JR宛ての要望書


 北鎌倉駅ホーム横の岩塊・トンネルの現状を知ってもらうため、岩塊の一部権利者であるJR宛てに以下のような要望書を提出いたしました。

北鎌倉駅添いの岩塊・トンネルの保存を求める要望書

1 要望の趣旨
 今年7月から8月にかけて、都市整備部・道路課によって、北鎌倉駅添いの岩塊・トンネルを壊して4m道路を通すという計画が急ピッチで進行しています。この岩塊・トンネルは、貴重な史跡であり、地元民が愛でる慣れ親しんだ景観に他なりません。加えて、トンネル内部にはめずらしい地層の露頭もあります。
 鎌倉市と共に貴社の用地でもあるこの場所を破壊することなく、安全を確保しつつ保存に向けて尽力されるようお願い申し上げます。

2 要望の理由など
1)この岩塊は、横須賀線開通時に一部が破壊されたとはいえ、円覚寺の結界にあたる貴重な史跡として残存しているものです。北鎌倉の地元住民はもとより、訪れるたくさんの観光客も、およそ85年前の昭和初期に掘られたトンネルも含め、慈しみ愛でる景観です。「かまくら景観百選」に選ばれている北鎌倉駅の景観の保存を心から願います。
2)さらに、北鎌倉駅は、運輸省(現・国土交通省)関東運輸局管内の特徴ある駅として、1997年第1回選定駅で真っ先に「関東の駅百選」に選ばれています。「鉄道の日」記念行事の一環として選定されたのは「古都鎌倉にふさわしく、静かで素朴な駅」との理由からでした。この北鎌倉駅の価値は、岩塊・トンネルをはじめとする、他に類をみない独特な周辺環境で成り立っているのではないでしょうか。
3)トンネルはまた、めずらしい地層としても貴重なものです。7月29日の「文化財専門委員会会議」では、地質学の専門家の方は、約300万年前の丹沢噴火で積もってできた、鎌倉ガーネットという地層の露頭で、「北鎌倉のトンネルの所が、それを観察するのに最適で、地層が傾いているのがそのまま見られる」「できれば生で見られるようにしてほしい」と語っています。
4)「北鎌倉駅裏トンネルの安全対策協議会」(鎌倉市が事務局で、山ノ内8町内会をはじめ、大船、小袋谷、市場、高野台の計12の町内会長、円覚寺、雲頂庵、学校関係者が参加)が7、8月と開催され、都市整備部・道路課による開削工事(岩塊とトンネルの破壊)が強引に推し進められつつあります。何よりも問題なのは、地元住民のほとんどすべてに何も知らせないままに、事が決められていくことです。
5)1988年(昭和63年)に市が同様の破壊を計画して挫折してからおよそ四半世紀たち、危険が差し迫ったというならば、列車や車両の振動もさることながら、岩塊上部の手入れをせずに荒れ放題に放置してきたことに何よりも責任があります。安全のためなら、トンネルの両側に棒をたてて車両の通行を止め、現在トンネルの円覚寺側にある臨時の改札を大船側にも設けて迂回して通学・通行できるようにするなど、保存しつつ安全を図る案もいろいろ考えられます。

 以上の主旨から、取り返しのつかない禍根を後世に残さぬよう、地元住民の意向を尊重され、保存に尽力されるようお願い致します。

2014年9月17日
東日本旅客鉄道株式会社横浜支社 様

北鎌倉史跡研究会代表 出口 茂