「パワーゲーム」 第一話「天の時、地の利、人の和」
「おまたせ致しましたドールピザです」
つなぎ姿のリサがとあるオフィスにピザを届けに来た
「今日は君か?」
「ミノルのほうがよかったですか?」
「どっちが来るか賭けていたんだけど負けだ」
笑いながらリサがピザを出して代金を受け取った
「毎度ありがとう御座いました!」
リサが三輪バイクで店へと戻っていく
リサ達の店はオムニシティにあるのだ
「大統領、フェイルン引渡しの交渉は長引いていますがどのように致しましょう」
「ほっておけあの馬鹿娘にこれ以上手間をかけるなと言ってあるだろう」
「しかし・・カシアスセントラル(カシアス統治刑務所)で終身刑では・・」
「やってはならん事をやってしまったのだ仕方ない、禾人とノエルの事を考えれば出来んよ」
「其れは父親として仰っているのでしょうか?」
「そうだ」
「お厳しい」
「雪人に命を助けられた以上焼くなり、煮るなりするのは向こう次第だ」
ことは遡ること1年半前になる
「土田雪人、汝はカシアス人民の為にオムニ移住者の指導者としてオムニを統治し尽力を尽くす事を誓うか」
聖書の上に手をおき雪人が言う
「誓います」
この時をもって雪人がオムニカシアス統治区総統に就任した
そしてパレードの時のことである
雪人は車を使わずに徒歩で護衛と共に旧エアーズマンホテルへと向かって行った
エアーズマンホテルはカシアス総統府として接収されたのだ、大統領官邸は地球軍の総統府となった
一人一人に手を振り握手をして進む雪人、沿道を埋め尽くした人の中に白いドレスに白い帽子を被り真紅のバラの花束を抱えた女性がいた。
雪人は微笑を浮かべて女性に近寄り花束を受け取った瞬間二発の銃声倒れこむ雪人
「雪人思い知ったか!」
フェイルンであったデリンジャーを袖に隠し花束の下に入れた腕が雪人の心臓の真上に来るようにし発砲したのだ
事は成功したしかし、護衛が自動小銃を構えフェイルン目掛け一斉射撃に入るフェイルンも天を仰いだ『お兄ちゃん今そっちへ行く』刹那!
「射撃まて!」
雪人である、何も無かったかのように立ち上がった
「彼女はオムニ大統領ご令嬢だ丁重に扱え」
「判りました」
雪人の一言でフェイルンは取り押さえられ連行されていった
「雪人さん・・」
「この服ではパレードできませんね・・」
「一寸待ってください」
ナギサがバラ数輪を切って服の穴を隠す
「良いアクセサリーですねでは、行きましょうか」
再び何事も無かったように歩き出した雪人であった
そしてパレード後フェイルンの拘置されている軍施設へと赴くと
「フェイルン久しぶりだ」
「用心深いようでジャケットを着てパレードとはねぇ」
「そんな物は着ていない、兄さんが守ってくれたのだ俺ではなくお前をな」
胸のポケットから大き目のライターを取り出した、其処には二発の弾丸が刺さっている
「それ・・」
「兄さんがくれたんだ、44口径も通さない特殊ライター次に狙われるのはお前だといってな」
「禾兄ィが何で!」
「さあ、まあこれでお前が助かった訳だし死してもお前を守った兄貴に感謝して置けよ」
「お前さえ殺せば死んでも構わなかった!」
「しかし、あんな事をして死んで兄貴に合わす顔をもてるのか、テロリストによって俺たちの運命が変わった事を思えばあの場所での戦闘行為は無かったはずだ」
「!」
フェイルンの顔色が変わった
「お前は死んでもかまわんだろうが、お前に対する自動小銃の連射で周囲70人から100人は巻き込まれて死傷する、その人たちにどのように詫びるのだ?兄さんなら人の楯となっても人を楯にすることは無い、そこを考えて行動して欲しかったな」
この後法廷に引き出されたフェイルンの弁護は雪人が行った、禾人を殺された私怨としてオムニ国家やテロリストとの関係が無い事を強調して終身刑に留めたのだ、軍人として扱われれば銃殺刑であった
そして今フェイルンは0011と言う番号で呼ばれている
「ただいまぁ」
「次の配達はセシルさん行っていますから休んでください」
恵一であるエアーズマンが接収された為にリサ達の始めたピザショップに勤め出したのだ
「ミノルは地下?」
「ええ練習に励んでいるようです」
「じゃあ交代してくるかな」
「女房が指名手配食らっていなければ色々教えられるんですが・・」
「美鈴ちゃんのお母さん引張り出す訳にいかないしホーリーウィングで静かに暮せるのならそのままで良いじゃない」
「そう言って頂けると助かります」
地下施設へとリサは降りていく此処はオムニシティに張り巡らされた下水道施設
底部に着くと其処は射撃訓練場になっている
ドドドドドバシュ!2K先の的のど真中を打ち抜いた
「お見事」
ミノルが立ち上がりながらゴーグルを外した
「リサ交代?」
「そろそろ代わりますか」
「ええ」
「さて、9ヶ月後の雪人とナギサの結婚式を目指して祝砲の準備をしないとね」
「ミノルも言うようになったわね」
「ええ、でも12K先の標的を打ち抜けるの?」
「判らないわ、でもイメージトレーニングを多くやっていれば可能性は上がるわ」
地下下水道を利用した射撃練習場、直線2Kを確保してミノルと訓練を重ねるリサ、目標は当然の如く土田雪人だ
禾人の残した超長距離狙撃ライフルグラディウスと超高速貫通炸裂弾ノイラティムで雪人を倒す訓練に励んでいた
「マーク中佐」
「ファーガーソン中将なんでありますか」
「セレネへ行ってジャスダムとGを受け取ってきて欲しいのだ」
「ステーションジャスダムでありますか?」
「そうだ、改修が済んだので軌道上に戻す」
「判りました、同時に受け取るGとはなんでありますか?」
「Gか?Gは機密事項だ詳しい返答は出来んが禾人の遺産の一部だ」
「わかりました、ではジャスダムをセレネドックから引き取ってまいります」
「それとGと共に禾人の別の遺産が渡される其れをホーリーウィングに届けて欲しい」
「そのまま地上勤務ですか?」
「いや直ぐに空に上がってくれ、此方も人手不足だからな」
「判りました」
「おまえもご両親に預けてある子供が心配だろう」
照れたようにマークは返事を返した
「はい」
「ではよろしく頼む」
マークは敬礼をして退出した
「禾人全て揃った、あとはノエルの決断一つだ彼女が決起すれば、皆がついていくだろう」
「スペース01管制、マーク、アーカエオプテリクス発進します」
「此方01、宙域障害なし針路クリアー発進許可します」
「了解」
「良いご旅行を」
ドッキングハッチを閉め切り離されたマーク専用のイントルーダーはセレネ目指して発進
「スーパーブースターか・8時間掛かったのが2時間って一体このエンジンはなんなの?」
マークのいつもの疑問であった
メガフロートプラネットハーツに主要部隊が密かに移されて1年が経っていた
「カシアス統治区消費税を30%に引き上げですか・・」
「地球統治区では移民管理が上手く行っていなくて暴動だそうです」
鈴がノエルに紅茶を運んできたついでの立ち話である
「禾人さんが生きていれば何か打開策でも考えているんでしょうけども・・」
ノエルの脳裏に禾人の言葉がよみがえった
『もし不平等や小競り合いが続くならばオペレーションA―ONの発動に踏み切る』
「A−ONって・・」
「A−ONですか?」
丁度その時レベッカ入って来た
「失礼します」
「レベッカ丁度良かった彼の言っていたA−ON作戦は一体なんだったのですか?」
鈴を横目で見ると其れを察して鈴が部屋から出て行った
「いらっしゃっても良かったのに・・」
「この話に喫茶店の主人が居ても困るのよ、それともなに彼女と何かあるの?」
「貴女が生涯の友ならば彼女は永遠のライバルです」
「喫茶店のマダムが?」
メガフロートの中には学校からコンビにまで何でも揃っている、鈴はこのメガフロートの中で喫茶店を開いているのだ
「ええ・・其れよりレベッカA−ONについて何処まで知っているのですか?」
「先制攻撃にならず武力行使ではない、成功すれば民衆が此方を支持すると言う事まで・・」
「それだけですか!」
「それだけです」
「では誰がA−ONの内容を知っているんでしょう・・」
「この中には居ないでしょう・・もし知っているならばゴットファーザーコルリオーネだけではないでしょうか」
「なんと言う事でしょう・・彼が残した作戦はオムニシティにいるジャンさんに連絡を取らなくてはならないとは・・」
「この状況の中で連絡をとるのは命がけですよ」
「ああ・・のぎとさん・・」
真に悲痛なノエルの声が執務室に響いた途端、中央に禾人が現れた
「何を儚んでいるんだ?まだ君は前に踏み出さなくてはならないのに」
「の!禾人さん!」
禾人の後ろ側が透き通って見えることからホログラムである事が判った
「驚いていると思うがこのホログラムは君の本当に切実な嘆きの音声に反応し作動するようプログラムされている、なお一方的であるが君が必要とするであろうと思われる情報についてのみ答えが用意されている」
禾人の前に列になって各作戦及び兵器の名称がでてきた
「さあ、選んでくれ私が答えよう」
ノエルは当然の如くA−ONを選んだ
「A−ONか、いよいよ決断した様だな、A−ON正式名称をオムニオールオアナッシング、オムニを全くの初期状態に戻す為の作戦だ」
この一言でノエルの考えは戦争一色に染まった
「大量破壊兵器による一斉消去・・」
「私は反対ですよ!」
武力行使という話を聞いていないレベッカは間髪入れず反対する
「さて概要だが、この作戦はオムニが次の状態にあるときに発動する事が必要だ、まず全オムニが戦前の・・」
「ニューランド大統領補佐官、本日フリーダムが正式配備になりますが大統領は式典に出席するのでしょうか?」
「今日でしたね、航空母艦建造名フリーダム就役名艦番101N−GET」
「土田禾人元帥の名を冠する空母の就役ですノエル元海軍少将も招待しているのですが返事が来ていません」
「禾人基金の運営でお忙しいのでしょう出席は無理かもしれませんね」
「そうですね、しかし戦災孤児児童基金を立ち上げるなんて中将お金持っていたのですね」
「土田禾人の名をオムニに響き渡らせる為にあの方は動いているのですから遺産は少なくても資金提供者は多いでしょう」
「そのうえ地球カシアスエリアにも基金支部を作るなんて信じられません」
「さすがに地球カシアスエリア児童基金は名前が違いますが出所は一緒ですからそれと無く名は浸透していると思いますよ」
フレデリカが禾人の肖像画を見上げながら言う
「中将が死んで2年マーク中佐は宇宙、リサ少佐たちは退役ドールズもバラバラですね」
「フェイルンは服役中だしね」
ハーディは時計を見た
「ヤオ大統領には促しておきますが・・」
ハーディとフレデリカが見を正したフェイロンが現れたのだ
「ご苦労」
「大統領本日フリーダムの正式就役式が行われるのですが・・」
ハーディが言い終わる前にヤオが語り始めた
「宇宙軍からジャスダムの改修が終わって軌道に乗せるのでセレネドック発進式に映像出席をしてくれとハーディ補佐官が言っていたではないのか?」
「その件もありましたね、ダブルブッキングしてしまったようです」
ハーディも多忙忘れる事が多くなった
「自分自身の結婚式も忘れておらんだろうな」
「その件ですがフェイルンが戻って来るまで伸ばすつもりです」
「そうか・・それで今日の式典だがどちらに出ても義理を欠きそうだ、丁度いい最近多忙だどちらにも顔を出さず休んでいる事にしよう」
「判りましたそのように手配いたします」
フェイロンは執務室へと入っていった
「ついにあれが軌道に乗るか・・」
フェイロンが宇宙軍ホットラインの受話器を取ると宇宙軍の元帥がでる
「フェイロン大統領久しぶりだな」
「ロウアル元帥久しぶりだ、あれが軌道に乗ると言う事はロンギヌスも完成か?」
「ああ新マスドライバーミカエルの完成でロンギヌスの改修も使用の合間を見て出なく常時行なえたので予定より3ヶ月早く完成した」
「ではいよいよだな」
「それは私たちの決める事ではない、ノエルの手にゆだねられているのではないか?」
「確かにそうだが」
「禾人は全てを私たちには打ち分けているが其れが信用には繋がらない、ノエルだから任せたのがその意味だろう、それにコルリオーネ動かなければ始まらん」
「彼の死に全てを誓った以上前に進まんとならないのだが」
「彼女もソロソロガマンできなくなっているだろうし、若者に任せるといった以上我々は見守るのが良かろう」
「そのために邪魔な陸軍上層部は処分し神に任せたのだったな」
「全て行なうはフェイロン、お前の教え子だ悪いようには進まんだろう」
「そうだな」
「処でお嬢さんは大丈夫なのか、まあ彼がカシアスの責任者なら悪いようにしないと思うが」
「もう二年になるがあそこに居たほうが大人しくていい、事が始まれば嫌でも出る事に成るしな」
「禾人の神格化には彼女の幽霊話も役立っている、さらに刑務所の中でも広めていてくれれば良いのだが」
「まあ事は禾人の思惑通り進んでいるのは間違いない」
「処で今日の発進式だが・・」
「その件は悪いがダブルブッキングでどちらにも出ないことにした」
「そうだと思ったよフリーダムの就役も今日のはずだからな」
「これで天にジャスダム地にフリーダム、Gの支援システムは完成し配置を終わる、マークがGの指令機を扱えるようになれば最終攻略目標ナキストも問題なく片付く」
「そうだな、丁度マークが到着したようだこれから説明をしなければならないのでこれで失礼する」
「マークピアンス准将によろしく伝えておいてくれ」
「まだ准将ではないがな」
「10分後に二階級特進だろうが」
「禾人に目を付けられマークもいい災難だ」
「彼の子を産んだしな、大切にしてやれよ」
「ああではまた」
フェイロンが呟く
「禾人・・準備は整った後は決断を待つばかりだ・・ノエルを戦後の大統領にするという最大の役目を済ませれば私も引退できる・・老兵は死なずただ消え去るのみか・・」
「パワーゲーム」 第二話 「動き出した者達」
「失礼いたします」
マークがロウアル元帥の執務室に現れた
「ピアスン中佐来たか」
「ハッ」
身を正し敬礼をする。
元帥直々の呼び出しであるマークは緊張しまくっているのだ
「そう硬く成らんでいい楽にしてくれ」
「ハッ!」
そう言われても楽に出来るものではない
「ピアスン中佐、既にジャスダムの発進準備は完了しているが、発進の前に中を案内しておこう」
「ロウアル元帥閣下直々にでありますか!」
「そうだが何か不満が有るのかね?」
「何もありません!」
「では行こうか」
ロウアルはマークを連れてジャスダムへと向かう
窓から以前使用していたマスドライバーが見えてくるとロウアルがマ−クに説明を始めた
「あのマスドライバーはたった一度の為だけに改修をしてその時を待っているのだ」
「一度?」
「そうだジャスダムの改修もこれとの連携の為でもある」
「?」
「実際のことはジャスダムに入ってから話そう」
二人がジャスダムの停泊しているドックに近づくとドアが開き、その船体が姿を表した
発進の準備していた兵士たちが次から次へ二人に敬礼していく
やがてジャスダムのメインハッチに近づくと扉が開きその中に二人は滑り込んだ
「Gの件はファーガーソンから聞いているな」
「機密事項だとか」
「ではその機密を見てもらおう」
扉が開き6体のPLDが姿を表した
「X4?」
「X4GP通称G正式名称X4ゴッドポーン、禾人の神兵だ、禾人の設計したAIBOX−NNを搭載している」
「コックピットが無いのはそのためですか?」
ただ一機にはコックピットがついていた
「そうだ、そしてこの一機が指令機X4ゼウス」
「ゼウス・・」
「神々の長だ、其れよりもマーク中佐何か気付かないかね?」
「少し大きいような気がしますが?」
「リニアは80mmになっている、其れを積むには12mのボディがいるのだPLDから離れていて大きさの認識が薄れたか?」
「纏まって大きくなっているせいでしょうか?倍の様な気はしません」
「均整の取れている物は小さく見えるからな」
「元帥ところでこれのシステムですが、これだけの機体とリニアを使用できるパワーは?」
「君の専用機アーカエオプテリクスと同じ対消滅システムを積んでいるのだ」
「でもあれは!まだ出来ているとは聞いていません!」
「宇宙軍開発部が7年前禾人から設計図を受け取って4年後、やっとアーカエオプテリクスが完成したそして、その実績を元にジャスダム、X4GPに搭載となった」
「7年前って!ナミ中佐が受け取ったのは2年前です!」
「禾人中将は7年前宇宙軍に製作を依頼してきた、設計図一枚を持って当時大将だった私のところを尋ねてきたのだ」
「そんな!」
「だが事実だ、さてこのコンテナの中にはストライクケンタウロと護衛機レコード、セイントの駆動用対消滅リアクターユニットが入っている、あとX4用が12機だこれをタカス中佐に届けてくれ」
「かしこまりましたが、中佐にはなんと説明すればいいのか・・」
「ヤオ大統領が全てやってくれる何の心配もない」
「大統領はこの事をご存知なのですか!」
「ヤオが知ったのは禾人元帥が亡くなったときだが、私は言った通り7年前だ」
「中将の計り知れない部分のようですね」
「あの兄弟は謎だらけだ」
「兄弟?」
「雪人と禾人の兄弟だよ、二人ともオムニの為に動いていたのは間違いないのだが歯車が一寸でも狂うと在らぬ方向に行ってしまうものだ」
「二人ともオムニの為にですが・・しかし雪人が・・」
「雪人か・・マーク其れについて私からの特別命令がある」
「特命でありますか」
「土田雪人の確保だ無傷で捕らえろ彼はオムニ再興の為に欠かせない財宝を持っている、全てを聞き出さなければ処分は出来んからな」
「わかりましたが・・」
「恨みだけで動くな、お前は常に冷静でいろ」
「ご命令と有らば・・」
「さてでは、サテライトマスタールームへ行こうか」
サテライトマスター即ちジャスダム総司令官室である
マスタールームの前に立つとドアが開くが中には誰もいない
「マスターは不在でありますか?」
マークがロウアルに尋ねるとロウアルが笑いながらマークに言った
「デスクの上を良く見るがいい」
言われて見たデスクの上には見覚えのある名前が階級は准将
「こ!これは!」
「この場においてマークピアスン中佐をサテライトマスターとして任命する、階級は准将特命の二階級特進だ」
「しかし!他に適任者がいるのでは!」
「いやこの件はマークが適任と宇宙軍全将軍一致したのだ、ただこの任務過酷だ君が拒否すれば別を探す」
暫く考えるマーク重い口が開くと
「お引き受けします」
「やってくれるか」
「はい」
マークの返事が早いかロウアルはマーク襟に手を伸ばすと階級章を取り替え、一呼吸置くとマークに指示を出した
「マーク准将ジャスダムの発艦準備にかかれ!」
「イエッサー!」
マークはロウアルに敬礼するとコントロールルームへと向かっていった
「フリーダムのタービンは20%を維持」
「イエッサー」
「離岸30分前」
「総員最終チェックに入れ」
スピーカーから響く声に合わせて順調に作業が進んでいく
「艦長、大統領はお見えにならないそうです」
「そうですか・・でノエル少将は?」
「少将もです」
「お忙しいのですかね?」
「軍を離れられてから中々捕まらなくなりました」
「そうですか」
「ファン艦長に報告!N−Get出港準備完了!」
「ご苦労さま」
外では式典が粛々と進んでいる
海軍総司令官の祝辞が済むとシャンパンが艦尾に叩きつけられた
「さぁ行きますか」
「出力50%離岸!」
「アイアイサー!」
「帽フレ!」
甲板に立つ兵士たちが帽子を振って出港
軍港を離れ艦のスピードが上がった頃艦内一斉放送で
「これよりファンカンメイ艦長から話がある」
副長のフェイススモーレットの声が館内に響く
「これよりこの艦は戦闘訓練に移る、総隊臨時訓練係れ!」
慌しく艦内の各部署が訓練に移っていった
「着任挨拶代わりに訓練ですか?」
「私らしくて良いでしょ」
「そうですね」
新海兵隊旗艦N―GETの初仕事であった
「総統お時間です」
カシアス統治区総統土田雪人の声明がN−GETの就航に合わせて流された
「この度のオムニ新造艦就航については平和を脅かすものとして遺憾である、早急に廃艦する事を望む」
短いがオムニに対しての威嚇が目的である
地球側からは何の声明も出されなかった、いや出せなかったのである
現在地球側の統治区では新植民者の土地配分や仕事をめぐって争いが絶えないその処理が優先しているのだ
このときこの録画放送を見ながら雪人とカワサキはカシアスからの鉱質物資について打ち合わせを行なっていた
「カワサキ中将、カシアスからの賢者の石は何時着くのでしょうか?」
「向こうからの連絡ではあと180日」
「ギリギリ一杯って処ですか」
「金融不安を煽る訳にはいかんから早く着いてもらわねばな」
「税の上げ幅も一杯一杯、金鉱を核汚染されては掘るに掘れない」
オムニ軍撤退の際に核爆弾による金鉱破壊があったのだ
「土田禾人の隠し金があるとか聞いたがあれは?」
「既にノエルの手に入ったようです」
「そうか」
「打つ手なしです、金の切れ目が縁の切れ目、武力で押さえ込んで強制労働という手も有りますが」
「無宿人狩りか?」
「そんな歴史もありましたねぇ」
「フッ、ハイパードライブの性能の問題もあるが出来るだけ急がせる」
「お願いいたします」
カワサキが雪人の執務室から出て行くと呟くように雪人が言った
「さて、オムニはどちらに向かうのか?ノエルの出方が其れを決めるか・・」
「レベッカ、私は早上がりにしますので後を宜しくお願いいたします」
「判ったわ」
ノエルの向かった先は鈴の喫茶店、ノエルには一番の休憩先になっている
