オムニ今そこにある危機3

オムニ今そこにある危機3 第1話「誰といったって?」

朝からリサが自機の調整に余念が無い
「タービン良好、フラップ異常無し攻撃システム異常無し」
禾人は指令席に着いたまま何も言わず、スクリーンを見つめている
ザックリと切れた右頬に手をつきサングラスをかけて、前まで無かった右頬の傷
つい最近訓練中のミスで切り裂いたのだ
「本日の作戦内容を説明する」
ハルゼーが広げられた地図上で6機の行動が示す
「最終目標は敵オムニ司令部を空爆、破壊すること」
敵オムニ司令部・・今回SDSチームは地球軍としてブルーオペレーションに
参加するよう防空軍第三戦術戦闘航空隊から依頼されたのである。
禾人曰く「遊んで来い」の一言でハルゼー、リサ、李、ミノルとハルゼーの腹心ヘルガ、
ペールの6名が参加する事となったが
「ハルゼー大佐」
「何だねキム少佐?」
「かなり無理な勝利条件ではありませんか?」
まさに、SDSチームはとんでもない条件を言い渡されていた
「敵は最新型のF242改こちらは旧型のF231更に李大尉はFA17」
「こいつは爆撃に最適なのですよ、爆撃後は戦闘機としても最適だし」
「そんなこと言っているんじゃないわ、目標に着けるわけ無いじゃない!!」
FA17・・強襲機を爆撃機に改良したのだ、その為エンジンばかり強力
機体は爆撃後軽くなり戦闘向きになるという変り種である
そう、爆撃終了までは戦闘にならないのだ
「第三戦術戦闘航空隊の腕前で戦闘機でも此れだけのハンデつけられて・・」
「その上、敵を全滅、地上目標の完全破壊、必ず1機は帰還完了するって」
「中将が黙って座っているのが不思議なぐらいだ、喜んで自分で行きそうな、
 プログラムだからな」
「行きそうですね・・でも其れだけ私達を信頼しているとか」
「アヤセ大尉、失敗して今までの訓練を倍にするとか考えているかもしれない」
「と言う事は」
「絶対勝ってこないと大変だ」
「ただ勝ったら特別休暇をくれるそうだ」
「頑張りましょう!」
「でも頑張るのでも・・」
「珍しく弱気じゃないか」
「いえ、そういうわけじゃあ無いのですが」
このキッカケを作ったのが自分だとも言えないリサであった、戦闘航空隊のビットと揉め
たのが尾を引いているのが自分でも解っていた
「さて、作戦開始時刻まで20分、行くぞ」
「イエッサー!!!」

そのころ・・
「此の戦なら必ず勝ちますよ」
「爆撃目標には彼らがいるし」
「汚名挽回か」
「でも一寸卑怯な気もしますが・・」
「なに言っている、このくらい差で勝てないのなら特殊部隊とは言えない」
「そうですね、空軍最強は我々と示しますか」
「彼らが負けても特殊最高部隊とか言っている手前、卑怯ともいえないだろうし」
「前隊長から私に代わった以上、最強は我々でないと気も済まんし、あの小娘にも
 一泡吹かせる」
「さて勝ち戦行きますか」

ダイヤモンドテイクオフを決めたSDSは、既に空戦域に達しようとしていた
「李大尉」
「少佐よろしく」
李とキムのコンビである
「さっきからの話しで私がおとり、貴方が私の真下を高度200mで谷を擦り抜け
 爆撃するって大丈夫?大佐の指示はないけど」
「任しておいてください、爆撃方法は任されております」
「何か在ったらヤオ中佐に顔向けできないから、操縦は上手くないって聞いているし」
確かに射爆はダントツなのだが操縦は上手い方ではない
「何で中佐に?」
「この通話は個別チーム回線だからホントの事言って良いですよ」
「なんですか?ホントのことって?」
「この前ヤオ中佐とシティホテルに入っていったとこ見てしまったんですよ」
「え!!」
「ですから・・中佐に始めて浮いた話しだし・・怪我でもされたら」
「だ・だ・大丈夫ですよぉぉ」
「ほんとですか?」
「任せてください・・処でその話しは・・」
「SDS中で話題です、知らないのは・・」
「知らないのは?」
「中佐とセルマと中将と教官です」
「ハハハハ・・、中将も知らないのですか少将は?」
「少将はそうとか言ってキリカもねぇとか、それどころか中将には黙っていた方が良いと    
 言っていました」
「そうでしょうね切れてしまうかも・・」
「ホントお兄ちゃんなんだから、そう思うでしょ李大尉」
「そーですね、あれが兄貴になると思うと大変」
「そうですよね中佐もいい年なのだからほっておけば良いのに」
「戦闘開始時刻だ!!」
ハルゼーのGOサインがでた4機が空戦部隊の対応に当たる
リサは、爆撃のコースに入った

