郵政民営化のNZお手本 廃止された郵便貯金復活

 小泉内閣で郵政民営化が叫ばれ、1988年からニュージーランド(NZ)行革を見ている私も、当初はなるほどと思っていたが、今日では「待てよ!」と其の成り行きを危惧している。
 日本郵政民営化のお手本となったNZの行政改革は、POST BANKがANZ BANK(外国資本)に吸収合併され、その他の銀行も大半が外国資本の傘下となった。一定限度の預金残高がない口座に対しては、毎月高い口座維持手数料が請求されるようになり、預金口座を持てない国民が多数生じ社会問題化した。ニュージーランドでは、行き過ぎた改革の反省から、一旦廃止された郵便貯金の復活を政府は決定し、NZ POST(国営企業)が銀行業務を行うための資金投入を2001年2月に決定した。政府出資の株式銀行(KIWI BANK)は、NZ POSTが債務保証を行い2002年2月より業務を開始した。基本口座維持手数料を無料として低所得者層に優しい金融機関となっている。其の一方インターネットバンキングやテレホンバンキング、住宅ローン、学生ローンなど株式会社ならではの多角的経営も行われている。
 日本でも外資系銀行や一部の都市銀行等では、毎月平均残高20万円未満または外貨預金残高50万円未満の顧客に対して、毎月2100円の口座維持手数料請求となっている。即ち、富裕層には優しく、貧困層には更に追い討ちをかける扱いとなっている。

 NZ行革の下、地方の郵便局は廃止され、民営化による新規参入した業者も廃業している実態を、日本国民の多くは知らない。小泉首相がNZを訪れた時にマスコミに発表されたカラフルな郵便ポストも、今では投函出来ないようにテープで閉じてある。NZ全土の約三分の一もの郵便局が廃止されたため、地方に住む人々にとっては、大変な苦労を背負うこととなった。
 2006年7月までに全ての関税撤廃を謳った関税改正法も、政権交代に伴い凍結された。関税率の引き下げは外国から安い商品が大量に輸入され、其の結果、消費者物価の安定をもたらしたが一方国内生産は海外へ流失、国内の産業空洞化となっている。実に日本と似た傾向を示している。急ピッチで進んでいたNZ行革も、国民の意識変化に伴う政権交代で揺り戻しやペースダウンを生じている。
 日本政府与党関係者や郵政関係者も外務省などから情報を入手され、如何様にすれば真の改革となるか、しっかり考えて貰いたい。 以上
 2004年8月11日 写真家 縄田賴信
   参照リンク:ニュージーランド|外務省
   参照リンク:kiwi bank(公式ホームページ)
 
 

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