オムニ今そこにある危機3 第21話 「私達の存在」

「ノエル少将、私が移民2世だと言う事はご存知でしたか?」
「いえ・・」
「そうですか・・」
ジュディは悲しげな目をしながら話し始めた
「あの日、スコーピオンと言う組織が麻薬を扱っていると情報で動き出しましたがオムニ商港のダンク商会倉庫でみたものは山積みされた重火器類、調べているうちにドジを踏んで囲まれエレキランスで突かれて気が付いた時はこの船の中でした・・」

『誰に頼まれて探っていた!』
黙り込むジュディ
『情報部か!察か!』
『中々強情なようだな』
モーゼルを抜きジュディの額に銃口を突きつけた
『ボス』
『自白剤も拷問したくない全て話してもらえないかな?』
『誰が!』
ジュディは禾人の顔目掛け唾を履きかけた、禾人は怯まない
『写真取らしてもらうぞ』
ジュディの顔写真を撮ると部屋から出て行った
そして3日後
『スパイダーだったとは・・』
ジュディがビックと動いた
『父上と兄上は無職、家計は君が支えているのか?君がいなく成ったら大変だな』
薄笑いを浮かべながら話す
『何が言いたい!』
『わが手中に君の家族があるということだ』
『家族は関係ないだろう!』
『大いに関係ある、君が相手にしているのはマフィアだ手段は選ばん』
『卑怯な!』
『なんとでもいえ』
『で何が聞きたいのなんでも答えるわ!』
『頭のいい子は好きだ、だが君がスパイダーだと解かった以上聞くことはない』
殺される・・必要がない以上生かされるとは思わない
『取引と行こう』
思わぬ言葉にジュディは耳を疑ったが
『父上は収容所で苦労したようだこれ以上家族を悲しめられん、それに君は優秀だし』
ジュディは更に驚いたマフィアは既に家族の情報を握っている
『何をすれば良いんですか』
諦めた自分の行動で家族の運命が決まる
『死んだ事になってもらう、家族には自由に連絡を取らせるが軍の作戦と言って絶対に他の人間にも喋らないよう注意しろ、自分の命がかかっているといえば喋らんだろう』
『判りました』
『それと父上は農業インストラクターの資格があるようだエアーズマンフィールドワークへ就職出来る様手配した、兄上はエルザ証券だ経済的に家族が困る事は無い』
『何で!』
『君にファミリーに成って貰うんだその家族は大切にする其れがマフィアだ、さてコーザノストラ血の契約を持って成立だ』
紙の上に血を垂らし署名契約は成立した、正に悪魔に魂を売る瞬間である
『一つ聞きたい、なんでオムニに付いたのかオムニの馬鹿どもは歴史を繰り返しやがった』
『オムニに来た以上オムニに従うと父が言っていました』
『その挙句は戦争が始まったらオムニ支配地区の地球移民は収容所送り、第二次世界大戦の時日系移民にアメリカが執った政策と同じだそして君は・・』

「それで私は父や母の為オムニに忠誠を見せる為に志願兵で戦争に出ました」
「そして私の部隊ですか?」
「はい、一番危険実績の高い女性だけでその上家族を養える給料をもらえるチームにと
危険なところに出る方が忠誠を見せられると」
「そうですか・・でもなんで私に・・」

ソファーに座りコーヒーを飲みながらリサに一部始終禾人は語っていた
「この艦のライトスタッフが欲しかったから彼女は丁度よかったんだ」
「兄さまそれだけで姉さまに話さなかったんですか?」
「いやアイツが部下を良く見ていれば問題なかったんだが・・当時戦う事に神経が行っていて」

「あの当時聞く耳持っていなかっただろ」
ノエルはレベッカの一言に力なく答える
「確かにそうですが・・」
「それで最初にボスが私に指示したことは、調査の続きダンク商会隣のエイハブ商会倉庫の捜索それにはボスも同行されました、まさか空軍スコルピオンの総大将とは思いませんでしたが、あ!少将の旦那さんでしたねホントに良い人ですね家族も助かっています」
「彼のことは如何でもいいですそれで」

『ジュディ換気口からの進入だ続け』
エイハブ商会当時はまだ警備も手薄禾人の失敗によって強化されたのだ
梁の上から覗き込むと数人が集まって何やら話している
『麻薬ですね』
写真を撮る禾人
『女か?』
『彼女達!』
カーンンンンン・・
甲高い音が響いた、身を乗り出したジュディがポケットからナイフを落としたのだ
『撤退だ!』
響き渡る銃声、ライトの光でまともには飛んでこない
倉庫を出るとダンク商会の倉庫に逃げ込んだマンホールを開け飛び込む
『これからは!』
『こいつだ』
用意されていた水中スクーターで沖の潜水艇に逃げ込んだ
『ダンクの倉庫は潰そうあそこはもう使う気に慣れん』
『どうしたんですか?』
『麻薬を扱っているのは!情報部だ!そんな横使えるか!』
『情報部!でもなんで彼女たちが・・』
『いったい何者だ?』
『いえ・・』
『写真があるから調べが付く、手間をかけるな!』
『スパイダーの隊員です』
『それでノエルの作戦が敵に流れた訳か、彼女達から情報部、ダブルスパイから地球軍』
『そんな・・それより貴方は何者なんですかスパイダーまで知っているホントにマフィア』
『マフィア、兵隊やくざで女神のストーカー、土田禾人だ』
『スコルピオンチーフコマンダー!』

「ボス、グラディウスの試射用意できました」
レインスーツに着替えセーフティーベルトをすると着艦デッキに進み出た
当然の如くリサも一緒だ
「この風雨の中でやるんですか!」
声が通らない
「ああ!」
「ボスも物好きだ」
「いや、全てに興味を持ち我武者羅に進む、ファミリーを愛し守る為にな、だからお前もついてきたんだろ」
「そりゃそうだが」
「風林火山、動く時は徹底的に進むからな」

「ジュディ、彼女たちとは誰なんですか」
「ノエル!固執するなって言っているじゃないか!」
「しかし!」
「もう禾人が全て片付けているしもう4年前だよ」
「それでも!」
「知ってどうするつもり、禾人が言っていたわ『アイツが築いた城も石垣も崩させない』て更に『情けは味方、仇は敵なりを実践している、もしあいつか知ったら彼女たちは生きていないだろう、知った時には直ぐに逃がせる手配をして置いてくれ』とそれが何を意味するかわかる」
「人は石垣、人は城・・」
「一罰百戒は敵にしても、禾人は自分の部下には絶対にしない慈悲は天使ルシファーの顔、信頼と言う城と石垣を崩さない為に、ただ見せしめはするけど命まではとらないでしょう」
「私は・・」
「いいのよ、今の貴女ならもう判ったでしょ禾人は貴女の城を彼は守りたかった・・彼女たちを捕らえ軍法会議にかけて処刑させたら、貴女の評判は下がり隊はバラバラ、意外とスパイダーって2世多いのよね知らなかったでしょ」
「私生活には踏み込みたくなかったし、踏み込まれたくも無かったので・・一つだけ教えてくださいなぜ彼女たちが情報部に身を売ったのか・・」
「ノエル!・・」
レベッカがあまりのしつこさに切れかけたのだが


「私からそれは説明いたします」
エリーゼである
「裏切り者の一人はエリーゼ・シュタイナー・・私であります・・」
ノエルが目を瞑り天を仰ぐ、閉じられた目の縁から一滴の涙が走った
レベッカがノエルの分身ならエリーゼは右腕と言っても過言ではない、その人間が裏切っていた、その衝撃の大きさにノエルは涙したのだ
その光景を見ながらエリーゼの話しは行き成り本題に入った
「父が情報部と知らずに依頼された芥子の栽培をしておりました・・栽培は戦争当時から当初痛み止めのモルヒネを大量生産するという名目でしたが実態は麻薬の製造・・父が気づいた時は逃げ出せない状況、芥子の栽培をすれば収容所から出してもらえる条件がついていました・・それに家族6人私の給料だけで生きていけるわけも無かったです」
エリーゼを見つめるノエルの目から既に憎しみの炎は消えていた

「ふん!」
ドドドドドド、バシュ!!!
2.5K離れた厚さ40mmの鉄板の的を見事に中心をぶち抜いた
「流石だなぁこの横風の中、中心を抜くとは」
「超一級のスナイパーか・・恐るべしオムニ軍てかぁ」

「びしょびしょだぜ」
「このレインウェアー雨通しませんでしたけど?」
「緊張した汗だよ・・ちと行くかサウナぁ」
「兄さまホント、サウナ好きですよね」
「ストレス発散はサウナで汗流さないとなぁ」
「ストレスなんか有ったんですか?」
「この艦と彼女たちの事、話しそびれて今日まで来てしまったがやっと荷が降りた」
「でも・・」
「ノエルか?大丈夫、アイツは落ち着けば話しの判らない人間じゃない、リサだって揉めただろ、俺の事で」
「確かにねぇ」

「でもなんで彼に・・」
「スコルピオンの応援で管制指揮の担当にに入った事がありましたよね」
「あの時指名で確か5名、ではそのうちの・・やめましょう・・」
「そしてミサイル発射管制に着かされて・・」

『今日の目標は麻薬密売組織の壊滅、照準は芥子畑並びに精製施設座標AC−12』
・ ・AC−12!!!
『既にスコルピオンは周囲の包囲を完了している、テルミットナパームミサイルの発射準備に入れ』
・ ・テルミットナパーム・・指が震え出した・・父たちがいる・・
『あそこにいる敵たちの処遇はどうなるんですか?』
『あそこに敵はいない・・テルミットナパームなら骨も残らない痕跡も無くなる』
『それでは!』
『スパイダーも同じ事をしてきている筈だ、下らん質問は止めろ』
『こちらバイパー、ミサイル誘導準備完了』
『ファイアー!!』
・ ・
『なぜ発射しない!』
答えぬ三人
『ミサイル管制をメインコンソールにミサイルシュートスタンバイ』
『待ってください!!!!あそこには・・あそこには・・父たちがいるんです』
エリ−ゼ達は禾人にミサイル発射中止を哀願した
『地球軍に仲間の作戦を売るような人間に哀れをかけると思うか・』
『ああ・・』
三人に禾人のモーゼルが向けられる
『ハハハハハハハ!』
魔王の高笑いに三人が耳を塞いだ
『ハルゼー栽培労働者の保護は済んだか』
モーゼルを懐にしまいながらマイクに叫んだ
『は!21名収容完了しました、情報部員は始末完了焼却願います』
三人が驚いたように禾人を見上げた
『エリーゼ解かっているか?自分のするべき事を』
『・・ハイ・・』
エリーゼはナイフを取り出し自分の喉を掻き切ろうとする瞬間
『馬鹿かあ!だけがそれをしろと言った』
『しかし准将が知れば・・』
『命は無いだろう』
『醜態を准将に曝せと!』
『親兄弟のためにしたんだろ、お前達が黙ってミサイルのボタンを押したなら俺はお前達を射殺していた』
『では如何せよと』
『退役だ』
『退役・・解かりました・・』
職が収入が無くなるがそれは仕方ないこといざと成ればこの体売っても、それは家族の生活に関わる仕方が無かった
『親父さんたちはエアーズマンフィールドワークに就職出来る様手配した、それとノエルの右手と言われたお前を野に埋もれさすのは惜し過ぎる』

「で、この艦なのですか?」
「それから先は私ね」

『ノエルの隊に情報部内通者がいる』
『私はもう退役しているのよ』
『その人間は捕まえたんだが・・エリーゼだった』
『エリーが!なんて馬鹿な事を・・』
『で女房に何をやらせたいんですか』
『実は・・』