『敵は4機』
『後2機は何処だ』
『爆撃に向かった模様』
『レーダー部隊敵位置を教えろ』
『1機高度3000を司令部へ向かって進行中機種はF231、後1機は行方がわからん』
『解った、1機其方へ向かわせる』
『ラジャー』
『後1機何処へいった』

「拙い1機ブルー2へ向かった」
「ブルー5、援護に回ります」
ミノルが援護に回る
「ブルーリーダー了解」
「3対5か・・勝機は在るかな」
「大佐、勝ちましょう絶対!」
「ああ!」
「兎に角、爆撃終了まで持ちこたえるぞ!!」
ついに空中戦が始まったのだ
「李大尉、大丈夫ですか?」
「ハイ」
「上手く擦り抜けますね」
「任せておいてください!」
聞いていたほど下手な操縦ではない

オペレーションルームのドアが空く
ノエル少将が様子を見に来たのだ
「中将?」
禾人が見上げる
ノエル一寸小声で
「そういう事ですか、かなり条件が厳しいと思ったら」
頷く禾人
「御楽しみですね」

やがて谷の向こう側に出ようという所である
「李大尉!地上に高射砲3機!ペトリオットX1機も確認!」
地上200の李のレーダーには何も見えないその為、リサがバックアップするのだ
「約束と違いますね?地上部隊は居ないと言っていたのですが」
「抗議しましょうか!」
「面白いんじゃないですか、実戦ぽくって」

「ブルー3被弾戦線離脱する」
『オムニ4被弾戦線離脱する』

「此れだから空軍は信じられないのよ、採用もされなかったし!!」
「高度3000では危険です10000まで上昇してください」
「了解!大尉は?」
「このまま突っ込みます、「おとり」よろしく!」
「出きるだけ引き付けます」
更に高度を下げる100を切った
「だれ?李大尉が操縦下手って言ったの?」
『此方指令車、当方に1機接近!どうなっている』
『オムニ2どうした?』
『交戦中、迎えない』
ミノルと交戦状態である元戦技研アクロバットチーム自称エース!
『高射砲部隊に任せろ』
『解った、片付き次第其方に向かう』
「射爆点には今回は人が居ないと言っていたが、何処かに居そうですね」
「どうするの?」
「指揮車を探してください、ペトリオットの傍にいると思います」
「了解」
「さて、射撃管制オールグリーン!40mmガトリングポットセーフティOFF」

『対空射撃ファイアー!』
リサに向けて攻撃が始まったリサは更に高度を上げる
ドン、ドド、ドン、鈍い射撃音が続く高射砲は2連の旧式、ガトリングタイプではないのだ
『射撃まて!』
『敵射撃高度外に離脱』
『ペトリオットスタンバイ』
『ロックオン』
突然アラームがなる
『何だ!!』
『敵低空で侵入』

「射爆高度まで上昇」
「李大尉!ナイス!」
爆撃は総て実弾、勝利条件1)「戦域内の地上物体総ての破壊」
「ロックオン!」
トリガーを引く、両翼に取り付けられたガトリングポットが火を吹いた
タンクキラーと呼ばれるほど強烈なガトリングガンである、高射砲なんて目ではない
「では私も!」
リサが高度を下げ始めたその時である
『なめるな!!』
『ペトリオットファイア!!』
発射管を破ってミサイルが発射された
弾頭こそ付いていないがペイント弾と違って、爆発は免れない
「リサァァァァァ!!!!!」
回避行動を取りはじめただが地上レーダーの追尾にはかなわないのだ
「ブルーリーダー!ブルー2にペトリオットミサイル接近!」
「なに!!!!」
「そんな物まで用意していたのか!!」
気を取られた瞬間油断を呼んだ
「ブルー1被弾!攻撃を続行する」
『約束が違うぞ』
「何を言っている!!貴様達が違えたのだろう」
『最強を自負する以上何があっても我々に勝つと言ったのはハルゼー大佐貴方だ』
「しかし其処までやるか!!」
「ハルゼー離脱しろ後は引きうける!!!ブチ切れた!!!」
「中将!!!」
禾人の声であった、それもブルー軍の回線から聞こえてきた
リサにはチーム閉鎖回線からだ
即ち李=禾人
「ロックオン!ロケットポッドファイア!!」
数十発のロケットがレーダーと射出装置を破壊、オムニ最新鋭迎撃システム数百億が消え
追尾装置を失ったミサイルは地上へと落下して行った
「指令車は、あそこか!勝利条件1戦域内の地上物体総ての破壊、実行させてもらう!!」
攻撃システムをアクティブレーダーミサイルに切りかえる
「ロックオン、さて逃げ出せ!!」
『ロックオンされました!総員退避!!!』
指令車から飛び出す人影、
「全員逃げたようだなファイアー!!」
数十m逃げたところでミサイルによって指揮車は破壊された
ロケットポッド、ガトリングポッドを切り離すと機体が軽くなる
最終目標オムニ司令部にそのまま突っ込む、高度200m
「爆撃管制オールグリーン、シューティングスターシュート」
低空攻撃用時間差爆弾、パラシュートが開いて安全圏に逃げるまで時間を稼いでくれる
爆風に巻き込まれないようになっているのだ
全弾命中、ビルは瓦礫の山と化した
禾人は高度を上げリサ機と並ぶ、リサの左側だ
ヘルメットを取り変装用に張った人工皮膚を剥がすとザックリと切れた頬が露になった
顔も背も良く似ている李と禾人、並ぶと双子に間違われる事が在るほど似ているのだ
ニヤリと笑うとリサに対してVサインを出す
「な、なんで」
ヘルメットを被り直すと
「回避は空対空ではかなり有効だが、ペトリオットでは殆ど意味を成さない、出きるだけ  
 早くレーダー域から逃げる事だ、地上追尾されているうちは、逃げられんぞ」
「ハッ!!!」
「さて、状況はどうなった?」
「残ったのは中将と私の機だけです」
「敵は?」
「3機」
「まあまあか、では残りを片付けよう此れからがこの機の面白いところだ、
 ついて来い!!」
「イエッサー!!」