「ノエル総指揮は?」
「一寸有って早上がりよ、それと総指揮ではなく総号令よノエルはその方が良いってね」
「そうですか」
レベッカは腕を組んで考え込んだ
『どうするのよノエル・・あなた次第なのに・・』
「ノエルさん早上がりですか?」
「ええ・・」
「飲みたそうな顔していますね、お店閉めて何か出しましょう何が良いですか?」
「お店閉めていいのですか?」
ノエルの素朴な疑問である
「構いませんわ、お客さんも居ませんしフロンティアでも出しましょうか?」
「彼が好きだったお酒ですね頂きます」
鈴はチェイサーとストレート用のグラスをカウンターに置き、ミネラルウォーターとバーボンを出してきた
「何か嫌の事でも有りましたか?」
「そんな事はありませんが・・彼の遺産が・・」
「ろくな物ではなかったのですか?」
「いえ・・」
ノエルは一気にバーボンを飲み干すと鈴が更にグラスに注ぐ
「いいのですが?酔うと抓るかもしれませんよ?」
ノエルが微笑みながら鈴に言うと鈴も笑いながらノエルに言った
「禾人さんが言っていました、『アイツは酔ったふりをして甘える其れしかしないから俺は自由にさせるんだ、幾ら飲んでも顔は赤くなっても素面だよアイツ・・』ってね」
「彼、何もかもお見通しだったんですね」
鈴がジッとノエルの顔を見ている
「今のあなたの顔で何を迷っているのかだいたい判りました」
「何がですか?」
「やるべきか、やらざるべきかなんて顔をしていますね」
「そうですか・・」
「動かれては如何ですか、地球統治区もカシアス統治区も荒れ始めています今民衆を掴めればオムニ完全統一、オムニリンクと地球からの移住者との争いの無い世界がそこに有ります」
「完全統一・・私にとってはどうでも良いのです・禾人さんがいない・・いま、進んでも空しいだけです、それに禾人さんのあの裏切りは許せないですし・・」
突然鈴がノエルにある事を耳打ちした
「そんな馬鹿な!」
「私は日毎にその考えが強くなっています、貴女が動いて誰よりも早く彼を確保しなければリサさんをはじめ彼の暗殺を企て居る者に!それ以上に彼自身が死にたがっている様に感じますし」
ノエルは暫し目をつぶり何かを振り払うように首を振り頬を叩くと
「判りました、あなたが其処まで言うのなら早急に動き出しましょうターゲットは土田雪人の9ヶ月後の結婚式が開戦になるようにその時土田雪人の確保をしましょう」
「皆にこのことはどう伝えるのですか?」
「ほって置きましょう、殺されたなら其処までの人だったと言う事ですそれに、何処から情報が漏れるかわかりませんし、それ自体確認できないのが実状です」
「きついお言葉ですね」
「私に黙って事を進めればそう言いたくもなります、捕まえたら思いっきり打ん殴ってやります」
鈴が笑っているとノエルが鈴に対してある哀願をしてきた
「鈴さんあの・・実は・・その・・」
非常に頼みづらい事である
「砲手ですか?」
ノエルはビックリしたように目をパチクリさせていると
「禾人さんが言っていました、『あいつには最強の要塞と楯を用意したがしかし、剣が無いと』ですから私が剣となりましょう」
「ありがとうございます、レベッカはもとより護りの人ですから最高の砲手が必要だったのです、でも美鈴ちゃんの事を考えると言い出せなくて・・」
「美鈴は大丈夫ですもう一年生になりますし、暫くは定時でしょ?食事は二人で出来ますし」
「そうですね、攻撃シミュレーションの繰り返しですし其処は保障します、ただ・・」
「ただ?」
「あなたを知らない人が認めようとしなかったら・・」
「元地球軍でも私の顔を知らない人が多いと思います、ただ渾名だけは良くわかるでしょうでも渾名の一人歩きで評価されても困りますし、本当の私を知っていただく事が必要だと思いますので当分は黙って居たいと思います」
「判りました、それでは総員を招集してこれからの計画とあなたの号令就任挨拶を」
ノエルは喫茶店の艦内電話でレベッカを呼び出すと
「レベッカ、戦闘総員をフライトデッキに招集してください、A−ONの発動と紹介したい人がいますので」
「いきなり何を言い出すの?飲んでいるんじゃないよね」
「飲んでいますが気付け程度です、あとエイプリルにアショロアを搭載してくださいオムニシティのコルリオーネに接見してきます」
「判ったわ5分で召集を完了させます」
「ゆっくりで良いのです此方の準備も有りますし、戦闘がはじまる訳ではないのです」
「それでは30分後に総員整列、ラティコスタユニットボックスは早急に搭載をさせるわ」
「よろしくお願いいたしますね」
「イエッサー!」
電話を切るとノエルが鈴の服に目を移した
「服どうしましょう」
「この艦制服がありませんし皆オムニ、地球軍の旧戦闘服の徽章だけ変えているのだけなので私もそうしようかと思っているのですが」
ノエルはポンと手を叩くと
「暫くは私の服使ってください、その方があなたの正体が判らなくて良いでしょう地球軍の服を着ていれば見る人が見れば直ぐ判りそうですから」
「仰せの通りに」
ノエルは服を渡す為に鈴を連れて自室にいった。
「ジャスダム、オムニ軌道に乗ります」
マークは軽く頷いた
「ホーリーウィング上空300Kmの静止軌道、制動噴射15秒」
「噴射まで5秒4秒3秒2・・1・・0噴射!」
マークはジャスダムが静止軌道に乗った事を確認するとシャトル降下準備を指示した
「さて大統領閣下に挨拶に行きます、シャトルにリアクターユニットを積載次第降下」
「イエッサー!」
「マーク准将はブリッジを退出!」
マ−クはシャトルに乗り込み降下シークエンスの開始を指示した
「久しぶりのオムニですね」
呟くようにマークが一言言い席に付くとシャトルはカタパルトより射出され降下軌道に乗る
「これより降下開始します、サイクロンクーリングエアーシステム作動」
「クールエアバケット展開、大気圏突入開始」
「サイクロン生成冷却エアー供給温度−98℃更に降温中」
「バケット内温度350℃で安定」
「後2分でジェットエンジン作動可能域へ」
「バケット収納エンジン始動開始、ホーリーウィングスペースエアポート到着まで15分」
やがて滑走路が見えてくる進入角を取りシャトルは滑るように着陸した
「振動は無かったですね」
「積んでいるものが物だけに慎重になりますよ」
「滞在は2日です外出許可を出しますのでゆっくりして下さい、ただし今回の降下は内密なので他言無用です」
「イエッサー!」
「シャトル177−3へ」
マークが怪訝な顔をした177−3このシャトルはそんなナンバーではない、だが内容はわかった177大隊第三中隊を意味した即ち迎えに来ているのがハーディニューランド大統領補佐官なのだ
「此方177−3感度良好」
「177はそのまま第7ハンガーへ進入願います」
「ラジャ」
巨大なシャッターを潜りシャトルが停止するとタラップが掛かりハッチが開けられた
「マーク准将!」
マークは敬礼した声をかけたのはハーディである
「お久しぶりです、たい・・ニューランド大統領補佐官」
「マーク准将、タカス中佐とキリカ技官が来ている」
シャッターが閉まるのを待ってカーゴボックスが下りてきた
「中佐お久しぶりです」
「流石に軍人ね、あっと言う間に抜かされちゃった、マーク准将昇進おめでとう」
「懐かしむのは後だ用件を済まそう、概要は大統領から聞いてきた」
「ハイ」
カーゴの中に三人を招き入れユニットの概要を説明した
「まさか宇宙軍で開発が進んでいたとは思わなかった」
「兄さんが7年も前に宇宙軍に開発を依頼していたなんて、何処から基本設計を手に入れてのかしら?」
「その情報を私たちに渡さなかったのはどうして?」
「簡単な答えがある、開発のカモフラージュだ」
あまり驚かない誰も言いたくない結論、禾人はタカス達では開発できないと踏んでやらせたのだ、情報が漏れてもオムニは対消滅リアクターを手に入れてないとの情報操作である
「まあ役に立ったのだから・・納得はしないけど」
「まあ良い、さてタカス中佐これをもってN−GETへ行って来いケンタウロに搭載するのだ」
「イエッサー!それじゃマーク准将今度会う時は・・」
「オムニの統一が終わった時ですね」
「お互い忙しいから、平和になったら禾人中将とあなたの子供に合わせてね」
言ったタカスが慌てた、キリカからノエルに確実に伝わってしまう
「姉さんもそれを気にしていたわマークさん、姉さんが養育費を渡したがっているのですけれど・・」
「判っていたのですか!」
マークが驚いた、公然の秘密だがマークの子は禾人の息子、あの砂漠の一夜で間違いがあったのだ
「大丈夫、禾人中将の遺産としてカードを受け取りました驚くほどの金額です息子が働き出し余った分は何処かに寄付しようと思っているぐらいです」
「判りました姉さんにはそのように伝えておきます」
マークは深々とキリカに頭を下げた、ノエルに対しての詫びも入っているように思えた
「さて、タカス中佐、キリカ技官、輸送機に格納が終わったようだ出発して欲しいのだがその前に言っておかねばならぬ事がある、今回君たちの乗艦の趣旨をファンに伝えていないので此れを持っていってくれ大統領からの特命書だ」
タカス達は特命書を受け取ると機に乗り込み旅立って行った
「さて一寸マークに話があるのだが良いかな?」
「構いませんが?」
「では別室に行くか」
マークを連れてハーディは別室へと移って行く
「この映像を見て欲しい、どちらの走り方がお前が前に言っていた禾人中将の走り方だった」
「?」
疑問の思うマークに対してハーディが説明した
「砂漠戦において戦死者の数を減らす為に歩行及び走行の研究中なのだが、何処を探しても砂地で中将が走っている映像が無いのだ、色々調べてみてこの2本が微妙に違うのだが」
マークは足元のアップを食い入るように見入った
「左の走りで間違いありません」
「そうか、早速軍技研の方に連絡を入れて接地圧から全身への力の分散まで解析させよう、それとマーク、大統領に会う前にシャワーを浴びた方が良い首筋に油が飛んでいる」
マークは鏡を見た
「本当ですね、ではシャワ−を浴びて制服に着替えてきます」
「そうしてくれ」
マークが部屋から出るとハーディはソファーに座り込みタバコに火をつけ一服だけ吸うと
「まさかとは思ったが・・」
ハーディは大きなため息と共にタバコの火を消し部屋から出て行く、ほのかにメンソールの匂いを付けて
「パワーゲーム」 第3話 「奴は誰?」
ノンビリと壇上にあがるノエル軽く会釈すると直ぐに本題に入った
「此れより作戦コードA−ONを発令します」
離陸甲板がざわつく
「この作戦は現在の地球、カシアス両統治区に起きている不満を更に経済崩壊で追い討ちをかけて『腹満足りて民背かず』の逆を起し民衆の叛乱を促すものです」
さらにノエルの話が続く
「叛乱を起す目標は9ヵ月後土田雪人の結婚式の日です、またその時には土田雪人の捕獲作戦を行ないますこの際必ず生きたまま身柄を確保してください、情報網に掛かった土田雪人の財宝を作戦終了時オムニ復興資金に当てる為この財宝の在り処を聞き出すまでは生かしておく事が必要となりました」
ノエルの言った財宝と言う言葉にざわつく
「此れよりターゲットを天狼と呼称、総作戦名オムニフラットとします」
ノエルが鈴を手招きして壇上へ呼んだ
「みなさんも顔は知っていると思いますが、恵鈴さんです、彼女には本日付でCACR(セントラルアタックコントロールルーム)の号令をお願いしました、レベッカにはCDCR(セントラルディフェンスコントロールルーム)の号令に移ってもらいます」
「一寸待って!何で私が移らなきゃならないのよ!」
レベッカが大声を上げた、この場で初めて聞いた話であるまさに寝耳に水だ
「私の考えに意見しますか?」
ノエルはレベッカを一括、ノエルの言う事に逆らうレベッカではないが訳の解からない人間がノエルの制服を着て出てきたのに声を荒げたのだ
レベッカは取りあえず渋々と引き下がる
「此れよりA−ON発動の為コルリオーネの邸宅に行ってきます詳細内容はレベッカ号令より各担当者へ説明をお願いします以上!」
ノエルは壇上から降りるとレベッカを呼んだ
「各担当への詳細説明とあなたの班を分割して鈴さんの班編成をお願いします」
「別けのわからない人に班の人間を預ける訳には行かないわ!」
「此れだけは言っておきます、貴女よりも私よりも彼女は優秀ですだから採用したのです」
レベッカが怪訝な顔をした
「詳しい話は致しませんが上手く人員の配置をお願いします、貴女の体が心配ですから喧嘩だけはなさらない様にね」
「貴女が其処まで言うのなら逆らわないけれど、いずれ決着は着けるわ」
「親友のあなたの性格は良くわかっているつもりです、決着はそのうち着けて下さい」
「それでは行って参ります」
ノエルはエイプリルに積まれたアショロワへと乗り込んでいった
「彼の子を産んだ君を再び戦場へ出さなければならないことが非常に気になるが・・」
「大統領お気遣いありがとうございます」
マークが頭を下げた
「長々引き止めてしまって悪かったなゆっくり休んでくれ」
「マーク、ホーリーに居る内は私の車を使ってくれ」
「ハーディ補佐官のコルベットをですか?」
「ああキーはこれだ、このあと私は大統領と話があるので見送れないが帰りの前には皆を呼んでスペースポートで食事でもしようか」
「そうですね」
マークの後ろから突然声がかかった
「貴女ね禾人の子を生んだって言うのは」
「・・ハイ!・・」
マークが身正したこの人物は知っていた、ノエルの姉である
まさか三姉妹のうち二人に合うとは思わなかった
「大丈夫取って食おうなんて思わないから」
「はい・・」
「子供の養育費なんだけれど足りてる?」
「禾人さんが・・いえ中将がシルバーカードを残してくれていたので十分に足りています」
「それならいいのでけど、何かあったら電話頂戴」
一枚の紙をマークに渡した
「でもなんで・・」
「ノエルは血のつながった妹その夫、義理の弟の禾人ではなくてキリカと血の繋がったキリカの兄禾人の姉として心配しているの」
「それでキリカさんも心配してくださっているのですね」
ニッコリとマリアが笑う
「そうね、もう少し話をしたいけど大統領と打ち合わせがあるからこれで失礼するわ」
マークと分かれてハーディと大統領の前に立つオムニ保健庁長官マリアノルン
挨拶もそこそこにマリアが本題を話し始めた
「大統領今年はオムニ全土にオムニ麻疹の大流行が予想されました」
オムニ麻疹禾人の指示で製作されていた細菌兵器である、それの大流行即ち散布計画が開始される暗示である
「そうか、では注意報を出してくれ、オムニ市民は予防接種の義務を有するともな」
「わかりました、報道官に発表するよう指示します」
「ハーディそうしてくれ、発表の日時は・・」
「5ヵ月後には蔓延しますので注意報を二、三日以内警報を三ヵ月後と2段階でお願いいたします」
「わかりました」
ハーディが電子手帳に入力していく
「ところでマリアさんもいらっしゃいますので大統領にどうしても聞いてもらいたいことがあるのですが・・」
「私はかまわんがマリヤが絡むというとノエルのことか?それではないとするとマリヤと同じように寝ぼけた話ではないだろうな」
「あの話でしたら今でもそう考えていますわ」
「何のことでしょう?」
「マリヤが禾人は生きていると言ったことだ」
ハーディがギョッとした
「その通りなのかハーディ」
「はい」
フェイロンが腕を組んだ
「理由を聞こうか、マリアの推測は全て否定されたのだがな」
ハーディはおもむろに写真を机の上においた
「走っている写真か」
分解連続写真が二段でされている
「先ほどマークに走り方を確認させました処、上の走り方が砂漠で土田禾人が見せた高速の走りに近いと言うことです」
「これが土田雪人とでも言うのか?」
「そうです、その証拠に砂漠で高速に走れるのは土田雪人少将の研究していた砂浜上陸作戦用の走法、戦死者を最小限にする為に考案され最終的には雪人少将とその他一部だけしか、こなせませんでした」
ヤオが腕を組んで目を閉じた、ハーディは話をさらに続けた
「マークの砂漠上で見た走りこそ、その走りその物です禾人中将は右足の古傷からこの走り方はできません」
「言い切るなハーディ!言い切ってどうなる物ではないぞ、もしも雪人と禾人が入れ替わっていたとしてマ−クにお前の子は裏切り者雪人の子だと言う気か?」
「それは・・ただ真実が知りたいだけです」
「ならば雪人を捕らえて真実を聞き出すしか無いな」
フェイロンは葉巻を咥え火をつける、匂いが立ち込め暫し沈黙の後ハーディに指示を出した
「ハーディニューランド大統領補佐官を解任、少将を任命し大統領直轄隊として土田雪人捕獲特務部隊の隊長を命ず」
ハーディは一瞬ハッとしたが身を正し敬礼をする
「かしこまりました!」
「ドールズの再結成となると思うが、ミノル、リサ、エリオラ、セシル、アリス及びオムニシティに居る隊員の招集及び連絡は厳禁とする、オムニシティで動きがあれば悟られる可能性があるし今作戦は秘密裏に進めなければ雪人に気づかれ失敗するあいつは異様に鼻が利くからな」
「解りましたが・・リサ達が・・」
「ほっておけ!もし禾人ならばその位でくたばるような魂ではない!組織は海兵隊を当てるファンと合流しN−GETで指揮に当れ以上だ!」
「イエッサ−!」
ハーディが敬礼をして部屋を去ろうとしたとき
「ハーディ私の予定を全てマリヤに引き継いでくれ、マリヤを補佐官に任命する」
「解りました!」
ハーディが一通りの説明をマリヤにしてハーディは退出した
「マリヤ一寸話があるのだが・・」
改まってヤオがマリヤに話し出す
「実は雪人のことなのだが・・」
「ヤオおじ様も禾人だと思っているのではないのですか?」
「わからんのだよ、全てを否定しても禾人の遺言がある」
「禾人の遺言?」
「そうだ、その遺言は禾人のデスクから出て来たものだ、そしてその中で自分のことを 土田雪人と名乗っている…ただ雪人の攪乱作戦かもしれないので現在はその所在さえ秘密だがな」
「では私は見られないということですね」
「済まないがそう言う事になる」
「そこまでするという事は禾人の遺言状で封印しなければオムニを転覆させかねない内容ですね」
「彼らはオムニを地球軍に渡そうとしたふしが有るのだ」
「そうですか・・」
ヤオがマリアの態度に不自然さを感じ出した
「何か知っているのではないかね?」
「禾人も雪人もお互いに隠し事が出来ないとしたらどう考えますか?」
「テレパシーでも有ると言うのかね」
「有るかもしれません、おじ様がいつも言うところの気の流れがあの二人は繋がっていたのかもしれません」
「そんな非科学的なマリア根拠でもあるのか?」
「非科学的と言うのは単に現在の科学で証明されていないもので、これからの研究対象となり得るものです、「それでも地球は回っている」と言っていた頃地球の自転は非科学的でしたし」
「私はマリアと科学談義をする気はない、事実だけが知りたい」
「私も真実を着きとめたいだけです」
「話にならんな」
この話にはこれ以上触れないのが良いとマリヤが話題を変えた
「ところでノエルがコルリオーネ氏に接見に行ったとか聞きましたが?」
「それで君も散布の準備に入ったのだろ」
「いえ、事を起すのなら雪人の結婚式にと」
「何か奴は暗示を皆に掛けたか?全ての人間は雪人の結婚式に向けて事を起し始めた」
「策士、策に溺れると言いますが、双子の策士の策はうまく進んでいるようですね」
「釈迦の手の上から我々はいつ出られるのかな」
「さぁ?」
「まあ良いか、オムニ完全統一が出来れば」
「ラティコスタユニットボックスよりアショロワでます」
道は一本海底に掘られた溝、禾人がオムニシティ緊急時侵入用として用意したものでオムニシティ海洋防衛システムの全てを掻い潜る
「アショロワスイミングスタイルからランニングスタイルへトランスフォーム」
音声制御システムノエルの声に反応して変形するのだ
四足になったアショロワは海溝の底をゆっくり進んでいく
『対峙したものではなければ解らない、彼は雪人さんではなく禾人さんです』
鈴に耳打ちされた言葉がノエルの頭の中を駆け巡っていた
『真実を確かめなければ成りません、もし入れ替わったならあの死体は雪人さんでもお互いが入れ替わった上で殺し合うと言う事は・・作戦のミス?それとも死なねば成らぬ訳が』
ノエルが考えを巡らせている内にアショロワは浮上を開始やがてとある倉庫の中へと出た
舫が取られ固定、タラップが掛けられる全てコルリオーネの部下の仕事である
ノエルがハッチから姿をあらわすと一斉に頭を下げ
「マダム、ご苦労様です」
一人の男がノエルの前に立った
「ドン禾人にお使えしていたダコスタラントです」
一礼すると女性を紹介した
「本日から滞在しておられます間のお世話をします、ミーナ・ナブラチロワです」
ノエルはニッコリ微笑み
「よろしくお願いします」
「ではこちらへ」
ダックスフンドとも呼ばれる超高級リムジンの扉を開きノエルを乗り込ませた
「仮面舞踏会ですか・・」
「お歴々が多いので顔を隠してですかね」
「マフィアとの繋がりがばれては困るからね」
男が頭を振った
「では、こちらに置いていきますので」
「ありがとう」
世話役の男が立ち去ると時計を見つめ出す時計の針が触れない、
「盗聴器は無いようですね」
部屋の中を全てチェック有線式の盗聴器の有無も調べる
「これで安心できる」
「雪人さん、まさかマフィアの邸宅に乗り込むとは思いませんでした」
「金銭交渉に付き合わせてしまってすみません」
雪人はカシアスに指示した軍資金が着くまでの間コルリオーネから資金援助を受けようと言うのだ
「そう簡単に首を縦に振ると思わないのですが?」
