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2003年5月のお嬢



 5月28日

 3日寝込むだけでこんなに頭はスッキリするのか、と驚いた。
 確かに病み上がりで心身全体がボヘラァ〜としているには違いないのだが、
 どう考えても心理的なキャパは広がっている、というか余裕が出来たというか、
 澱(おり)みたいなものがザラ〜ッと当座はどこかへ取っ払われたような感覚。
 あれほど悩んでいたことが、あれほど出口の見えなかったものが、
 決して何ひとつ解決していないにも関わらず、良く言えば楽観的に、
 悪く言えばどうでもよくなっている今日の状態が果たしていいのか悪いのか。
 そもそもこの状態がそんなに長続きするものではないことは合点承知の助。
 こういう事を何度繰り返せば人並みになれるのだろうか。

 あーあー。
 そうため息をつくと、寝込んでいる間に見た3週間分の『こころ』(漱石ではなくNHKの)に
 出てくる仲村トオル(山で遭難した親子を助けに行って自分が遭難しちゃって死んじゃう、
 というヒロインの夫、朝倉優作役)がこの世の誰よりも愛しく思えて、そんな彼を探し求めて
 雪山をさまようヒロインこころの姿に、身も心もすっかり弱っていた私はオイオイ泣いて、
 そのくせ、こんなに一本気で地域医療に尽力しようとしている、
 若くて(まぁ30代くらいでOK)、独身で(まぁこの際バツイチくらいでもいいっか)、
 それで仲村トオルな人(こんなことを言ってる間は到底結婚できそうにない)がいないかと、
 本気で周りを見渡してしまうあたり、まだ熱の後遺症が残っていないわけではないようだ。

 ていうか、ありえねぇー。
 と自分を突っ込んでみたりもして。

 結局は現実逃避。



 5月27日

 嘘のように熱が下がった。体温35.5度。これ平熱。
 が、今日も仕事は休み。仕方ない。頭はまだ痛い。
 この2日間で本を2冊読めた。
 こういうので、良かったことにしよう。



 5月26日

 弱り目に祟り目。
 扁桃腺が膿んでしまい、高熱が出て初めて仕事を休んでしまった。
 平熱が36度以下なので、38度の熱には完全に敗北だ。
 かといって、仕事が気になって、オドオドしている。
 夕方職場に電話したらボスが「明日も休んでいいからちゃんと治せ」と言ってくれた。
 友人は「神さんが休めといっているのだ」と言っていた。
 そうかもしれない。
 要するに、強制終了→再起動、だ。



 5月23日

 JO-HOUSE高尾台店ライブ
 最近、弦のやさしい響きが特に好きだ。
 というわけで、大変心地よいライブでした。
 開演ギリギリに行ったら、かぶりつきの席で見られたし。

 Wes Montgomeryというギタリストの「Full House」という曲が気に入って、
 早速CDでも買って聴いてみようかと思ったら、この人の参加しているCDを
 自分が既に持っているということが判明して驚いた。
 不思議とこういう縁というのがあるものだ。

 ちょうど「超ジャズ入門」という本を読んでいたところ。
 これまでいくつかのライブを聴いてきて、この曲いいなぁ、と思ったのは、
 たいがいマイルス・デイビスの曲(弦のやさしい響きとは無縁…)だったりしたのだが、
 実はこの本の著者、「マイルスを聴け!」なんて本を書いているマイルス信者だったりして、
 これまたご縁やなぁ、と思ったり。

 とにかくマイルス・デイビスだのコルトレーンだの(他にはまだ思いつかない)、
 誰が何の楽器を弾いていたのかさえ知らずにただボサーッとライブに足を運んで
 いたのだが、なんとなーく楽しみ方のコツみたいなものを知りつつあるような気がする。
 ちょっとくらい気晴らしの出来る趣味があると悪くないかな、とも思いつつ。



 5月21日

 私みたいな人間、もうどこかに消えてなくなってしまえばいいのにと思う。
 誰からも置いていかれ、誰にもそばに居てもらえず、誰も振り向かない。
 そもそもそんなことを求めるほうが、馬鹿げているのだとも思いつつ。
 笑うことにも疲れてしまった。
 そんな思いとは裏腹にあがり続けるテンションと徐々に失われゆく力。
 もはや何が辛いのかさえもわからなくなった。
 ひょっとして本当は少しも辛くないのかもしれない。
 だからといって、だったらどうだというのか。
 私の存在の薄さをどうにかすることに、何も何の役にも立ちはしないのに。
 私だって翼が欲しい。
 こんなときにきれいにさえずる口ばしが欲しい。
 何かを作り出す腕が欲しい。
 だからといって、なにをするというのだ。
 何もすることなどないくせに。

 本当はみんなと一緒がいいんだ。
 本当はごく平凡に幸せになれたらいいんだ。
 本当は追いかける夢なんてどこにもないんだ。
 本当はただ少し泣きたいだけなんだ。