鎌倉市消防本部 警防救急課 中嶋課長へのインタビュー (7月27日)


警防救急課の中嶋です。
消防署は実際に災害があった時に実働部隊が対応していますが、警防救急課は本部でその実働部隊を支援し、大元の計画を立てたりしているところです。

----以前、八雲神社下の民家火災で一名亡くなったが、火元の一棟だけで延焼を防げたということは、消火活動には問題なかったということか

どういう状況で亡くなったかですが、その人が119番していたら、119番しながら逃げたと思います。火の回りが速くて巻き込まれてそこで倒れたのか、火災の通報はその方からでなく、付近からの「煙が出ている」というものでした。

----トンネルのせいで消防の到着が遅れるということがあるのか

鎌倉市の土地柄、特有の谷戸がある。もっと厳しい場所はあります。仮に完全に線路際が通れるということなら、それに合わせた対策ができるというだけのことであり、どこに基準を置くかというと、今の状態で完璧であるようにやっています。
我々はこの(図面の)ように必ず計画を立てています。一番厳しい場所を想定して計画を立てる。これを各職員に周知し、関係部局は全てそれについての図上訓練、現地を確認して、全て網羅してやっていく。最悪の状況、場所を想定して、ここがトンネルなので、一番奥、要するに一番ホースを伸ばすということです。

----そうすると、ここが通れる通れないで、計画は

変わらないです。
ここが通れたとしても、この先が、権兵衛踏切の方に向かって、民家がセットバックしない限り。ここが通れたとしても消火栓がありません。
トンネルが通れなくても、JRと協定を結んでいるが、トンネルの横はJRの踏切、今はトンネルの両脇に改札があり、ホースはこんなものなので隊員が容易に入れる。洞門の50メートル手前に消火栓がある。消火栓に着いたら隊員が一人入ってホースを一本延ばして、すぐここへ行けます。
消防車も救急車もここ(洞門の手前)まで入れる。鎌倉隊も大船隊も入れるようになっている。大船部隊は先着隊で八雲神社の防火水槽に。二次隊がなぜこの消火栓から延ばしているかというと、防火水槽は約40立方米、40トン、普通に放水していれば20分くらいなので、その補給をするのです。

----「以前、救急車が何処から入っていいのか判らず、時間がたって住民がなくなった」などの噂があるが

消防指令センターで部隊、消防車を全て把握して指令しています。119番をかけたその時点で地図上に表示される。場所が分からないとか、今現在ではあり得ない。
通報自体が土地勘がなくてというのはあり得る。

----「最近、緊急車が通れないため担架での搬送になり、3人の方が間に合わずに死んでいる」(平成22年の「面談の概要メモ」より)とあるが

勿論救急車が入れないところは沢山あるが、車両を置いて、ストレッチャー(写真参照)という車輪のついたベッドで行きます。救急隊だけだと難しい場合、PA連携といって隊員を多くして先に消防隊を行かせて現場をアップさせる。救急隊は3人、消防隊は4人いるので、より多くの人間で現場に駆けつけて確実に速やかに搬送準備に掛かる。先に行った消防隊も必要とあれば心肺蘇生法など救急の処置をします。
階段があるなどは、殆どPA連携。マンションなどの場合も、エレベーターが担架が入らない場合がある。階段を使わなければならない場合は、オペレータの方で救急隊の3人ではできないと判断した時には、消防隊も使ってマンパワーで対応します。

----どんなに早くついても、もう亡くなっているということは勿論ある

時間が掛かり過ぎた場合は必ず報告をしなければならないので、記録が残っている。そのために間に合わずに亡くなったとなれば重大なことなので、検証されているはずです。
CPA状態、もう呼吸がないという時には、救命士に許されている処置を先生と連絡を取りながら病院に運びます。
最終的には病院に搬送して病院の先生が死亡確認を取る。
現場で死亡されていて、病院に運ばない理由というのは、メディカル・コントロールの6項目というのがあり、勿論病院の先生に連絡して状態を確認しあって、先生がそれは搬送しないで良いという訳ですが、そうした場合には直ぐ警察の方に連絡して警察の引継ぎが入ります。

国が示している消防力の整備指針というものがある。それによると、火災の場合は出動から放水開始までの時間が、5.5から7.4分を越えると延焼率が高くなる。鎌倉市の場合は、その中間値を出し、6.5分を放水開始までの限界にしようという目標値を立てている。消防隊が消火栓に着いてから、そこまで行って水を出すのに、準備があるので大体2分。つまり走行の限界時間と言うのは4.5分になる。(国や東京などでは場所によって8分とかになっているが)
渋滞の激しい旧鎌倉地区(24年)で、市内の混んでいる所で4分、出動から放水開始まで5分でやっている。平日休日の差異はないです。昼間夜間についても、4分前後、差異はありません。
救急については、地域別の統計はないですが、市街全域で、土曜日を含む平日で、6.7分、休日で6.6分。昼間で6.7分、夜間で6.4分。ここ以外に鎌倉市には色々出張所があって、そこからも対応して、その平均で。

昔は管轄というのがありましたが、今は例えば、鎌倉の救急車が湘南鎌倉に運ぶ、帰りに北鎌倉の駅前を通っていて、もしその時に山ノ内から119番が入ると、出動は自動的に鎌倉の救急車は山ノ内に出ることになります。動態システム(AVM)という。