「取引として移民の労働調整を任せようと言うのですから乗ってくると思います」
「大きな条件ですね」
「マフィアのお仕事はピンはねが一番、効率が良いのとリスクも少ないですからね」
「カシアスに資材を送るために借金をしてもよろしいのですか?」
「此処はカシアス統治地区ですからカシアスのためならいいでしょう」
雪人がクローゼットからタキシードを取り出した
「何故此処に?」
ナギサの素朴な疑問である
「この部屋の使い方は兄のやり方ですから」
「では」
「一寸した嫌味かも知れません、ファミリーを殺されたのですから」
「よく黙って私たちを入れてくれましたねぇ」
「ドンは、割り切っているのでしょうマフィア抗争ではなく戦争で失ったものとね」
「何時までも割り切って居てくれると良いのですが」
「試してみましょうか」
雪人は仮面を半分に割り左側を着けた、そして右にはナギサからメイク道具を借りて傷を書くまるで禾人の傷の如く
「挑発ですか!」
「私が生き残ったのも総統になったのも全て運、だったら最後まで運に掛けようかと」
「命がけですね」
「貴女は守りますから安心してください」
「仮面舞踏会ですか」
「はい、ドレスはこちらにご用意しています」
等と話が進んでいるとドアのノック音
「はい」
「ノエル来たか」
「ジャンさん」
ジャンは苦虫をつぶしたような顔でノエルを見ている
「何か私がきて嫌な事でも?」
「私はそんな顔をしているのか」
「ええ」
ジャンは苦笑いをすると
「父の客として雪人が来ている」
「雪人さんが!」
「ああ、女連れで今夜のパーティに出てくる」
「そうですか」
「何か嬉しそうだがその反面殺気を感じる」
「そうですか?」
「言って置くがごたごたは起さないでくれよ」
「貴方が一番起したいように見えますが?」
ノエルがジャンの顔色を読んだ
「父の客人扱いではなかったら、撃ち殺しているよ」
「しばらくは待ってください、彼から聞き出すことが有りますので」
「まあ今日は動かんけどな」
「部下も抑えてくださいね」
「抑えきれるか解らんが言ってこう」
「よろしくお願いしますね」
「ああ、ところで舞踏会まで時間がある水着に着替えてサウナにエステどうだ?」
「最近肌荒れが酷いので良いかもしれませんね」
「お互い年だな」
「あら、まだまだですわ」
ジャンがニヤッと笑う
「行くか」
「だいぶお疲れですね」
軽いマッサージをしながら女性が尋ねた
「色々ありましたから」
横のベッドでは女性がオイルマッサージを受けながら小さな寝息を立てていた
「一寸きついマッサージを行いますがよろしいですね?」
「お願いします」
関節の靭帯を揉み解す
「ツッ」
「先客か、ノエルはそっちの空いているベッドへ、垢すりからのフルコースで頼む」
「解りました」
ジャンの指示で女性がついた
「オヤジ専属のセファが客に着くとは珍しいな?禾人以来か?」
前の客を見ながら訊ねた
「ファーザーに言われまして着きました、ご兄弟そろって同じ骨格ですから揉み易いです」
「雪人か!」
「静かに、連れが起きてしまうので」
雪人がうつ伏せのまま言った
「敵地でも余裕だな」
「ゴッドファーザーは理解がある、仇敵とせず大局で見ているようだ」
「言っていろ」
雪人は立ち上がるとナギサを起して部屋へと戻っていった
「また、舞踏会で」
夜の訪れとともにゆっくりと各自の思惑が進んでいく
「パワーゲーム」 第4話 「シビト」
パーティ会場にどよめきが起こった、雪人の登場である仮面の半分を割り禾人のメイクをし周囲の感情を煽る、コルリオーネの前に来るとゴッドファーザーの右手を取り甲にキスをした
「本日はお招きにお預かりありがとうございます」
ナギサが雪人の挨拶に合わせて会釈をした
「歌舞いたものよ、禾人のメイクとは、まるで禾人のやりそうな事だぞ」
「兄が死んで乗り移られたのかもしれません」
「そうか、まあ今夜は楽しんでくれ、例の詳しい話は明日にでも話すとしよう」
「ありがとうございます、オムニの安定の為よろしくお願いいたします」
雪人は深々と御辞儀をするとホールに出てナギサとワルツを踊りだした
其れを遠めに見ながらグラスを片手にノエルとジャンが話している
「お似合いだな、息も良くあっている」
「憎らしいほど幸せそうですね」
「嫉妬か?」
「まあそんな所です、どうですか私たちも踊りませんか?」
「喜んで、でも君から誘ってくれるとは思わなかった、あの世で禾人が地団駄を踏んでいるかも知れんな」
ノエルが小声で言った
『目の前でステップ踏んでいたりして・・』
「え?何か言ったか?」
「いえなんでもありません」
「それではノエル姫、よろしくお願いいたします」
ジャンとノエルがホールに出てワルツを踊る
やがて雪人の傍に来ると回りに気づかれないようにノエルが雪人に体当たり、脛に蹴りを入れた
「痛!」
「あ!ごめんなさい!」
一寸したアクシデントに周囲が気にし始める
「大丈夫ですよ。」
ノエルが雪人の手を取りホールの端へと連れて行く
「本当に大丈夫ですよ」
『この位置なら殺れる』
雪人が周囲からの殺気を感じた
またノエルも殺気を感じ周囲を見渡したむらのある殺気、決行するか悩んでいるのだ
『親姉妹の前でテロリストとなるか・・』
悩んでいる人物は、ノエルが雪人を休ませる為に連れきた後ろの壇上にいる
オーケストラのチェロ担当アニタシルフィード、今回シルフィード家に演奏をノックスが頼んだのだ、通常なら断るが断れば慰問に資金協力してきたノックス家の顔を潰しかねない
『少将の言いつけもあるしな・・』
「雪人さまお久しぶりでございます」
「仮面をつけておられても解ります、アリスお嬢さま」
この瞬間殺気が一気に引いた
「ノエルお姉さま、お久しぶりです」
「こちらこそ」
当然アリスがドールズ等と言うわけが無い、ノエルはオムニ退役軍人でオムニシィティ在住であるが此れは雪人の共存政策アピールの為、アリスに適用されるわけが無いが資産家のノックス家令嬢であるため目をつぶっているのが実情である
ノエルは近くのピアノの椅子へ雪人を座らせる
ズボンの脛の辺りが擦り切れていることからかなりの蹴り、皮膚も切れている
「大変な傷!」
「大したことはありません」
「いえ、カシアスオムニ総督に対してとんでもないことを・・」
「大丈夫ですから」
雪人は立ち上がり
「この服ではみっともありませんので、着替えてまいります」
アリスがピアノを見つめ思いついたように
「そうですわせっかくお着替えになるのならば、雪人お兄様燕尾服になっさって1曲弾いていただけませんか?」
雪人お兄様・・アリスが幼い時の誕生日パーティの記憶がよみがえった。
土田家とノックス家の付き合いである。
「あれだけお上手なピアノですから皆様にお聞かせください」
「いやもう二十数年近く引いていませんので・・」
ノエルがアリスのしたい事に気がついた、中学時代の雪人の夢はピアニスト独学ではあるがプロなみの腕前、禾人はギターで腕前はかなりの物ただピアノを弾いている姿は記憶に無い即ち禾人ならば間違えなく拒否する
「そうですね、是非私も久しぶりに雪人さんのピアノをお聞きしたいです」
困ったような表情をしたが
「分かりました一曲だけ」
ノエルにとって意外な返事であった
「では着替えてきますが、折角ですのでピアノを窓際まで移動させて置いてください」
そう言うと服を着替えに部屋に向かって行った
雪人が言ったようにピアノの配置換えが行われ、アリスが来賓に雪人のミニコンサートが行われると話をながす。
やがて雪人が燕尾服に着替えて姿を現すと拍手が起きた、雪人は何が起きたか良く解らなくキョトンとした。
「アリスお嬢さまだけではなかったのですか?」
「折角ですから皆様にもお聞かせくださいあれだけの腕前をお持ちながらもったいないですわ」
「長い間弾いていないのに仕方ありませんね」
そういうとピアノの前に立ち聞くために集まった人に会釈をして椅子に座ると鍵盤に指を置き引き始めた、異常に早い猫踏んじゃったである周囲からは失笑が起きた
「雪人さんそれは・・」
雪人はウインクするとさらにスピードが上がる尋常ではない、やがてかなりの音量に達すると演奏を停止したそして、
「では、照明を落としてください折角の最初で最後のコンサートです」
「お父さん余興ですね」
「アニタあれだけ早いく演奏できるか」
「いえ?」
「なかなか良く弾きそうだ」
照明が落ちると窓より月明かりが鍵盤を照らし出す、ゆっくりと鍵盤を弾きだした曲名
「月光」ベートーベンの悲恋の曲目である流石にアリスが言うだけの腕前であった
引き終わると一斉に拍手が沸きあがる、さらに二曲目へと入っていく恋の曲が続く「いとしのエリー」弾き語りである。
「こんなに上手なんて・・」
「少将何を落胆しているのですか?」
「いえなんでも・・」
ノエルの落胆、雪人本人であって禾人ではない
「ほんとにご兄弟そろってピアノがお上手ですわ」
アリスがノエルに聞こえるように言った
「え?」
「昔私の誕生会にお招きしたとき内緒でお二人そろって演奏してくださったのです、そのあと一言禾人お兄様からは、ヤンキーがピアノ上手いなんて洒落にならないから黙っておいてと有りましたけど、あの時も月光でしたわ」
「どのくらいの時でしょうか?」
「禾人お兄様が空軍に入ったころでしょうか?私が小学生か中学に上がった頃でしたから」
『そんな昔から?』
「今日は雪人お兄様調子が悪いのでしょうか?禾人お兄様の弾き方に良く似ていますわ」
「解るのですか?」
「絶対音感があると昔言われて父がその気になって散々レッスンをさせられましたので」
雪人は弾き語りが終わり立ち上がろうとしたが間髪を入れずシルフィードが聖者の行進を弾き始め雪人に手でピアノアレンジを促したがこれに答えずギターを取り弾き出した
「彼は何でもできるのか!」
弾き終わると拍手の中会釈をするとコルリオーネが手招きをして雪人を呼び寄せた
「大したものだ、かくし芸にしては立派過ぎるな」
「恐れ入ります、父は私を軍人にしたく音楽は必要ないとのこと、でも私はピアニストに成りたくて練習は欠かさずしていました」
「今もかね?」
「実際引きませんが、イメージトレーニングはしています」
「そうか」
「では」
軽く会釈をすると部屋へと戻っていく途中アリスと言葉を交わした
「無理なお頼みお聞きくださってありがとうございます」
「いや此方こそお礼を言わなくては私も楽しみました」
雪人は壇上のシルフィード一家に親指を立ててサインを送り部屋へと戻っていく
「もうお戻りですか?」
「いやあ三曲弾いたらヘトヘトですよ、ピアノは特に体力使いますし、では」
雪人が立ち去るとノエルがアリスに問うた
「ノックス大尉、もし彼が雪人と言わなかったら一体誰だと考えますか?」
「禾人中将ですね」
「そうですか・・」
「雪人さまなら最後の仕草にオーケストラに親指を立てて挨拶はしないと思います」
「アリスまさかあなたも?」
アリスは仮面の下、口元が微笑んでいるノエルはついに確信に至った。
「ナギサさんお腹空きませんか?」
「そういえば」
ダンスをしピアノを弾いてカクテルを飲んだだけで何も食べてはいなかった
インターホンで部屋付きを呼び寄せた
「悪いが何か食べるものを二人分頼む」
怪訝な顔をしたが察しが付いたのか
「解りましたご夕食の準備をいたします」
「一息つける」
ナギサは既に風呂に入っている
雪人は禾人のワインセラーよりワインの準備を始めたやがてそれが終わると、ポケットよりなにやら薬を取り出しミネラルウォーターに溶かし込むとワインクーラーに差し込んだ
「あ、雪人さんお先にお風呂いただきました」
先ほどのミネラルウォーターを取り出しふたを開ける
「はい、風呂上りには水分補給を」
「ありがとうございます」
「今度は私が風呂入りますので食事が来たら、先に食べていてください」
「いえ待っています」
「では急いで入って来ましょう」
禾人の部屋の風呂は日本風檜でゆっくり浸かれるようになっている
「烏の行水になっちまうな」
バスローブを纏い出てきた雪人がテーブルに着くワインを酌み交わし食事を済ませる
「やっと落ち着いた」
「そう・・」
ナギサが言いかけたが途端大きなあくびになった
「失礼しました」
「私ももう11時を回りましたから眠いですよ、精神も体も戦闘より疲れています」
片付け始めたナギサを止めて
「先に寝てくださいやっておきます」
「でも・・」
「いいから」
「わかりました・・」
ベッドルームへと向かっていくナギサを見送って部屋つきを呼び後片付けを頼むとチェス盤を広げチェスを対戦途中の形に並べる、それが終わるとベッドルームへ入った。
既にナギサは寝息を立てていた、それを確認すると雪人も隣のベッドへ滑り込む
夜半過ぎ雲が出て月が隠れ、静寂と闇が押し寄せる。
暗闇の中雪人は枕元に人が立っているのを感じ目を開けた
「向こうに用意してある」
「良く効いているようだな」
「ああ、あの薬は確実に利くから安心だ」
席に着くとチェスを打ち始める
雪人の前に座った男は暗闇も関係ないのか、ルークを手に取り動かした
「盗聴器は君が片付けてくれていたおかげで気にせずこうして打てる」
「決着を着けたかったからな」
「お前の勝ちで決まっているがな」
「変える気はないのか?」
「確認があるからな」
「そうか」
「だいぶ前の続きだ、間違えてくれると助かるが」
静かにチェスが進んでいく
「百夜よ」
男は雪人のことを百夜と呼んだ
「百目鬼なんだ」
「百鬼総員代表として白夜鬼の死に対してお悔やみを申し上げる」
「すまぬな…予定が狂った」
「みな、白夜の意志だと解っている」
再び沈黙が続きチェスが進んでいく
「チェックメイト・・」
「ああ」
「処でノエルが来たということは開始か、我々も動いていいのだな」
「そうだな」
「百夜鬼、指示を貰いたい」
「では百鬼夜行を始めよう」
「イエス マスターところで結果はどうだった」
「ファンカンメイを艦長にして正解だ、会ったらきっとすぐばれる」
「お前が見込んだだけある」
一言言うと男は立ち上がりベランダへと出て行った
その後を追い雪人が出て行くと丁度雲が切れ二人を月明かりが照らし出す、男は見覚えのある者であった
「ハイドリッヒ、君たちをわれら兄弟の思いと意地に巻き込んでしまったことを本当に心から詫びる」
ハイドリッヒ大佐、あの島で手榴弾により死んだ筈である
「なあに、禾人皆地球にもオムニにも嫌気の差した連中だ気にするな、それと昔の名は此れっきりだ、お互い死人だぞ」
「ああ・・死人となり鬼と化した」
「雪人も自殺でバラバラなら俺と同じクローンパーツで誤魔化せたのになぁ」
禾人は手を握り締めて頷いた
「じゃ俺は行く、あまり部屋に居ないと怪しまれる」
「俺の紹介、ジャンの手下で俺の客人扱いならそんな事はないと思うが」
「結構見ているやつが居るんでな」
「わかった、俺も此れっきりだこれ以上動くとばれそうだ」
「そうか、だが・・」
「あ゛・・」
「雪人が遺書を残していたらしいフェイロン大統領が握っている」
「あの馬鹿、どこまで御人好しなんだか・・」
「御人好しでお前の子供が出来ていれば世話がない」
「それは言ってくれるな」
「白夜はお前を助けたいらしいオムニ4の内3人は知っている知らんのはケイネンだけだ」
「助けは要らん本来なら銃殺で死んでいた、あの時突然強制計画変更とは・・」
「それほど雪人に天下を取らせたかったか」
「俺なんかより適任だ」
「そうか、あとオムニ4はお前が誰か確証がない」
「それは助かる」
「まあなしかし本当に最終計画を変える気はないのか」
「百鬼たちに償えるのは我が兄弟の命だけだ」
「解った、後ノエルに注意しろ気がつき始めている、いや気が付いたな」
ハイドリッヒは暗闇へと消えていった
「ノエルが気が付いた・・参ったな、雪人お前に成りきっていられるのも、もう終わりか、いや気が付いたなら確かめに動くか、俺を危険にさらさないよう黙っているかさてさて」
「この件フェイロンがここに居れば話が早かっただろうが」
「われ等と違って大統領はそう動けんからな」
「処でノエルもここに入れるべきだが」
「八部衆ですら入っていないのだから良いだろう」
「二人の確認で事を進めるのか」
「オムニ4もケイネンが政治屋に成り下がっておかしくなった」
「志なくして今のオムニ有りか・・」
「準備は終わっているのか?」
「ノエルが始めるのを待っていたからな」
「お前こそ換金しているのか」
「ああ蓄財を守るのは彼からしたら卑しいが」
「此れが終わったら国の建て直しに使うのだから良いだろう」
「インサイダーのようで否なものだ」
ノックの音がしてアリスが姿を現した、ノックスは前置きなしに尋ねる
「それでアリス彼は一体誰だ」
「土田禾人その人です」
「セファはどう思うか」
「お恐れながら申し上げますファーザー、骨格の歪み、足の傷み方、筋肉の特徴特に右足の骨の形が独特ですので間違いなく土田禾人様だと思いますが・・」
「そうか解ったセファこの事は他言無用、もしうわさが流れれば可愛いお前と言えども一族諸共解っているな」
「は・・はいファーザー」
「下がっていい」
セファが部屋を出ると
「話は別だがいい娘さんを持ってをノックスは安泰だな、本来なら息子がここに居ていいはずだが・・まだオムニを支えるには力がない、この件この時期にあいつに知らせればどんな暴挙に出るか解らん、禾人の命が危険になるのは間違いない」
「息子を信じたらどうだ」
「そうなんだがな・・だから若頭で禾人がほしくもあった」
「皆禾人狙いか、私もヤオが娘の許婚にしなければアリスの婿にしていた」
「不良にしては男気のある良い少年だったからな」
「私はもう禾人には会えないから明日チャンスがあれば言っておいてくれ、生き急ぐ事はないと」
「わかった」
「ノエルには経済崩壊プログラムA-ONの開始のためコーディネーターを送ると言ってある、お前も動き始めれば良い」
「ノックス我等が先人の思いを今再び」
「ああ」
「それでは悪しきオムニをお開きにしよう」
ノックスはアリスを連れそのまま自宅へと戻っていった
帰りの車中にて
「お父様、私はこれから先ドールズピザで働きます」
「彼を討つか?」
「いえ少々お仕置きが必要かと」
「そうか、おまえの好きなようにやれば良い」
「はい」
早朝
「飲み過ぎたのかね」
「いえ、そのような事はないのですが」
雪人がサウナを借りたところコルリオーネが入ってきたのだ
「雪人よ、あの話はすべて呑もう」
「え?」
「我が子が望むならば親として支援をするものだ」
「我が子とは・・」
「禾人がジャンと兄弟ならば雪人、お前も我が子だ」
「しかし、兄を殺したのは・・」
「禾人は戦火で死んだのだ気にすることはない」
「はい・・」
「本題だあの条件とは別にもう一つ条件を出す」
「出来る事ならばお受けします」
「簡単なことだ、私とコーザノストラの儀式を行え」
「!」
「私と兄弟となれば誰も手出しは出来ん、勿論この資金も返さなくて良い」
「なぜ?」
「格安で禾人を手に入れる」
「私は・・」
「雪人だったな」
「・・」
コルリオーネはドアを開け
「紙とペン、ナイフを用意しろ」
「ドン!お待ちください!!」
何が始まるか察したダコスがコルリオーネを止めに入った
「私に意見をするかね」
「いえ」
雪人は指先を切り紙に血を垂らす
コルリオーネも同じく血を垂らし盟約を結んだ
「此れでお前の安全は保障された」
「そうですか?貴方に逆らっても私を始末したい顔が見えるのですが」
「我が兄弟に・・」
「親父!!」
「五月蝿いのが来た、退散した方が良いな」
「兄弟、ジャンは良い男ですよ」
「雪人?」
「今の一言が此処で言える精一杯の言葉です、兄弟として親父として今後ともよろしくお願いいたします」
コルリオーネはにこやかな顔をして言った
「絶対にこの件は言わんし伝えん、兄弟の契りに誓ってな」
「兄貴お願いがあります、セファにあと9ヶ月戦える調整を・・」
「良いとも兄弟よ、セファに整体して貰うが良い」
コルリオーネはセファを呼び指示した
一礼をして離れると代わりにジャンが入ってきた
「親父!」
「言いたい事は解るがあと1年は黙って見ていろ、男の生き様奴が見せてくれる」
「なぜそれ程奴をかう!」
「その理由は言えない、だが・・いやお前は別のことで荒れるだろう」
「おれが?」
意味が解らないがファミリーを荒らすわけには行かない、攻め立てず引き下がった
「息子よ、我が家がオムニ4と呼ばれる由縁しっておるな」
「ああ、最初にオムニに降り立った4家族で次が禾人の一族を含む8家族」
「オムニに開拓の志を抱いて降り立った」
「それが?」
「今来る人々もそうであろう、開拓し住める新天地・・」
「それは変わらないだろうな?」
「いいか、息子よオムニリンクなどというは政治屋のケイネンが作った言葉だ、利権欲しさに民を扇動する」
「ああ、解っているつもりだ」
「つもりではだめだ、解れ禾人と雪人はその為に動いて一人が亡くなった」
「一人だ?禾人が死んだんだ」
「いや一人だ、再び移民の星に戻すためジャン我が息子よ、お前もまた動け良いな」
「フッ、マフィアが民の為ねぇ親父よ老いたか!」
サウナを出て行くジャンの後姿を見ながら呟いた
「良い男、信用をしろか・・親の首をとってもドンになれるならばジャンが跡目でも良いが・・武闘派だけでは周りが付いて行かん、跡目は雪人にするか・・難しいな」
「セファすまない・・あと9ヶ月はまともに動けるようにしてもらえますか」
慌てたのか言葉遣いが一瞬荒かった
「解りました何時もの様に・・」
セファも言葉を間違えた
ベッドに寝転びセファの施術を受けながら
「やはり君だったか、行き成りジョルジュ専属のセファが付くなど有得ないので何か有ると思ったが・・」