「それでオムニ側に居た地球移民の現状を聞いてしょうがないかなと」
「そうですか」

『この艦なんだが、万が一決起が必要になったらノエルに任せるつもりだ』
『万が一?』
『これ以上、移民差別を起すようなら力尽くでオムニを完全統一させる』
『でも力尽くだけでは無理でしょ?』
『判っていらしゃる様で心強い、だが民衆をこちらに付けて勝利する方法もある』
『どんな?』
『此ればっかりは言えんよ、漏れたら此れこそ大事になる』
『テロだったらお断りよ』
『革命に失敗すればテロと呼ばれるだろう、成功すれば英雄だ』
『少将、勝てば官軍て言う訳ですか』
『ハルゼー判っているじゃないか』
『ヤッパリテロ』
『言うならば兵器を使わずオムニを完全に混乱に追い込む事が出来る』
『どう言う事?』
『それは言えないって言っているだろう』
『ノーゲット・・渾名を信じましょ自分の為には動かない貴方を』
『此れだけは約束できる、絶対武力行使はしない、ノエルに嫌われたくないしな』
『ホント、ノエル、ノエルなんだから』
『俺ではオムニを納められない、作戦完了後4年間はオムニ復興で暫定大統領を執り行う』
『それを准将に?』
『その通り』
『で貴方は?』
『主夫でもやっているさノエルの帰りを待って食事作って洗濯掃除ランランと!』
『嘘!貴方がノエルを一人にするとは思わないわ』
『コルリオーネファミリーって知っているか?』
『オムニ最大のマフィアね』
『この艦の持ち主でもある』
『え!何で少将が!』
『俺はジャンコルリオーネと五分の兄弟』
暫しハルゼーもレベッカも沈黙したが
『マフィアの計画には参加したくは無いです』
『計画はマフィアかも知れんがそれを行う者は、清廉の騎士で無ければならないのだ』
『しかしマフィアはマフィアでしょ』
『庇う様で悪いがコルリオーネ家の思想は違うようだ』
『違うって?』
『手っ取り早い麻薬には手を出さない、麻薬は国を滅ぼすからだって言っていた』
『国を滅ぼすねぇ』
鼻で笑ったようなハルゼーの言葉にムッと気ながらも禾人は話しを続けた
『コルリオーネ家はオムニ初代開拓移民の責任者としてやって来た、やがて開発は進み多くの移民がやってきたが開拓された場所ばかり求め新たに開拓しようとしなかった入植拠点ばかり人口が増え周囲へは広がらなかったんだよ、やがて地球軍がやってきて政権つまりオムニを掌握しようとした、開拓して来た者のプライドとしてがそれを許せなかったらしいがしかし、コルリオーネ氏はまだ新たに開拓するならば全員にチャンスがある、その為に第一陣が各地にステーションを作ったのだからと言っていた』
『平等なチャンス』
『開発80年でどれだけ開拓が進んだと思う、たかだか20%始めの10年は調査が主だった』
『残り80%にチャンスがあるんですか?』
『やる気になれば幾らでも大きく成れるという事だ』
『でもなぜコルリオーネは開拓を止めてマフィアに?』
『嫌気がさしたと言っていたが実際は、自分たちのやる事は終わった稼がせてもらうと言うのが本音だろうそれと地球では過去マフィアだったらしい』
『マフィアが責任者?』
『二足の草鞋と言う言葉がある、昔の日本ではやくざの親分に十手・・警察手帳を持たせたんだよ、ある程度の権力者に任せると言うには常套手段だ』
『地球のスタッフはそれでよかったの?』
『第一陣の調査隊は片道切符、誰が好んで行くと思う強制移民だったからコルリオーネ家に白羽の矢が当ったんだと言うより、まアルカトラズか、網走送りってとこか?』
『信じられない』
『俺だって当初信じられなかったさ、しかし大統領官邸を見下ろせる高台にマフィアと判っていて邸宅を建てさせるか?冗談抜きの影の大統領だよ』
『あ〜頭痛くなってきた』
『仕方ないさ』
『で何をしたら良いの?影の軍隊を』
『わるいな〜ノエルが指揮を取れるようこの艦を纏めて欲しい、出来上がって1年スタッフも集め出したばかりだがライトスタッフには優秀な人材を用意したい、ノエルの分身と言われた君なら可能だろう、エリーゼもジュディもスタッフとして乗せる』
『でもなんでノエルなの?』
『ルシファーは堕天して天には帰れないが、阿修羅は韋駄天となって天に帰せるんだよ』
『天に帰すか』

「で今に至ったと言う訳よ」
ノエルは肘を机に点き手を合わせ額に当てて目を瞑り考えていた突然目を見開くと
「ジュディ!エリーゼ!起立!気を付け!歯を食いしばれえ!」
ノエルが声を張り上げた
「ノエル貴女!」
ニコッと笑ってレベッカの口を塞いだ
ノエルが二人に近づくと二人は目を瞑り制裁に備える
二人はふっと包まれる感覚に目を開けるとノエルに抱きしめられていた
「ごめんなさい・・」
「いえそんなぁ・・」
判ってくれた、此れで準備してきた事が救われる
「レベッカ、全く!いつもOFFは側にいたのに良く騙し続けられましたね」
「貴女の分身だから、腹芸は得意よ」
「私ってそんなに腹芸します?」
「まあね、それよりメンバー紹介しよっか知ってるの多いぞ」
「ホント根回しのレベッカですね、隊に残って大佐として指揮とって頂いた方がよかった」
三人は部屋から出てノエルに艦内の案内をする
「退役のスパイダーが主要な位置についてサポートが元地球海軍の女性兵士、コルリオーネファミリーがアドバイザー」
管理センターに入ると何やらモニターに数人集まっている
「そこいけ!!」
一人がモニターに向かって叫んでいる
「何をさわいでいるの!」
「失礼しました!」
モニターの先はサウナ・・リサと禾人が抱き合っているのだ
「あ・・」
ノエルがニコッと笑いながら
「レベッカ、ナイフか拳銃を一寸貸してください」
「はい」
思わずコルトを差し出すノエルはそれを受け取ると走り出した
「何渡しているんですか!」
「あ」

「リサ気は済んだか?」
禾人の胸の中で首を振る
「ほんとにリサは、涙脆いな」
突然禾人は背筋に寒気を感じた、後頭部にひんやりとした金属片を感じたのだ
「リサ、ノエルが来た泣くんだったらノエルの胸を借りろ」
素直にリサはノエルの胸に飛び込んだ
「如何したんですか?」
「色々話したら泣き出してしまった」
「そうですか、襲っていないなら良いでしょう」
「俺にそんな甲斐性は無いよ」
「この艦全体の女性が愛人かと思いましたけど」
「其処まで冗談がいえるなら、許してもらえたと解釈していいんだろうか?」
「はい・・そしてありがとう御座います助かりました、あの当時エリーの事を聞いていれば間違えなく処刑していました・・理由も聞かず、ご両親がオムニに恨みを残す事をしていました」
「そうか・・俺はその言葉で救われた、今まで言い出せなくて悪かったな」
「あなたの優しい性格では無理でしょうね」
「俺が優しいって?」
「女性に対してだけですけど」
「よく判ってらっしゃる、あ、こんな時間になるかそろそろ艦橋へ行こう就任の挨拶があるだろう」
「私が引き受けると思うのですか?」
「目がやる気満々だよ」
「ドン禾人、ドンリサ謹んでお受け致します」
禾人の目が物悲しい
「姉さま・・」
「冗談でもリサも私も君にドンとは呼んで欲しくは無かった・・」
「あ・・優しい妹と愛しい夫の頼みならばお引き受けいたします・・」
いきなりリサが禾人に飛びつく此れにはノエルが驚いた
「な、なんですか?」
「姉さまも早くおさえて!愛しい夫なんて聞いたらどっか飛んで行っちゃいます!」
ノエルがお腹を抱えて笑い出した心底からの笑いである
「リサ、面白かったですよ、でももう着替えていきましょう」
禾人もリサも元のフライトスーツに着替えて艦橋へ向かう
「ノエル、殺ちゃうかと思った」
「半分本気でしたけど、一寸落ち着いて聞く耳を持とうかと思いまして」
艦橋に主要メンバーが揃った、マイクを握ると全艦隊に放送を接続
「禾人だ、本日本艦隊はコルリオーネ氏から私に対して供出された、此れよりこの艦隊は我が意思によって行動する事となる」
大きく深呼吸をすると
「本日オムニ政府は最終決断を下すがその結果は戦争でしかない、しかしこの艦隊はこの戦争においてオムニにも地球カシアスにも付かず静観をする」
「!」
ノエルは、直ぐにでも禾人が投入を決定する物だと思っていた
「この戦いの勝利の先には何もない!、地球カシアスが勝てばオムニ開拓者への差別が始まるかも知れん、オムニが勝っても占領しに来た地球軍従軍者や新移民の差別は無くならん、しかも地球軍の新たな侵略による事で更なる差別が始まるだろう!」
禾人が声を押えながら続いて艦隊の目的を乗員に再確認させる
「この艦隊は、あくまでもオムニが異常な方向に向いたと判断される場合において決起するのだ、たとえ私が死のうともオムニが地球に支配されようとも、人々が平等に平和に暮らせるならばそれに越した事が無い、もし不平等や小競り合いが続くならばオペレーションA―ONの発動に踏み切る、だが此れはマフィアコルリオーネファミリーが指揮を執る訳には行かないそこで、オムニ海軍現独立軍のノエルノルン少将に艦隊司令を任せる、異存のあるものはこの時点に置いて異議を申し立てよ」
暫しの沈黙の後
「異議無きものと判断する、ではノエル少将に就任の挨拶とこの艦の命名をお願いする」
ノエルはマイクを受け取りると挨拶を始めた
「ノエルノルンと言うよりもワルキューレーと言った方が判るかと思います、この船を預かる事になりましたが先程フライトデッキ上で見せたように非常に乱暴者ですので皆様に迷惑をかけると思いますがよろしくお願いいたします、この艦隊の方針は先程禾人さん・・」
ノエルが禾人をチッラと見ると
「禾人計画実行指揮者だ軍や国家じゃないから官は使わんぞ」
「禾人計画実行指揮者からご説明戴いたとおりに進めてまいります、オムニが平和で差別をなくす為にご協力をお願いいたします、そして艦の命名にあたり私たちの存在を確認しなければ成りません」
「?」
ノエルが何を言いたいのか判らず艦隊中が静まり返った
「移住から約90年たかだか3世か4世がオムニリンクを名乗り、地球に一番近い存在と言うだけで新移民や2世を差別するこんな馬鹿な事があって良い訳が無いです、私達元は地球の生命体、宇宙へ旅立つ事が出来るまでに育んでくれた地球、異星の生命体を受け入れても尚その独自の生態を維持し私たちを受け入れてくれたオムニ、こんな私たちの愚かな行為を笑っているでしょう、今後二つの故郷を思い争いをなくし地球の優しさとオムニの寛容さに感謝していく為に命名致します・・」
大きく息を吸い込んでノエルが艦名を言った
「艦名プラネッツハーツ」
禾人がニッコ笑いながらVサインを出した
「彼女に付いて行きましょうか」
「ワルキューレーと名乗った時は一寸とは思ったが、美人だし優しい良い子じゃねえか」
「ドンとの関係は?」
「言わなかったが同姓中らしい」
「チャンスねぇってことか・・」
「姉さま、最高でした!」
「ありがとうリサ、でもあれで良かったでしょうか?」
「良いも何も姉さまの言ったとおりだと思います、良い名前じゃないですか!」
「もう一つ考えたのが、ベルハート私の親友の名前を付けようかと思ったのですが・・」
「ベルワイストマイヤーさんですか?」
「何でリサ貴女が?」
「今日が命日、昨日墓参りに行ってきた・・」
「雪人さんと会いましたか?」
「どうして!」
禾人も此れには驚いた
「雪人さんとベルが付き合っていたの知っていました」
「お前、悪女だな俺を焦らしたのか!」
「私も女の子ですから・・努力してもらえると嬉しいので黙っていた方が良いかと・・」
禾人があきれ返った
「可愛い可愛い」
「なんですかその言い方!」
「やめよう・・疲れた・・気が張っていたのが一遍に解けた」
「あ・・はい」
この件で始めてしまえば本当に犬も食わない
「あ!時間がないですよ!」
既に12時、基地には14時までに着かなくてはならないのだ
「機のスタンバイは完了です、頼まれていた劣化ウラン弾タングステンカーバイトジャケットタイプと専用ガトリングポッドも搭載完了しています」
「では発つとしよう」
「ノエル!、これランチよ!」
レベッカ達が見送りに来た
「ではまた!」
「風上に向け回頭!バウドア開け!」
「排気ダクト解放!シリンダー内圧上昇!カタパルトリニアシステム併用!」
指揮者が定位置に立った
「ノエル首を踏ん張らせろよ!」
「ハイ!」
高く上げられた腕が振り降ろされた瞬間機体が弾き出される
「続けて第二カタパルト!射出!」
リサの機体も嵐の空へと弾き出されて行った

オムニ今そこにある危機3 第22話  「ナキスト陥落」

「中将!ご無事で!」
着陸したテトラXにスコルピオンの兵士が駈け寄ってきた
「一寸休暇を貰って帰ってくるのが遅くなった」
禾人は頭を下げて礼を言う
「心配かけて済まなかった、此れからもまたよろしく頼む」
皆に囲まれて話す禾人と離れて所でノエルがそれを見つめていると
「家内に会ってきたんですか?」
ハルゼーである
「はい」
「そうですか、では決まりましたね」
「プラネッツハーツです」
「悪くない」
ノエルが禾人を見つめる
「彼の人気は凄いですね」
「中将は面倒見がいいですからねぇ」
「スパイダーの隊員も禾人さんに付くのでしょうか・・」
「ダブルNだから付いていくんでしょう、ノエル&禾人良いチームじゃないですか」
「大佐ありがとうございます」
「ハルゼー!ポットを外してサードのハンガーへ運んでおいてくれ!」
「判りました!テトラもファイターハンガーへ入れておきます!」
「頼む!さて・・」
「禾人よく生きて帰ってきたな」
禾人は身を正して敬礼をする
「ヤオ大将、ご迷惑をおかけしました」
「気にすることは無いさて、総員!持場に着け!大統領の最終決定がある」
「イエッサー!」

