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 2002年1月のお嬢



 1月23日

 今年初めて読み終えた本は、漱石の『こころ』であった。
 10年ぶりくらいで読んだ。
 うーむ。深い。
 どういうわけか、私の好む小説は、人がよく死ぬ。

 『アルジャーノンに花束を』を読み始める。
 今わたしが『ハリーポッター…』を読まないように、流行に乗せられるのが嫌で、
 ずっと読まずにいた本である。
 いよいよ本気で読みたくなってきたので、ついにとうとう手を出した。
 どういうわけか、意味もなく鼻の奥がツンとなる本ではある。
 まだ数ページしか読んでいないのだが。
 『レナードの朝』とは関係有るのですか?
 誰か知っている人が居たら、教えて下さい。

 会社で電話会議なるものに出席した。
 机の上にあるマイク付きのプレステみたいなものが電話兼スピーカーとなって、
 全国の10カ所ほどのセンターと繋がって、あーだのこーだの、話すわけだ。
 回線を繋ぐと「ピンポーン♪会議に新しい方が参加されました」と電子音声が流れる。
 おお、まさにチャットの世界。
 顔が見えないから、みんな好き勝手に解決のつかない愚痴を言い放って、
 結局は責任のなすりつけのような議論で時間切れ、アウト。
 これぞ、ホントの「机上の空論」。
 どうだかなぁ、と思うよ、本当に。



 1月21日

 意外と人は人のことを見ていないもんだ、という話。
 職場の座席決め(女30人の所帯だと、色々あるんである)をするというので、
 話し合いに加わってくれとお局衆に声をかけられた。
 初めはしらーっとしていたのだが、あまりに話が進展しないので、
 A嬢はのんびりやだけどしっかりしていて、B嬢は横着者、
 C嬢はせっかちなので隣に落ち着いた押さえの効く人を、D嬢の横には相談役を、
 なんて事を言ってみたら、アッという間に席が決まった。
 どーしてあなたはそんなに人のことをわかっているの、とお局は言うので、
 2週間も同じ顔ぶれで過ごしていれば、大概のことは見えてくるでしょー、と言うと、
 いやいや、あたしら、皆の顔も名前も一致していない、というのである。
 そら、コレとか、アレとか言ってりゃ、名前も覚えられないか。
 だから、あれもこれも、マニュアルを作ってがんじがらめにしないと、事が上手く運ばないのか。
 なるほどー、と妙に納得してみたりする。
 普段から、街にいても道を歩いていても、他人の観察が好きだとは自覚していたが、
 その趣味が、意外なところで役に立ったというわけだ。
 まったく、何が役に立つのか解らない。



 1月16日

 それでも私の日記が読みたいですか。

 野暮用処理のために名簿を貰うと、私の名前の前に「●」が。
 下の方には「●←チーフ」と書いてある。
 ていうか、そんな話、私は聞いてない、というところから、今年の仕事は始まった。

 お局が3人いる。
 それから仲間、いや、彼女らのいう「兵隊」が30人ほどと、私ともう一人の古株。
 ていうか、古株さんは1年のキャリア。私は2ヶ月しか経ってないのに、みんな辞めたから、
 人が他にはいないのだ、なんて話はさておいて。
 兵隊には屈辱的なあだ名がつけられ、あだ名のない人は、コレ、とか、アレと呼ばれている。
 私はというと「なっち」などという、鳥肌の立つようなあだ名を付けられ、
 ミーティングといった公の場でも、あたしは「なっち」と呼ばれるのである。ああ、気持ち悪い。

 とにかくお局の手下と思われるのだけは、嫌なのだ。
 それではこの先、皆と一緒に仕事がしていけなくるわけで、別に仲良しグループを作る気など、
 微塵もないのだが、彼女らの手下に思われてはまずいわけ。
 あたしは一匹狼の仕事人で居たいわけ。
 部下だからと言って、「アレ」だの「コレ」だの、人間に対してそういう扱い方をする人を、
 あたしは決して許さない。彼女らはバカだ。

