回答へのコメント(公開質問状回答をこう読む)


平成27310日付
北鎌倉「緑の洞門」の保存と安全対策についての公開質問状 に対する、鎌倉市都市整備部道路課からの回答と見解

【質問状の構成】

A)昨年10月に地元12町内会へ回覧された文書について

 ①過去に崩落が発生としている件
   Q1:記録詳細や写真の開示
   Q2:東日本大震災時の崩落状況

 ②通行者だけでなく列車の脱線事故や乗客などを含む重大な事故が発生としている件
   Q3:根拠の説明
   Q4:推定破壊モードの図の位置や場所の説明
   Q5:力が集中しているとした解析結果の説明

 ③:北鎌倉駅裏トンネルの安全対策協議会
   Q6:町内会招集経緯についての指摘
   Q7:協議会構成員招聘の不明瞭さについての指摘

 ④:協議会規約
   Q8:協議会規約の不明瞭さについての指摘

 ⑤:通行止め
   Q9:通行止めを判断する根拠

B)日本考古学協会からの保存要望書に対する回答について

   Q10:「壁が薄く50センチの厚み」としている根拠
   Q11:「かろうじてその安定性を保っている」としている根拠
   Q12:「剥離・崩落の危険性が高まっている」としている根拠
   Q13:樹木を放置し手入れをしてこなかった理由
   Q14:JR横須賀線への影響などを想定した根拠

C)洞門の構造についての認識について

   Q15:断面以外の図面の提示

以降、本文・回答・当会の見解の順で記載する。


A)昨年10月に地元12町内会に回覧された、鎌倉市都市整備部を事務担当とする全11ページの文書についておききします。(以下,「回覧板文書」とする)

① 同文書の1ページ目ににおいて、以下のように記載があります。

Q1;どのような崩落がどのような規模でおこったのか、記録や写真はありますか?

当会コメント:
Q1;崩落規模・詳細は安全対策のために、かならず必要な、重要な情報です。記録,写真、情報入手手段が示されていません。

Q2;東日本大震災の時には、崩落はなかったのですか?

当会コメント:
かなりの強度があることの証左とおもわれます。

② 同文書2ページ目において、以下のように記載があります。

なお、参考としてあげられた推定破壊モードのトンネル断面図には、トンネルのどの部分にあたるかの記載がありません。

Q3;同文書において記載されていることを、根拠となる詳細資料を提示して論理的にご説明ください。ことに、二倍のフォントでゴシック太文字で描かれ下線を施した部分については、詳しくご説明ください。

当会コメント:
トンネル側壁部に300kN/m2という応力が加わっているという事が示されました(算定根拠は不明)。その力を上回っていればトンネルに強度がある、下回っていれば強度がないという事です。(一軸圧縮)強度というのは岩のサンプル(試供体)を採取し測定試験にかけて求められます。「崩壊モード図」の横断面はトンネルのほぼ中央部15,000 ポイントにあたるため、この地点でのサンプルを見ると、440501kN/m2と、300をかなり上回る数値になっています。一方、114168kN/m2という弱い方のサンプルは、トンネルの外つまりトンネルの天井が終わって更に鎌倉寄りの、側部のみ山側に沿っている部分(サンプ試料4)から採取されています。すなわち、問題となっているトンネル中央部には、十分な強度が備わっていることになり、破壊の可能性大というのは、明らかに誤読です。
この報告引用の後半部分は、日本語としても不自然で、どちらともとれるような曖昧な言い回しとなっています。後半部分は、調査に当たった技術者でなく別の担当者(あまり現場知識のない?)が作成したものかもしれません。

Q4;推定破壊モードの図は、トンネルのどの位置における断面図ですか?平面図上の直線で示してください。その直線は、山側にも及んでいるはずですから、トンネルだけでなく、山の背後の墓地部分を含む横断線を示してください。

当会コメント:
既に回覧されている図を新たに作図するという不思議な回答です。町内回覧に供されている公的文書ですから、「いまだ調査中」というのは論外です。きちんとした平面図がこの時点で存在しないのであれば、「どの箇所の強度が弱いのか検討する事ができません。

Q5;同図における赤文字による図の補足コメントについて、それぞれ詳しく根拠となる資料をあげて説明してください。「力が集中」については、他の断面や、トンネルの他の部分(山側や、天井部分など)とくらべどのように土圧作用が集中しているのか、数字とその算定過程をあげて説明してください。6枚の図のうち5枚に、土圧作用を示す赤い矢印と黄色の矢印がありますが、これらの根拠となる解析結果を生データを含め示してください。

当会コメント:
Q3と全く同じ部分の引用です。これは強度についての解説部分であって、土圧作用については、述べられていません。土圧作用の算定過程のデータも全く提供されていません。きちんとしたデータ公開をもとめたいところです。

③ 同文書に「北鎌倉駅裏トンネル対策協議会」(以下協議会とする)についての記載があります。

上記文書についておたずねします・

Q6;地元12町内会の選定は、駅・トンネルからの距離に鑑みて、台町内会を含んでもおかしくないと思われます。これら町内会の招集がどのように企画されたかの経緯を示してください。

当会コメント:
平成22年に出された要望書がきっかけとのこと。しかし、最終的にはトンネルの破壊・道路拡幅は、地域の都市計画全体と関わってきます。このような大きな問題の決定に関わる協議会の構成員を、陳情をあげた町内のみに限定するのは、市政のありかたとしては問題性が大きいと考えます。

Q7: 各町内会長、学校など、協議会構成員は、誰がどのように招聘したのか、具体的に教えてください。特に学校に対する招聘状にあたるものは、これを提示してください。

当会コメント:
同じ鎌倉市立でありながら、小坂小学校は参加し、岩瀬中学校は参加していません。また、学校の設置主体が鎌倉市(行政側)となるので、中立性をもった協議会の構成メンバーとしては難しい立場になるかと考えます。大船高校については、設立当時より通学時の駅利用について様々な問題があり、地域との取り決めがあったとも聞いています。

