高齢者の無料化 見直し必要では

北海道新聞1996年(平成8年)9月18日(水曜日)読者の声・掲載
 写真家 縄田 頼信(札幌市西区・38歳)
 琴似から麻布まで、札幌市営バスを利用する機会がありました。席は運転手のすぐ後ろでした。約半数の利用者は、老人の無料パスでした。これでは市営交通が赤字になるのは明らかだと、今更ながらに驚きました。市営地下鉄をはじめ交通機関以外の一部の施設の入場料も無料だと聞きました。

 福祉の充実は、老人をすべて無料にすることだとは思えません。利用者負担の原則から、子供でもきちんと子供料金を負担しています。老人だからといって全額無料にするのではなく、せめて半額の子供料金ぐらいは、利用者負担を求めるべきだと思います。これから、どんどん高齢者が増える状況で、このままでは交通財政が破たんするのは明らかです。大幅な赤字を、子供や孫など子孫に残していいのでしょうか。
 解説
 私が最初にこの問題を提起、新聞に取り上げられたが、その後、大きな反響となった。札幌市では審議会設立、その後一律配布の見直し運用改定となり、現在も札幌市議会で有料化に向けた条例案制定が審議されている。市営交通や民間バス事業者へは、札幌市の予算で、年間35億円を越す税金が投入されている。ちなみに、市債(借金残高)は約2兆1千億円にも達し、年間予算を上回る額となっている。既に多額の借財を子孫に残し、かつ、毎年借金額を肥大化させている。

 札幌近隣の市町村は敬老パスが無かった。この投稿がきっかけとなり、小樽市では老人パワーにより新たに無料敬老パス制度が制定され、平成9年~平成15年度まで実施された。小樽市から交通事業者への負担金は毎年2億円だった。本年度(平成16年4月1日から、一律無料制度は廃止され、1回乗車毎に通常料金200円の処、100円負担(バス乗車証提示)、小樽市の負担金1億5000万円と改定された。
 石狩市でも、平成12年度からバスカード(年間5千円相当利用可能)交付が新たに実施され、2004年、年間3千円相当利用可能に改定された。千歳市では、1か月につき1千円分の回数券助成となっている。

 函館市や、高福祉が有名なデンマークを含めた北欧諸国等では、半額負担となっている例が多い。札幌市のような交通の便利が良い(定山渓まで含めた広範囲)大都市で、一律無料となっている例は、見当たらない。地方都市や山村部では、無料パス制度そのものが存在しておらず、それらの地方老人との格差を生じている。

 2004年10月22日 写真家 縄田賴信

 
 

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