各人持場へ走っていく、将軍及び大佐は会議室へ集合
ヤオ大将、ノエル少将、神少将、ハルゼー大佐、ターガーソン大佐、ハーディ大佐の順番で着席する、禾人は末席中将でありながら一週間の謹慎中更に雪人討伐選任、一般作戦には参戦しない
「開発して来た者の権利か・・」
禾人もノエルも大統領の演説に呟く
「さて此れで決まった、開戦になる」
『地球カシアス緊急放送です』
『オムニ政府の考えは判った、此方は戦争を望まなかったが致し方ない此れより24時間以内に戦闘を開始する以上』
宣戦布告立った数秒の声明であった
「24時間以内に第一攻撃」
「我々はどのような体制になるのでしょうか」
「其処なのだが特殊部隊ということである程度の一般作戦には参戦はしなくて良いと言う事だ、取り残された兵士や部隊、強襲、奪還、破壊工作が主任務に成る」
「では初期戦闘には出撃はないということですね」
「この基地や周囲の町に何も起こらなければな」
「通常のスクランブルで対処すると考えて宜しいのですね」
「かまわんが、禾人は対雪人戦に投入が決まっているそれのバックアップを忘れないよう」
気の抜けたような禾人にヤオが聞く
「補助員は誰にするんだ?」
「陸戦サポートはヤオフェイルン中佐を空戦及び運搬にはリサキム少佐をお願いいたします」
「判った、許可しよう待機場所は・・」
「今使っているコンテナで十分です」
「禾人中将、軍の中将がコンテナは無いでしょう」
「ハルゼーかまわん、弟殺しに行くのにレザーのソファーは要らんさ」
席を立ち戻ろうとする禾人をヤオが引き止めた
「まだ話しは済んでおらん、これから奴らの第一波攻撃位置を割り出さなければならない」
「第一波はナキスト工業都市でしょう、奴らは先ず補給基地を第一に手に入れたい筈ですそれにナキストスペースポートも魅力的だ」
「あそこには空軍の基地があるでしょ?」
ノエルが尋ねた
「港北重工業が動かなければな」
「どう言う事ですか?」
ハーディが以前ファンを禾人の指示で送り込む準備をしていた所だ
「兵器工場で陸戦兵器を作っている、社員の一部が地球軍兵士だったらそのまま出撃基地を押えられるぞ」
「確かにそうですね、あそこまでファンたちで5分掛からない位ですから」
「そうすると奴らの船もあそこに来ますね」
「あ、そうか・・」
禾人が思い出した
「ヤオ大将お願いがあります、コード名オーディーンが戻ってくるはずです、救出隊もしくは近くに回収隊を送り込んでくださいませんか?」
「重要か?」
「素粒子対消滅リアクターとエクトールの設計図を奪取して戻ってきている筈です」
「筈か・・」
「正式には連絡が着きませんので何ともいえませんが・・」
「誰が行っていたんだね」
「半田久弦、半田流骨法の65代目総師範」
「あの半田か・・」
「知っていますか?」
「ああ彼か・・で誰が行くかだが」
「私が行きましょう」
ハルゼーである
「お前たちは完全に戦闘に行くつもりだろう其れでは死者が出る、ファン中佐に指揮を取らせて回収隊を送り込んだ方が確実だ港北のときには活躍してもらった」
「判りました早速ファンに働いてもらうよう指示を出しますが宜しいですねヤオ大将」
ハーディがヤオに尋ねる
「許可しよう、スパイダーはドールズのサポートに以上解散!」
「イエッサー!」
部屋を出た禾人にヤオが声をかけてきた
「禾人如何した?」
「いえ何でもありませんが」
「逸れなら良いがお前が元気ないと隊が暗くなる」
「はい」
禾人の異変の気がついたのはヤオだけではない
「中将どうしたんですか、飛行中からおかしいですよ?」
「リサ俺のことどう思う?」
「え!突然なんですか?中将の事は好きですけど・・!」
リサの視線が宙を泳いだが禾人はそれに気がつく事無く話しを続けた
「それはそれで嬉しいがそう言う事ではなくて・・なんて言うか・・性格だ」
大きなため息混じりに禾人が話しを続けた
「アイツ、俺は欲しい物が手に入ると熱が冷める見たいな事を言いやがった、雪人とベルの事も知っていて俺には黙っていた自分に対する熱が冷めないようにって・・」
「熱が冷めるって・・」
「俺は冷めない!ノエルに関してそれは絶対言える!アイツは黙っていた事であの事件が起こったと思っている、自分が告白していればそれは無かったと・・でも告白されていたとしてもパレードに連れて行っただろうしあいつらに飛び掛っていた全ての原因は俺だ」
禾人が大きく肩を落とし俯いたまた、大きなため息を吐く
禾人は抱きしめられる感覚に
「リサ有り難いがお前ではなぁ」
「あら私ではダメでしょうか」
「ノエル!」
先程からノエルが禾人の後ろの立っていた為リサの視線が宙を泳いだのだった
「ホント私が何時貴方が冷め易いなんて言いました、深く考えすぎですホンとに熱い人なんですから」
ノエルが禾人の膝の上に座ると
「はいそこまで!そこのバカップル!ナキスト空軍基地が襲撃されたって言うのに何やっているんですか!」
声の主はフェイルンである、ノエルが慌てて立ち上がる、リサが全てのプラズマディスプレイのスイッチを入れその中から適切な情報をメインに映し出した
「ビームタンクだぁ!」
禾人が驚きを隠せない
「何処から出たのでしょう?」
「リサ!ナキスト上空の偵察衛星画像は入るか!」
「切り替えます!」
「私はスパイダーに指示を出しに戻ります!それと貴方のその目が素敵ですよ!」
「あ?」
「沈んだ顔は似合わないって」
「頑張るか!」
「衛星情報入ります!」
「ズーム!港北重工!」
「ラジャ!」
「港北じゃないのか!」
戦車の出入りは見られない『何処だ!』禾人は焦って周囲の工場を探査する
「中原重工です!」
フェイルンが見つけた、地球系重工業会社には間違えが無い
「ノーマークだったなエクタスの生産ラインばかり押えていたが・・」
「どうします?」
「どうもこうもない、空軍基地が落ちるのは時間の問題だそれから奴らの母艦が降りてくるのは間違えない、さてオーディーンの帰還を祈るか」

「此方、メリサ離陸許可願います」
「強襲機離陸許可!御武運を!」
オーディーン奪還部隊であるローダーの支援は無い
「先陣私たちよ、中将の指名だから意地でも任務をこなさないとね」
「まさか戦場に一番乗りだとは思わなかったわ」
「3時間後にはナキスト東の森林地帯に降下、宇宙港へ向けて前進中将の予想でオーディンは、到着後2時間無いし3時間で逃走を開始する身柄の保護を最優先に行なえと死んだ場合は遺体を基地に持ち帰ると言う事も忘れるなと・・」
「でも中佐、予想でしょ?」
「その予想が的中するから凄いのよね」
「的中するんじゃなくて、分析結果でしょ送り込んだ人間が中将に答えられるだけの力がある」
「人望が厚いというか人選が良いんだよ、見る目がある」
「じゃあ私たちよりリサが優秀?」
「優秀だろ、中将や少将のサポートを完全にこなしている、ミノルが不幸だな中将についていればリサの立場になっていられた筈だ」
「あら億万長者になりそこねってこと」
「そんな所だな」

「陸軍基地から戦車部隊が出ました」
「ローダーは出ていないの?」
「X4が出ているみたいだな」
「なに?あの影?」
「輸送機か?デカイがまさかあの映像にあったガルバルディか!」
「ガルバルディ?」
「ギアが投入されると言う事だ」
「リサ!X4のコックピット映像を陸軍CCから引っ張り出せ!俺のパスワードでいけるはずだ」
「イエッサ!」
「謹慎中ではなかったらすっ飛んでいくものを!!!」
壁を思いっきり打ん殴って凹ます禾人
「映像入ります」
「あれはエクトールではないな、あれがエクタスか・・ビーム射程600mまで延びているかX4の二倍の大きさか!的には大きくて良いが動きが速いな」
「でもまだリニアの方が長いわ」
「市街戦なら600Mも2500Mも変わりないさ」
「だいぶ出来上がっていたようですね」
「機数がわからんと作戦が練れんな」
突然画面がフェードアウトした
「戦死者1名確認・・次の映像!」
「サー!」
「あれ?ポーズ!ズームUP!更にアップ!」
エクタスの胸に白と青で二重に書かれた雪の結晶
「スノーマーク!」
「雪人!初戦から出てきたか!」
「お!」
閃光を見た瞬間またフェードアウトした
「偵察衛星画像に切り替えろ、さすが雪人だな」
「見難いわね」
「平面映像だからな」

「ナギサ、右に回って」
「了解」
「エクタスは操縦しづらい」
「エクトールの方が反応速度が良いですね」
「ジェットも使えないか」

「お!」
禾人が画面に食い入る閃光が走ったのだ

「だれが殺られました」
「判りません」
「ナギサこれで引けなくなりましたね」
「ええ部品は渡せませんからね」

「何とかあの破片手に入らないかな」
「ファンに連絡しますか」
「いや、余計な仕事は追加しない方が良いそれに俺は謹慎中だし指令は出せんよ」

「禾人は!」
「謹慎処分で出られない忘れましたか」
「ああ・・ナキスト空軍基地に連絡!総員退避無事の帰還を祈る、空軍司令官土田広人」
ナキストの空軍基地は滑走路が使用可能な状況を除いては壊滅に近い状況である

「ナギサ、雪人降下させるぞ」
「了解」
大気圏突入を果たした輸送艦カシアスからパラシュートで巨大な物体が落とされた
「エクトールを確認、確保に向かう」

「なんだあのパラシュート?」
「ローダーが付いていますけど?」
「リサ!地上の映像を何でも良いハッキングしろ!」
「ファミリーを使います」
「マフィア?」
「中佐に姐御の力御見せします」
「位置についた方から映像を送ってください」
「イエスボス」
「リサに俺も負けそうだ」
「映像入ります」
「エクトールか!」
巨大な影、胸のスノーマークが陸軍の対戦車ヘリコプター部隊を次々と落としていく
「あの機動力、破壊力・・欲しい」
「中将、ナキスト空軍基地放棄!空軍から司令部に連絡が入ったそうです」
「良い決断だ、こうなったらナキストに奴らを封じ込めるしかないな」
「ところで地球軍は何処へ降りたのかしら?」
「降りるところは一緒の筈だ、もったいぶっているんだよ」
「カッコ付けか」
「よくカシアスが従うもんだよね」
「カシアスというより雪人がな・・」

「オムニか・・」
「いい加減白状したら如何だ?」
「しらねえって・・」
「マイクロフィルムをお前が持っているって雪人が言っていたぞ!」
尋問室の扉が突然開くと
「着艦するそうだ!」
「一年ぶりの地面か!」
半田を尋問していた士官が部屋から出て行った
半田の姿はボロボロであるスパイの扱いは厳しいのだ
「やっと・・帰ってきた・・」
ボキッコキ!カシャン・・
「気が付きやしねえ、そんなに嬉しいかオムニに着いた事が地獄が始まるのに」
関節を外して手錠を解いたのだ
「足枷を外さなければ・・これか」
拷問用の針である
カシャ・・
「フ・・」
ガシャ!扉が開いて士官が戻ってきた
半田は席に付いたまま頭を垂れる
「フ・・気絶したか」
半田に近づいた瞬間、半田の右手が士官の喉を捉えた
「俺には慈悲がある苦しまないよう殺ってやるよ」
ボキ!首があらぬ方向に曲がっている
「おかしい・・兵士がやってきても良いのだが、さては着いた事に夢中になっているな」
士官の服を脱がし自分の服と取り替える
「一戦交えるつもりが気抜けしたな・・」
半田は艦内を歩き脱出経路を探し出した

「リサ先程の映像をV−CD5枚コピーしてくれ」
「判りました」
「どうするの?」
「家族に配るんだ彼らが如何使おうとかまわん」
「上等のネタじゃない渡すなんて・・」
「ハーディやファン、ナミが犠牲になってもいいなら渡さないがどうする」
「中将失礼しました・・」
「判ればいい」
扉が開いて整備班長ロイが入ってきた
「セラフが着きましたが如何します」
「着たか!」
「熾天使?」
「フェイは俺のサポートだろ同じような降下システムは要る」
「エンジェルウィングじゃダメなの」
「3万Mからの降下に4分かけられん15秒で降下するための装置だ、俺のルシファーウィングを空軍開発部が改良した試作のアークエンジェルに続いてセラフが完成したと言う訳だ」
「三万を15秒って・・」
「マッハ7.2ですよ」
「7.2なんて!」
「出来ないって言うのなら別の人間を選定するが・・」
「良いわよ、出来る人間なんていないから結局私でしょ」
フェイルンはたかをくくった、出来る人間はいない
「良いだろう、解任だリサハーディ大佐に言ってフェイルンを戻す、代わりにマークピアスン中佐を派遣してくれと伝えろ」
「一寸待ってよ!マークができっるって言うの?」
「大気圏突入の最高速度はマッハ30を超えることもある」
「ではハーディ大佐に・・」
「まって!やるわよ!」
「リサ、コピーが終わったらフェイルン載せてアクロバットやって来いちゃんと反吐袋持っていけよ、テトラ使っていいから背中汚すな」
「判りました!中佐・・」
ニヤリと笑うリサに背筋の寒い物を感じるフェイルンであった
「リサ!手抜くなよ!この訓練シッカリやっていないと死ぬ事になる!フェイ!一週間で慣れろ!」
「イエッサー!」