「何のことでしょう?」
「言わなくとも良い、ジョルジュにした君の報告は有っているだろう」
セファの手が一瞬止まった
「セファも移民1世だったな」
「はい」
「この仕事が貰えなかったら何をしていたと思いますか」
「娼婦でしょうか?結構今も多いようですが・・」
「先に来ようが後に来ようが、開拓のチャンスは平等に有るべきだと思いませんか」
「その考えで?」
「後はご想像にお任せします」
「此方へどうぞ」
ノエルが入ってきた
「あらお一人ですか?」
「ええ、痛!」
セファの指がつぼに入った
「しっかり調整して頂いてくださいね、ターゲットが倒れては面白くありませんから」
「覚悟しておきましょう」
ノエルが微笑んだ周りには優しい微笑みに見えたが雪人は不気味な微笑みに思えた
「雪人さん此処にいらっしゃったのですか」
「ナギサさん起きましたか?」
うつ伏せになったノエルの顔がヒクツク
「コルリオーネ氏との会見は終了しました」
「それでどうなったのですか」
「融資は受けられました、これで賢者の石が来るまで持ちこたえるでしょう」
「それは良かったですね」
「朝食を済ませて帰りましょうか」
「では部屋で待っています」
ナギサかエステルームから出ると
「賢者の石ですか?」
「遇者の石ですよ、欲しさに人を殺し、貶め、上に立とうとする」
「金ですね」
「8ヵ月後金塊120tがカシアスから届きます」
「そのような話をして良いのですか?」
「貴女がどう動くか楽しみにしていますよ」
セファの調整も終わり部屋へ戻る雪人を確認すると、ノエルは行き成り立ち上がり近くにあったグラスを叩き付け
「9ヵ月後総て吐かせてやる!」
ノエルは禾人に蚊帳の外にされ、ナギサとの板に付いたカップルぶりを見せ付けられ怒りが頂点に達していた。
「パワーゲーム」 第5話「オペレーションオムニフラット」
アショロアが帰還した、普通ならば迎えに来るレベッカが来ていない
「何か有ったんでしょうか?」
「それがノエル号令・・」
「まさか鈴さんと揉めましたか!」
「はい・・」
大きなため息をついてノエルが言った
「どこの医務室ですか?」
巨大フロートの中医務室だけでも15はある、どこに収容されたかがわからない
「いえ・・まだ・その・・」
「鈴さんが来てないという事は・・」
鈴がレベッカに痛めつけられるはずがない、とすれば当に真っ最中
「体育館ですね」
「はい」
脱兎のごとく体育館にノエルは向かった
体育館の扉を開け中に入ると鈴に飛び掛った一人が綺麗に投げ飛ばされている最中であった
「どう言う事ですか!」
ノエルの言葉で戦いの終焉を迎えた
傍らに十数名がたたずんでいる、また倒れているのもほぼ同数であった
ノエルは佇む女性たちの前に立ちたずねた
「さて貴女方は此れから鈴さんと格闘する気が有るのですか?」
「いえそのようなつもりはないのですが・・」
「レベッカに義理立てですね・・」
ノエルが顔ぶれを見て
「丁度元地球軍元オムニ軍が半々ぐらい残っていますね、レベッカのほうも同じですね」
倒れている顔ぶれも元地球軍元オムニ軍が半々、レベッカが売った喧嘩だが倒されるのを見てレベッカを慕うものが飛び掛ったのが顛末であった、元地球軍からも慕われるレベッカの気質の賜物である。
「では、貴女方は鈴号令の下に入ってください、倒れている方々がレベッカ号令ということで」
鈴にCACRでミーティングを行うようにノエルが指示を出した
「でも・・」
「レベッカのことは気にしないでください面倒は見ておきます、後貴女方鈴さんの経歴は機密事項ですので聞かないで置いてください」
機密事項・・鈴に付いたメンバーがハッとする、プラネットハーツでは総てがオープンなのに機密事項とした、喫茶店のマダムが行き成り号令になったのも不思議である
鈴がノエルを呼んだ
「あの・・」
「機密事項のことでしたら、私が倒されたことを隠すためですから気にしないでください」
鈴が笑って納得をした
鈴が立ち去った後ノエルがレベッカを抱き起こす
「まいった、彼女は一体何者?」
「言った筈です、永遠のライバルだと」
「貴女がライバルって言うのは実力で解ったけど・・地球軍で名のある人よね」
「それはどうでしょう?」
「まいっか、見事にやられて気分良いしもう良いや」
「そうですか、こちらの話も着きました、オムニフラット開始します」
「では行きますか」
ノエルが指揮室に入るとすぐに号令を出した
「では此れよりオムニフラットを実行に移す、地球統治およびカシアス統治地域に経済崩壊プログラムを開始9ヵ月後には完全崩壊、天狼の結婚式を合図に総攻撃を開始する」
「イエッサー!!!!」
全スクリーンが株、金、小麦、ect、ectの指数グラフに切り替わっていく
「では経済攻撃を開始する」
コルリオーネの持つ企業の株が売られ金の買占めが始まった
食料、衣料、燃料の値段が動き出す
「地球統治地区だけが狙いですか?」
ノエルがモニターを覗き込みながら訪ねた
「以外にカシアス統治地区は金融を引き締めているみたいで今のスピードでは効果は薄いですが、地球統治地区を混乱に落とし込めばカシアスも引き込まれるでしょう」
「では執りあえず地球統治地区に貧困者の為に炊き出し場を土田禾人の名によって設置し
ましょう」
「おおぴらにやって民衆に禾人の名を浸透させますか」
数ヵ月後
貧困支援も禾人の名を出されては地球軍も黙って入られない取締りの強化に出た
ノエルは公園等でゲリラ的に援助活動を行うという手段を開始、さらに百鬼の横行による地球要人を狙ったテロの多発、地球統治地区は崩壊寸前
同時期地球全権大使か雪人に対して資金応援要請に来た
「そちらの失政を此方に添加されても困ります」
「いや添加するのではない地球とカシアスは運命共同体、此方が倒れれば其方もただではすまん」
「考えておきましょう、此方も資金繰りは税も引き揚げられる処まで上げて市民の不満も抑え切れるかどうかの瀬戸際です、そこへ地球統治地区にODAでは市民は黙っていないでしょう、地球統治地区への支援で此方の政府が危うくならないか検討後お答えしたいと思います」
「解った良い返事を頼む」
一言言うと席を立ち上がり旧オムニ大統領官邸へ戻っていった
「雪人、困ったものだな」
「まあ、上から目線でなく此方に出向いてきたことだけでも評価しましょう」
「でどうするつもりだ」
「答えはNOしかありませんよ」
「マフィアもだめか?」
「海に浮かびますか?」
「それは困る、雪人の人脈でカシアス統治地区をおさえているのだから」
「カシアスからの金は何時頃になりそうですか」
「後1ヶ月」
「此方は持ちこたえられそうですが、地球地区は持たないでしょう」
「それでいいのか?」
「戦争なしで地球地区も手に入れられるでしょう」
「それが狙いか!」
「冗談です、納めきれませんよ」
「悪い冗談だ」
「来月の結婚式までには何とか納める手を考えましょう」
「まあそうしてくれ、それとブバイが呼んでいるそうだ顔を出してくれ」
「解りました、カワサキ全権大使」
カワサキが立ち去ると雪人も応接室を出ブバイのオフィスへといった
「ブバイに雪人が心を許せば良し、許さなければ強制自白・・私もそろそろゲームに飽きた、互いに自星の為働いたが・・上手くブバイが説得できれば良いが・・」
雪人がブバイのオフィスをノックする
「入ってよし」
「失礼します」
総統と言えどお飾りの雪人、オムニ人に対する折衝以外の仕事はカワサキとブバイが執り行っている、上官に当たる為敬意を表さなければならない
「来たな雪人」
「はい、何でしょうか?」
「最近のオムニの動きが気になってな」
「ヤオ大統領も動いていないようですし、軍の施設も以前に変わらず・・」
「そんな当たり前の事ではない、お前の握っている情報いや起こしていることだ」
雪人は態と顔をしかめる
「大体仕掛けている人間も解ってきた、オムニを如何したいかも推測が付いてきた」
雪人の顔がさらに歪む
「そこでだカワサキとも話していたのだが我々も自分の故郷が恋しくてな、カシアスも肥沃な大地となり我々の当初の目的も終了したが帰る理由もなく、いつまで続くか分からない地球の統治計画に係わりうんざりだよ」
「そう言う事ですかしかし、私の協力できる事ではありません」
「まあ当然の答えだがカシアスによる全面統治若しくは、オムニによる統治が起これば地球の混乱は関係がない、ただ前者の場合は我々も動けなくなる、オムニによる統治の場合泥沼の戦場になるだろう」
「カシアスの将軍がその様なことを地球に漏れれば・・」
「此処ならば問題なかろう、元は土田禾人の居城スタッフは其のまま元地球軍、オムニの将軍の庇護を受けて暮らしてきた、もし不義理をするのであれば既に行っている」
「確かに」
「雪人、私はお前の動きを見ていておかしな所はないが怪しいところは・・」
「有りますか?」
「ああ」
「さてどうしますか?」
「開き直られても困るが、私の言ったことが総てだゲームを終わりにしよう」
雪人の顔が変わった
「此処でお前を処分したらエアーズマンのスタッフが総懸かりでカシアス司令官全滅の可能性がある、そこでお前に問う我々が無事にオムニを出る方法はあるのか?」
「現状ではないでしょう」
「現状では?」
「このままの状況で地球軍を見放せばカシアス本星にも地球からの圧力が少なからずともあるでしょう、ナギサさんも帰れる方法を考えなければなりません」
「あるのか?」
「オムニが仕掛けてくれば其れなりに何とかなるでしょう」
不敵な雪人の笑いにブバイは確信した、最初からカシアスを引き込んでオムニの政治、統制、移民の共生を強化しようとしたのだ、地球だけと違ってカシアスを入れることによって情報のコントロールや雪人の作戦をぼやかしたのだ
「ぬかせ」
沈着冷静なブバイが険しい顔をした
「オムニが仕掛けてきても、もし私に何か有っても逃げ隠れせずカシアス皆で打って出て下さい、道が開かれることもあるでしょう」
「ああ判った」
「それと保守身は隠れ、革新者は天かけるとも言っておきましょう」
「謎掛けか、雪人此れだけ言わせてくれ、くたばれヤンキース!」
ブバイが最後に言った言葉に雪人が答えた
「ヤンキーはくたばってますよ」
この返答にブバイが目を点にしていった
「お前は・・一体誰だ?」
雪人の高笑いがブバイの部屋に響き渡る
ニューヨークヤンキースマークはNY、ブバイは禾人と雪人の作戦と読んで言った言葉だったが雪人の答えはYがくたばった、死んだのはNつまり禾人のはずであった
「さて自分自身忘れましたまた、この計画大詰め貴方方がカシアスに帰還できる手は打って有ります来る金の20tはアルバイト料としてもって帰ってください」
「残りは?」
「オムニから持ち出した物資代としていただきます」
「で此れからどうする?」
「ナギサさんには黙っていていただきましょう、カワサキ大使には必要最小限の報告で済ませてください、貴方の事を賢者だと信じてある程度の答えはしましたが裏切れば・・」
「私のほうも言ったとおりゲームに終息を求めている、動きからすればそろそろ終だろう綺麗に終わらせてくれ、それとは別にナギサとはどうなんだ」
「私に関しては何もありません」
「作戦上だというのか」
「私に関しては、まさかあいつがプレイボーイだとは思いませんでしたが」
「この件だけはキッチリ始末をつけろよ」
「分かっています、だけども結婚式までは許してください」
「何か有るのか?」
「さて、綺麗に別れて見せます」
「ナギサの心に傷は残すなよ」
「残します、雪人という男の生涯を、では」
一礼をして部屋を出る、自室に戻ると直ぐにエディとスティーブ呼び寄せた
「総統失礼します、急な呼び出しでどうかいたしましたか」
大きく首を振って机に頭を伏せ雪人が言った
「ぐたぐたになっちまった」
「は?」
「気づかれたんだよブバイに、至急奴らに監視をつけて地球側に知らせられない様にしろ」
「それは困ったことに」
「ブバイは信用しているのである程度は話しちっまった・・ぐたぐただ」
「経済崩壊計画長すぎましたな、早く進ましたほうが良かった」
「あまり早すぎても救援が届かず餓死者も出る可能性があった、良いスピードだ」
「白夜鬼の祟りですか」
「そんなところか、雷鬼風鬼、長い、長い間苦労をかけたこの計画意地でも完遂しなければオムニの未来がない、我等が兄弟の復讐がこのような目的に代わり進んできたがオムニが移民の星に戻ればゲームは終わる」
「はい」
「ノーサイドは君たちが見届けてくれ」
「・・その件ですが・・」
「何か有るのか?」
「ドールズピザにアリスノックスが出入りしていることが気になって」
「アリスが?情報がなかったな」
「はい」
「いやな予感がするが・・オムニ4・四天王か、雪人が余計なことをしたから、ひょっとしてリサ達に正体がばれたか」
「リサ様は何も言っておられませんでした」
「アリスは何がしたい?あのピアノで見破ったというのか?いや、セファとのデータ共有」
「なんともいえませんが」
「セントラルに行く途中ピザ屋に顔を出して煽っておくか」
「早速カシアスの周りに監視をつけます」
「よろしく頼む」
「かしこまりました」
二人が部屋を出ると雪人はジャケットに着替える
電話を取りナギサを呼んだ
「なんですか?」
「セントラルに様子を見に行こうかと思いまして一緒にどうですか?」
「ヤオご令嬢のところへですか?」
「そうです」
「ご一緒します」
「では」
車に乗り出かける
「途中差し入れを買って行きますので」
「本でも?」
「いや彼女のことだから食い物がいいでしょう、ピザ辺りでいいと思います」
「事務方がピザって言えばドールズピザって皆さん言っていました、結構頼んでいるみたいでした」
「そこにしますか」
内心驚いたリサ達がやっている店の評判がいい、よく考えれば不味くては長く営業は出来ないカモフラージュとしてはある程度評判が良いほうが良いに決まっている
「ここか」
店の前のパーキングスペースに車を止め店に入る
「カット売りもあるんですね、食べてみますか」
「そうですね、たまのお昼ピザもいいですねデートをしているようで」
雪人が笑いながら言った
「最近何処へも行っていなかったですから申し訳ない」
「そうですね、後式だけって釣った魚にえさやらないと逃げるかもしれませんよ」
「それは困る、大事にしますよ奥さん」
等と話をしているとリサが現れてオーダーを取り出した
リサは終始ブスッとしているサービスにスマイルはない、いや雪人に対してだ
「イートインで僕が牛肉にオニオンコーンとコーク」
「私がトマトとパプリカオニオンとオレンジジュースをお願いします」
「それとテイクアウトでこの店のお勧めをこの容器に」
30cm角のタッパー3枚を出した
「かしこまりました、25ドル35セントです」
イートインを受け取りテーブルで待っている
「さてお勧めね!」
「何を出すの?」
「決まっているでしょ!1枚は暴君ピザある意味No1だもの」
暴君ピザ、トマトソースに見えるタバスコベースにハバネロをトッピング見た目はピ−マンピザである
「次は?」
「普通にミックスとトマトピザ」
「まあ普通の店なのだからそんなとこ食中毒になるような事だけは止めてねあと一ヶ月、営業停止じゃ狙撃も出来なくなるから」
「分かっているわよ」
タッパーにピザを入れリサに渡すと「当店人気の品3点です」と手書きの紙を張った
リサが席までタッパを持ってく姿を見ていた雪人が
「リサキム少尉?」
リサがドキッとしたショートカットをロングに変え雰囲気だって10年前と違うはず
「いやさっきは解らなかったが、間違えないな元気そうで何よりだ」
しらばっくれても仕方ないと思ったのか
「土田総督もお元気そうで」
「雪人さん知り合いですか?」
「私が航空司令官を勤めていた空母に乗っていた女性です、てっきり民間アクロバットチームに行ったと思っていたのだが、君にはエプロンより対Gスーツの方が似合っている」
「ありがとうございます。おせいじでもうれしいです」
「裏切り者に言われても嬉しく思わないって感じだな」
「その通りですね」
「素直でよろしい」
「そろそろ行かないと」
「ですね、面会済ましてワイストマイヤー氏に会いに行かねば」
席を立ち商品を受け取ると
「ご馳走様美味しかった」
店から出るとミノルが塩を持って出てきた
「塩まいとくか!」
車が立ち去ったのを見て
「二度々来るな!」
叫び声をあげ塩をまいた
「雪人さん、さっきのリサさんって優秀でした」
「秀逸でしたね」
「引っ張れば良いのに」
「いろいろありますから」
カシアスセントラルに付くと
「待っていてください、所長に挨拶してきます」
着いて行こうとするナギサを手で静止して雪人は一人所長室へ
ナギサは考えた、ヤオの特別優遇を頼んでいるのは間違えない総督とはいえ越権行為だ、其れを自分が聞けばブバイやカワサキに報告しなければならないが、したくはない聞かぬが良いと
「此れは総督」
ドアを閉め目で合図する
「般若、フェイルンの様子はどうだ」
「どうって事はないわ、頼まれたとおりに戦闘訓練も好きにさせている、ただ脱走したジアスの女性を皆の前で射殺したので脱走はしないようね」
「射殺?脱走したのか?」
「歩いていただけどね」
「お前も悪い奴だ、見せしめか」
「あら、貴方だってジアス6人近く死なせたくせに」
「まあ、お互いジアスは大嫌いだからな白夜も」
「で今日は?」
「大体解っているだろう」
「皆のところ回ってるんだって、お別れの挨拶?」
「そんなところだ」
「私の感だと離れられないと思うわ」
「嬉しいね美人に言われると」
「冗談だと思っているでしょう、楽させたくないのが沢山いるみたいよ」
「何か知っているのなら・・」
「感よ、感」
「まあ良い、じゃあな」
「また」
「または無い」
ドアから出てナギサの待っているフロアーへ来ると既に面会のフェイルンが席に座っていた
「誰かと思った」
「差し入れだ」
ピザを差し出した
「気は利くようね」
「つまらない本よりは良いだろう」
「私コーラ買ってきます」
「すみません」
「私より若そうだけど今の人がお嫁さん」
「ああ、一寸は気になるか」
「ええ、禾にぃを討った人」
「英雄だ」
「首掻き切ってやりたいわ」
「お前の倒した地球軍、ジアス軍の家族前に並べてやろうか」
「遠慮するわ、でも今の聞いていると禾にぃと話しているみたい」
「そうか」
「雪にぃなら・・」
「コーラかって来ました」
紙のトレイ紙のコップ武器となるものはない
「それじゃあ戴こうかしら」
一口食べて見る見る顔色が変わった
「なによこれ!」
「店のお勧めピザだってよ」
コーラを一気に流し込みながら言った
「何の嫌がらせ、こんな辛いの!」
雪人が一口齧り言った
「そんなに辛いか?」
「からいわよ!」
雪人が紙を差し出し
「ピザ屋にお勧めを三枚頼んだのだが・・」
「この字リサ!」
「知っているのか」
「知ってるも何も・・同じ海軍じゃない・・」
ドールズと思わず言いそうになった
「ナギサさん先に車に行ってもらえますか、さっきのことで・・」
さっきのこと所長との話だと察してナギサは車へと戻っていった
「所長にお前のことを頼んできた」
「あの意地悪所長ね、射殺も平気楽しんで」
「そうか、だが何があるか解らない我慢しておけ、其れと私の結婚式からオムニは代わるいや変えてみせる」
「カシアスのお飾りが?」
「まあ見ていろ命を懸けて変えてやる、じゃあな」
「ばっかみたい」
他のピザの匂いをかいで
「リサの雪人への嫌がらせかぁ巻き込まれるとは・・他は食べられそうね」
「お待たせ」
「いえ」
「行きますか」
雪人はナギサと共にワイストマイヤー邸へと向かった、邸と言っても雪人の実家に比べて若干大きい程度である
やがて家が見えてくる、第73次移民護衛官フォレストワイストマイヤー、デビットとベルの父、彼が呼んでいるのである
「はじめまして土田雪人です」
手を出して握手を求めた
「フォレストだデビットから君の話は聞いている、頑張っているらしいな」
「はっ!」
握手を交わした、招待でもされない限り来られる家ではない威厳でも威張っている訳でもないベルの事件があって訪れたことがない
「呼び出して申し訳ない、ご覧の通り足も弱って車椅子では中々外へも行けなくてな」
「いえ其れは構いませんが」
「デビットも軍と開拓難民の支援が忙しくて話も出来ない状況でな」
紅茶が運ばれてきたアフタヌーンティの時間だ
「まあお茶とクッキーケーキなどどうだ、それと雪人君と話をしていてまだお嬢さんの紹介をして貰っていなかった」
「私の妻になるナギサシンジョウです」
「ナギサシンジョウです」
「娘もやっと安心して眠れる、雪人君が何時までも一人だとなデビットもな」
「知っていたのですか?」
「ああ、別にベルが誰と付き合っても構わなかったからな、地球もオムニにも私たちには関係なかったが・・」
「嘆かわしいことですがオムニリンクなどといって、先住したことを声高々に主張し後から来た人を排除する輩が問題なんです」
「ああ・・」
しばらく長い沈黙のあとフォレストは一冊のノートを雪人の前に差し出した
「これを頼みたくて雪人君を呼んだのだ」
「拝見します」
1059名の名前とプロフィール顔写真だ
「私が連れてきた移民の名簿だ皆の消息を確かめてもらいたいのだ、私もいい歳だ連れてきて30数年皆が問題なく暮らせているか知りたい」
「カシアス総統としてではなく、個人で調べられる限りでよろしいでしょうか?」
「カシアス総統としてではなくか…」
「カシアス総統はお飾りですから個人としての人脈のほうが、早いと思います」
「わかった、よろしく頼みます」
雪人は深々と頭を下げた、其れにあわせナギサも頭を下げた。