----先ほどの22年の例も恐らく7.4分を超えない。火事ではないけれど

救急も同じです。地域別年間の平均値を取った中で、この時間というのは出てきています。

----救急の場合も基準となるものはあるのか

勿論あります。基準というか、だいたい8分と。東京などは意外に狭いようで広いけれど、鎌倉はこの面積で8台運用しています。国が示す人口の割合から通常だと鎌倉市だと5台あればということになるが、8台あります。非常用救急車という予備の救急車を入れると10台で運用しています。8台が万が一全部出てしまった場合には直ぐ鎌倉と大船にある非常用救急車に準備をさせる。従って余程でも鎌倉市では救急車が無くなることはありません。
目標を一応8分といっているが、それ以前で対応しています。

----鎌倉特有の地区や狭隘道路とかで分類されたところがあるのか。広い道路に面している割合とか。救急困難地域とかがあると聞いたが

クラスターといって地震時に一つの面積の中で家が密集していて火災があるとそこの地域が全部・・・、というのは茅ヶ崎などにあるけれど、鎌倉市の場合にはそこまでの密集というのはありません。

----火災が起きると特別困難な地域というのは、鎌倉には

いや、そいういうのはないです。要するに災害時困難地域というのはありません。

----ある人が、あそこは災害救助困難地域に指定されていて、トンネルがなくなるとそれが取れて皆が救われるようになると

どこであれ厳しいところはそれなりの計画を立てて防御を万全にしなくてはならない。まだまだ鎌倉より厳しいところはあります。火災時、隣棟間の距離が近く延焼し最終的に燃え尽きる可能性のある建物群をクラスターといいます。鎌倉市では県が示している基準の中では当てはまらない。湘南では、茅ヶ崎にはあると聞いていますが。

----とにかく「救助困難地域」というものはないのか

そう「救助困難地域」というものはないです。
救助困難というか防御が困難な、もっと厳しい場所は、山ノ内だけでなくて沢山ある。こういうもの(図上訓練資料)が、北鎌倉隧道が厳しいからというのでなくて、全てにあります。
谷戸火災といって、基準がある。谷戸の長さ、谷戸の中に家が何軒以上あって、水利も何個と。そういうものが鎌倉市内には幾つもある。そういうところの防御計画を一箇所一箇所全て作っています。
   ※参照 消防活動困難区域   クラスター(延焼運命共同体)

----そのようなところ、担架で行かなくてはならないところはどれ位あるか

救急車の到達できないところは、そんなに多くはない。谷戸でも入れるところは入れる。どちらかといえば火災、消火栓がなかったり、ごく狭隘で入れないと消火栓からホースを何本も伸ばす。車が入れなくても、後で見てもらいますが(写真参照)、ホースを伸ばします。
担架も、オペレーターの判断で、必要なら先行させる消防隊を出します。

----消防車にしろ救急車にしろ、そこに横付けされなければ人命が救助されないなんてことはありえないし、あってはいけない

そうです。そんな100パーセントの状態というのはどこにもない、まして東京などはもっとないと思います。ホースカー(ホースレイヤー)というのが最短距離で引っ張っていきます。
トンネルに関しても、個人の意見として、危険であれば市民の方が危険でないように直せばいいと思います。ただ、そこが通れない為に消防が活動できなくてその分犠牲になるということはありません。我々はどんな状況下でも、鎌倉はもっと厳しい所がありますが、常に厳しいところを基準において活動している。ここは困難地域だからダメだと言ったら我々の存在意義が無い。
厳しいところは厳しいなりに防御を立てて訓練をして、何かあった時にはどうするというのが我々の日常の仕事です。ここは道路が狭いから心配だ、でなく、我々は心配をさせないようにやっているのです。

これは昨年度ですが、山ノ内の400から500番台の出動記録。火災は無い。1件がJRのホームで人身事故で救助。救急は37件、特段重篤な患者はない。そのうち消防隊と一緒に出たのが2件、円覚寺の階段がある境内の活動支援。あと個人宅、これは重症、県道沿い。
このように、救急火災を全て国の方に報告しなければならない。何年度中の火災で神奈川県の鎌倉市はと消防白書などに反映されます。年報にもなって議員が見たりする。それに基づいて火災は何件あって何分掛かっているとか色々な質問を受ける。
何か特殊なことは報告している。山ノ内でこれだけ時間が掛かった3件が、とかあれば勿論。その時はたまたま重篤で、行った時にはもう呼吸が、とかそんな理由があったと思いますが、勿論我々は指令を受けて出動して対応は通常だったと思います。
道路の状況が、止める予定のところに車が止まっていたり工事していてたなどはある。でも、場所がわからなかったというようなことはありません。

----この場所(緑の洞門周辺)が特に難しいとか特殊とかいうことはないか

そういうことはないです。八雲神社から雲頂庵のところまで救急車が入っていけるし、時によっては円覚寺から入らせてもらえるし。ホースレイヤーやストレッチャーが十分に通れるので。皆さんが自分の家の前まで消防車や救急車が来ないと不安だと考えてしまえばですが、そんなことはありえないので。

----谷戸はどれくらいあって、このような計画が立てられているのは

谷戸火災対策は200近くの全ての谷戸にある。そういうところは水利もなく、あっても末端なので、先で取っても元で取ると出なくなってしまう。だから防火水槽を作り、防火水槽から放水し、そこに保水していきます。
ここには八雲神社のところに防火水槽があるので水利が潰れることがない。地震の時も消火栓は出なくなることがありますが、防火水槽はそれが壊れない限り使える。ここは八雲神社の防火水槽が必ず起点になります。
そして横須賀水道は有事の時には取っていいということになっていて、400mmあるので駅の方は十分に取れます。

----本日はありがとうございました。よく分かって安心できました。

このように聞きに来ていただけると実際の事を説明できて、安心してもらえます。


鎌倉市消防本部 警防救急課 訪問 写真集 (7月27日)