兵員輸送車が次から次へと下ろされていく、アルガ、アルガ2投入により戦闘開始から2時間と言う異常に早い戦闘終結を迎えた
「このカッコでは乗れんか・・さて」
物陰からフル装備の兵士を物色していく、列が途切れた最後の兵士を引き込み首を一瞬の内にへし折って服を着替えると走って輸送車に飛び乗った
半田を載せた輸送車が輸送艦より出ると同時に警報がなる
『25分か・・気を抜きすぎだ馬鹿が・・』
「半田がいません!」
「雪人に連絡しろ船の周囲を固めて逃がすなと」
無線が雪人に繋がる
「逃がしたんですか?」
「気がついたときにはいなかったらしい」
「時間は?」
「25分程度だ」
「殺られたのは何名いますか?」
「1名だけだ服を取られていた、奴は士官の服を着ている」
「いえもう着替えているでしょう・・兵員輸送車のデッキを調べてください今ならあそこから出るのが楽でしょう・・」
「判った」
「更に5分・・奴はもう宇宙港の外このチャンスを狙っていたのか・・」

「さあ降下よ!」
谷を縫い地平ギリギリを強襲機が飛んでいく
「メリサ、ドア開いて!」
「ラジャ!」
5人が次々と降下していく強襲機は反転一路オムニシティ空軍基地へと向かって行った
「さあ彼を確保するわよ」
「顔はこれね、各自これを持って行って中将の手紙これを見れば味方って判ってくれるって」
「イエッサー!」
山を登りカメラをセットする
「ついでに偵察とはハーディも良く扱使ってくれるわね」
ファンがファインダーを覗き込みながら呟いた

「ノエル少将、プレゼントだ」
「ラブレターですか?」
「スノーマークのタバスコアイスだ」
「判りました」
「それじゃあな」
「あらコーヒーぐらいお出ししますけれど」
「スコルピオン、グリーンベレー、シールズ、ドールズまだ配達が残っているんでな」
「ジェファニーこれを再生してください」
「判りました」
禾人は次から次へと配っていく
「ハーディ大佐」
「中将!」
ハーディは敬礼をする
「プレゼントだ」
「なんでしょうか?」
「実録エクトール、ナキスト空軍基地壊滅編だ」
「もう手に入ったんですか」
「リサは強かだ既にファミリーを自由に使っている実に頼もしい」
「私より隊員の事が判っていらっしゃるようで」
「いやリサだけだ、他はデータだけで見ているからな、リサとの出会いも変わっていたし、帰りのアクロバットで恐怖の悲鳴かと思ったら嬉しい悲鳴だったり鍛えがえのある明るい子だ」
「確かに、中将に着いてから更に明るくなった様ですね」
ハーディがV―CDセット
「中将コーヒーをどうぞ」
「アリスか、悪いなありがとう」
集まってきたドールズと禾人はスクリーンを見入る
「フェイは?」
「今ごろ反吐はいているんじゃないか、リサがアクロバット訓練をしている」
「アクロバット?」
「色々あってな」
「これは凄い映像です」
「これを相手にするの!」
「現有数を確認しなければならないが特殊機で少ないようだとしか言いようが無い、戦場投入は敵さん殆どがエクタスしかもオム二産だということが物語っている」
「でもこれで勝てる?」
「先程、エクタスを沈めた奴がいた負けると思わなければ勝機はあるものだよ」
禾人の携帯電話が鳴った
「誰だ?公衆電話からか更にコレクトかい」
「いまどき公衆電話ですか?」
「ナキストからだついたばかりの奴はもっていないからな」
「もしもし」
「おう、ロキか」
「ああ、そうだオーディーンだな久しぶりだ」
「お前の所に酒飲みに行きたいがどう行ったらいい?」
「この戦争中にか?」
「ああ」
「じゃあ迎えをやろう、何丁目にいる?」
「カイザー通り2丁目地下鉄2番出口」
禾人が地図を見ながら指示を出す
「じゃあ駅を背中に右手一番高いところに言ってくれ」
半田が右手を見る一番高いところナキスト産業センタービル
「判ったじゃあ後で」
「ああ待っている」
半田は受話器を置くとマウンテンバイクでナキスト産業センタービルに向かっていく、服装も一般人になっている破壊された店から失敬したのだ
やがてナキスト産業センタービルに着くが前を通り過ぎた禾人の指示である
一番高いところ、一番高い建物ではない正面に見えるナキスト山脈フィアデル山
「禾人もえらい所を指定してくれるマウンテンでよかったぜ、大体冬だって言うのに山かよあのやろー着いたばっかりで体力も落ちているのに」
プロテインパウダーをアミノ酸飲料で飲みこんで更にスピードを上げていく

「よく繋がりましたね?」
「今ハーディ言ったろ今時公衆電話って、ナキストの携帯局はパンクらしいが有線局は空いているようだ利用者が少ないからな」
「連絡が電話だとは・・」
「回線が多いと盗聴しにくいし電話局を押えても携帯か固定かでまた違う、特定できない電話の位置戦闘状態で混乱した携帯の電波、良いだろ?」
「だけど中将の電話は特定できますよね?」
「常に使っていて登録が私ならな、5年間月20ドル使わない電話に払い続ける登録はロキ・グングニルこの電話も奴が戻ってくればお役ごめんだ」
「ロキとオーディーン凄いコンビ名ですね」
「まあ当初オーディーンではなかったんだが奴がこの為に・・まあそれは帰ってきてからださて、フェイルンを見てくるか」

やがてエクトールが市内を飛び回って不審者を探している
「何か変な動きね?!オーディーンの逃亡!、ファンより各員オーディーンは脱出に成功した模様身柄の確保に集中せよ」
「ハウンドドックからイーグル」
「こちらイーグル」
「ラビットは野に放たれた」
「ラジャ!」
メリサは回収機に乗り換え漆黒の空へと舞い上がった
双眼鏡をのぞき道を監視する、オムニ標準時間17:30ナキスト時間15:50夕闇に黒い人影が見えてくる、後ろからライトを持った数人の影が見えるが前方の人影には気が付いていないようだ
「こちらライザ、ラビットを確認ネズミ2匹付くもまだ確認されていない模様」
「ネズミを始末せよ」
「ラジャ」
ミチコとコンビを組んでライザが獲物を追った手にはサイレンサー付きのコルト
兵士の後ろから近づく、連合軍兵士は追うものと確信しているのか前方に注意を集中して後方のライザたちには気が付いていない
ライザがミチコに合図を出すゆっくりと近づくと後頭部向けて二人同時に引き金を引いた
「なんだ」
突然半田の前に黒い影が現れる、半田は戦闘に備え身構えるが
「オーディンですね、私達はルシファーホーク」
「禾人の使い魔ってか?」
「これを」
ファンが禾人の親書を差し出した
「間違えなさそうだ」
「今迎えが来ますので山の反対側に行きましょう」
「越えるのかよ、キツイな」
「戻られたばかりでお疲れでしょうがお願いいたします」
夜間1800mの峠を越えるのである峠は雪が積っている
「防寒服はあるか?」
「用意してきました」
「では行くか」
「ファン中佐、兵士の片付け済みました無線は一台確保」
「じゃあ行くわよ」
ドールズ5人が集まってきた
「女性ばっかりかい嬉しいねぇオムニに帰ってきて美人に迎えられると」
半田の口説きが場を和ませながら登坂を開始した

オムニ今そこにある危機3 第23話     「忍び寄る影」

リサがエリオラ達に囲まれて非難されている
「素人にやり過ぎだ、もう一寸加減しろ」
「しかし、中将が!」
横でフェイルンが反吐を吐いている、顔は青白く変わり果てた姿だ
「リサどうだった」
戻ってきたリサたちのもとに禾人がやってきた
「ごらんの通りです」
「中将何のつもりか知りませんが、陸戦要員にアクロバットはムリです」
「ムリだろうがやって貰わねばならん、あのエクトールやレーザータンクを掻い潜り3万Mからの高高度降下15秒をこなすには、どうしてもなれて貰わんと困る」
「あの降下用ウィングがそうですか?」
ミノルである、運ばれてきたウィングを目の辺りにしてその驚きを隠せなかった
降下用ロケット8機逆噴射用4機、計12枚の羽を持っていた
「もしこれに耐えられないのならマークピアスンと交代させる、死にに行かせるわけには行かんからな、リサコークスクリュウまでやったのか?」
「言え中佐の状態を考えるとそこまで出来ませんでした」
「明日からは必ずやれ良いな!」
禾人の気迫に押されてリサはやむおえず首を縦に振った
「さあメシだ、フェイルン行くぞ!」
「私は、遠慮します・・」
禾人はフェイルンのジャケットの襟を掴むと引きずって食堂へと連れてくる
「何事ですか?」
ハーディがフェイルンの憔悴しきった姿に驚いた
「さあ喰え!喰わねば明日耐えられんぞ!ムリにでも喰え!」
フェイルンがパンをスープで流し込む、戻しそうになるがグッと堪えた
その光景を見ながらミノルが呟く
「はじまちゃったな中将のしごき」
「そんなに酷いのか?」
「私が逃げ出したんですから」
「しかしリサは問題が無いぞ」
「リサは特別なんです!私にはあの仕打ちは絶えられません」
「中将も言っていたリサは逸材だと、だがなミノルお前の事を中将は優秀だと言っていた」
「優秀な仕打ちがあれ?」
「出来ると思うから言うんだと、ミノルなら出来るから言っていたと今一番見たいのはリサとミノルのアクロバットだってあの二人なら凄いのが見られるってな」
「過剰な期待はされてもねぇ」
「私なんて口だけ動かして仕事しているのが一番あってるって言われたぞ」
「中佐、また」
「私は操縦は上手い方じゃないからな」