『後2機だ』
『まさか3機もやられるとは』
『ああ、でもたかだか後2機勝利は揺るがん』
戦時において絶対間違えてはならない事をビットは間違えてしまった
それは敵との力の差である、元第三戦術戦闘航空隊隊長の技術

「目標を破壊、撃墜されても引き分けぐらいで話し付けるか?リサ」
「冗談じゃ在りません!絶対勝ちますよ!!」
演習なのにミサイルの攻撃を受けた為、リサがムキになっている
空戦状態に入った、リサと禾人の機目掛け3機が牙をむく
「2機か」
2機が禾人の後ろについた
『お嬢ちゃん今回は私の勝ちだ』
リサとビットがドックファイトを繰り広げる
「ああ!鬱陶しい!2機だ!!」
禾人は機体の性能を完全に生かしていない、始めて実戦で乗る機体なのだ
シュミレーターで訓練、初飛行が初戦、既に後方を取られた
『此れで終わりだ!』
ロックオン!射撃が始まった瞬間、機体が消えた
『を!何処行きたがった!』
3000mの高度から一瞬に500mまで機体を落とした
属に言う木の葉落としなのだが
「いあ〜こえー、1000落とすつもりが重いから2500も落ちちゃったよ」
「中将でも怖い事在るんですか?」
戦闘中でも余裕が出てきた
「奴らは、いた!」
禾人の真上を2機並んで飛んでいた、それが致命傷になった
FA17底力上昇速度!爆撃後高速離脱する為ずば抜けているのだ
『何処だ!』
『真下だ!!』
「遅い!ロックオンファイア!!」
2機纏めて機体下から仕留めた
「リサこっち片付いたぞ、手伝うか?」
「何とかします」
禾人が気を引く為ビット機の下に潜り込んだ
『なに!』
気を取られた一瞬が仇になった、リサが宙返り上を取ったのだ
『ばかな!』
キャノピーを赤いペイントが染め上げる
「ミッションコンプリート、帰投する」
「勝ちましたね、一人でも大丈夫だったのに」
「勝って当然」
「派手にやりましたけど」
「始末書書くの俺じゃないし、第三戦術戦闘航空隊が書くだろう」
「一寸可愛そうですね」
「一寸?とんでもない最新鋭の防空ミサイル1セット、訓練で破壊したんだ解任だな」
「解任!」
「この前成ったばかりだが、前任のエイサーが復帰するだろう」
禾人の様子がおかしい、言葉尻がキツイのである
「中将」
「なんだ?」
「なにか気に障っていますか?」
リサは自分の話した事を忘れていた、禾人ぶち切れ
「リサ、帰ったらじっくり聞きたい事が在る、私の部屋へ来い」
「は、はい?」
帰投、今回参加したメンバーが並んで禾人を迎える
機から降りると、機体の点検を禾人自ら行う整備員のいないところに降りた時の為の
訓練の一環である
「閣下疲れ様です」
「イヤミか?」
「いや、そろそろ落ち付いて頂きたいのです」
「閣下