帰りの車の中
「どうするんですか?」
「友人に頼みます」
コルリオーネへ電話をかけ移民1059名の安否確認を頼んだ、これにジョルジュは快く引き受けた期限は2週間結婚式前に済ませるのだ
そして2週間後総員の安否をフォレストに届けた、フォレストはその調査書を見ながら涙を流し結果を受け入れた、戦死者320名、病死自然死が110名、自殺1名戦死者が病死自然死を上回っていた。残ったものも定職者は少なく今だオムニの秘境と呼ばれる開拓地まで辿り着いた者も少ない、フォレストが呟いた
「希望の地に来て戦死とは・・」
雪人も思いは一緒である、そして自殺の1名其れはベルであり特別の意味を持っていた
「雪人君ありがとう、これで私も・・」
「いえ未だです、オムニを変えるいや、私が始まりで総てが変わる」
「?」
「総てを見届けてください、では失礼します」
お飾りと言い切った雪人の言葉とは思えなかったがその顔は自信に満ち溢れていた。
「パワーゲーム」 第6話「血のウェディング」
夕暮れの丘桜の木下、ベンチに禾人が座っていた
「雪人明日だ、俺もそちらにいける、長かった本当に長かった、あの一件からオムニリンク、ジアスに対する復讐がいつの間にか平等と移民の開放になったしまったがこれでよかった、100の同志が集まりオムニの開放を手伝ってもらえた」
日が沈む黄昏の時
「地球側が此れほどに潰れてくれるとパワーオブバランスもないこのゲームノエルの勝利、雪人と俺が選んだ人々がベルちゃんの望んだ世界を作ってくれる・・そう信じて・・なぁ雪人ダブルフェイス、ツインボディ、シングルハートと呼んでくれた我らの仲間の笑顔の為に、さあ行こう希望の地とオムニが再びなる為に」
日が昇り時間が何時もよりゆったりと流れて行くかのように禾人は感じていた
ゆったりした部屋に白い服装で椅子に腰掛けワルキューレの騎行を聞く禾人、其れとは対照的に別の部屋でウェディングドレス姿のナギサが皆に囲まれ祝福を受けていた
「雪人の様子でも見てくるか」
「ブバイあの事確かめてくれ」
二人のやり取りにナギサが尋ねた
「雪人さんが何か」
「何でもない、いやナギサのご両親のことは如何するかと」
「そうですか」
雪人の部屋をノックしてブバイが入った
最高の笑顔をして腕を組み禾人が音楽を聴いている
「君、ワルキューレの騎行とは何かの暗示かね」
何者わからない二人のときは君とブバイは読んでいた、カワサキにはこの件は話していない
「将軍、我が名は禾人」
「!」
名を名乗った
「雪人はどうした!死んだというのか!」
「その通りです」
凄まじき兄弟ブバイが頭を振った
「そして今私に名を言うと言うことは、自分の死を意味するのだぞ」
「はい」
「今日なのか?」
「その通りです、経済が崩壊、地球軍がオムニ麻疹に感染し蔓延、結婚式でカシアス統治総統が射殺されれば開戦です」
「射殺とは、我々は?」
「有る事がきっかけになって今日帰れるでしょう」
「今日か・・」
「そうです、これを持って行ってください」
チップを渡した
「何だ?」
「スーパーリニアキャノンの設計図です、其れとX4の急所図必ず必要になるでしょう」
「何かと戦わなければいけないのか?」
「この星と同じ事がカシアスでも起こっている、折角送った物資も無駄になる、其れを収めない限りカシアスにも未来はない、本国がアルガチームを呼び戻すでしょう」
「私たちが知らない情報を既に手に入れてというのか?」
「はい」
「わかった・・時間までは目をつぶる歌舞伎たければかぶくが良い」
禾人はブバイに長い一礼をした
リサ達が着々と準備を進めている、標的は8K先の雪人警戒区域外からの狙撃、ビル4基を貫き体を粉々に吹き飛ばす狙撃支援Gシステム・超超長距離ライフルグラディウス炸裂弾頭ノイラティム
一寸前Gシステムの件でアリスが言っていた
「私を呼ぶときは賛美歌13番をFMカシアスにリクエスト」と
ミノルは
「新聞に求むGカップブラ」これは皆一致で拒否
これから暗殺をしようと言うのに暢気なものである
この会話で解るようにシステムのGとはあの男の名から来ていた
「さてと、衛星追尾システムチェック」
「グリーン」
「測距装置チェック」
「グリーン」
「ターゲットスコープチェック」
「射軸修正不要グリーン」
「射撃サポートプログラムチェック」
アリスがチェックした
「プログラム実行中異常なし」
「いつでもいけますよ」
「さあ中将の敵討ち!ミノルしっかり頼むわよ!」
「オーライ」
ミノルが親指を立て答えた
恵が顔を顰め言った
「なにか引っかかるなぁ」
「なんですか?」
「いや・・後で女房にでも聞きますよ」
ミノルが小首を傾げた
ジャスダムではマークがモニターを睨む様に見つめていた、数日前の宇宙軍将軍が総招集された時のことである
「さて諸君今日の本題だが、」
「元帥、その件につきましては私から」
現在のオムニの情勢がスクリーンに映し出された
「現在オムニの混乱は著しく、我がオムニ地区においてもオムニリンクが台頭地球移民を排除し始めました、手元の資料を」
各将軍が目を通し始めるとロウアルが
「地球に人類が溢れ始めオムニの地にたどり着いて約100年、今も移住者は来ている皆ステーションでは希望に溢れた顔をしているがその資料には、落胆と失意しか残っていない」
ファーガーソン少将が話し出しす
「我々宇宙軍の方針としては、地上のことには口は出さないつもりでいたが、昨日土田雪人カシアス総統からカシアス統治地区への移民の受け入れを拒否してきた、理由は財政難と開拓地の不足、工業地区はなく産業も乏しい受け入れても安住の地を与えられないとの事だ、我々が一番安心して送り出していた場所がもうない、裏切り者でもオムニの人間カシアスも移民の星丁重に受け入れてくれていた」
声を荒げてモントベル中将が叫んだ
「本来ならば本国オムニが受け入れるのにオムニリンクが問題となっている!」
「土田禾人が目指した平等な移民其れを実行する為に全将軍に問いたい、もし解放決起が有った場合宇宙軍はオムニに反旗を翻すこれについて良いと思う者の起立を求めたい」
この時期に急にこの話は異様な気がしまた、採決まで短いし質問うら許さなかった
しかしロウアルは既にマークを除く全将軍にアプローチをしていた。
全将軍が立ち上がった、マークもつられる様に立ち上がってしまった。
「嵌められたのかなぁ」
マークの素朴な疑問だ
「サテライトマスター」
「何でしょう?」
「雪人の結婚式の放送が始まったのですがどうしましょう」
「皆何かを期待していませんか」
「人の不幸は蜜の味といいますから・・」
「良いでしょう艦内に流してください、期待通りにはならないと思いますが・・」
「さて玉込め開始しますか」
砲身3m口径20mmにブースター10箇所を装備、各ブースターパックに空砲を詰めていく
ノイラティムを炸裂さす為には胸ポケットのライターにある程度のスピードで直撃させなければならない、そこでグラディウスはスーパーガンと同じく順次空砲が発火して砲身の内圧を上げていく。
「さあ始まるわよ」
数時間前
「ノエル艦内放送は始めていいのよね」
「はい」
「タービン出力80%」
「固定アンカー解除」
嵐の海でプラネットハーツはその巨体の封印を解いた
「では艦首をオムニシティに向け回頭」
「ヨーソロー」
「微速前進」
「ヨーソロー」
「艦体の点検に入ってください」
「了解、総員艦体総点検に入れ」
「点検終了し異常なければ最大戦速で嵐の海より出ます」
「主砲副砲点検」
「さて主砲のターゲット地球総統府を一撃で沈めるよう仰角の計算に入りましょう」
「しかし、ミサイルでなく総統府だけ砲撃ムカデ砲とは・・」
「ノエル、天狼の捕獲部隊も配置に付いたわ、でも驚くほど天狼を捉えようとしているのが多い確保は速やかに行わなくては」
「その前に殺されなければいいのですが」
「プラネットハート総点検完了!オールグリーン」
「では艦隊に指令!最大戦速!」
「ヨーソロー!!」
「ファンこれより、雪人捕獲部隊はオムニシティに展開、作戦開始に備えさせろ」
「イエッサー」
「さて鬼が出るか蛇が出るか」
「ハーディ少将何か有るのですか?」
「なにがだ」
「雪人に固執しすぎるのです」
「大統領に言われたからな」
「それだけなら何もこんなに大掛かりでなくても」
「ファン例え話だがある双子がいて入れ替わっても誰の気づかなかった、馬鹿にされすぎないか」
「それって・・」
「まあ例え話だと思ってくれ」
ファンはこれ以上の話は問題になりうると考えやめた
「そろそろ演説の時間だ」
雪人が扉を出るとナギサが待っていた、結婚のお披露目ではない政策の発表である
「ブバイ将軍結婚式前に二人そろって政策のプレスとは何を考えてるんでしょうかね?」
「良いじゃないか、其れよりオオカワ、クニミチ・アサノ・ベンテンDを連れてガルバルディを飛ばせるようにしておけ」
「なぜです?」
「命令だ」
「失礼いたしました」
オオカワは訳も解らずガルバルディに向かっていった。
雪人が大聖堂の前に作られた演壇に立つその左横にはドレス姿のナギサが立った
「ターゲット補足射軸修正、追尾システム作動良好」
「支援プログラムスタート」
「ビル三棟の窓開放」
「以後狙撃タイミングはアヤセミノルへ」
粛々と狙撃の準備が整って行った
「嵐の海より艦隊出ます!」
「全艦攻撃準備」
「グランドクロスアタック全ミサイル発射準備よし!」
「宣戦布告放送準備」
「放送システムハッキング準備よし!」
「さて雪人の話でも聞きますか」
「そうしましょう」
「鈴さんそちらはどうですか?」
「主砲仰角調整中です」
「解りました」
地球軍司令部
「何だこれは?」
「つい今しがた現れた模様、現在偵察衛星を上空に送っています」
「警戒警報を出しておけ」
「カシアスには?」
「連絡だけはしておけ、何か有ってもこの程度の大きさ1基ならば此方の戦力で済ませられるだろう」
「了解しました」
雪人が今後の政治政策について語りだす
「カシアス統治エリアの人口が移民受け入れによりキャパシティを超え現在衣食住また、
開拓地、仕事も不足している状態です、これ以上の受け入れはカシアス統治地区の情勢不安を煽るものとなりうる為今後一切の移民受け入れ拒否をオムニ宇宙軍ロウアル元帥に通告いたしました、また今後の・・」
雪人が政策の内容を話そうとしたときである、設置されていたスクリーン並びにオムニの放送システム総てがハッキングを受けた、ノエルである
「先ずは土田雪人カシアス総統殿のご結婚お祝い申し上げます」
ノエルは画面の半分をハッキング雪人の姿を同時に映し出した
「カシアス総統殿が先程言っておられた件に対し私どもも憂いており、本来ならばオムニ政府が率先して受け入れる移民を排除し地球統治地区の混乱で地球も受け入れられない、ステーションは現在3万の待機移民がいます、これ以上の混乱差別は移住の妨げとなりひいてはオムニの開発の遅れとなります、我々は土田禾人の名の下にオムニを移民の星に戻すべく解放したいと思います」
ノエルは大きく呼吸をすると
「オムニ政府並びに地球カシアス連合に対し降伏勧告をいたします」
地球カシアスだけではなくオムニに対してもその政権をノエルは認めなかった
「リサどういう事だ!」
エリオラが声を荒げるリサは落ち着いて答えた
「私も聞いていないわ、でも今のオムニはオムニリンクの台頭でどうしようもない」
ミノルはこの話には加わらずジッと獲物を睨みつけている
「リサそろそろ狙撃をしないと・・」
アリスとリサがグラス型のディスプレイを掛けた
さらに驚愕の話が続く
「返答は30分以内にお願いいたします、30分後には攻撃を開始いたします」
ノエルの最終勧告であるこれを受けて直ぐ反応したのが宇宙軍だった。
雪人の画面がロウアルに切り替わる
「私はオムニ宇宙軍ロウアル元帥である、ノエル元海軍少将が述べられた通りの現状がステーションで起きている、此れは移民の星でありながら利権を貪る愚かな先遣者がいる為だヤオ大統領の制御も利かなくなった、この件の打開の為宇宙軍はオムニを離反しノエル少将」
「号令です」
「・・ノエル号令の指揮下に入ることにした以上だ」
ジッと画面を見ていた雪人に衝撃が走り、隣に立っていたナギサのドレスも顔も真っ赤に染まった、
「外れた!」
「何で!」
ターゲットは一歩も動いていない、追尾システムも異常ないブーストのタイミングも合っている、考えられるのは最後のビルの窓である空けられないが此れもリサ達が借りてガラスも変えた
アリスがプログラムチップを抜き取ると
「さあ直ぐ脱出しないと警備が来るわ」
銃やシステムを残したままビルの駐車場へと降りた
「私とエリオラ中佐は私の家で待機します」
アリスはエリオラを車に乗せ立ち去った
リサたちは岬にあるコルリオーネの別宅へと向かっていった
ナギサが必死に雪人の左肩の辺りをドレスで押さえている、背後には雪人の左腕が転がっていた、高速で腕を引き裂いた為炸裂はしなかったのだ。
のた打ち回る雪人を抑える
「直ぐに雪人を医療センターに!」
ブバイの指示が出た、ナギサはエクトールに向かう様命令がなされた
「傍に居てはいけないのですか!」
「戦争が30分後には始まるだろう、ノエルは容赦なく攻め込んでくる受けるのはわれらしか居ないのだ」
「解りました」
「ノエル迷惑だったか?」
「いえロウアル元帥オムニが降伏しやすい環境をお作り下さりありがとうございます」
「だがノエル如何するつもりだ、もしオムニが降伏しなかった場合」
「メテオストライクをお願いできますでしょうか?」
「指揮下に入るといった以上従おう、禾人の嫌いなオムニリンクとジアスを滅ぼす為に」
「オムニリンクが嫌い?」
「我々は自分たちのことをオムニリンクだと思っていない、地球から移住したが降り立たず宇宙に居続けた地球人だ」
「其れで禾人さんは宇宙軍に・・」
「蚊帳の外かも知れんが許してやってくれ」
「ロウアル元帥がそこまで仰るなら帰ってきたらぶん殴るぐらいにします」
「帰ってくるとは?」
「ロウアル元帥ならご存知かと思っていましたが?」
「さて何のことやら?」
ポーカーフェイスで話を進める
「ノエル処で今回の攻撃いつでも言ってくれ直ぐにメテオストライクを行う」
「あまりしたくはないのですが・・」
「標的はオムニでよいな」
「はい」
「ではまた後で・・」
「ノエル、砲撃位置にプラネットハーツ到達」
「艦体固定アンカー射出!」
100本のアンカーがロケットにより海底に打ち込まれた
「敵戦闘機隊発進した模様、偵察衛星画像を出します」
地球軍の大軍団である、大型の爆撃機2機を含む戦闘機、艦上爆撃機250機
到達まで35分
鈴が機影をみて言った
「拙いですね、爆撃機はルルを搭載しているタイプ」
雪人が病院に運び込まれ手術室へ入った
「どうですか彼は?」
「出血が多すぎて非常に危ない状況です」
看護婦が飛び出してきた
「先生!至急来てください!脈拍微弱です」
慌てて手術室へ入った
ブバイが時計を見た後5分で最終回答なのだ
「将軍」
女医がブバイを呼んだ
「大変お気の毒ですが・・出血多量にて土田総統はお亡くなりになりました」
「そうですか・・一応確認をさせてください」
手術台に横たわる雪人、青白く体温は既に冷たく心拍計はフラット
ブバイが首に手を触れ脈を確認した
「何か疑わしいことでも?」
「いや」
「この状況で遺体は如何します?」
「安置所に置いてください、事が終わったら葬儀を執り行いたいと思います」
ブバイが病院から立ち去るのを確認した
「さて禾人を復活させるわよ」
「鬼子母大丈夫?」
「超低温法で仮死状態だから今のうちに左肩に人工腕用の接続アダプタを付けるわ」
「二人だけでオペとはねえ」
「般若が一緒だから安心してるけど、あっちは良いの?」
「刑務所はそろそろ暴動が起きるから地球軍だけに任せとけば良いわ」
寝転がる禾人の顔を見ながら
「ホントこの男はあっちこっちにばら撒くだけ撒いてサッサと退散って」
「まあ予想通り戻ってきたから楽させないよ」
「さてと神経結線接続、本体接続用関節システムを埋め込むわ」
「はい此れ」
ドリルを手渡たした
ドリルを使って肩甲骨鎖骨にパーツを取り付けていく
「そろそろノエルが攻撃開始したはずよ」
「関係ないわ百鬼の遂行することはオムニを正しい方向に向ける為に仕掛けを作ること」
「其れも終わり、ノエルの隊が動いたら後はお任せ」
「私は禾人連れて何処か行くかな」
「般若は禾人に中学時代から片思いだものねぇ」
「ツッパリとレディースよ、お似合いの筈なのにねぇ禾人その気なし」
雑談をしながら手術が進んでいく
「地球側の対応は良く解りました此方も遠慮なく攻撃を開始させていただきます」
地球軍の航空部隊の発進、潜水艦隊の移動を示してノエルは言った
「グランドクロスミサイル撃てー!」
「全弾道ミサイル発射良し!」
「では主砲砲撃に移る」
「ノエル号令、若干の作戦修正宜しいでしょうか」
鈴が言うと間髪をいれずレベッカが不快を示したがノエルは
「主砲砲撃は鈴号令の考えで行っていただいて構いません」
「ノエル!」
レベッカが声を張り上げた其れを無視し、さらに入らぬ名乗りを入れて委譲に移った
「此れより操艦を委譲する、元オムニ海軍少将ノエルノルンことワルキューレより鈴号令に、ユーハヴコントロール」
鈴は解った此れに答えて
「操艦を預かります、元地球海軍特務大尉葵鈴ことアテナ、アイハヴコントロール」
艦内が凍りつく、殺し合った二人が手を組んで作戦を進めているのである
「ノエル・・こんな大事なこと」
レベッカからの閉鎖回線である
「面白いでしょ」
「まったく」
「でアテナ何をするのですか?」
「敵主力爆撃機をなんとしても撃墜します」
「何か有るのですか?」
「衛星画像から爆撃機は核爆雷ルルを搭載していると考えられます」
「解りました、攻撃を許可します」
「砲撃管制、副砲に空砲を装填」
「空砲ですか、」
「そうです」
攻撃なのに空砲を装填するという耳を疑ったが戦女神アテナの名を信じ従う
「主砲仰角0.01度上げ」
レベッカが声を上げそうになった、目標を飛び越える可能性があるのだ
「おまたせ!」
ミノル、リサ、セシル、ハジメが別宅に着いた。
「あねさん、準備は出来ています」
「ありがとう」
「ホントに行くのですか?あの戦闘機の数を相手に三機ではとうてい到達できない」
「でも行かなければ、私の役目が果たせない」
沈黙の後
「解りました、ご無事で」
リサ達は着替えに向かった
「女性だけを行かせて私が残るのも辛い」
「取りあえずはモニタールームで休んでいてください」
ハジメは促されモニタールームへ行った
「さて死地に赴きますか」
「行く前に水杯ぐらい交わしたいな」
「ミノル死ぬ気はないわ」
セシルとリサが先に機に向かった、ミノルがヘルメットを取り鏡で自分の顔を見た
「死相は出てないみたいね、さて行くか」
両手で顔を叩きヘルメットを小脇に抱えて部屋から出る
「儀式は済んだ?」
先に行ったはずのリサたちが待っていた
「行きましょうか」
歩き出したリサ達とすれ違うファミリーの一人が敬礼をした
リサとセシルは敬礼を返し進んでいく、ただミノルは違った立ち止まりリサ達に先に行くように言った
「如何したのかなミノル?」
「幽霊でも見たような顔をしてたけど?」
「パワーゲーム」 第7話 「 開 戦 」
「まさか・・」
「君なら気付くと思ったがアヤセ大尉久しぶりだ」
「撃墜王の顔を忘れるわけありませんハイドリッヒ大佐生きておられたのですか・・」
「死にきれなくてな」
「中将の話では手榴弾で自刃したと・・」
「色々とあるのさ、禾人のお気に入りのアヤセならば本来総てを知ってしかるべきだが」
「中将のお気に入りですか?」
「あいつ、アヤセは何でも出来ると徹底した英才教育をした筈だ、結果逃げられたが」
「鬼将軍でしたが大変勉強させていただきました」
「だろうなあいつの夢の続きはアヤセに譲りたかったはずだ」
「ゆめ?」
「要らんことを言ったようだそろそろ行かんと待っているぞ、其れと私は死んだ証人保護プログラムの一環だ、黙っていてもらいたい」
「解りました」
「そうだアヤセ、一言言っておく禾人はリサが上手くやると良い顔をしない、ミノルが上手くやると喜ぶ、リサとミノルが言い寄ればミノルを抱くさ・・まあ頑張れ」
「如何言うことですか??」
「お前のことは賢者だと思うので他言はないと思うが、またあいつは生き残った、本人に聞け」
「まさか!」
「お前だから言った、意味が解っても誰にも言うな しかし死にたい奴ほど長生きだな」
ハイドリッヒはミノルに背を見せ腕を高く上げた、「行って来い」
ミノルは身を正しハイドリッヒに敬礼をした
「誰もいないなんて!」
「フェイルンさん、所長もいません」
「武器庫は?」
「鍵が掛かっていますけど」
「壊せる?」
「簡単な鍵ですので・・」
「罠?」
「其れは・・」
「まあ良いわ、後方撹乱が捕虜の役目野と成れ山となれよ」
武器庫に飛び込んだフェイルンの前にはCプラスの姿があった
「何でこんなものが!」
刑務所にしては必要のないものである。
「大統領!宇宙軍に対して如何されるおつもりですか!」
「国防長官反乱軍に対して降伏するしかないだろう」
「そんな馬鹿な!」
「もう時間がない、降伏後ノエルに大統領を任せよう」
「其れは困る」
フェイロンの前に男が立った
「ケイネンか、確かにお前は困るだろうがロウアルに敵う訳がないそれに今は移民のほうが数を上回っている、ノエルの意見支持者が多いだろうしな」
「地を踏まなかった一族に我等が思い解るか!」
「我等?お前だけだろう、オムニリンクなど差別化を助長するからこうなるのだ!」
