ビールの冷やし賃 違法カルテルでは

朝日新聞1985年(昭和60年)4月26日(金曜日)声・掲載
 縄田頼信(会社員・26歳)
 2月の寒い日、埼玉県のA酒店にて。「ビール大瓶5本ください」「はい、1600円です」「一本310円だから1550円でしょう」「いいえ、1本320円なんです」「北海道から来たんですが向こうは310円で、全国共通値段じゃないんですか?」「ほら、この通り関東地方統一で印刷(値段表)されてきてるんです。冷やし賃という名目なんで、コーラやジュースは取ってないんですが、ビールだけもらうようになっていますので」。店主に申し訳なさそうに言われながらも買って帰るビール党の私です。
 3月のある日、B酒店にて。「ビール大瓶1本ください」「はい310円です」「表の自動販売機は320円になっていますけどどうしてですか?」「暑くなったら冷やし賃を10円もらうのですが、こう寒いともらうわけにもいかないので」と店主の弁。
 これからビールのうまい季節、このような、メーカーまたは問屋の指導による冷やし代金名目の10円は、違法カルテルの疑いもあるのでは。関係各位の調査、指導、改善を、全国のビール党の一人としてお願いしたいと思います。

 解説
 ビール冷やし賃名目の10円は、その年の夏、5円を徴収する店や、徴収撤廃の店が現れ、あっというまに、無くなった。ビール本体は、価格再販制度(本、タバコなど、値引き販売が禁止されている。)の適用除外品であるため、販売店が値引き販売しても問題なく、お酒のディスカウントが日本全国に広まっていった。
 2004年10月20日 写真家 縄田賴信
 
 
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