禾人がトレイをフェイルンの前に置いて食事を始めた
「どうしたもう入らんか?」
「久・々で・・すこんなに・・きつ・いのは・・」
「そうか、しかし明日からは更にきつくなるが、なんとしても慣れろよ」
「サー・・」
「中将、ファンから連絡がありました、ラビットを捕獲明朝配達する以上」
「判った」
時計を見上げる、これから終戦まで基地での泊り込みが余儀なくされる
「就寝の時間だ、フェイルン中佐サッサと寝ろよ」
「サー・・」
そのうちにノエルが禾人に近づいてきた
「中将、ヤオ大将がお呼びです」
「俺だけ呼び出しか?」
「私も一緒に来いと言っておりました」
「そうか?」
食堂を出てヤオの執務室へと向かっていく
「どうだあいつらの動きは?」
「ナキストに戦略拠点を構築中の模様です」
「4軍の動きは?」
「各地でゲリラ活動が激しくなってナキストに送り込む部隊が決定できない様です」
「馬鹿な!これだけの軍があってどう言う事だ!」
「各将軍があの戦力に自軍を送り込むのを拒否しているのも確かですが・・戦力もどれだけあるのかまだ・・」
「結局、あの戦力分析は済んでいないのかエクトール2機エクタス15機あと不明はレーザータンク、ミサイルキャリアーの戦場投入数、ツーローターのヘリコ型か」
「ポーンも判っていませんし・・」
「ああ、しかし、こうも容易くナキストが陥落するとはなぁ」
「そうですね」
二人の会話はヤオの執務室の前で終わった、ノックをすると中からヤオの声が
「入ってよし」
「失礼します」
禾人とノエルが敬礼をする
「何でありましょうか!」
ノエルも禾人もヤオに対しては最大の敬意を払う
「将軍たちが直ぐにお前を戦場投入せよと言ってきた」
「判りました」
「いや慌てるな、お前は謹慎中無論拒否した決めておいて勝手過ぎる、お前は出たかったみたいだがな」
「いえ、戦況把握には時間が要ります丁度いいですよ、フェイルンの訓練も掛かりますし」
「その件だがかなり激しくやったようだな」
「まだ、大将の足元にも及びませんが」
「フェイルンも年を食った、かなり扱かんと鍛えられんお前のサポートに合うよう鍛え上げてくれよ」
「時間はありませんが徹底的にやります」
「死なせない為にも最善を尽くさなければいけませんね」
「本来なら陸戦はノエルに預けて鍛えるのが良いんだが如何せん時間が無い」
「この一年でかなり鍛え上げたつもりですが、お気に召しませんか?」
「実際あの映像を見てどう思う」
「そうですね・・」
「二人とも何を悩む、私はそんな事の為に呼んだわけではない」
「?」
「たまにはお前たちと飲みたくてな」
「では、神少将も・・」
「いや、フェイルンを幼稚園時代からみてくれていた君達と飲みたいだけだ」
ヤオが笑いながらウィスキーをグラスに注いだ
「近所の叔父さんと見ろと?」
「ノギはそう見られるだろ、ノエルさんは私が家に帰ると娘から色々聞かされたから知らない気がしない」
「さんは付けはやめてください指令・・」
「それならば今日は、指令と呼ぶのは止めてくれよ」
「では小父様で宜しいですか」
「かまわんよ」
ノエルがグラスに手をかける、それを見てあまり禾人は快く思わなかった
「作戦進行中に飲むのもなんだと思うが」
「あら良いじゃないですか」
「半田が帰ってくるんだ酒臭くない状態で迎えてやりたい」
「禾人ではビールぐらい付き合え」
「はい」
長い様で短い夜の始まりであった
そして翌朝
滑走路で腕を組んで空を見上げる禾人やがてジェット音が聞こえてくる
強襲機に続き小型ジェット機が着陸した
小型ジェットにタラップが繋がれ背広に着替えた半田が降りてくると禾人と抱き合って涙を流す
「お前に涙は全然に合わんな」
「なんだお前こそ目潤ませやがって・・」
「年食って涙もろくなったんだよ」
「それはそうとサッサと仕事済ませよう」
「そうするか、開発部隊も心待ちだからな」
「それと結構報告する事が多い」
「司令部で全て受け渡しするか」
「禾人司令官殿の指示に従いますか」
「指令は俺じゃないんだ、指令はヤオフェイロン大将だ」
「ヤオさんか」
「知っているのか?」
「半田総帥のライバルだ、そうだ禾人頼みがある」
「何でも聞くぞ、お前が私にしてくれたことの代償ならこの命も・・」
「ヤオフェイロンと手合せしたい」
「わかった」
ニッコと半田が笑う
「さて!」
司令室へ入いると開発班、戦技班が待ち構えていた
「ファン中佐ご苦労だった」
「いえ楽な仕事でした」
「口説かれなかったか?こいつ好きだからな、英雄色を好む方だし」
「ありましたがかわしましたので」
「あっさりかわされちまったよ」
「そうか・・それじゃあ半田・・出してくれ・・」
禾人の悲痛な声に何事かと周りが思った瞬間、半田が左目を抜き出した義眼である
義眼を拭きながら
「この中に全てのデーターが入っています、抜いたら義眼は帰してください」
「わかりました」
ナミが丁重に義眼を預かった
「半田本当にすまない」
禾人が深々と頭を下げると床に雫が垂出した涙である
「まさかオーディーンて!」
ミリーがコードネームの発祥を思い出した
「なんなのミリー」
「地球の北欧神話です、神々の父オーディーンは知恵を得るため知恵の泉の番人に片目を抉って差し出した」
「その通りだ、彼は私の頼みを聞いて雪人にも判らない様出発直前目を抉り出したのだこれなら絶対わからないと・・こんな俺の頼みの為に惜しげもなく目を潰した・・」
「気にするな格闘家にとって然程問題ではない、何時か誰かに潰される目ならば親友のお前にくれてやったほうがいい」
「すまない」
「もういい、それよりビールぐらい出ないのか?オムニを出てから飲んでないんだ」
「そうか、サウナなんてどうだそれから一杯」
「いいねぇ其れでは一汗流してくるか」
丁重にファンがジャグジーへと案内していった
「さて、一寸ヤオ大将に話ししてくるか」

「このシステム・・AS204素粒子対消滅ドライブ・・16mで22.5t」
ナミとキリカが腕を組み設計図を見ながら唸った
「先ずリアクターの材料調達ね」
「精錬できるかしら?」
「やれるでしょオムニの材料で近い合金鋼の製作なら」
「近いか・・」
「不安は残るけど冷却システムの強化で合金鋼の脆性を押さえ込めば何とかなる」
「策はあるの?」
「ペルチェ素子を強化して何とかできる」
「じゃあそっちは任せるわ」
「ナミは精錬と圧延をお願い」
「わかったわ」
開発班の停滞は一挙に解消、ローダーに搭載されるエネルギー炉の製作が開始された

「禾人・・わかった半田君との試合受けよう」
「ありがとう御座います」
「日にちは半田君の体調が戻ってからだそれで良いな」
「ハッ!」
禾人は敬礼をして部屋を出るとすぐさま半田の下へととんで行った
「半田!OKが出たぞ」
「日にちは?」
「お前の体調が良いときだそうだ」
「いつでも行けるが、2・3日後が良いか禾人一寸感を戻すのを手伝ってくれ」
「ああ」
「取り合えず禾人これを」
缶ビールである
「お疲れ様」
「再会を祝して」
二人が杯を酌み交わす頃司令部では
「X4Sのリニアキャノンをかわすだと」
エクトールの機動力にX4がついて行けないのだ
「地球軍はカシアスと逆方向へ展開しています」
「分割エリアを自分たちで占拠するつもりか」
「ナキストを拠点に進行を開始」
「ナキストが物資補給拠点になるわけだ」
「兵器生産ラインの完全破壊をしなければ勝機なしか?」
「ジェファニー中佐ナキストの生産可能な兵器及びその部品についてリストアップを急いでください」
「わかりました」
ノエルが神と顔を見合わせた
「どうしました?」
「アイツだったら読むだろう、この次の大形攻撃目標を・・」
「確かにそうですが・・お聞きになりますか?」
「いや作戦担当は私たちだ中将に負担をかける事も無いだろう」
「そうですね」
ノエル達はマップの上で敵の作戦の検討を再会した

「禾人の城にしては狭いじゃないか」
半田がコンテナの中をビール片手に見す
「このコンテナ狭いが最新鋭の情報システムや非常事態省の衛星通信システムを搭載、更にコルリオーネの情報バンクに直結できる、いざとなればトレーラーやヘリコで移動が出来る」
「何人いるんだい?」
「おれとリサとフェイルンの三人だ」
「部下か?」
「フェイルンは知っているだろ?いつも俺のケツに付いていた女の子」
「おお、あれ兵隊になっていたのか」
「ヤオさんの娘って知っていたか?」
「そいつは知らなかった」
全く戦争中とは思えない緊張感の無い会話が続きビールが更に進む
「リサって言うのは?」
「ああコルリオーネファミリーTOP4の義兄弟妹だ、知り合って1年だがもう20年ぐらい昔から知っているような気がする」
「優秀か?」
「逸材だ」
「お前がそう言うなら間違いが無いな」
「そうか?」
「それより先程から気になる事があるんだが?一体何計算しているんだ?」
半田はプラズマディスプレイに積算されていく数字が気になる
「なにをリサは計算させているのかな?」
「これの当人は何処行っているんだ?」
「空上がってアクロバット訓練中」
「アクロバット戦時下で?」
「いや、ルシファーウィングの訓練にヤオを載せて飛んでいる」
禾人がキーボードを叩き積算の内容をチェックしていく
「コルリオーネデーターバンクの資料だな」
半田が横からディスプレイを覗き込んだ
「これお前が指示したのか?」
「俺はしていないぞ」
「それが本当なら逸材どころか、お前の分身だな酔いが覚めてしまったよ」
思わず二人とも顔をあわせて笑ってしまうそんな時
「中将!ヤオ中佐失神の為只今戻ってまいりました」
リサが敬礼をしてコンテナに入ってきた
「飲んでたんですか?」
「こいつが帰ってきたから祝杯をあげていたんだ」
「半田・・」
リサは階級を聞いていないので口ごもってしまう
「私は民間で非常事態省の臨時職員、半田久弦、半田でかまわない」
「半田さんお疲れ様でした、私はリサ、リサキムです」
リサが手を差し出す半田が握手をしながら
「禾人が君の事を秀逸だと言ったがこのプログラムを見て・・」
「大した事無いと思ったんでしょ、私なりに考えて次に何処にくるかと推測をしてみようと思ったんですが・・」
「リサ、半田曰く俺の分身だってよ」
「え?何でですか?」
「ま、良いこれで何処にくると思う?」
プリントアウトされた結果をリサに手渡しす
「これで行けば・・」
作戦テーブルのスイッチが入りナキストから1500Km範囲のマップが現れる
禾人が今度はシャンパンを出してきた
「飲みすぎですよ」
「まあ、良いから良いから」
リサがスイッチを押して町の名前が点灯した
「タウンアスクルと考えますが」
半田が拍手をすると、禾人がそれに合わせてシャンパンを開けてリサに架け出した
「なんなんですか!!」
「良くやった!!」
禾人は本当に心底リサに対して絶賛した
「禾人お前の最後の弟子だなこれ以上の人材は出まい」
「本当にお前は良くやってくれる、俺が考えていた以上の人間だ」
「そんな・・」
リサが躊躇いながら禾人に結果を求めた
「間違えなくアスクル目掛けて来るだろう」
「私達の考えと同じだ、禾人も君に対して同じデーターを求めただろうがその前に君が同じ考えで動いたと言う事だ」
「リサがいたら俺要らなくなちゃうな」
「またぁ」
そんな時フェイルンが入ってきた
「リサ!手加減しなさいって!」
「そう吼えるな、お客さんだぞ」
「失礼しました」
身を正して敬礼をする
「次の奴らの攻撃目標をキム少佐が割り出した、準備に掛かるぞ」
「なんで割り出したの?」
「ほらこれ」
「なにこれ?鉄鉱石、クロム鉱石にマグネシウムとニッケル鉱石、タングステン、タンタルにモリブデン・チタニウム・石炭・・」
「ナキストの製鉄所にある原料在庫量と製品の数量だ、ナキストの海上にはプラットホームがあって石油は問題が無いが、」
「鉱石の足りない分を補うのに鉱山を襲撃するってことね」
「そう言う事だ」
フェイルンが首を振りながら
「リサ、中佐と少佐交代しよっか」
「ヤオ中佐までそんな事いう」
「で何処なの次の攻撃目標は?」
「そのデーター凄いのは、ナキスト120社の製鋼所と商社の原材料と製品、チタンボルト一本までトータルした数量があることだ」
「そこから割り出されたのがアスクルだ、ニッケル、チタン、モリブデンが採掘できるオムニでも屈指の鉱山」
「耐熱合金にはどうしても執拗だからな」
「で何時頃なの?」
「それは半田の情報を解析しないとな、ナキストからアスクルまでにタウンは3箇所、占拠しながら進行するなら時間が掛かるが200人前後の開拓村ならほって置いても問題はない」
「直接来るって事ですよね」
「そうだ」
「来る場所はわかった直ぐ進行が始まると言うのにまた出られないって事は確かでしょ?」
禾人の謹慎を言っているのだ
黙って聞いていた半田が
「直ぐとは言えない」
「なぜ?」
「地球軍が先に進行を始めた兵力8万全てが周辺都市の制圧に掛かれば」
「カシアスがナキストの防衛構築の間動けないと言う事か!」
「そうだ、ナキストクラスのシティの防衛網となれば通常1万クラス、カシアス兵員は1万2千」
「オムニの投入兵員次第で防衛ギリギリか2千が打って出るか」
「決まるって事だな、だがどうしてもこの2・3日は防衛と完全制圧が優先になる」
「都合が良い、フェイルン中佐更なるステップだ、キム少佐フルコースで揉んでやれ後2日で絶対失神なんてみっともない事はなくせよ!」
「イエッサー!」
「リサ、午後からエリオラにX4S積んで高度3万まで上がれるよう手配してくれ」
「誰が上がるんですか?」
「俺だよ」
「ダメですよ、飲んでいるのに」
「ほら、ノンアルコール」
「禾人は硬いからなぁ本格的に飲むのは夜だ俺のは入っているがな」
「よく我慢できましたね」
「やることやっておかないと後悔するからな」
「X4Sって機種転換?」
「お前の奴だよ、セラフのテストしておかないと問題があるかもしれないからな」
「だったら私がやるわよ」
「だめだ失神したらテストにならない、それに使うのはマークになるかもしれないからな」
「・・」
怒鳴りたいが本当の事である、第二候補はマークピアスン、先のミサイル防衛実績が高く買われているのは良くわかっているリサもマークも禾人の作戦に置いて高い実績があるのだ
「さて飯だ今日はフェイまともに食えそうだな」
「今日は何とか」
食堂に入ると禾人の廻りには神を元とする工科学校の卒業の面々が揃い出した
「禾人暫く暇なんだろ」
「謹慎中だが機体の整備や訓練はやらないとな」
「頼みがあるんだが」
「珍しいな?」
「うちの連中だがお前にやられたのは飲んでいたせいで絶対勝てるとか言ってやがるんだ」
禾人が笑いながら神に言う
「俺は弱いからな」
「よく言うぜ」
「ホントだよ、コイツには勝てない」
半田を指差して言った
「そんなに強いのか?」
「やってみれば良い」
「そうか、半田さん午後から頼めますか?」
「かまいまわんがさん付けは止めてくれゲンと呼んでくれれば良い」
「私もジンでかまわない、じゃあよろしく」
神が去っていくと
「禾人相手が丁度良いんだが」
「付き合うけどよ、セラフのテスト終わるまで待ってくれ、怪我したら操縦どころでは無くなる」
「わかったよ」
禾人達は食事を済ませてコンテナハウスへと帰ると禾人は昼寝の時間である
「優雅だな」
「将軍特権だ」
「良く言うぜ」
「ホントは食休み執らないと戻すからよ」
禾人はやがて目を覚ますと格納庫に向かい、リサ達はブースター付きSRF−2に乗り込む、半田は格闘技場で神の相手を始めた
「エリオラ悪いな」
「いえ一向に構いませんが目標は?」
「この基地の北側にある平原だ」
「高度3万からの降下テストに平原で宜しいのですか?」
「滑走路上に降下は出来ない、失敗して大穴開ける訳にいかないし平原なら失敗しても何とかなる」
禾人はX4Sに乗り込むと各システムのチェックを始めた
「可変ノズルシステムグリーン、姿勢制御システムグリーン、エマジェンシーオートパイロットオールグリーン」
C559に搭載上空3万Mめがけ上昇を始める
禾人は高度計を見つめながらタバコに火をつけた
「新システムと新兵器か、新兵器がコルト形の短銃とはいやはやレーザー兵器ぐらい作れねえのか」
ほぼフル装備のX4S、120mmキャノン、DRu20、M63、P-9RS、ポケットは120mm徹甲弾、短距離射撃用ガバメント
「重いな、着地から戦闘態勢移行に支障はないか?」
最大重量で降下テスト、チェックを行ないながらブツブツ呟く
「中将?どうしたんですか?」
「いや何でもない」
「降下点進入します、後部ペイロードオープン、ダイブタイミング中将に」
「ではあとで」
禾人は大空へとダイブ一気に降下を開始8枚のブースターが噴射するとその速度はマッハ6を超えた機体をスライドさせ降下地点に方向修正
既に降下から9秒残り6秒機体制御に入った
「機体反転リバース」
体がシートにめり込む、4枚のリバースユニットが噴射着地する
「問題なしか、これで・・」
突然機体の横を砲弾がかすめた
「なんだ!」
ユニットを外し、機動性向上のためDRu20、M63を投げ捨て禾人が臨戦態勢に入る
「C3(Center Combat Control)、平原にて演習中の部隊があるか確認してくれ砲撃を受けた」
「C3より土田中将へ演習中の部隊なしレーダーに敵影なし」
「応戦に入る」
「直ぐに支援部隊を急行させます」
「WRフルセンサーで出してくれ」
「イエッサー」
「リサ!今の会話聞いた」
「もちろん!行きますよ」
「バルカンもミサイルも積んでないでしょ」
「中将の欲しがっている物は目!目になるならば可能です!」
「わかったわ、行きましょう」
「ステルスモード移行マックスパワー到着予定4分後!」
「参ったな、何にも見えんとは・・」
砲弾が再びかすめてゆく
「機体反転させます、中佐は地上の砲撃位置を目視確認してください」
「レーダーは!」
「ステルスです見つかりませんWRでもムリかもしれません」
反転する機体フェイルンは地上を見つめて閃光の元を探す
「リサ!速度落として!」
「ラジャ」
SRFが平原に低速で入ってくる
「平原なのに見つからないなんて」
「隠蔽ですか?」
「それ以上でしょこの機体と一緒じゃない?」
「それじゃ・・」
「いた!あそこよ!」
射撃の閃光が見えた
「中将!中将の位置から2時の方向距離1800」
「フェイ、リサ来たのか?」
「もちろん」
「テトラXならレーダー干渉システムで完全だったが・・しかしステルスってすげーなホント見えないんだ」
「なに言っているんですか、今燻り出しますから一発で決めてください」
「リサ燻り出すって何にも積んでないじゃない」
「中佐を積んでいるじゃないですか」
「飛び掛れってかぁ」
「行きます、ステルス解除、ターボからラムジェット移行ブースター点火、マッハ7.8をキープ平原突入時にマックスパワー」
フェイルンの体がシートに沈み込む頬は引張られ喋るのも容易ではない
「どうする気?」
リサの目は一直線に敵の位置を見つめている
禾人はSRFの機体を確認するとP9を構えSRFの軸線と直行する位置に照準を定めた
超音速で低空飛行
「ソニックブーム!」
「その通りSRFの最大兵器です」
SRFは地面を切り裂くほどの衝撃波を放ちながら目標目掛け突入
SRFが通り過ぎると禾人の照準器内で小さな爆発が起き敵影が現れた
「壊れたか」
禾人はP−9で敵のコックピットを一発で打ち抜いくと敵機体の動きはストップ
「リサ済んだぞ、C3敵の回収と俺の回収を頼むセラフとDRu20、M63をばらした」
「了解直ぐに向かわせます」
「中佐済みましたって、では一発コークスクリューで帰到します」
リサはフェイルンの悲鳴と共に基地へと帰到していった
「C3探査防衛部隊編成、基地の周りに投入しろ」
「イエッサー」
「この機体XJ1Rか・・ステルスってのも解せん、まあ分解すれば何か出てくるか」
禾人が基地に戻るとX4SにVP1とリニアキャノン、セラフを装着してカーゴバードへと搭載する、更にカーゴバードの飛距離とスピードアップの為4本のロケットブースターが装着された
「お疲れ様です」
禾人はリサが差し出たミネラルウォーターを受け取る
「悪いな、フェイルンは?」
「は・・い・・」
「死にかけているんじゃないか?」
「大・丈夫・・です」
「なれる暇ないかも知れんぞ、我慢して乗れよイザとなったらオートモードが降ろしてくれるが着いたら気絶していて反撃できず蜂の巣ってのは勘弁してくれよ」
「イエッサー・・」
「戦略部の解析待っている間に半田の様子でも見来るか」
リサとフェイルンを引き連れて格闘技場へと向かって行った