 と、そんなこんなで、毎日3時間やら4時間の残業三昧。
 来月は金持ちやぞ。
 文句あっか。
 ていうか、勉強する時間をとるために、派遣社員になったはずなのに。



 1月3日

 昨日、同窓会の直前に、もう何年も会っていない幼なじみが帰省する、という噂を聞いて、
 実家に電話をかけてみた。

 「もしもーし、おばさん、ご無沙汰してまーす、Sちゃん帰ってます?」
 「え、あの子帰って来るって?ていうか、私、もうあの子死んだと思ってるからさー」
 「はい?死んだ?」
 「そうそう、もう、あの子のことは、なかったことにしといてちょーだい、ってみんなにも伝えてよ」
 「???」
 「いや、ほんとに、あの子は死んだからさ。アッハッハッハッハー」

 と、おばちゃん、機関銃のように声高らかに言うのである。
 件の娘は遠く北海道で新聞記者になった。
 人繰りの厳しい中で、盆も正月も帰れないことが何年も続いて、
 おばさんも悟りの域に入ったという感じだ。
 それだけに、今度の帰省がかなり嬉しいんだろう。
 まさに、That's おしょーがつエンターテイメント!である。結構結構。

 同窓会は、なまじっか中途半端に名門めいた学校を出てしまったものだから、
 とにかくブルジョア、プチブルの集まりで、ここ数年すっかりうんざりしていて、
 去年はついにずる休みをかましてしまったのである。
 そしたら、深夜遅くまで延々とケータイが鳴って、それはそれで酷い目にあった。
 ってなわけで、なんとなく出席。
 それでもまぁ、体調が良かったせいもあるのだろうが、結構楽しかったのである。
 ひとつ驚いたのは、私がかつてモテていた、という証言を得たことである。
 そうなのか?あたしゃ、そんなの知らないよ。
 ってか、誰にモテていたんだ?私。おしえてくれー(←追求しそびれたらしい)。
 そして、最後には案の定、あんたが飲み屋をやったら、きっと流行るはず、
 とか言われて、帰途についた。
 まったく、イイんだか、ワルいんだか、さっぱりわからんのだが、
 とりあえず、ご苦労さん。
 みなさん、今年もお元気で。



 1月2日

 昨日はさすがに飲み過ぎた。
 というか、4時頃帰って、それから昼に起きて、家族で正月。
 酒飲みの従兄弟夫婦は遠方からの参戦で、酒癖の宜しくないオバも中盤より登場。
 ピンクのシャンパンと日本酒の源酒とかいう濃いぃヤツで試合開始。もとい、カンパーイ。
 自慢じゃないが、我が家のおせちは美味い。
 今年からは、料理学校に通う妹も数品の出品で、新しい風なんぞ吹き込んじゃったりして。
 ま、あたしゃ、楽しく美味く飲めりゃいいんだけどねー。
 そして3時間ほど飲み続けた頃から、脱落者がポツリポツリと。
 結局、予想通りというのか、なんなのか、私だけが途中休憩もなく、丸12時間飲んでいた。
 ワインが3本ほど空いた頃、思いつきで「白身魚のソテーが食いたい」と言ってみたら、
 ホントに出てきて驚いた。うちはレストランかっつーの。
 はふー。
 もう、今日が何日の何時か、朝なのか夜なのか、もうどうでも良くなった。
 いや、どうでもいいというよりも、なにがなんだかよく分からない、といった方が正しいか。
 そして、今日は同窓会。
 今年は今のところ、しらふで居る時間より、飲んでる時間の方が長いのである。



 1月1日 謹賀新年

 大晦日の夜8時から延々と飲み始めてはや4軒目。
 他のお客さんからの差し入れだというドンペリでお正月らしいカクテルを。
 と、なんと!
 グラスがひっくり返った!
 ドンペリこぼしちゃった!
 バカラ(に違いない、きっとそうだ、だって他のグラスみんなバカラだもん)割っちゃった!
 なんてこった。
 年明け早々、先が思いやられるぜ。いえーい。

 みなさま、本年もよろしくお付き合いのほど、お願いします。