「何だと!」
その瞬間衝撃波が走った、空中で大爆発が起こったのだ
「何事だ!」
フェイロンが空を見上げる
「50000m位か?メテオクラッシャー最終警告だな」
「氷塊予定通りホーリーウイング上空50000付近で崩壊」
「元帥」
「岩塊投下準備だ、その次は鉄塊を落とす」
「本気ですか?」
「ああ、それとロンギヌスはどうなっているか?」
「既に槍は持たせてあります」
「そうか」
「センタリング終了予定は240秒後です」
「グランドクロスアタックは予定通り、主砲の攻撃待ちです」
「解った、ジャスダムを呼び出してくれ」
「イエッサー」
マークのモニターにロウアルが映し出された
「元帥先程の爆発は!」
「氷塊を脅しで落とし50000mで崩壊させたのだ」
マークがほっとした
「さて作戦ロンギヌスを決行する、ロッカーR-001の開放コードを確認せよ」
「イエッサー」
「コードを読み合わせする」
アクリルケースに入ったコードカードを割って取り出す
「KUH168SGDORUAOU01」
「コードKUH168SGDORUAOU01を確認」
「ではマーク作戦を熟読して作戦に従いジャスダムを移動させておけ」
「イエッサー」
「では検討を祈る」
目を通したマークが驚愕する
「こんな攻撃なんて虐殺じゃない!」
「主砲ターゲットロック、トリガータイミング鈴号令に」
ノエルにレベッカから連絡が入った
「敵潜水艦隊接近中周囲を囲むように来ているわ、鈴さんの推測を確定するかのように半径50kを保ったままよ」
「彼女の言うとおり撃墜しなければ後はありませんね」
「リサさんたちは行ったらしいですね」
「今しがた行きました、貴方も行きたい様な顔をしていますが」
モニターを見上げながらハジメが言った
「この攻撃隊を見れば行かないわけにはなりませんが」
「核爆雷攻撃隊ですか」
「間違えありません」
「強烈な奴が一機在るのですが行ってみますか?」
「貴方のほうが良いのではないのですか」
「なぜ?」
「隠しても無駄です、オムニ撃墜王ハイドリッヒさん」
「その名はもうない私は死人ですから人様に合わす顔もない」
「死人とは?」
「核製造責任者で大失態を起こしました、ルシファーに頼って死んだことにオムニの面々には顔を出せない、それに兵器開発に移って飛んでもいないのでね」
「わかりました、その凄い奴っての詳細を教えてください」
「空神ホルス此方へどうぞカタパルトに案内します」
「知っていたのですか?」
「貴方が私を知るように」
トリガーが鈴によって弾かれた、凄まじい爆発音が連鎖して艦に衝撃が走る
レベッカが弾道表示画面を見つめていった
「この弾道だと目標を超えるわ」
「大丈夫でしょう砲手はアテナなのですから」
「敵艦から砲撃あり我が攻撃隊に接近中」
砲弾が地球軍攻撃隊とすれ違うと衝撃波が爆撃機を襲った
「ルル1エンジントラブル!飛行不可緊急着水を行う!」
「各機機体チェックを行え」
「角度が直りましたよ」
「直撃まで360秒」
「此れを狙ったなんてね」
「失敗です、一機残りました、副砲グングニルショックカノン撃ちます」
ミサイルでも核爆発は心配ないが破損した場合汚染が起こるのだ
再度トリガーが弾かれた
「この機体ですか」
両サイドにロケットの着いた機体
「宇宙にもいけますが水平発射でマッハ25飛距離5000kを可能」
モニターを見ながら
「嫁さん失敗したな、あいつ2機落とそうとしたのが解るのが一機残ったみたいだ」
「では直ぐにでも」
機体垂直尾翼にNG10xが書き込まれていた、さらにノーズにはホルスアイ
「私が乗ることが判っていたみたいだ」
「やっていたのは禾人だから」
「では行きますか」
対Gスーツを普段着の上に着込むとハイドリッヒからヘルメットを受け取りコックピットに入った
「此れを」
ハイドリッヒがベニガラの入った小さなケースを渡すとハジメは目の下に赤い筋を書いた
ホルスの由縁だ
「では!」
ブースターに点火一気に大空へと舞い上がった
「攻撃隊に第二次攻撃グングニルを5秒遅らし一番二番を砲撃する」
アテナの澄み切った声に周囲が応えた
「イエッサー」
「ノエル」
「何でしょう」
「此方も準備に入りたいのだけど」
「アテナに聞きましょう現在躁艦はあの方なので」
ノエルがアテナに尋ねると
「主砲攻撃完了していますので、アテナよりワルキューレへ操艦をユーハブコントロール」
「アイハブコントロール、ではレベッカ防御を始めて下さい」
「イエッサー」
CDCを見回し檄を飛ばした
「良いか手前らアテナのチームには負けない働きをするよ!」
「ロウアルを呼び出してくれ」
モニターにロウアルが映し出された
「ヤオ決まったかね」
「オムニは解放軍に無条件で降伏する、大統領を辞任しノエルに任せる」
「良い決断だ、岩塊を落とさなく助かった」
「これから放送で降伏を知らせるがオムニリンクが如何騒ぐかわからん」
「下らんことを言い出したらそのときは氷塊を3000mで崩壊させる」
「良いだろう、ところで・・」
ヤオの話をロウアルが遮った
「オムニ大統領が知らなくて良いことだ地球軍が降伏することを願う」
「では続き後ほど」
「え!雪人さんが亡くなったって!!」
ブバイから雪人の件を聞いたナギサがコックピットの中で気を失いかける
「残念だが私が死亡を確認した、ナギサ出撃があった場合お前の判断に任せる、気をとられているようなら」
「いえ大丈夫です」
「そうか、まもなく第一弾攻撃が到達するその後の攻撃に備えるぞ」
「判りました」
通信が切れるとナギサは両手で顔を押さえ嗚咽した
「敵ミサイル分裂2.8.64・・分裂規模半径1.5Kパイルバンカー!」
「到達するぞ」
ガルバルディのカメラが各基地を捕らえた
「空軍、陸軍、海軍とも壊滅」
ミサイルに搭載されていたのはパイルバンカー10m置きに半径1.5kを埋め尽くす
「地球軍司令部は!」
「旧オムニ非常事態分析指揮管制センターに入った模様」
「そうか」
「地下700mなら攻撃を受けず援軍到着まで持ちこたえられる」
「それは解らんな」
「砲撃大統領府を直撃!」
「我々は既に空の上地球軍司令部は土の下さて、どうなるものやら」
「グングニル ぅてー!!!」
凄まじい音がずれて2発響き渡った
空気の衝撃がオムニの空を切り裂き地球軍攻撃隊に迫る
「ドップラ−レーダーに反応!何だこの乱流は!」
連続した衝撃で機体に故障を起こさせる
「何機離脱した!」
「50機です!爆撃機は異常なし!」
「さて止めを刺しに行くぞ」
「対空ミサイル用意」
「イエッサー」
「アテナ」
「核汚染もありますが直撃よりも良いでしょう」
「解りました」
「此処から先私の出番よ、メデューサに任せなさい」
言いたくもない渾名を名乗って指示を出す
「主砲収納!全ファランクスオープン!対潜ローレライ投下展開!」
「ローレライを使うのですか!」
「ワルキューレ問題ある?」
「大有りです!ポリンスキー艦長に連絡!エイプリルをプラネッツハーツの真下深度50mに着けるよう連絡!」
「沈めちゃうのは敵だけでいいもんね」
「いいもんねじゃ有りません!展開前に安全域に退避させないと」
「エイプリル深度50、貴艦の真下に着けた通信ケーブルを打つ!」
エイプリルより打ち出されたケーブルがマグネットにより艦底に張り付く
「貴艦は我が艦を沈めるきか!」
「失礼いたしました副長」
「ノエル総号令の指示ではないのは解っています、作戦終了後レベッカにポリンスキー艦長へ出頭するよう言って置いてください」
「解りましたね、レベッカ」
「アイサー、さて続きねローレライ投下展開!ゾンデ放出!ホーミング短魚雷装填アスロック用意!魚雷防御板展開暖衝用ウレタンフォーミング開始!」
「敵後方より接近する友軍機あり、リサたちです」
「さらに後方超高速で接近する飛行物体あり所属不明です」
「リサに確認させてください」
「アイサー」
「リサ、給油ポイントタンカー確認此れより給油を行う」
「プラネッツから指示が入ったわ、後方より超高速で飛来する物体の確認」
「超高速って?」
「マッハ21だって後2分!」
「わたしは高度を上げるから給油の順番最後にして」
ミノルが一気に高度を上げる
「来た!」
ミノルの目が機体のペイントを一瞬で読み取った訓練をつんだ動体視力の賜物である
「機体の尾翼にNG10x、ノーズに目の文様を確認」
「目の文様?ホルスですね、識別信号インプットしてください」
「早いなコイツは、さあブースターを爆撃機の尾翼にぶつけるか!」
「敵機後方より高速接近!回避!」
「間に合わん!」
凄まじいスピ−ドでブースターを切り離しNG10xが戦闘状態に入ったと同時にブースターが爆撃機の尾翼を直撃海へと突っ込んでいった
「やられた!こうなったら200機総がかりで沈めてやるその前にあいつを落とす」
「リサ!如何するの!200機よ!」
「やるしかないでしょ」
「引き下がっても帰る場所はない、ミノル行きます!」
躊躇うメリサを措いてミノルが飛び込むとリサが続いた
「後方より3機接近」
「私は前の奴を討つ、ライア10機を連れて後方の3機を討て残りはあのエネミー1を沈めろ」
「たかだか3機私一人で落としましょう」
「うぬぼれるな、この軍団に飛び込んでくる自信がある者を嘗めるな」
確かに4対200は自信がなければ決断できないがミノルには勝算があった
「中に入ってしまえば相打ちを狙えるわ」
「そんなに甘くなさそうねしんがりが出てきた10機よ!」
「重いしフェニックスをさっさとぶっ放しましょう」
「そうね、攻撃システム連動」
「敵機自動選択ロック!」
トリガーを押すと各機4発積んでいたフェニックスが、ミノルの機2発を残し10機目掛けて飛んでいく
「回避!」
「逃げられると思って、空載型のパトリオットフェニックスよ!」
一気に10機を撃破、テクニックなどではない兵器の性能だ
「面白いものを積んでいたようだな、お前はどうだ!」
ブースターを付けていた為ハジメ機にはミサイルを積んでいなかった
「一機で来るとは隊長機?おいおい復帰第一戦でドックファイトかよ」
機体の紋章を見てお互いに驚いた
「ホルスアイにルシファーだと!ルシファーは死んだ空神ホルスか!」
「まいったね、サンダーバードか・・」
「リサ達が邪魔よ!600機のファランクスの砲弾幕じゃIFFも意味無い!」
「プラネット航空管制リサ達の機は敵機より早く着けるか?」
「可能です交戦回避で約6分早くつきます」
「直ぐに連絡!突っ込む前に回避させて!」
「ホルスが既に交戦状態!」
次の瞬間信じられない言葉を耳にした
「彼は見捨ててください、この艦の防衛を最優先にもし出来ないというのなら、シーダートホルスにロック」
アテナである、此れにはノエルもレベッカも黙ってしまった
「シーダートロック!」
再度の指示
「イエッサー!シーダートIFFアウト、ホルス機にレーダーロック」
「プラネットからレーダーロックだぁ、帰ってくるなって嫁さん言ってるなぁ」
「リサ帰還命令」、
「これからだって言うのに!」
「敵機よりファランクスの餌食になりたいの」
「それでは大回りして帰還しましょう」
「で恵さんは?」
「無理でしょ戦闘状態よ」
「帰還できないとなると着水か」
「其れも無理みたい、ローレライを歌わしたくてしょうがない人がいるし」
「ではさっさと帰還しましょう」
幸い敵は爆装が多く戦闘を仕掛ける様子はない
「敵さんも爆撃機をさほど頼りにしていなかった見たいね」
「楽に帰還しましょう」
だが問題が発生した
「私着艦したことがない・・」
空軍出身者メリサである、
「大丈夫、ライトに合わせ進入中将にアクロバットで教わったタッチアンドゴーをすれば問題なし」
「随分簡単に言うわよね、私だって訓練積んでやっとなのに」
海軍のリサにとって着艦は誇りである、其れを簡単だという「ミノルは何様だ!」と言いたい
「リサ先に下りてメリサさんは次ね、ちゃんと降りないと私が行けないからね」
メリサにプレッシャ−が掛かる
「先行くわ」
「お手本よろしく」
ムッとしながらリサが着艦コースに乗る
「フックが掛かる瞬間が凄いエクスタシーなのよね」
「ミノルあんた遣った様な事いって」
「メリサさんありますよ、中将当時は小将だったけどお使いで着艦は何度かね」
「中将の教え、何時如何なる時もどんな場所へでも機体を下ろせるようにか」
「その通り燃料もないしリサが格納されたから行って下さい」
「今の映像のように進入するのね」
リサの機から目線の映像が送られてきたのだ
メリサの機が進入を開始グリーンライトをセンターにしてフックを下ろす
「さあ勝負!」
マックスパワーでワイヤーに掛かり着艦
「敵さん見えてきたわ、恵さんは交戦中か」
「さっさとミノル降りて頂戴、後部ファランクスを出すわ」
「イエッサー」
三人の中で一番綺麗な着艦を見せた
「言うだけの事あるわね」
モニターを見ていたリサは振り返ると
「整備済んだ!出るわよ!」
再び機に乗り込むが航空管制から
「出撃は許可できません、ノエル総号令から待機の指示でています」
「恵さんの支援は!」
アテナが言った
「既に敵はこの艦に接近し戦闘が始まりファランクスの障害になる彼は見捨てます。」
「それでは!」
ノエルが話を遮った
「リサ下がっていなさい私が何とかします」
渋々引き下がるリサ、ミノルと言えば既にどこかへ行ってしまった
リサはヘルメットを叩きつけるとメリサに尋ねた
「ミノルは?」
着艦のショックか惚けるメリサは指を指した緊急機体制御室、中に入るとミノルが恵の機体から送られてくる映像を見入っていた
「どう?」
「流石中将がひるむだけの腕前ね、だけどブランクが有り過ぎるのか機体の性能でカバーしているって感じ」
凄まじい連射音が響きだした、敵到達ファランクスが防衛を始めたのだ
「鈴さん、恵さんを本気で見捨てる気ね」
「ノエル総号令が見捨てはしないと思うわ」
「目標カシアスセントラル!カーゴバード1番から6番発射!」
「交戦中のヤオの援護に新型X4WINGを出すなんて」
「奴の身柄を私たちが意地でも抑えるのにはヤオの援護で撹乱するしかないだろう、その間にエリオラ、アリス、マフィルの特別部隊に身柄を押さえさせる」
「其れはいいけど、スコルピオンとマフィアが進行中かち合ったら如何するの」
「遣りあうだけだ」
「少将!」
「ファン!声が大きい」
声を絞ってファンが尋ねた
「もし彼が禾人だったら如何する気?」
「どうしもしないわ、ただ真実が何か確かめたいのよ」
「まるで土田禾人が言いそうな台詞よ」
「私が此処にいるのも彼のお陰だ、あのヒーローがどうして落ちたのか?後学の為に知って置きたいのだ・・私事に近いがすまない」
パワーゲーム 第8話 「戦 闘」
「ヲオオオオオオオオ!」
ドンドドドドドドドドドドド!
「ふん!武器もないのに良くかかって来るわね」
「参ったわC+じゃ戦闘にならない、格闘戦でも機体差がありすぎる」
ナギサの乗るエクトールが鎮圧の為投入されたのだ
ヒュウウウウー バン! ドス!
「カーゴバードからの降下?」
シューパッパン!信号弾が上がった
「ドールズ!回線をオープン周波数セット、誰が来たの!」
「おひさ!フェイ腕鈍ってない」
「ナミなの」
「その通り、新機実験の為でばってきました」
「短距離の何か兵器はない、」
「P226があるわ」
「其れを貸して!」
ナミがフェイルンに向かってP226を投げる、キャッチするとすぐさまエクトールの前に立ちはだかった
「禾ニィの仇!覚悟!」
「甘い!」
ナギサのエクトールが鉄パイプを構えた途端甲高い回転音が響いた
「え!」
ヤオのP226の連射を掻い潜り接近
「覚悟!」
パイプがコックピット下ボディのジョイントを捕らえると強烈な閃光を放つ
「なに!」
Cプラスが真っ二つに切断された
「瞬時には切れないわね」
ヤオは何が起きたか解らなかった
「まだ居るわよね」
ナギサがナミを探し出した
「フェイに渡したP226を何とか戻さないと勝負にならないわ」
通常機体にウイングユニットを取り付けただけ新機体は調整中、バッテリーの消耗も早い
強烈なジェット音と共にナギサが迫る
「もらった!」
「拙いわ!」
サイドスラスターで横滑りさせロッドをかわす
「チィ」
はじめての空中戦にナミが戸惑う
「さっきのは何なのよ」
フェイルンがハッチから出ると切断された切り口を見た
「溶解?」
ハッとして空を見上げた
「ナミ頑張ってるわね」
頑張って戦っているのではない、よけまくっているのである
「参ったわ、消耗しすぎ」
バッテリーがEまであとわずか、空中戦から地上戦に切り替えた
フェイルンのP226を拾うと其のまま攻撃に移った
「おそい!」
ナギサのロッドがP226を払い落とし機体を直撃
「しまった!」
ドォォォン!轟音を上げてナミの機体も胴切りになってしまった。
慌ててコックピットから飛び出しフェイルンと合流
「何処へ行った?」
ナギサがヤオ達を探し始めるが既に刑務所の中に隠れた
「ナミなんなのよあれ?」
「概略しか言えないけどプラズマカッターだわ」
「ナミ、プラズマは不可能って言っていなかった?」
「フェイの言っていたガンダム的レーザーサーベルはね、後で出力の話をしてあげるわ」
ナミがバックをフェイルンに渡した
「なに?」
「何って、そのカッコじゃ戦闘にならないでしょムショ暮らしでぼけた?」
バックの中身は戦闘服と武器一式、ナミもパイロットスーツでなく迷彩服である
「何するの?」
「土田雪人の確保、此処の医務室から病院まで地下通路があるのよ」
初耳である、囚人の治療は即時総て出来る体制と聞いていたが搬送用通路があるとは知らなかった。
「知らなかったわ」
「そりゃ秘密でしょ」
言われてみればそうだ暴動時に使われたら大変である
「あ!所長もそこから脱出した!」
「さっさと着替えていくわよ」
「雪人は死んだって言っていたけど」
「無線ではね、死んでいてもキリカの頼みで調べなければならないのよ」
「なにを?」
「なにをって・・」
ナミが言葉を濁した、まさか禾人じゃないかの確認だとは言えない
「言いたくないのなら良いわ、貴女一人で来るってことはキリカのことだもの私のことも計算のうちよね」
「私一人じゃ無理だもの、フェイを助けて乗り込んでくれって」
「それでは行きますか」
医務室の隠しドアの中へと進んでいった
ボン!
「食らったか・・」
「さあ、着艦しろ貴様の後ろから進入してやる」
ホルスの機体から白煙が出ているが飛行には支障ないようだ
「此の侭帰艦してもミサイルの餌食か・・」
プラネットハーツに無線を入れる
「此方恵ハジメ、離艦しローレライに影響を及ぼさないよう自爆する」
ノエルが尋ねる
「貴方は一体如何する気ですか!」
「ローレライの影響で脱出しても生存の可能性はありません其れが答えです」
「命令です帰艦しなさい!」
「妻子を危険にさらせません、サンダーバードが着艦コースに乗った途端付いてきます、後部対空システムを破壊されたら其れまでです・・では」
無線がきられ機が艦から離れだす、ノエルが叫ぶ
「誰か!彼を止めなさい!」
発艦できないような状況では何も出来ない
「ご命令ですか」
ミノルの声が無線に流れた
「出来るのならば!」
「イエッサー!」
ミノルがワッペンの下からキーを取り出すとコンソールパネルに差込捻った
「アイハブコントロール、ブローシステムアウト」
「何が起こっているんだこの機体は!」
自分の思い通りにならない機体恵があせった
「何なのミノル」
「緊急時機体コントロールシステム、パイロットに障害が起こった時安全に機体を下ろすために中将が精魂傾けて開発したものよ、中将の機体だもの装備していると思ったのよ」
ミノルはコンソールパネルを離れ模擬コックピットに乗り込んだ、リサが横から覗き込み言った
「知らないミノルが居るわ」
「そういえば空軍時代の話はあんまりしていなかったわね」
「総てが終わったら聞かせてよ」
「いいわよ」
一寸の沈黙の後ミノルが指示を出し始めた
「IFF再起動ターゲットロックアウト、センターファランクス後部より6基を収納、アレスティングワイヤーセット、着艦デッキに泡消火剤散布」
「IFF再識別は許可できません!彼一人の為皆を危険にさらすわけに行きません」
「そうだアテナの言うとおりだ直ぐ機体のコントロールを戻せ」
夫婦である意見は一致していた、ノエルは其れを拒否
「総合令の名の下に一時的にアテナ、ホルスの指揮権を停止します、ミノルの指揮でホルスの強制帰艦を行いなさい、其れと私の指揮権をレベッカにユーハヴコントロール」
そう言うとノエルは慌てて指揮室を離れた
「レベッカお願い彼を撃墜して!」
「いいわよ」
思いがけない返事である
「散々煮え湯を飲まされたアテナの連れならね、可愛い美鈴ちゃんのお父さんは打てるわけないじゃない」
「でも!」
「安全策で切り捨てるのがアテナのやりかたなら、危険でも術があるなら試すのがワルキューレ、ノエルを信じて失敗しても、そう簡単にこの船は沈まないわ」
一呼吸すると
「IFF再認識開始、中央ファランクス収納両舷のファランクスをクロス迎撃に設定、直上は散弾ミサイルで対応着艦デッキ消火用ジェル散布、ミノルジェルでいいわねクロスの下に潜り込めるわね」
「了解!ファイナルターン開始ファランクス射撃高度確認アプローチ開始」
レベッカが何かを気にしだした
「ノエルは何処へ行ったの?誰かノエルの行った場所解らない!」
「ファイナルアプローチ、フルフラップ!アレスターフルダウン、パワー50%」
「ミノル!脚が出ていないよ!其れにフルパワーじゃないと」
ぴったり後ろに張り付いた地球軍機、ミサイルもファランクスも使用できない
「ホルス、さあ行こうか地獄へな」
ガシャ!