オムニ今そこにある危機3 第24話「開演のベルは鳴り響く」

「なんだ屍累々ってか・・」
半田は自然体を保ちグリーンベレーはのた打ち回っている
「神どうだった」
「ほんとに強いな」
「お前は負けるなよ」
「その前に禾人一寸手本見せろよ」
神に促されて禾人が半田と向かい合った
「禾人お前が俺の目を気にするのは仕方ないと思うが見えないほうが最強と言う事もある、それを教えてやるよ」
半田が目隠しをして再び禾人と向かい合う
間合いを計る禾人の額から汗が滴り落ちた
「中将が汗かいてますよ」
「この寒いのに?」
神が言った
「あいつが押されるとは気が凄いんだな」
「中将!」
ジェファニーの呼び声に禾人の手が動いた次の瞬間、禾人の体が反転脇腹に半田の肘が決まって禾人がのた打ち回る
「かぁ〜はっはっはっはーーー」
フェイルンが驚いた
「信じられない」
「ジェファニーな・・んだ・・」
「XJの解析終わりましたのでお連れにきたのですが」
「わかった・・」
「禾人サボっていたんじゃないか?」
「あ・あ・・、一寸ぬるま湯に使っていたようだ・・」
「鍛えなおしてやるよ」
「頼みたい・所だが時間がないかもし・れん・・」
「時間がない?」
やっと禾人の呼吸が直ってきた
「はぁはぁは・・先ほど一機倒してきた、敵の偵察機とまさかの遭遇だ・」
「他のはいなかったのか!」
神が吼えた
「呼び出し食わなかったのかって、此処にいるんだものな・・」
「ああ、でどうなんだ」
「今、探査防衛部隊を編成し周囲に展開さ・せて・いる」
「てめえら!寝ている場合じゃねぇぞ!起きやがれ!総員第一級戦闘配備だ!」
倒れていた兵士たちが立ち上がり次々に走っていく
「頑張れ・よ、さて司令部に行・く・か」
「俺どうしようか?」
「コンテナでも良いし食堂かカフェテラスでお茶ってのも・良い・・ぞ」
「ああそうだ開発部のほうに行って来る」
「良いアドバイスしてやってくれよ・」
「何か役に立てれば良いがな」
「ああ」
禾人達は開発部の前で半田と別れると作戦司令室へと入った
「結果出たって」
「はい」
廻りにはヤオ大将をはじめ佐官クラスが集結している
「XJ1Rのシステムなのですが、SRFのステルス機能と同一の物が使われていました
乗員はジアス」
「もう情報が漏れたのか・・」
「当てにならんな軍のファイヤーウォールも」
「何処から出たのか判ったか?」
「現在調査中です、平原に残された足跡はソニックブームで消されてしまいましたが平原周囲の足跡は健在、検証中です」
「この件は軍総省のほうにどのように報告しましょうか?」
「ステルスの件は直ぐにでも報告して対処をさせよう」
ホットラインを手に取るとすぐさまアイクマン総司令に繋がる
「探査部隊からの連絡はないのか」
「今のところはありません」
「進行を確認したら?」
「敵の戦略部隊進行に備えて私の部隊は第一級の戦闘態勢を取らせた」
「スパイダーはローダーとタンクに区分、出撃体制は整っています」
「シールズは基地防衛に周囲を固めています」
「スコルピオンは何時でも強襲が行なえます」
「禾人どうした?」
「XJの単独偵察一体何を探りに来たのか、カシアス担当地域にジアスが何で?」
「ねらいか?」
「この基地にはAB兵器、核とオムニ麻疹がありますけど」
「あと半田がどれだけの情報を持って脱出したかの確認か」
「ならばジアスを動かしたのは雪人さんですか?」
「ノエル少将敵にさんは要らないだろう」
「はい」
「雪人がジアスまで動かすようになるならば危険が増す、早めに決着をつけるか」
「でもジアスが何で雪人の指示を聞く」
「デビットワイストマイヤー元地球軍大佐が雪人の肩入れをしている」
「ワイストマイヤー大佐かなりの有名人だが繋がりは判っているのか」
「繋がりは判っている」
「どんな?」
「話せば長くなる、それに今は必要ない」
「だがな!」
「まあ待て、理由よりも現在雪人とジアスの繋がりが脅威になると言う事だ」
「ハッ」
神が引いたヤオの一言は絶対なのだ
「本時間から第二級警備体制を取る総員交代で警備に当れ、探査部隊は増員WRフルセンサーで出せるだけ出しておけ以上!」
「イエッサー!!」
禾人が二人を連れてコンテナへと戻ろうと通路へ出た途端肩を捕まれ立ち止まると
「禾人さっきのは何だ!」
「話すべき事話さざるべき事区別はつけている積りだがな」
「その繋がりがわかれば分断も出来るだろ!」
「それを行えるものならもう動いている」
「お前の裏の力を使ってもか」
「無理な話しだ・・」
「だったら俺が動く!」
「動くのだったら神父として動け兵士として動くのだったら失敗する」
「どう言う事だ!」
「じゃあな」
禾人は答えずリサとコンテナに戻って行く
「フェイルン中佐は何か知っているか?」
「いえ何も・・」
神はフェイロンの先程の仕草が気になっているのだ
「大将のあの態度は何か知っているようだ」
「それならば尋ねてみましょう」
フェイルンと神は司令官室へと向かって行った

「フェイは神と大将の元へ行ったのか?」
「はい」
「余計な事を聞いて雪人を殺すのを躊躇ったら困るんだが・・」
「マーク中佐に変更しますか?」
「いやこのままで良いだろう」
「そうですか、私は一寸心配ですが」

開発部では合金の製鋼方法でナミと半田の言い合いになっていた
「だから違うって言っているんだ!」
「MLRの製造方法は有っています!」
「製法があっているだけで出来たら苦労しねえよ!」
「素人の癖に!口出ししない!」
「素人だったら禾人が技術的な偵察に出すわけねーだろ!」
キリカが禾人に電話をかけ半田の素性を尋ねると
「その部屋に半田のオムニにおける合金製鋼技術理論書があったろ読んだ事ないのか?」
「半田ってあのナキスト工大の天才メタルエンジニア!」
「アイツはそんなに凄いのか?」
「兄さん知っていて送り込んだんでしょ?」
「武術が出来て工業大学出以上の技術者を探していたらアイツに当ったんだ」
「そうなの・・で今ナミと揉めているのよ」
「俺が半田に一杯やろう戻って来いって言っているからって伝えればいなくなるぞ」
「判ったわ」
電話を置くと書棚からオムニにおける合金製鋼技術理論を取り出してナミの前に差し出した
「そうよ、この理論書が元でやっているの!凄い人なんだから!私の先輩で合った事はないけれど・・」
「ナミ著者の名前・・」
「半田久弦って・・」
ナミが半田を指差してキリカに向かい確認をする
「まあ可愛いから無礼を許そう」
ナミの顎の当りを指先で持ち上げて
「この仕事終わったらデートしないか1年先でも2年先でも良いから、じゃまた明日」
半田が出て行くとマギーが近寄って
「なんですかあれ!プレーボーイ気取りで」
ナミが赤くなりながら
「何となくカッコ良いわね」
オイオイ・・
「おう、やっと一杯かぁ」
「悪いがつまみはこんな物しかないけど」
カンズメが並べられている全て野戦食である
「酒はこれだ」
禾人はバーボンフロンティアをテーブルに置いた
「良いねぇ、だけどよ大丈夫なのか飲んで第二級警備体制のなかよ」
「構うもんか!飲んでなきゃやってられるかこんな仕事」
「では乾杯は悲しき夢を見続けた男たちにって言うのはどうだ?」
「いいね」
「では禾人と雪人の為に乾杯!」
「俺かよ!」
「決まっているじゃないか」
「あっそ」
二人が再会の祝杯をあげる頃リサはフェイルンを迎えに行っていた

