キタウラ設計室

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平岸の家SGW

住宅
木造・2階建て
延床面積 83.98㎡
写真撮影:岩浪 睦

6mほど高低差のある急斜面が、全体の3割を占める三角形の敷地。北東側の大きなマンションを背にして、南側に地形の起伏を生かした楽しげな公園が広がり、西側斜面の木立が枝を広げ緑の壁を成している。道路からの人の目をかわしながら、 公園の奥へ伸びる心地よい幾筋かの視線と、木立の幹や枝葉をさまざまな角度から取り込み、開口部と内部空間を貫く視線に重ねていく。日常生活の視線が交差するとき、連動して魅力的な景色を切り取る、というのが計画の主題である。
屋根からの落雪を考慮して居間を地面から持ち上げ、半階下がって玄関と水廻り、半階上がって寝室と子供室。生活の中心である居間が、階段の踊り場になるような断面構成である。床の落差により幾つかの部屋として使い分けられるが、 間仕切りのない一室空間であり、床高に沿って視線は立体的に結びつけられる。家族は互いの気配を強く感じるため、別室にいながら普通に会話ができる距離感である。西側斜面へ向かって流れる勾配屋根が、外観のフォルムと内部空間の ボリュームを決定付けている。その軒先に大きな窓をあけて木立の緑を居間に取り込み、斜め天井が2階からの視線を伏角に誘導し、居間の窓から斜面をかすめて木々の足元へ連続する。プライバシーを確保しながら高い位置で公園の緑へ 視界をつなげる南側の窓や、個室から朝方の光を居間に引き込む東側の窓も同様に、内部空間の連続により家全体で共有されている。それらの窓を基点として、選り好みの景色をつなぎ合わせると、日常の対話から生まれる視線に重なるよう計画した。 生活動線の中から、ある距離を持って家族の姿を見るとき、公園の見事な木々や緩やかに波打つ芝生、斜面の木立や枝葉の間から見え隠れする街の景色が背景として映り込む仕掛けである。

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