「酷いわね、ジェルが深いから伏射は無理か」
ヘルメットをかぶり、対戦車ライフルを持ちセーフティハーネスを装備したノエルが、薬莢の降り注ぐ中着艦デッキに姿を現し、戦闘機固定フックにハーネスのロープを掛けると膝射体勢を取った、ホルスの機体越しに射撃しようというのだ
「此方ミノル、ノエル総合令を確認甲板で射撃体勢を取っています」
「何ですって!」
慌ててカメラを切り替える
「ノエル!対戦車ライフルの膝射なんてむりよ!」
トランシーバーは着けていない
「ミノル、ギアは!」
「リサ薬莢だらけの状況じゃギアは使えない、タッチアンドゴーもね」
甲艦板は薬莢だらけギアを出せばタイヤはパンク横転ゴーアラウンドをすればファランクスの餌食
「パワーミニマム!何をする気だ!アヤセ!」
ハジメがミノルの名を呼んだ、計器類は空母に着艦するレベルではないギアダウンは行われない不安がよぎる、正面を見ればノエルがライフルを構えている
「なんて女どもだ!と言うか流石に禾人が選んだ女か参ったな」
ハジメのぼやきが無線からミノルに聞こえてきた
「さっさと諦めて頂いて有難うございます、私は当機の機長アヤセミノルです此れから当機はプラネットハーツに胴体着陸いたしますお客様におかれましてはシートベルトの確認をお願いいたします、では」
ドゴン!強烈な痛みがノエルを襲った
「何!」
対戦車ライフルが地球軍機を捕らえ白煙が上がった一方ノエルは倒れこんでしまった
「まだ、いける!私の目的は後部防衛システムの破壊このまま突っ込めば間違いなく行く!」
刹那!海中より多弾頭ロケットが地球軍機を捕らえ粉砕した
「艦長」
音響をモニタリングしていた副長が報告しようとしたが、ポリンスキーは手のひらを見せ首を縦に振った部下の仕事に間違えはないと言った雰囲気だ、マイクを取ると
「ミノル・・面白いことはさっさと言え・・着艦無事祈る」
リサが驚いた無口なポリンスキーがミノルを名指したのだ
「イエッサー!」
超低空進入ワイヤーを捕らえスキーのようにジェルの上を滑って停機、其れを見届けるとノエルの意識はなくなった
「甲板員は直ちに作業に当たれ!後部ファランクス2基を再起動」
艦内放送が入った、グリーン、レッド、ブルー、赤十字のヘルメットをかぶった甲板員がハッチから飛び出していった
「直ぐに医務室に」
担架で運ばれるノエル、手際よくハジメの機体にワイヤーが掛けられエレベーターまで牽引格納された
「ミノル!何をした!」
温厚なハジメが目くじらを立て怒っている
冷静にミノルが微笑みながら言った
「私も恵さんはどうでも良かったんですけど、中将の機体ですよね」
ハジメがうなずいた
「中将の機体ってことは私のものですから勝手に壊さないでください」
「ったく!軍人ならば・・」
ミノルが言葉をさえぎる
「既に軍人ではありません、仲間を見捨てるようならノエルさんには付いていかないと思います。まして子供の直ぐ近くで死なすようなことは出来ません」
「妻と子供を危険にさらすことは出来ん」
ミノルとハジメが一発触発状況になるとリサが耐えかねたように
「私ノエル姉さまを見てくる」
「行ったか、一応礼はいっておくだがミノル・・」
「解っています、軍でこの状況ならばこんな無理はしません、其れよりリサに聞かれて拙い事でもあるのですか?」
「なんでだ?」
「行ったかって仰いましたよね?」
「撃墜王のこと聞かれるかと思ったからな」
「ハイドリッヒ大佐お元気そうで何よりでした、少しですが話も出来ましたし」
「気が付いていたのか、彼は何か言っていなかったか?」
一寸間が空き
「いえ何も」
「何か有りそうだがまあ良い、其れとこれ以上雪人を狙うのは止めよう」
「どうして?」
「禾人だろ」
「さあ」
「ノエルの症状は鎖骨の単純骨折、えーと治療は接着剤の注入なら切らなくていいわね丁度いい、リサ手伝って藩さんの針の助手」
「針って?」
ノエルの右肩から腕肩甲骨の裏に針が次から次えと打ち込まれていく
「筋弛緩と麻酔の針打ち込んだから後よろしく」
「どうするんですか?」
「今の状況では手術するわけに行かないから、接着剤でかためるわ」
レントゲンがセット、特殊接着剤が注射器に入れられた
映像を見ながら鎖骨を調整し接着剤を切断箇所に打ち込んだ
「力要りますね」
「いくら弛緩しても筋肉ごと動かすからね、さてギブスで固定するから固化包帯巻いて」
「針ごとですか?」
「筋弛緩は直るまで要るし麻酔で痛みも消せるから其のまま」
リサが包帯を巻くとドクターが若干修正、水を掛けるとすぐさま硬化し固定された
「此れだけされてもよく寝ているわ、相当疲れているのね、レベッカに連絡入れておくからリサは起きるまで付いていて、起きたら持ち場にに戻って良いて言って正し右腕は当分動かないと付け加えておいてね」
「ハァ」
「敵機が引き揚げていくわ」
「レーダーに敵タンカーを確認、空中給油を行う模様」
「まだ来る気」
「レベッカ、私に纏めて戦闘不能にする考えがあります」
「アテナにそっちは任せる、潜水艦隊がこの艦を囲み始めたから私はそっちに掛かるわ」
「解りました、では中央ファランクス収納、副砲砲撃準備、砲弾は炸裂弾頭にアルミ、マグネシウムとブラスト用の硅砂をつめて敵がタンカーに集まったところで攻撃します、気象班は敵機周辺の風向風速の報告をお願いいたします」
「さて、エイプリルに連絡を入れてローレライを発動させるかもしれないって」
『我が艦隊はどうなっている』
『既に半径4000mで囲んでいます』
『全艦に魚雷装填命令一斉射出で蹴りをつける』
『解りました』
「艦長、敵艦の魚雷装填音をキャッチしました」
「・・」
「この状況で無音もお構いなしのようです」
「・・」
「艦長、ローレライの発動がありそうです」
「なに!そうか、ソナーを切れソナードーム遮音壁展開急げ!」
「アイサー!!」
「エイプリルよりソナーブロック完了と並びに敵艦の魚雷装填音を確認したとの報告有りました」
「解った一斉に雷撃してくるつもりね」
「好都合ですね」
「魚雷探査開始、半径2000m以内に入ったらローレライを発動させます」
「イエッサー」
「敵機集結中高度10000m風向南南西風速15m」
「弾頭高度10500m炸裂させます」
「移動速度確認仰角調整完了!」
「グングニル!撃ってー」
『敵砲撃確認!』
『何処へだ!』
『進行方向二時高度15000mを通過する模様』
『いや!炸裂しました!』
『何だ?』
『エンジンブロー!』
次から次へと機体不調で離脱していく
『此方スカイタンカー01、ピト−管に何か詰まった模様速度維持が不能になった、給油は不可能離脱する』
『遣りやがったな!全機帰到せよ!』
「敵機帰還していきます」
「上手く言ったようですね」
「さすがアテナ、よくやる」
「あなた!」
「硅砂とアルミ、マグネシウムの混合態を吸い込めば熱でガラス化した硅砂がタービンブレードにくっついてブローするってか」
「無駄な殺生はしたくありませんので」
「此れでしばらく静かになる」
「魚雷射出されました、各艦より6基計36基」
「測距開始1000に達したら発動させる、ソナー手はローレライ発動に備えよ!」
「ソナー室より敵魚雷射出音を感知速度より2000mまで3分!」
「ソナー閉鎖対音響壁展開、ローレライセーフティ解除!」
「ローレライセーフティ解除、魔草モードへトリガーレベッカ号令に」
「さあ悲鳴を聞いてもらうわ」
「魚雷群1100m到達!」
「メデューサの抜くマンドラゴラの叫びをお聞き!」
トリガーが押されると海中に配備された指向性音響衝撃システムが一斉に発動した
「音圧最大!音壁魚雷到達魚雷の粉砕を確認・・いえ一発半壊のまま来ます!」
「魚雷防御板に到達します!」
軽いショックが走る、モニターには粉砕された鉄板とウレタンが映し出されていた。
「ローレライさらに敵潜水艦直撃します。」
「ソノブイ射出アスロック、ボフォース、短魚雷攻撃準備!ヘッジホッグ装填!」
『何だ!この衝撃は!』
『ソナーシステムに障害発生!ソナー手負傷!』
「敵位置確認!」
「各敵艦に向けアスロック!短魚雷射出!敵回避行動を開始したら鼻先にヘッジホッグを打ち込め!」
「アイサー」
その頃・・
「ナギサに撤退命令、アルガ全部隊回収急げ」
「撤退命令よ!」
「なんで!」
「カワサキ大使よりガルバルディに回収後詳しい状況を説明、以後の作戦もだ」
「了解!」
「カワサキ大使、このまま帰還するよう本星より連絡が・・」
「解っている、地球軍司令部には地球より我々の帰還について指令が来ているようだ、すでに撤退許可は下りた、ブバイ!」
「まさか奴の話はこれだったと言うのか」
「地球もカシアスに派兵を開始したようだ」
「X4を反政府軍が改造して反撃とは、大きさが同等になるとX4のパワーが此れほどの物になるのか・・」
総員をミーティングルームに集結させカワサキは概要と総員帰還の指示を出した
「このまま宇宙に上がり輸送艦に搭乗する」
「雪人さんは!」
「遺骸は残していく彼はこの星が故郷だ、この星を管理下においても我々の故郷がなくなれば何の意味もない」
「わかりました・・」
「また来ればいい」
「はい・・」
「成層圏まで通常エンジン、以後ブースターを使って一気に駆け上がる、総員配置につけ」
「サー!」
キリカは手に持ったビンの中身を見ていた
「キリカ、オムニシティへ行って来るわ」
「姉さん・・」
ビンを机に置き
「キリカもし、オムニシティにいるのが雪人で・・」
「なくて禾人兄さん」
「!・・なんで!」
「これ・・」
ビンを差し出した
「眼球・・」
「この眼球には網膜剥離の治療後があるの、あの事故で視力障害をおこして航空機を降りなければならなかったのは雪人兄さん・・」
「何時から知っていたの」
「亡くなったその日には・・まさかと思ったから黙っていたけど、マリア姉さんは知っているみたいだったから」
「半信半疑だったけど、決定的よねそのことは」
「だけど絶対兄さんは惚ける」
「有無を言わさない何かを見つけなければ・・兎も角にも奴の確保に行って来る」
「確保はナミに頼んだわ」
「スコルピオンもコルリオーネもドールズも動いているわ、ノエルも部隊を繰り出すかもしれないし、私が抑えるのが一番安全だと思う」
「姉さんが辿りつけたらね、今から行っても間に合わないと思うけど」
確かにその通り、ヘリでスコルピオン、スパイダーは装甲車で強襲、ナミは地下通路から雪人の確保に、そしてジャンコルリオーネのファミリーが雪人の魂を取りに既に動いていた
「ううああっ、まだ俺は息をしているのか・・」
「お目覚め?食事は如何する」
「ラミか・・」
「姉さんもいるわ」
「ライさんが俺を生かしたのか・・」
「生かしたのは神様」
「そうかだがみんな無駄だ、俺が生きているのを知ってまた抹殺しに来る」
「そのようね、色々こちらに向かってきているわ」
カーゴに腕を乗せてライが入ってきた
「すみませんでした・・」
「礼を言うんだったら死にたがらないことね」
腕を持ち上げ禾人の人工関節へ繋ぎ込んだ
「指を動かして見て」
スムーズに指が動く、さらに腕をゆっくり上げていく
「いいようね、しばらくは妹に付き添いしてもらっていて」
「誰が確保に向かった」
「李とジェネラルが向かっています」
「そうか、二人とも中将が引っ張ってきた人間だから敵討ちなら良い仕事をするだろう」
「しかし、渾名がジェネラルとは・・」
「中将が付けた渾名だ貫禄が将軍様並だとさ」
その頃二人は既に病院の屋上に到達していた
「ミスターリーさあ行こうか引導を渡しにな」
「案内が来たようですよジェネラル」
ラミがドアを開けて手招きをしている
「お久しぶり、リーワイストマイヤーさん」
「いまは、李雄燐ですそしてこれからも・・」
「そう」
「挨拶している暇はないぞ、直ぐに確保其れとラミさんお姉さんと此れを読んで署名をしてくれ」
一本のロール紙に署名と血判が押されている
「地球軍からの返事は来たか」
「はい・・読み上げます、当方には降伏の意思は非ず・・」
「解った、マーク准将に定位置に着くように指示を頼む、ロンギヌス投擲要員以外はシェルターに退避」
地球軍司令部は地下700m総ての出入り口はグランドクロスミサイルにて破壊、脱出不可能だが逆に言えば進入不可能、ナキストの部隊到着まで安全であると考えて降伏はしなかった
「ついに発動・・、高重力発生システム作動準備急げ」
ジャスダムの中が慌しくなってくる
「ロンギヌス、ランスを加速開始4分後に秒速10万キロに到達します」
「トリガーを・・」
「イエッサー」
そして10万キロで安定すると
「此れより投擲を行う、目標オムニ大聖堂直下旧オムニ非常事態分析指揮管制センター!投擲!」
トリガーが引かれランスが射出された
「オムニ到達まで22秒です」
ロウアルは頷いた
「来るわ、高重力発生システム作動!ジャスダムオムニ側スラスター最大噴射!」
作動と同時にオムニにジャスダムが引き寄せられる為、スラスターでこらえる
ランスがジャスダムによって曲げられ真っ直ぐに目標へと向かっていく、旧オムニ非常事態分析指揮管制センター資材搬出口のゲート7枚をぶち破る、同時に非常用のゲートが作動して密閉状態に再びなった。
「高重力発生システム停止!ジャスダム姿勢制御急げ!」
「ランス最終目標に到達します」
「神よわれ等の行い許したまえ」
ランスは最下部のマグマボイラーシステムを直撃、受水槽やボイラードラムを破壊し大量の水がマグマに流れ込み水蒸気爆発を起こす、更に蒸気は加熱され超高温ガスとなってセンター内の換気口から噴出され中の人間を焼いた
「ロウアル元帥、充満する時間です」
「そうかオムニシティの掃討は此れで終わったな、後はナキストの部隊だけか」
そしてノエルのプラネッツハーツは高速移動の為ジョイントの切り離し作業を始めていた
続く
「パワーゲーム」 第9話 「集結」
艦の分離作業が進む中、索敵員を残して休憩に入った
「ノエル総合令は大丈夫なの?」
丁度右腕を垂れ下げてノエルが入ってきた
「私は大丈夫です、其れより切り離し作業はどうなっていますか?」
「あと120分はかかると連絡が来ているわ」
「それではお茶にでもしましょうか」
「それとポリンスキー艦長が乗艦していて新艦の乗員の補充について話したいそうよ」
「オクトーバーの乗員ですね、20人と言っていましたが候補は上がっているんですか?」
「一応は、出したんだけどアヤセミノルを付けろとそれも副長として」
「空軍出身者を?彼がまた何か仕掛けていたのですか」
リサが横で怪訝な顔をした
「お久しぶりですノエル少将」
エイプリル副長が敬礼をして近づいてきた当然その後ろにはポリンスキーがいた
「仕掛けたわけではない、その能力を最大生かせると思ったからよ」
「彼女は空軍ですよ?」
「艦長が中将と飲んで言い合って操艦させた結果、ミノルは副長も務まると、そうですよね艦長!」
バツが悪そうにポリンスキーがうなずいた
「出そうにも航空隊も不足しているので・・」
「そうか・・残念だ・・今からでも鍛えれば・良い艦長になる」
ミノルは一体何を教わってきたのか?リサに大きな疑問が生じた
「禾人」
「ハンメル少将貴方が来るとは」
ハンメル陸軍少将暗殺されたはずの人物である、証人保護プログラムによって顔を変え禾人の隊へ入隊していたのだ
「リーも一緒だ」
「そうですか、貴方方でよかった、では介錯をお願いいたします」
ニヤリと笑うと
「それがな百鬼総員の議決は・・最後の一人は雪人が教えなかったので聞いていないが98人はお前に対して死よりも生き地獄を望んだ」
「それでは約束が果たせない」
「そもそも、我々がお前の処分をしても罪の償いにならんだろう」
「そうね、生きてしっかり罪を償うのか私と逃げるかどっちかね」
「逃げるのは勘弁だな」
「あら私とじゃいや?」
「美人の誘いを断るのは趣味じゃないが、今は遠慮しておこう」
「禾人覚悟はついたかね」
「いつでも覚悟は出来ているつもりですが・・生き地獄ですか、百鬼の望なら生きますか」
禾人が立ち上ると腰にチェーンが巻かれ更に両手首に手錠が掛けられた
「これで捕虜の収容終了だな」
「ねぇお客さんいっぱい来たわ、地下からも2人・・フェイちゃんかしら?」
PCを覗き込みながらラミこと般若が監視モニターを動かし始めた
「やっぱりフェイちゃん、もう一人は誰かしら?」
「ミスターリー、この際顔を戻しておじさんの所に戻ったほうがいいんじゃないか」
「叔父は・・」
「この前あった、落ち込んでいるようだ一寸でも良いことがあったほうがいい」
「俺はもうオムニ移民に命をささげている、今更戻れないさ」
「そうか・・」
「私消えるわね、フェイちゃんたち来たようだからマフィアも直ぐ来るわよ」
「じゃあ」
「またね!」
ラミが立ち去った数十秒後にナミが銃を構え突入してきた
「手を上げてください!」
「手を上げるのは君のほうだ」
ナミのこめかみに李の銃口が当てられた
「ナミ迂闊よ、飛び込む前に確認しなくっちゃ」
「ドールズは実戦で教育とは死ぬぞ」
「李大尉、技術将校に突撃隊を遣らせてしまったの申し訳ないわ、ローダーなら一流なの」
「ヤオ二等兵か」
「雪ニィを此方に渡していただけませんか?」
「此方で確保した以上スコルピオン隊に搬送する、もし何だったら一緒に隊まで行けばいいそこで如何するか決めよう」
ジェネラルの提案だ
「解りましたそうしましょう」
「では土田雪人総統行きましょうか」
ジャラ、立ち上るとチェーンが不気味な音を上げる
ジャラ、ジャラ、ジャラ、歩くたびに不気味な音が誰もいない病棟に響き渡る
「エレベーターで屋上のヘリまで行くぞ」
エレベーターの扉は固定されていた、下りて来たときに固定しカメラを仕掛けた
「誰も乗ったり仕掛けたりはしていないようだ」
用心深い行動
「ん!」
雪人が突然ナミに体当たりしエレベーターに押し込んだ、ジェネラルとフェイルンが慌てて飛び込む、李は既に応戦に当たっていた
「コルリオーネか」
「先に行ってください!ヘリも飛ばして」
「君は!」
「何とか脱出しますから」
「解った」
「置いて行くんですか!」
「彼はスコルピオンの兵士だ容易く死なんよ」
ドアが閉まるが早いか激しい銃撃戦が始まった
「大丈夫か?」
ナミに雪人がたずねた
「はい、大丈夫です」
「ジェネラル申し訳ないが電話を貸してもらいたい」
「この期に及んで電話か?」
「優秀な弁護士を頼まないと」
雪人の言った電話番号を打ち込むと差し出した
「誰だ」
「兄貴私です」
「のぎ・・」
言葉をさえぎるように声を荒げて
「捕まってしまいました、それとジャンの配下が突撃してきまして」
「直ぐに止めるようにしよう」
「ええそうしてください、この病院4分後に自爆するようにセットしました」
「何ですって!李さんは!」
「さあどうなる事か」
「なにを!」
「争っている場合ではない」
ジェネラルはいたって冷静である その頃
「くそだめか・・」
李が諦めたが突然後ろの荷物用エレベーターが開いて
「おまた!」
李の首根っこをつかみ引き込む
「さあ、10秒で地下50mよ」
「なんでだ」
「禾人の言葉は絶対よ、李よりリーワイストマイヤーに戻るの、貴方の役目はもうないは、禾人の身代わりになるつもりだったんでしょうがもう無理よ、このままオペルームに一直線」
首筋に麻酔が打ち込まれリーは気を失った
「残り1分だ」
ヘリが離陸すると同時に病院が爆発し崩れ落ちた
「李さん・・」
雪人は腕を組んで目を瞑る
「よくも!」
掴み掛かろうとするヤオをジェネラルが止めた
「李は仕事を全うしたのだ、その仕事に傷を付けるのは止めてもらいたい」
フェイルンはおとなしく従った、基地に着けば禾人の腹心達が雪人の処分に乗り出すと考えたからだ
「ノエル総合令、三艦切り離し完了既に航行用船首連結終了しました」
「では二番艦を・・」
「アテナに任せるわ」
レベッカが引いた
「そうですね、一番をレベッカお願いいたします」
「え!ノエルでしょ!」
「いえ私は三番艦です、突撃はレベッカが得意だしお任せします」
「それが良いでしょう」
鈴が相槌を打った
「では各艦に別れオムニシティを目指し発艦最大戦速!」
「イエッサ!」
「総合令、N-getより入電 ランデブーポイントを知らされたし、ハーディニューランド」
「そうですか、ではオムニシティ旧オムニ海軍港沖200海里で」
「解りました」
「入電、メガフロートよりランデブーポイント旧オムニ海軍港沖200海里とのことです」
「解ったが、あの巨体ではかなりの時間が掛かりそうだが」
「それが衛星からの映像では三艦に分離、約45ノットで進行中」
「45ノット!700mの艦が、いや空母ならば考えられるな」
「ハーディ准将、マフィルから連絡が雪人確保できず、確保したのはスコルピオンなお、ナミとフェイルンが同行とのこと」
「そうか」
「残念ね、確かめようがないわ」
「個人的にはな」
「そう」
「さて、前線基地まで12時間ほどかかる適当に休んでくれ、食事は後部のボックスに入っている、私は少し眠らせてもらうことにする」
ジェネラルはそういうと眠りに着いた
「ねえフェイ食事の用意してくれる?雪人は私が見張っているから」
ヘリと言っても輸送用でかなり広い後部へ行ったフェイルンにナミの声はローターによってかき消される
ジッと雪人の顔を見つめるナミに対して
「何か付いていますか?」
「いえホントにそっくりだと思って、入れ替わってもわからないぐらい」
「そうですか」
笑いながら雪人が応えた
「中将が死んだ日に仲間を思い中将の体から皮膚、血液、そして眼球を抜いたキリカ、彼女の頼みで私は確かめにきました」
雪人の顔が変わった
「中将には有ってはならぬ網膜はく離のレーザー治療痕とレーシック痕、これは・・」
「言わなくても良い、この件は総てが片付くまで他言無用に願いたい、またキリカに推測は正しいと伝えてほしい」
「随分素直なんですね」
「キリカが君を信じ任せたなら、私が危険になるような事はしないと思いましてね」
「私があちらこちらでしゃべれば・・」
「無いと思いますよ、だから開発責任者に私が選んだのです」
「それはどうも・・」
「二人で楽しそうね」
フェイルンが割って入ってきた
「はい食事」
「うまそうだ、いいお嫁さんに成りそうだな」
「カンズメセット暖めて開けただけ」
「わかってるさ」
「なにか禾ニィと話している見たい」
ナミに話した為気が緩んだ
「そうですか、たまには冗談も言いますよ」
フェイルンがくびを傾げた
「タカス中佐、ニューランド閣下より無線が入っています、制限が掛かっていますのでタカス中佐のIDチェックが必要です」
「わかりました」
ナミが後部に移りジャックとIDチェック用端末の入ったBOXを明けるとカ−ドを差込暗証番号を打ち込んだ
ジャックを接続
「タカスです」
「ハーディだ、雪人を確保したそうだが、ナミ何か変わった処は無いか」
直感でハーディも疑っていることが解った
「いえ何も、何か有るのですか」
「お前が単独で出たと聞いてな、何か有るのかとな」
流石にいいところを突いてくる
「キリカローダー開発担当主任技官に頼んでテストです、ただ技官から遺体回収を頼まれましたが遺体が歩いていたのでバイオハザードかと思いました」
「本当にそれだけか?誰かと入れ替わっているとかないか」
「誰とですか?李さんは目の前で消えましたし」
ナミが惚けた、解っているがハーディがはっきり言わない、禾人の信用もある
「元ド−ルズの隊長として再度聞く本当に土田雪人を確保したのか!」
「本人以外の何者でもないと思いますが、何を言っているのですか?」
「ならば良い、フェイとかわってもらえるか」
「フェイ、准将が呼んでるわ」
ジャックを差し替えるとナミは再び雪人の横に座る
「疑われていますね」
「まだ解っているわけではない」
「そうですけど」
「やり方はまだある」
「死ぬ気だったんですか」
「二人で一人だからね、宇宙軍とノエルが新しいオムニを構築してくれるようにしたら終わりで良いかなってね」
「カワサキ大使、オムニ宇宙軍に囲まれたようです」
「なぶり殺しってことか?」
「通信入ります」
「私はオムニ宇宙軍ファーガーソン少将であります、カシアス全権大使カワサキ中将殿にお取次ぎ願いたい」
「宣戦布告ですかねぇ」
「だろうな、此処で散るのも悪くない」
カメラの前に仁王立ちをすると
「カワサキだ」
ファーガーソン少将は身を正して敬礼をした
「お帰りになる前にお渡ししたいものがありまして参上いたしました」
拍子抜けである
「渡したいものとは?」
「エクトール用のハイパーEMガン、X4のリニアですと改造に時間が掛かると思いまして此方で開発していました」
「双子に良い様に扱われていたようだな」
「そこはそれ、なんですな」
ファーガーソン少将はニヤッと笑うと
「接舷許可を頂きたいのですが」
「解った」
ブスッとした顔で応える
接舷ハイラインと作業が行われてファーガーソンが乗り込んで来た
「お初にお目にかかりますファーガーソン少将です」
「カワサキだ、随分と大きな艦隊だが我々を討伐に来たのではないのかね」
「貴方方がハイパードライブを始めたら順次発艦させます、ハイパーステーションに着き次第カンウントが入り初艦は8基目のステーションで・・言わなくてもよろしいな」
「そのためにジアスが奪った物を宇宙軍が回収したわけか、と言うよりもそうなる様に仕組んだ」
