてが快調です。

まさかトランス電源の電解コンがこんな事になるとは...恐ろしいです。

 

 

 

 

開けたついでにデジタル回路の電解コンも交換する事にしました。

シールド板を外さなければなりません。後からはなかなか出来ないですから気が向いているうちにやってしまいましょう!

 

 

 

 

 

シールド板外しはけっこう大変でした。もう2度とやりたくないので全数交換しておきました。

目立って悪いものは無かったので交換する必要は無かったかもしれません...。でもバブル期の製品ですから、年式を考えると長くは持たないでしょうからやっておいて損は無いと思います。

 

 

 

 

かんたんインプレ

まず使い易さですが、慣れれば問題ないでしょう。ソースモニターとREC出力が独立して出力できる点はマニアックで良いですね。画質の劣化もほとんど感じられません。やはりヘタなビデオスイッチを使わずアナログSWを使ってしっかり造った効果 でしょう。

音質もさすがに良好です。これなら安心して使えるセレクターとしてオススメできますね。

3000円という価格には正直なところ少々ためらっていましたが、この機能性能でこの価格ならとても安かったと満足しています。

ただ、デジタルNRはちょっと.....凄いです(^^;