「判ったか二人とも・・」
ノエルが大将の傍に立って二人を見ている
「神父として対応しなければ解決しないと禾人が行った意味がわかりました」
神が神妙な顔をして答えた
「フェイルンこれを聞いて雪人を殺せるか?」
「判りません」
「ヤオ中佐これだけは解かって下さい、情けをかければこちら側に死人が出ます、必ず止めを刺してあげること、禾人さんの時にも有ったけれども自己欲の強い将軍たちの前に曝す事は決っして辞めてください結局軍法会議で銃殺刑なるだけですから」
「フェイルン中佐もし希望するならマーク中佐との交替も可能だ希望するか?」
「いえ・・」
「ならば雪人を抹殺できるな!」
「イエッサー!」
「では解散だ」
部屋から出てきたフェイルンをリサが迎える
「終わりましたか?」
「貴女は聞かなくてよかったわ」
「ベルさんのことですよね」
フェイルンが驚いた
「何で知っているの!」
「中将とお墓参りに行ってきました」
「何時?」
「昨日の朝です」
「そう」
コンテナに帰ると既に虚ろな目でソファーに寄りかかる二人の姿が会った
「なに二人とも飲んで!第二級警備体制なのよ!」
「良い女が帰ってきたぞ」
「フェイ飲め飲め!リサは明日フライトだからダメだぞ」
「私も飲めません」
「聞いたんだろ雪人とベルちゃんの事」
「はい」
「だったら飲みたいんじゃないのか?」
「いえ、そんな気分になりません」
「では戦争が始まったと言うのに敵に感傷的になるガキはサッサと寝ろ」
「ガキって!」
「やめろ酒が拙くなるそれと俺に二度同じ事を言わすな、わかったなヤオフェイルン中佐」
「わかりました中将!」
ドアを強く閉める音でフェイルンは抗議の意を表し宿舎へと戻っていった
「まだ17時じゃ寝るに寝られんじゃないのか」
「頭を冷やさせるには良い」
「私少し心配になってきました、中佐が迷えば・・」
「だから私が連れて行く、ハーディ達をヤオの迷いで危険に曝す訳に行かないからな」
禾人はグラスのバーボンを一気に飲み干す
「一発勝負だ雪人に二度同じ手は通じない、俺がエクトールを破壊してフェイルンが止めを刺せれば勝ちだそれ以外は・」
「敗けですか・・」
「そうだ」
「何か手は有るのか?」
「7.7ミリ、劣化ウランタングステンカーバイドジャケット弾がある」
禾人が一発をテーブルに置いた
「7.7ミリか、薬莢は40ミリガトリングガン用高速重視か」
「まあそんな所だ」
「銃身は厚肉になっただろ」
「重量は増えた、その分機体重量を減らし対応する」
「機体重量って何とかなるものなのですか?」
「まあ昔から乗っているジェット戦闘機は薄いから」
「一寸待ってください、それって装甲の脆弱化ですよ」
「あいつ等の使う陽電子銃に対するデーターがない以上、どんな装甲も意味がない」
「でも設計図があれば予測は付くんじゃないんですか?」
「残念だがあれのデーターファイルは手に入れられなかった、あのライフルのデータは別で厳重だったよ」
禾人はグラスに酒を注ぎながら
「どこかで攻撃データーが取れれば解析して対応策が取れるのだがな」
「鉄板を打ち抜かせて持って帰って来るって言うのはどうですか?」
「材料エンジニアから見れば溶けた鉄板にしか過ぎないよ」
「コックピットを打ち抜いてケーブルから人間の損傷状態まで手に入れないと無理だ」
「じゃあ・・犠牲者が必要と言う事ですか」
「もうナキストで犠牲者は出ているが手に入らん」
「まあ、そのうち何とかなるだろう」
「気の長い事で・・」
禾人がモニターに目を移し
「さて、今の状況はどうなっているんだ?」
「大分探査範囲が広がりましたね」
「一体どの位投入した、基地の守備は良いのかよ?」
防衛指揮室にリサが問い合わせたところ禾人の心配が的中していた
「BDCC(Base Defense Combat Center)、現在の状況報告をお願いいたします」
「侵入者発生、侵入者は2名光学迷彩シートを使用している模様、現在各ルームの遠隔ロック作動中」
「判かりました」
「行きそうな場所は?」
「兵器ハンガーか開発部、中央コンピューターさて何処から当るか」
リサと禾人は防弾服とヘルメットにモーゼルを装着
「それと凍結ハンガーはどうなんでしょう?」
「凍結ハンガーは開けた瞬間に液体ヘリウムが流れ出て開けた人間が固まっちまう」
「一番入り易いのは・・」
「開発部だろう、ハンガ−と中央コンピューターは兵士を多く投入している開発部は手薄だ」
「じゃあ開発部へ行きましょう!」
「だがな目的がそれならば行くと思うが判っていない以上其処だとは言い切れんのだ」
「他に何か有りますか?」
「暗殺、破壊工作,etc」
「でも二人では・・」
「現状確認されてのが二人だけかもしれない、ほかにいると考えておくのも必要だ」
話しをしている3人にフェイルンが合流した
「状況は?」
禾人に変わってリサが説明をした
「酔っ払いがどうするき?」
「やることはやっておかないとな」
開発部室前に来ると既にターガーソンが部下を連れて扉の前に立っている
「おう」
禾人が敬礼をするが敬礼を返さず指で合図をしたビンゴ!
「此処か」
「ナミ達が人質・・」
「ネゴは誰がやっている?」
「大将が直接やっています」
「聞けるか?」
「大丈夫です」
ヘッドホンを耳にあて交渉内容を確認していく
「C4をドアに貼り付けろ」
「え!」
「やるぞ、奴らは死ぬ覚悟だ報告さえ済めば自爆される」
「まだ報告されていないと言う事?」
「単独で通信室を使わせろといっている、シールドが効いているから一寸した無線では通じないのだろう」
シールズの攻撃準備が着々と進んで行く
「中将そんな勝手なことして良いのですか!」
「素人はキリカだけだ後はドールズ、ナミ達が上手くやれば簡単な物さ」
フェイルンが言葉に困った禾人がドールズを誤解している
「あの中将・・」
「まだウダウダ言うのか!」
「そうではなくて、まともに戦闘が出来るのは士官学校を出たエリーぐらいでナミもマギーも技術者として入隊・・」
禾人の目が点になった
「エリーは使えるのか?士官学校出て居たって?今だに下士官て、使えんて言っているのと同じだぞ!」
「肉弾戦は一寸・・」
禾人が頭を抱えた
「ターガーソン大佐、そのまま待機してくれ」
無線を取りフェイロンと打ち合わせをする
「大将、禾人です」
「もう出張ってきたのか、飲んでいたとフェイルンから聞いていたが」
「強行突入を考えたのですが諸事情で出来なくなってしまいました」
「そんなに酔っているのか?」
「いえ、私は大丈夫ですが事情はフェイルン中佐から聞いてください」
「どうする?」
「屋根から行きますか」
「任せよう、交渉で気を惹いておく射殺もやむ終えん頼むぞ」
「イエッサー」
禾人がシールズからC4を受け取った
「フェイ!ファイバーと測聴器、コンクリートレーザーで良いか後ビデオ画像から作った3Dの室内の配置図」
「イエッサー」
配置に着く禾人を追ってファンとハーディがやってきた
「サポート付きます」
「頼む」
「どのようにしますか?」
「屋根を爆破して敵の頭上に落とすと同時にその上に乗って乗り込む」
「屋根の厚さは50ミリ、アルミシールド10ミリです」
「ファンC4を調整してくれ」
「C4よりテルミットで焼き切った方が安全で確実です」
「だがテルミットだと瞬時にぶち抜けん、人質を射殺する時間を与えてはならんのだ」
「しかし・・」
「ファン中佐!海兵隊の信条を述べよ!」
「臨機応変であります!」
ファンは言った瞬間ハッと我に帰るそれを見た禾人が自信を持って言葉を放つ
「任せた!」
「イエッサー!」
先ずコンクリートレーザーで微細な穴をあけるとマイクロファイバーを差込み内部の確認をする
「確かに二人です、ナミ達はこの位置に集められています」
3D模型に人形が置かれたホワイトは味方レッドが敵を示す
「大将が引きつけているうちにこいつらの頭上を落とそう」
禾人の一声にファンが準備を始めたC4を糸状に成型し屋根に貼り付けると更に上から土嚢で覆い指向性をもたせる
「セット完了」
禾人が中心に立つとファン、ハーディ、フェイルンが脇を固めた
「来るのか?」
「もちろんであります」
4人は座り込むと頭から耐爆シートを被り突入に備える
「タイミングは大佐に任せよう、かまわずスイッチを押してくれ」
言うが早いか瞬間の落下、下の敵二人を排除した
「みんな大丈夫?」
ファンが4人の身を按ずるその間禾人とハーディは周囲の確認をはじめた
扉が開き半田達が流れ込んでくる
「片付いた?」
当りを見回すフェイルンの耳に突然の銃声が飛び込んできた
「チィ!BDCCの見落としか!」
総員が伏せ、半田が禾人と並んで座った
「見えないな」
「見えたらあのシートは使えないよ、せめて動いてくれたら周囲が歪むんだが」
「だったら禾人、目隠しをして周囲の状況を確認してみな、お前なら判るはずだ」
「お前が見せてくれたようにか?」
「そうだ、気を使え合気こそ武に最低限必要なものだ」
禾人が目を瞑り周囲の気を感じ始め周囲の喧騒が耳から消えた瞬間
「4人・・そこ!」
モーゼルが火を噴く、見事に一人を打ち倒し残り3人が慌てて動き出すと
「Go!」
ハーディの一声でアサルトの一斉射撃が始まった
ガントレット4対20リンチ状態である、骨を打ち砕き肉を切り裂く銃弾の雨が降り注ぐやがて禾人のホイッスルを合図に射撃を止めた。
「ミンチかよ」
禾人が死体の前に立つ、防弾チョッキは大量の弾を受けきれず打ち抜かれミンチになっている
「直ぐ処理班を呼んで片付けさせろ、亡骸は手厚く葬ってやれ」
「地蔵菩薩の加護により迷える魂を導きたまえオンカカカビサンマエイソワカ・・」
半田が手を合わせて拝んだ
「相変わらず信心深いな」
「そう言えば禾人は改宗したんだってキリスト教ねぇ」
「なんだよ?」
「オムニ大聖堂で式あげる為だけにねぇ」
「悪いか」
「宗教は自分の信念を持たず都合で変える物ではない」
「お前には説教されると思っていた、夢ぐらい有ったって良いだろこんなご時世だ」
「夢か」
「ああたった一つの夢だ」
半田が笑いながら
「そうかさて呑み直そうや」
二人はコンテナに戻っていく後片付けはシールズとハーディ達がやってくれるのだ

「さて、ナキスト防衛線の構築は後半日もあれば完了する」
ブバイ大佐が作戦エリアのマップを広げると雪人が
「次の攻撃目標ですが現在ナキストの原材料等を考えますと、耐熱合金のモリブデン、機体製作のチタンの不足が否めませんそこで二種類を同時に採掘できるアスクル鉱山の占領が必要と考えます」
「戦力投入はどうする?」
「占領には私とナギサ大尉二人で十分と考えますが、占領後の防衛には数が要ります其処でジアースの部隊投入を・・」
「判った土田中佐、カルツォ−ネ中佐サポートに入るように」
「イエッサー、ワイストマイヤー少将!」
「雪人1万2千では何かと不便だろう、ジアースは全面協力する」
「構わないのですか?」
「オムニ地球軍に話しは通した、こちらの監視と助成は私が取る事になったよろしく頼む」
「こちらこそ」
雪人は身を正して敬礼し敬意を示す
「所でこちらが新しい恋人か?」
ワイストマイヤーは周囲を見回しナギサを指して雪人に尋ねた
「いや・・その・・」
ナギサも赤くなっている
「ベルが死んでもう23年になる、妹を思ってくれるのは兄として嬉しいがお前が早く結婚した方が妹は安心する、まあこの戦争が終結したら早い時期に結婚するといい」
笑いながらワイストマイヤーはブリーフィングルームを出て行った
「雪人、ベルさんて一体誰なんだ?」
ブバイが雪人に尋ねると雪人は一寸悲しい顔をしながらも張りの有る声で答えた
「私が地球軍に移るきっかけを作った、恋人です」
ブバイは最近の雪人の変わり方に驚きを隠せない
「雪人、落ち着いてきたか」
「ワイストマイヤー将軍と再会して色々話しているうちに何となく・・」
「智将復活か」
「私は智将と呼ばれるほどの智はありませんよ」
ブバイは落ち着いた雪人に威圧感さえ覚えたのだった