④ 協議会規約(鎌倉市ホームページより)に記載では単に「安全対策」としか記載されていないのに、同文書には「恒久的な」と踏み込んだ表現が追加されて記されています。

Q8:上記のような食い違いは何故生じているのか、「恒久的な安全対策」とは具体的に何をさすのか、また、鎌倉市道路管理者とは、誰のことを指すのか、またいつから管理責任が生じているのか、提示してください。

当会コメント:
緊急仮設工事についての話し合いとして始まった協議会の目的は、途中から恒久工事(開削)による安全対策、という目的にすり替わったようです。規約にない目的を勝手に表記するのは言語道断。必要なら規約を改正すべきではありませんか?

⑤ 同文書には通行止めについての記載が有ります。

Q9;『荒天時』『大きな揺れ』とは,具体的にどの程度をさすのか、規定を示してください。それは市内の他の箇所との整合性がありますか?あるならその根拠を示してください。また、これまでにいつ,どのように何回の通行止めが行われたのか示してください。

当会コメント:
天候と洞門の強度との関連は特に指摘されていません。あいまいな「危険」の認定で通行止めを実施することは、危険を煽る一種のポーズでは?という疑いがあります。


B)2月議会中の建設常任委員会(2/25)において、参考資料として示された、日本考古学協会からの要望書に対する回答(鎌道路第906)についておたずねします。

Q10; 「トンネルの線路側の壁は、薄いところで50センチ程度の厚みであり、その部分で崖上(山)の荷重を支えているものと推測されます。」と回答しています。具体的にどの箇所がそれにあたり、誰がどのように計測したのでしょうか?

当会コメント:
情報公開をして取り寄せた図面を確認しましたが、50センチという記載はありませんでした。洞門のほぼ中心部分にあたるNo.0+15.000を含む平面図にわずかに記載されている標高から換算すると、壁はもっと厚みがあるようです。
なお、回覧資料にはNo.0+15.000断面図が使われていますが、この作図は不正確と私たちは考えています。

Q11;「平成17年度に実施したトンネル点検調査の結果では、トンネルは「現状においてはかろうじてその安定性を保っているものと想定される」とありますが、どの調査のどの箇所をさしているのか、原資料を提示してください。

当会コメント:
踏み込んだ回答を避けているようです。引用されている報告から資料を示します。(2-15.2-16,2-17)(当日配布)
2-15にあるように、サンプリング箇所は計4カ所。それぞれのサンプルについて強度(2-16)と脆さ(2-17)が試験されています。強度についてはQ3で解説しました。脆さについてみてみましょう。トンネル中央部の「試料2」は、最も良好な成績を示しています。一番脆いのはやはり大船側の抗口外の箇所(試料4)です。これらの結果からは、トンネル全体の安定性が弱い、という結論は到底導きだせません。

Q12:「平成25年度に再度実施した点検調査の結果では、「固結度の低い地山状態に加え、風化・浸食や樹根の侵入などの影響により、坑口やトンネルの天端における剥離・崩落の危険性が高まっている状態と判定される」との見解が示されています」とあります。原資料(平成25年度調査全体)を提示してください。

当会のコメント:
私たちの把握している限り、文書タイトルからして「平成25年度トンネル点検業務委託」(日本シビックコンサルタント)というものが別に存在し、日本考古学協会への回答では、こちらの資料を指していると思われます。なぜ道路課が違う報告(当会が現在公開請求中)を挙げているのか理解できません。また、日本考古学協会の要望書への回答という公式文書に、「未だ成果物があがっていません、根拠を示せません」ということでは許されません。

Q13:「樹根の侵入」については、樹木の手入れを定期的に行っていれば平成25年の調査で指摘されずに済んだと想定されます。市が今まで手入れをしてこなかった理由、または市の所有管理地以外の土地所有者に対して勧告をしなかった理由を提示してください。

当会のコメント:
この理屈は全く理解不能で、樹木の手入れなどを行ってこなかった事の言い逃れ,責任放棄と読めます。この報告では、樹根の影響は、むしろ大船側の坑口上部に指摘されており、樹根を取り除いたり、トンネル上部の樹木に対しての何らかの対策が必要と思われます。わたしたちは、このことについて述べていたと思われる平成16年度報告「(仮称)北鎌倉人道隧道補修計画現地報告書」を請求しましたが、「存在が確認できませんでした」という不存在決定通知を受け取りました。

Q14; 「線路側の壁が崩壊した場合は、トンネルの上部の崖が崩落し、隣接するJR横須賀線軌道敷(ホームや線路内)への影響や、線路近接家屋への二次災害も懸念されます。」とあります。どのような根拠・資料で、どのような崩壊が想定されているのでしょうか。

当会コメント:
この資料は、「もし急傾斜地が崩壊した場合に、どの程度の範囲に被害が及ぶか」という一般論です。北鎌倉のこのトンネルの場合、どの部分にどのくらいの量(高さ)の土砂量が想定されているのか、全く示されませんでした。測量を行ったのでしょうから、きちんと示してほしいものです。


C)洞門の安全対策を共通理解で検討するためには、洞門全体の構造を理解し強度を補う個所を見極める必要があります。

Q15:断面図だけでなく、洞門全体の構造を多角的に網羅した詳細な図面を提示いただくようお願い致します。

当会のコメント:
私たちは、トンネルの内部測量図,外部測量図、正確な断面図をもとに、安全策をかんがえてゆきたいのですが、そのための資料がまだ存在しないといわれ、一方で「全体崩壊」の危険を主張されるのは納得できません。