日本考古学協会が緑の洞門保存の要望書を提出!


 1月28日、日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会により鎌倉市長・同教育長・神奈川県知事・同教育長宛てに緑の洞門(円覚寺西側結界遺構)の保存を求める要望書(「鎌倉市円覚寺西側結界遺構の保存に関する要望書」)が提出されました。

※日本考古学協会(wikipediaより)
   
 一般社団法人 日本考古学協会(にほんこうこがくきょうかい) は、埋蔵文化財の保護、関連学術団体との連携・協力、国際交流などを目的に1948年に結成された考古学の学会である。
 考古学界ではもっとも権威ある団体で、埋蔵文化財行政等にも強い影響力を持つ。現在の会員数は約4000名。入会資格は25歳以上、著書・論文・発掘報告書いずれか1篇以上、あるいは資料紹介や分担執筆など3篇以上が条件で、査読論文までは求められないが、協会の審査委員会で著書等の審査をされ、その後現会員からの意見等を受け付け問題がなければ入会出来る。会員は大学、博物館など公的教育機関の研究者と地方自治体の埋蔵文化財担当職員、民間調査会社所属の研究員などによって占められている。

 考古学界最大の学会が緑の洞門のある岩塊の歴史的価値を指摘し、文化財保護の観点から安全性に配慮した保存を求めていることは大きな意味があると考えます。以下に要望書の全文を掲載いたします。

神奈川県知事  黒 岩 祐 治 様
神奈川県教育長 桐 谷 次 郎 様
鎌倉市長    松 尾  崇 様
鎌倉市教育長  安良岡 靖史 様

一般社団法人日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員会
       委員長 矢 島 國 雄

鎌倉市円覚寺西側結界遺構の保存に関する要望書

 標記の遺構は、JR横須賀線北鎌倉駅下り線ホームの中ほどに、北側の丘陵から突き出た岩塊です。小さな洞門の開けられた岩塊は、北鎌倉の風景によく溶け込み、近隣住民のみならず観光客にも鎌倉の入口の象徴的存在として永く親しまれてきました。しかし、この岩塊の意義は何よりその歴史性にあります。線路に切断されているとはいえ、本岩塊は鎌倉を代表する寺院の一つ円覚寺の寺域範囲を示す西側結界として、「円覚寺境内絵図」中に描かれているものであり、同寺創建以前には鎌倉幕府三代執権北条泰時がおこなった「四角四境鬼気祭」という境界祭祀の隣接地でもあります。さらにさかのぼれば源氏の先祖により、平安時代後期以来、鎌倉の北の境界とされてきた可能性の高いものです。まさしくこれは中世鎌倉の景観を今に伝える歴史的遺産であり、世界遺産再登録をあらためて目指す鎌倉市にとっても、将来、「武家の都」の資産として有効な活用が望めるものです。
 ところが、現在、鎌倉市都市整備部は崩落の危険性があるとして、これを完全に削り取ってコンクリートの擁壁に変える計画を進めています。住環境の安全性の確保は何より優先されなければなりませんが、遺構の歴史的意義を無視した今回の計画については撤回を求めざるを得ません。かつて鎌倉市内に数千基もあったやぐらは、次々に削り取られてコンクリートの擁壁となり、気がつくとその多くが失われていました。このことが世界遺産不登録の一因となったのは明らかです。今また、町角に残る貴重な中世の風景が失われようとしています。
遺跡は一度失われると二度と元には戻りません。1000年近く前から生き続けてきた遺跡が、この工事によって失われようとしています。市長および都市整備部におかれては、この計画の無謀さをぜひ認識していただきたく、賢明なご判断をお願いするしだいです。
 以上のことから、日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は、文化財保護の観点によりこの事態を深く憂慮し、下記のとおり鎌倉市当局に工事計画の撤回を求めます。

1. 結界遺構の削平計画をいったん白紙に戻し、その上であらためて歴史遺産の保全と安全性の確保という双方に配慮した新たな措置を検討すること。

以上