「ご想像にお任せしましょう」
「搬入が済んだようだな」
「長い間ご苦労様でした、生きている間にお会いする事は無いと思いますがもう二度と戦いたくはありませんな」
「大丈夫だ大人しく帰る、カシアスが大事だからな」
握手と別れの挨拶を交わし離艦、ハイパードライブユニットに入ると宇宙軍は無人艦の発艦準備を始めた
「フェイなんだって?」
「ハーディも面白いことを言うわ、ホントに雪人かってね、誰かと入れ替わっていないかって」
「流石ドールズ隊長ハーディニューランド、私が誰だか気付いたようだな」
ナミはドッキとした
「雪人でしょ、そのほかの誰かと入れ替わった訳じゃないでしょ」
「雪人は死んださ俺は禾人だよ、お前も禾ニィと話している見たいだって言っていただろ」
フェイルンが笑い出した
「何言っているんだか」
「いや、それは・・」
「ハイハイその下らない話は此れでおしまい、寝るわよナミ先がいいでしょ」
「後で良いわよ、開発で年がら年中遅いから慣れているわ」
「そうじゃお先ね」
フェイルンがハンモックに入るとナミが耳打ちしてくる
「大丈夫なんですか」
「後でフェイルンが文句言ったら、話しかけたのに遮ったと言ってください」
「策士ですね」
「ずるいだけですよ、一寸寝ます給油が始まる頃に起きます」
「給油って中継地も知っているんですか?」
「スカイタンカー『スカイポート』ヘリが着機できるポートを背中につけている奴が来ると思いますよスコルピオンが自慢の一機」
「そうなんですか」
ミノルが慌しく整備を手伝っている
「パイロットに手伝ってもらって申し訳ありません、しかし見事ですね何でもされる」
「中将に徹底的に総て仕込まれましたから」
「貴女に名を継がせたいとミスターNが言うはずですね」
「また、そんな話は聞いた事がありません」
「貴女がドールズに移ったからドールズを吸収してSDSを作ったって専らのうわさです、再度鍛えなおす為にって」
「ルシファーの名を貰うには・・」
「ルシファー?いえ蒼空守護天って言っていました」
ミノルが愕然とした、蒼空守護天は空軍総司令官のコードネーム
「まさか・・」
思い当たる節もある、スコルピオンに転属を願い出た時に「未だだ」と言われてドールズを志願した、まだイコールいずれ、防空の総てを叩き込んで戦略へ今にして総てが見えてきた
「悪い事したのかな・・」
「ミスター言っていましたよ、ドールズでアヤセは変わった俺では教えられないことを学んだってね」
ミノルは何かを考えたように黙々と手を動かし始めた。
そして一時の穏やかな時間が流れ始める。
「ハルゼー大佐、空挺機甲師団オムニシティに降下制圧を完了しました、反撃なし負傷者なし、敵投降兵の処置を求めてきていますが」
「オムニハイスクールに集めておけと、出たい奴は武装解除して好きにさせろとな、捕虜はいらんとの事だ新大統領からの指示だから徹底してくれ」
「イエッサー」
「処でカシアス総統閣下は此方に何時着くのか?」
「あと3時間ほどで到着予定です」
「わかった」
「空挺機甲部隊の再編成とナキスト攻略プランがプラネットハーツより送信されてきましたので此方において置きます」
「一気に忙しくなってきたな」
オムニ軍の総兵力では到底、地球カシアス連合には敵うはずが無かったがカシアスが抜け地球軍本営が粉砕一時的であるが機能不全に陥った、この空きにオムニ軍が各都市を一気に制圧、唯一つナキストを残して
「SDSがオムニシティに集結、ノエル新大統領が総指揮権を発動すればナキスト攻略が始まる、その後だな問題は政治は厳しいぞノエル」
「ヤオ大統領が付けば問題は無いんじゃないでしょうか?」
「キリカ、私は軍を使う事で政治家を抑えて先軍政治を行っていただけなのだ真の統一には民主政治しかないのだよ、禾人もノエルも嫌がるだろう、老兵は死なずただ消え去るのみだ」
「パワーゲーム」 第10話 「ナキスト決戦」
「ワハハハハハハ!」
ハルゼーの高笑いが滑走路に響き渡る
「やっと解ったよ、ルパンを捕まえた時の銭形警部の気持ちが」
「ルパンならサッサと逃げ出すんでしょうがそうも行かないようですね」
「その通りだお前の為に最高の警備を敷いたのだからな」
ハルゼーがニヤつきながら雪人の顔を間近から見つめ、勝者の余韻にしたっていた次の瞬間
ハルゼーは思わず仰け反りMPが一斉に雪人に向けて銃を構えた
「まて、私が滑っただけ、ところで拘留室の用意は何処だ?」
「営倉を当てるようにしていますが?」
「仮にもカシアス総統だ最上階の応接室を当てろ、それと絶対に暗殺、怪我等が絶対無いように食事は鍋で運んで来い私も一緒に食べる毒見係だ」
「なぜそこまで?」
「カシアス統治地区の反乱と宇宙軍からの難癖を避ける為だ、裏切り者であっても安心できると言っていたんだ、我が隊で死なれた場合を考えたら当然の処置だ」
「イエッサー」
「ご配慮感謝いたしますハルゼー閣下」
「オムニが要らないことで揉めるのは本位ではないし、宇宙軍に地上を口出しされるのも気に入らんそれだけだ、MP!直ぐに連れて居行け!」
ハルゼーも自室に戻ると直ぐに秘話携帯を使ってレベッカに電話をいれた
「あら珍しい彼方から電話してくるなんて明日は雪かしら?それとも雪人を捕まえたからほめて欲しいのかしら」
「明日はバスケットボール大の雹かも知れないぞ、処で今大丈夫か?」
「今艦橋だけど良い?」
「艦橋って?」
「メガフロートが三艦に分離して一番艦の艦長だって」
「それは出世おめでとう、離れられないか?」
「副長に任せれば、大事なこと?」
「俺にとっては、いやお前にとっても重大だと思う」
「解ったわ、ジュリー!ユーハブコントロール!」
「アイハブコントロール、艦長は艦橋を出る」
流石海軍手際の良い交代をして艦長室へ入っていく
「そういえば鈴さんて知ってる」
「ああ、アテナか旦那はホルスだろ今更なんだ?」
「知っていたの?」
「うちの大将がぼやいていた事があって、『お前のところとハジメのところの様に生きれたら良いのだが背負った物が大きすぎて死ななきゃ下ろせないしな』その時ハジメって誰か聞いた時にな」
「で何か気になることでも有るの?」
「そちらで何か変わった事は無いか?」
「一寸疎外感があるかな?鈴とノエルが何かつるんでるのよね、ほかは何も無いわよ」
「それで十分だよ、お前は雪人をどう見る」
「どう見るって裏切り者でしょ?」
「ノエルもそう見ていたんだよなキット、もしノエルが気が付けば鈴ではなくお前に相談していた筈だから、元敵が気が付いて身内が気が付かないってどうなんだ」
「何なのよ訳わかんないわ」
「いや、今いる雪人は近くから良く見ると間違いなく禾人なんだよ」
「雪人捕まえたって祝杯挙げて二日酔いで見たんじゃないの?」
「流石にそれはしていない、空挺特殊機甲師団がオムニシティ展開中だしなそれで、ノエルと二人になれる時間が有ったら確認してくれ、違いないとは思うが証拠が無い」
「雹じゃなくてミサイルが降ってきそうなネタよ、何とか聞き出してみるけどあっちも判ってないんじゃないかな、確たる証拠があれば腹心を集めて絶対に確保に乗り出すと思うんだけど」
「そうだな処でそっちは何処にいるんだ」
「この艦早くてもうオムニ港沖200海里ランデブーポイントよ」
「そろそろ発艦させたほうが良い距離だなオムニ空軍基地ベースワンは奪還している、制空権も握った」
「そうね、じゃ受け入れよろしく」
艦橋に戻るとすぐさま指示を出す
「各艦に連絡!艦載機の発艦を開始せよ、機の収容場所はオムニ空軍ベースワン」
航空管制官が指揮を始めた
「艦首風向に最大戦速、発艦を開始せよ」
デッキに上げられた機が次々と発艦していくと言っても三艦で15機パイロットがいないのが現状である、停泊中や低速航行では発艦は出来ない、カタパルトだけでは揚力が足りないのだ、ただメガフロートになれば2000mの滑走路で発進は出来るが
「彼はどうだ」
「物静かと言うか、物凄い威圧感が・・」
「そうか、これから私が尋問を行うこの件については内密だ、誰一人として立ち入りを禁じ、録画録音を中止しろ良いな」
「しかし、それでは大佐の安全が!」
「私は大丈夫だいいな」
「イエッサー」
ドアを開けて雪人の前にハルゼーが立った、視線が合いゆっくりハルゼーが語りだした
「解らない事があります、なぜ貴方が私に黙って事を起こしたのか、プラネットハーツについては相談してくださったのに」
「それは兄が行ったことで私ではない」
「長年付き合ってきた私でさえあの距離まで近寄らなかったら解らなかった、貴方が誰なのか、そして自分が土田禾人の信用を得られなかった、いかに情けない者なのか愕然としていますよ」
「勘違いは困る、私は雪人だ他の誰でもない、それと兄はミスターハルゼーのことを大変信用していましたよ」
「殺し合う兄弟にしては相手を良く知っていらっしゃる」
「双子は鏡、隠し通せない」
「とんでもない事を言っているのは解っていますね、二人がつるんで・・」
雪人の言葉が続きを遮った
「貴方が思っている通りでいいと思いますよ」
「認めるとは思わなかった」
「最後だ、ナキストを落とせば完全統一唯、ケイネンがネックになる」
「オムニ4、オムニリンクと言う地位とも差別とも思える言葉を作った政治家ですか?」
「政治家ではない、欲と権力を持ちたがる政治屋だ」
「大体の概要が見えてきました貴方方が何をしたのかは、総てが終わって落ち着いたら話していただきたいですよ」
ハルゼーが立ち上り扉を出る瞬間
「あと少し我慢してくれ、ハルゼー手間をかけるすまん」
この言葉にハルゼーは振り返り言った
「イエッサー」
この瞬間禾人はハルゼーが自分の計画の遂行を黙認したことを悟った
「さて最後にナキスト戦略だがミサイルや空爆によるものでは、都市の防衛機能の方が上回って戦闘にならんので地上部隊による緒戦となる、まず正面突破部隊がおとりとなり厚さ7000mmの特殊合金の城門を破る敵部隊が城門に集中したら港より別働隊が突入、これは以前我々が行った作戦と同じだが、ただ今回は空挺機甲師団を投入する」
「埠頭を押さえて空挺戦車部隊の投下場所を確保すればいいのね」
「そうだ」
「7000mmの特殊合金の城門を破るってどうするの?」
「ケンタウロに積んだポジトロンキャノンを使う、アスクルで奴から奪った奴を改造した、護衛としてレコードとセイントをつける、機体は光学迷彩とショックアブソーバーを強化して振動を抑えさらに音響遮断装置で無音化にもなっている、最接近して打ち抜く」
「リアクターで充電を始めたら気が付くわよね、敵の最強兵器はわかっているの?」
「ポジトロンライフルと報告が入ってきている射程4.5kだそうだ、此方が打ち抜くのに必要距離は5.5k、75%まで此方で充電してフル充電を現場ですれば時間短縮なる、敵のセット完了までに射撃して問題ない」
「フルじゃいけないの?」
「無理なのよ、このコンデンサーは放電が早くてロスを考えると75%がいい所なの」
随分と明るい声でキリカが説明した。最後の戦いでの勝利が確定しているからだと周囲の人間は感じたがナミは自分の報告を受けた時からキリカの様子が変わったと感じていた。
「で私が説明すると言うことは解るとおりこの先陣はドールズが請け負った、スコルピオンもスパイダーもヤル気満々だったが私が無理やり取ってきた、今までSDSでは良い所なしだったからな、最後ぐらい派手に暴れるぞ、でチームだが・・」
「突撃隊レコードは私が乗ります」
ノエルである
「大統領自らですか?」
「お受けしたわけでは有りません暫定ですし、未だ統一された訳でもないですから」
「セイントは私ね」
「それは私の役目だと思いますが」
レベッカに鈴が名乗りを上げた
「レベッカはオムニシティの守りについたいただけませんか、空挺機甲師団もナキストに展開し守りが弱くなりますプラネットハーツの兵器なら全エリアのカバーが可能是非お願いいたします」
「解ったわ」
素直にレベッカが引き下がる、珍しい事だとノエルは思った。
ハーディも頭を抱えていたノエルが先頭に立つドールズが取ってきた突撃作戦に
「でケンタウロは・・」
「私が行きます」
「フェイルン大丈夫なのか?ブランクが有りすぎやしないか?」
「大丈夫」
「おまえがそう言うのなら良いが・・私も行こうWRイージスは私が乗る」
「私は?」
「ファンはNGETでフェイス、ミリセントとバックアップ、アリスはチームを編成して海底よりアプローチ、ミノルもローダー復帰してアリス隊に入れ」
「私たちは?」
「ナミはケンタウロが城門を破るまでNgetで非常事態に応じアドバイスと支援をそして城門を破り次第、カーゴバードで攻め込め」
「マークは?」
「彼女は既に宇宙軍だ此方から如何すると言う指示は出せんよ、それに私と同じ准将だしな」
一通り周りを見回すと
「なければ作戦準備に掛かれ」
「イエッサー!」
「ノエル一寸話があるんだけど」
「いいですけど?」
レベッカがノエルを連れて甲板上に出た
「いい風ね」
「雪人さんのことですか?」
「良く解ったわね、で誰?」
「貴女の連れから連絡が入っているかもしれないと思いまして、で誰といわれましても誰でしたか?」
「ホントに知らないんだ」
「鈴さんは雪人さんではなく禾人だと」
「悔しくない、身内より元敵のほうが気がつくって」
「彼が如何に身内に優しかったかが再認識できました、鈴さんが『対峙したものではなければ解らない』と其処まで睨まれたり恐怖を植え付けられたりしてはいませんでしたから」
「それなら良いのだけど、我慢していたんじゃないの怒りたくとも入れ替わる為に何時も表情を変えない」
「かも知れません」
「さて其れでは私はオムニシティの防衛に就くわ」
「お任せします」
「あ!それとノエル、あんまり頑張っちゃ駄目よ」
「はい?」
「ハーディが困った顔していたから、彼女たちは元々保護でSDSに組み込まれた、それが嫌で強襲作戦の先陣きりたかったのに、貴女と鈴さんが持っ行っちゃ立つ瀬内でしょ」
「そうでしたか」
「それじゃね、行ってらっしゃい」
「此れよりNgetは航空母艦より強襲揚陸艇モードに移行する、ケンタウロ、レコード、セイント、X4Rイージスをハンガーデッキに収納、出港は30分後」
「ハーディ准将は艦橋へ入る」
「参ったわね、ノエル大統領が同行って」
「ファンしっかりバックアップ頼むぞ」
「それは・・」
言葉を濁した、いざとなったらカーゴバードで出るつもりなのが伺えた
「ファン行っておくが作戦進行中はトイレ以外で、CICから出るんじゃないぞ」
「解っているわよ」
「海兵隊のお前としては突っ込んで行きたいところだろうが堪えてくれ」
「ええ」
「艦長へ挨拶は私とミノルで行きましょう」
「私ですか?」
「ええポリンスキー艦長は貴女とお知り合いのようなので」
「知り合いと言うほどでは・・」
「まあ良いわ、いきましょう」
「敵の動き今のところ各地部隊再編成中の模様どうします」
「ナキストを落とせば兵器の供給も滞る、そうすれば嫌でも降伏するほおっておけ」
「解りました」
「作戦開始は16時間後、Ngetの最大戦速で到着後だ其れまで交代で休憩に入れ」
「イエッサー」
「久しぶりだなヤオ」
「ああ三人が会すのは3年ぶりか」
「そんなところだな」
「禾人の件だが」
「何とかしなければならないが、スコルピオンに捕まっていてはそう簡単には暗殺も出来まいこのまま終戦までほって置けばいい、その後だが銃殺は避けたい何としても生かす」
「奴は望まぬぞ」
「このまま死なすのは心苦しい」
「オムニの罪を押し付けるような事は絶対にしない」
「ああ」
時は過ぎ艦はナキストまで200kの位置で投錨を完了した
「敵に気付かれていますよね」
「現在支援砲により敵長距離レーダーはチャフ塗れになっている、偵察衛星によって確認は済んでいるしレーダー波は観測されていない、目視と短距離レーダーのみ」
「では行きますか」
既に機体に乗り込んでいる4人
「各機体の状況を報告せよ」
「レコード防衛攻撃システム、迷彩並びに無音無振動走行システムオールグリーン」
「セイント防衛攻撃システム、迷彩並びに無音無振動走行システムオールグリーン」
「WR索敵システム、迷彩並びに無音無振動走行システムオールグリーン」
「ケンタウロポジトロン攻撃システム、迷彩並びに無音無振動走行システムオールグリーン」
「発艦許可」
「固定チェーン解除、バウドアバウランプ開放よろし」
「発進」
4機は音もなく動き出し艦より出る瞬間に迷彩システムで姿すら消し去った
「此れより攻撃開始まで本艦よりの通信を一切遮断する、では御武運を」
「本突撃隊は閉鎖レーダー通信システムに切り替え」
「此れで4人だけですね」
話す事等ある訳もなく静寂が訪れる
「土田カシアス総督こちらへハルゼー大佐がお呼びです」
雪人を数人が取り囲んで連れてゆく、行き先は決して捕虜が入って良い場所ではなかった
コンバットインフォメーションセンター
「土田カシアス総督をお連れしました」
「ご苦労、土田総督此方の席にどうぞ座ってください」
「よろしいいのですかCICに捕虜を入れても」
ハルゼーが耳打ちする
「最後ぐらい見ていたら如何ですか」
「其れだったらゼネラルを隣に呼んで置いてくれ、あの人も最後ぐらい見させておかないとドールズを救ってSSの中に突っ込んだんだからな」
「ゼネラルってホントに将軍なんですか」
「腐った陸軍に有ってオムニが移民の星だと貫き狙われていたから、死んだことにして顔を変えてスコルピオンで引き受けた」
「ほかに隠している事は?」
「しいて言えば今CICにいる全員が保護を受けたメンバーだ」
此れには愕然となった
「そしてもう一つ、彼らも私が禾人なのか雪人なのか解っていないし解る気もない」
「なぜ?」
「禾人と雪人がツインボディ、ダブルフェイス、シングルハートだからどちらも同じなのだよ、さてラストダンスが始まるようだ」
四機はナキストメインゲートより5kmの位置に到達した
「作戦開始時間まで5分、周囲に敵感なし」
「了解しました、ハーディ准将バックアップよろしくお願いいたします」
「此処まで来て発見されないってこのシステム凄くない」
「フェイ『凄い』って事はないそのために作られた物だから当たり前の能力だ」
「そうだけど」
「では、はじめましょうか最後の戦、終わったらハーディの結婚式が最初のお祝い事にしましょう」
「大統領其れは・・」
「良いではありませんか、どんな時でも楽しみを考えていれば其れが希望になります」
「では私も土田雪人が誰なのかと言う答えを希望に戦いに望みたいと思います」
「ハーディ此処で味方を動揺させるのは、問題ありですよ」
「すみません」
「何の話?」
「フェイ集中しろ始めるぞ」
「ラジャ、ケンタウロ砲撃体勢トランスフォーム開始」
「回線オープン、攻撃開始する」
「対消滅ジェネレーター最大出力、コンデンサー充電開始」
「迷彩解除!対地対空防御体勢!」
『ゲート前方5Kに消滅反応、赤外線カメラに熱源を確認』
『何?照明弾打上げ光学望遠確認』
『敵機4、ポジトロンキャノンを確認』
『最近設置したあれを使うか、ゲート防御電磁壁展開用意、展開は砲撃直前で行え手の内を知られるなよ』
『了解』
『迎撃ミサイル用意、反粒子砲リフトアップシンクロトロン作動準備』
「ターゲットロック、充電完了補正システム良好」
「お任せします」
ノエルが言うが早いか、トリガーが引かれた
「着弾!なに!・・」
ビームが空に向かい曲がった
『上手く行ったなさて反撃だ、全パワーシンクロトロンに回せ』
『照射まで900秒』
『まあ電磁壁が有れば持つか』
『ミサイル攻撃開始』
『対地ミサイルファイヤー!』
「ナミ!」
「分っています!敵バリヤー粉砕エネルギー量を算出しています!」
飛来するミサイルをノエルと鈴が次から次へと打ち落としていく、後方のハーディがナミとのやり取りを行って打開策を検討するが
「拙いです、充電240%で破壊可能ですが1020秒の充電時間が掛かります」
「何とか持ちこたえる!」
「いえ違います!敵の兵器が衛星で判明、反粒子砲らしいのです!加速を開始していて11分程度で照射可能粋に!」
「撤退!」
「引きません!ワルキューレーが出た以上撤退の文字はありません!」
無茶な話である
「レコードとセイントのバリアー機能で持つ保障はありません!引いてください!」
「此処で引いたら再度攻撃の機会はありませんしワルキューレーの馬車にアテナが乗ったのも何かの縁最後までお付き合いしますわ」
「ホントに行くの?」
「参ったな後9分しかない、カーゴランチャーには例の物積んでくれたね?」
「ええ、フェイス」
「行ってくる」
「カーゴバード1番、ランチャ−10番射出!」
艦に衝撃が走った
「なんだ!状況を確認急げ!」
「カーゴバード1番ランチャ−10番の同時射出です」
「誰が勝手に出た!副長確認!」
返事がない、ファンは見回したがいないナミとバリアー粉砕の打ち合わせしているうちに抜け出したのだ
「やられた!フェイス!応答しろ!フェイス!」
応答がない
「まさかミリセントも!」
ミリーが射出をおえてCICへと戻ってきた、ファンの視線がきつい
「作戦終了後ミリセントエバンスは、営巣1週間フェイスは戻ってくれば同様だ」
戻ってくれば、やろうとしている事がファンには分ったリターニングの異名を持つフェイスでも不可能に近い
『フェイス死ぬな』
「何があった」
「フリーダムよりカーゴバードが射出された模様」
「無謀な作戦だ」
「作戦?作戦では無いだろう、臨機応変の対応だが無茶は無茶」
「さらに上空に反応あり現在確認中」
フェイスはジョイスティックを握り締めミサイルを避け突き進む
「アテナ!」
「了解しました」
ノエルは名を呼ぶと防御に徹しアテナはカーゴバードの援護だ高速リニアキャノンが火を噴く
「もうチョイ!」
カーゴバードのドアが吹き飛びX4Sが飛びたした、強烈な衝撃低高度で着陸した代償
「脚に損傷?取り合えず破壊が済めば良いわ」
片足を引き摺り、ランチャーから落とされた荷物を回収した
「此処ね」
フェイスは道の中央に指向性TX爆薬を3段にセット
『防衛隊は何をしている!』
『現在向かっています、』
『たった一機叩き落とせないとは』
其れもその筈である、遠距離攻撃態勢が仇となったファランクスが手動、アテナの正確な射撃がミサイルを粉砕、将にこれほどは無いという僥倖
「爆破」
TXが時差で爆発していくと深い穴が開いた
「後一寸」
穴の底に鋼板が見えた敵の主動力ケーブルケース、でもこの一本を切ったからどうなる訳でもない補助に切り替えれば済むことだ、ただ放射時間を遅らせられる
「点収束テルミットナパームセット」
レーダーに敵影が映りだす、エクタスにはホバーがついていない展開には時間がかかった
「点火」
凄まじい火柱と共にケーブルが焼ききれた
『システムダウン、加速停止緊急弁開放』
『何事だ!』
『メインケーブル破損!』
『サブケーブル切り替え』
『シンクロトロン再稼動!』
『電磁防壁準備急げ!』
「やった」
周囲を敵にかこまれ動くなった足で止まった機体の中でフェイスはつぶやいた
「帰れないなぁミリー美味いパフェのカフェ行こうって行っていたのに」
ズドーン!!敵の3機体が次々に吹き飛んでいく
「何がパフェだ、計画が狂っただろう」
「だれ?」
見上げると
巨大なX4がたたずんでいた
数分前のことである
「N−GETよりカーゴバードが射出された模様」
「支援は?」
「ありません」
「独断か中将みたいだな戦場の一機駆けこそ華て、でもこの状況じゃむりね」
マークは腕を組んでX4Zのコックピットにいた、少し間が空いて
「緊急降下だカプセルの射出を頼む」
「了解、緊急シークエンス開始投下まで5秒ゲート開放、加速ロケット点火」
「5.4.3.2.1.降下、引き続きGPを30秒後に降下」
『対空ミサイル撃てー』
カプセル底部超硬鋼板さらにブーストされたスピードにミサイルのコントロールが上手くいかない
「逆噴射、着陸ドア開放X4Z起動、さて何処に?で誰かな人の華を奪ったのは?」
「マーク!」
「フェ・イ・ス!なにやっいる」
「出ないと危ないかなって」
「今危ないのは私たちだ直ぐ此方の機体に乗り移れ」
フェイスはキャノピーを開けてマークの機体に移った
「充電240%コンデンサー限界領域冷却不能領域」
「バレルコイルチェンジ完了」
「ターゲットセット、自動修正よし」
躊躇わずにトリガーを引いた
『無駄だ』
『防壁展開』
収束したビームが防壁に当たりまた曲げられる
「ナミどういう事だ」
ハーディが尋ねる、そう一撃で破壊できると思っていたが・・
「このままで、敵をこちからモニターしていますがもう一寸」
ナミが見ていたもの敵の冷却システム、
『付加限界!電磁コイル冷却ユニットブロー、ケーブル溶解!』
『なに!』
曲がっていたビームが直線化されゲートを直撃粉砕した
照射時間を長くしてコイルの付加を上げることで自滅を導いたのだ
「やった」
「ハーディ、私たちは突入しますレコ−ド、セイント、ケンタウロの全システム移行を後はお願いいたします」
ノエルと鈴、フェイルンはX4Wを各機から切り離し飛び出していく
ハーディは機をケンタウロにセットすると
「イージスフルシステム起動ケンタウロ対空戦闘モード3機連動モード、さあ此れから先にミサイルは一発たりとも落させはしない」
続く