「さて、如何した物か・・」
禾人は腕を組み作戦テーブルのナキスト1500Kmエリアマップを眺めている
「何だ、殺るんじゃないのか?」
「後の問題だ、相手が二体で此方も二体なら勝機はあるが、乗り込んでもアスクルからナキストは1100K我々の基地のあるホーリーウィングからは4500K何を意味するかわかるだろ」
「増援部隊の到着時間か・・」
「そうだ、失敗したら袋叩きに合う」
「前以って増援部隊の準備をしておくことだが、謹慎中のお前は動けん代わりにノエルに準備をさせるか?」
「あいつに喋ったら最後、俺の出張る前にアスクルを完全武装都市にされてしまう」
「それでもいいじゃないか」
「良いわけ無い、幾ら武装しても兵器が違う以上アルガ、アルガ2の同時投入をされたら勝てる可能性は減少するだろう、戦死者の予想がつかんのだ」
「やはり最小限で防衛をするか、と言ってもお前は出られんだろう」
「オムニ独立軍土田禾人は後5日は出られんが、緊急事態省安全保障局武官土田禾人に制限はかけられていない」
「悪知恵ばかり働きやがって」
「はなっから謹慎など従うつもりは無い、緊急事態省安全保障局としては如何してもエクトールの詳細戦闘データーが欲しい」
「仕事熱心だな」
「あまり良い仕事じゃないがな」
「そりゃそうだな」
「ハハハハハハハァ」
「ハハハハハハハハハハァ」
笑いの止まらない二人しかし、何故かその目には涙が浮かんでいる
二人は判っていた今回の件が開演ベル、そしてゲートインを済ませたメンバーは終戦と言うゴールを目指して笑う事も泣く事も許されず走り出さなければならない事を

オムニ今そこにある危機3 第25話 「OVER DRIVE」

ナキスト陥落から三日が経った、その間に地球軍はエクタスを大量投入して戦略拠点を的確に占領していた
「ハァァァァ!!!」
半田とヤオの腕が交差、半田の体が宙を舞う
第二撃、鞭のように撓る半田の蹴りがヤオを直撃
「すげえなぁ」
禾人が頭を振った
「中将」
リサである禾人に近づくと耳打ちをする
「ホライゾンレーダーにガルバルディらしき映像を捉えました、移動経路から目標はアスクルと推定しましたが如何致します?」
「奴らの到着予定は?」
「40分後です」
「フェイルンは大丈夫か?」
「はい問題なくこなせるレベルには上がっています」
「リサ、フェイルンに搭乗して置く様言ってくれ、カーゴバードスーパーブーストなら25分で着ける迎え撃つか乗り込むかは、此方の準備次第で決まると言っておいてくれ」
「判りました」
「指令!」
禾人の一言で二人の動きが止まった
「禾人良い所で止めてくれた、私も年だ着いてゆけんよ」
半田に向き直ってヤオが負けを認め、その力を称えた
「半田君私の負けだ、父上以上の良い武道家に成れるな」
その二人の会話を遮って禾人がヤオに自分の出撃を伝えたところ帰ってきた答えは
「謹慎中に出撃だと!絶対に許可は出来ん!」
禾人には判りきった答えだった、それに対する答えは決まっていた
「緊急事態省安全保障局武官土田禾人としてバックアップを要請いたします」
「その手があったか!」
ヤオの顔が変わった
「仕方ない!許可する!」
「緊急事態省を代表して感謝いたします」
「ぬかせ!」
憤怒のヤオに対して笑顔の禾人、大きく息をするとヤオが禾人に尋ねた
「判っているのか」
「タウンアスクル、モリブデンとチタン鉱山の占拠が目的でしょう」
「どうしてだ?」
「ナキストの在庫では機体やジェットノズルの材料が足らないのですよ」
「兵隊には解からん情報を集めたと言う事か」
「その為だけにある私の力です」
「ノエルにバックアップを出させるが4500kの距離は容易くないぞ」
「雪人の首だけが目的ですから、首取ったらフェイルンを逃がします保護してやってください」
「お前はどうするつもりだ」
「あいつ等が付けた大魔王ルシファーと言う渾名の通り動いて来ますよ」
「そうか・・禾人私から唯一命令をして置く死んではならんぞ」
「イエッサー!!」
禾人がカーゴバードへ向かって走り出す、ヤオは緊急招集をかけた
「アスクルですか?」
「此れがデータだそうだ」
テーブルに投げ出された書類に目を通す
「よく集めた物だ」
書類の端がマジックで消されていた
「マフィア系のデーターですね」
「我々には集まらん予測データーか・・」
「それも3日も前から解かっていた」
「相変わらず底が知れない人です」
「貴女を大統領官邸に呼び出したときからですか?」
「そうです」
「アスクル住民に退避勧告を出しておけ」
「イエッサー」
作戦司令部内にオペレータの声が響いた
「中将でます!、カウントダウン!5・4・3・2・1・0!カーゴ1号2号3号シュート」
「フェイ!大丈夫か!」
「何とか!」
強烈なGに体が軋む
「まだ甘いが行けそうだな、此れから使うかもしれないアサルトは此れの2倍のGがかかる覚悟しろよ!」
「サー!」
「CCR3号は低空で侵入させろ!」
「イエッサー!」
「リサより中将へ」
「どうした」
「此方の到着はカシアス侵攻から30秒後アスクルの上空三万Mになります」
「解かった」
「迎えに出ますのでアスクル簡易空港の確保よろしくお願いいたします」
「簡易空港って」
「C559なら3時間20分で迎えにいけます」
「3時間20分2機では持ちこたえられん」
「大丈夫、私たちがサポートに出ます」
「ファン、出られるの?」
「30分遅れで着くわ」

「カーゴ4番から18番の準備急げ!」
「大佐出られるんですか?」
「ハイ腕が鈍っていなければいいのですが、ジアス相手なら負けません」
「対ステルスシステムSRF−2準備完了!」
「アヤセ出ます」
SFR−2フルブースターでオムニシティ上空に置いて空中給油をし約50分
カーゴノーマルタイプは45分、スクランブルと言うには距離のありすぎる場所だ
「ブースターアウト!」

「此方に向かって接近する物あり、基数3機」
「一体なんだ」
「禾人が出てきたのでしょう」
「流石に気がついていたか」
「増援が要りますね、全てで3機と言うことはありえませんから」
「ジアス部隊が遅れず到達すれば制圧は可能だな」
「我々が禾人を倒せればですが」
「勝自信はあるんだろ」
「あります」
「降下まで5分です」
「残りのアルガが回れれば問題なかったが、1500Kの輸送路構築で出さなければ成らなかったのは計算外だった」
「では!」
雪人とナギサがエクトールに搭乗する
「降下!」
着地寸前にジェット噴射
「誰も居ないようですね」
「どうしたのでしょう?」

「行くぞ!」
「ラジャ!」
カーゴのカバーが開きX4とX32が降下を始めた

「高度三万に敵影接近中!」
「了解、ナギサ対空射撃」
「サー」

「ルシファー作動」
「セラフ作動」
2機が高速で降下を始めた

「早い!」
対空射撃が間に合わないのだ
更に低空進入してきたカーゴバードに気を取られた

轟音を響かせて2機が着地した
「さてホバーを3号から切り離して呼ぶぞ」
「市街戦ですか・・」
「得意じゃないとか言うんじゃないぞ」
「ドールズ自体市街戦は少ないですから」
「理由にならんな」
やがてホバーがやって来るとその屋根に足を固定する
「長物は使えんぞ、PLD−P226を使え」
P−9をホバーの銃座に固定するとPLD−P226を手にした
PLD−P226禾人が気にしていた短銃である
突然のアラーム
「敵接近!」
ホバーのジェットが唸りを上げた
「何処だ!」
「右上方!」
「ファランクス!」
右肩にセットされた独立攻撃システムファランクスのスイッチが入れられた
左肩の7.7mmバルカンのカバーは未解放のままだ

「ナギサ!避けろ」
自動追尾のファランクスが対空射撃を始めたのだ
「迂闊に上にはいけませんね」
タウンと言ってもオムニを代表する鉱山であるビル群が1.5キロに渡り続いている
「ビルの間からの射撃になります」
正面を切って戦えば6mのPLDに対して16mのGEAR、標的に成り易いのだ
「スピードでは負けませんけれど兵器の射程は相手の半分では勝負になりません」
ナギサがミサイルを放った
ヤオがリニアキャノンでミサイルを打ち落とした
「良い腕のパイロットが乗っているようですね」
「どうしましょう」
「二人で16発のミサイルがありますが、市街戦では障害物があり過ぎてミサイルはあまり有効ではないですね」

「すれ違うぞ!」
P−226が火を噴く
「チィ!」
機体をかすめた

「拳銃ですか?」
「機動性を考えると市街戦には良いでしょう」

禾人は対空プローブを雪人側の通りへと投げ込む
「フェイルン!2ブロック先の通りに移れ援護する!」
「イエッサー!」
カーブを曲がろうとしたフェイルンが大きく滑った
「バッキャロウ!サイドスラスターとジャイロを正確に使わんか!」
「すみません!」
「実戦だぞ!」
フェイルンの機体をビームがかすめると空かさずリニアが火を噴く

「良い反応ですね」
「ナギサ援護しますので1ブロック先の通りに移ってください」
「了解」
4つの通りに4機が併走する形になった
「敵15機、25分で到達します!」
「ジアスは?」
「C559であと40分かかります、アルガ2も移動を開始30分で到着予定」
「解かりました」
「何とか耐えます」

「CCRよりジャッカルへ」
「こちらジャッカル1どうした」
「ホライゾンレーダーに高速移動中の物体をキャッチ、エクトールと断定其方に30分後到達、並びにC559が移動中」
「ジアスか」
「こちらの増援シルバーフォックスは25分で到達できます」
「支援砲部隊は?」
「陸軍に依頼してあります35分後射程距離に展開」
「解かった、さて雪人を仕留めるか」
禾人はプローブを使って雪人と速度を合わせ始めた
お互いビルを楯に使い隙間からの撃ち合う、エクトールの機動性とポジトロンガンを禾人は警戒し、ファランクス並びにP−9の射程距離と速射性を雪人は警戒膠着状況に陥っていたがしかし、此れは禾人の狙っていた状況だった、77バルカンのカバーが外されると
「さて雪人永眠の時間だ」
ビルを挟み雪人の真横に並ぶとトリガーを引く
「なに!」
7.7mmがビルを貫きエクトールのチタンC60コーティングを撃ち抜く、数発がコックピットを襲った
「ウッ!」
一発が雪人の太ももを貫通し兆弾となって腕まで打ちぬいたのだ、更にエクトールのエネルギー系を破壊して動きを止めた
劣化ウランタングステンカーバイドジャケット超硬高速貫通弾、ビルを撃ち抜きエクトールを破壊する為だけに製作された弾丸である
「フェイルン!今だ!破壊しろ!」
フェイルンがエクトールの前に立ちリニアキャノンを構えた
禾人が十字を切る
エクトールのコックピットが開いた
「さあやれ!オムニの兵士よ!」
雪人がその姿表して叫ぶその足には止血の三角巾が痛々しい
X4のコックピットが開いてヤオが立ち上がりヘルメットを取った
「女性兵士か、情けは要らん早く撃つが良い」
天を仰ぎ目を瞑った
「・・」
フェイルンに涙が浮かんだ
「雪兄ィ・・」
「!」
「私が判る・・」
「まさかフェイルンか・・」
「うん・・」
「フェイ!止めを刺してやれ!」
「ダメ!出来ない!」
「なに!この期に及んで!・・!」
禾人のX32をビームが直撃、フェイルンに気を取られすぎたのだ
禾人の無線が途絶えた、ビルの谷間から倒れこんだX32の足がはみ出している
「確認に向かいます」
「フェイルンどうする撃つなら今だぞ」
「雪兄ィ帰ってきてお願いよぉ」
泣声で訴えかける、フェイルンに戦意は残っていなかった
爆発が起こった禾人の機体が有った所からだ
「禾兄ィ!」
粉塵が濛々と立ち込める
「機体の確認に向かいます」
「解かった」
フェイルンから目を離さずマイクに向かって話した
周囲を確認しながら足の出た道路を覗き込む
「ハァ〜ハァ、機体上部の破壊を確認しました」
「やりましたか、機体の状況は」
「上部跡形も無く」
「跡形もない!気をつけて!」
その瞬間エクトールに向けて射撃が始まった
ナギサの悲鳴が響く禾人のP−9が乱射されている
「へい!お待ち!」
禾人は腹部ジョイント部をTX48で爆破、上半身でビルをよじ登り射撃位置を取った
当然足が横たわりその先の道路に上半身がある考えになり下ばかりに目が行く物である、それを逆手に取ったのだ、後頭部にコックピットのあるX32ならではの荒業である
「チィ!しくじったか!」
「こちらナギサ、ガリバルディ移動司令部」
「ガリバルディ感度良好」
「ナギサ機ジャイロ・射撃システムダウン、雪人機は完全停止」
「わかった2分で回収に行く」

「フェイルン!」
「ダメ出来ない!!」
「今やらなければチャンスは無いぞ」
「雪兄ィ投降して・・」
「お前や兄貴、ノエルに討たれるなら悔いは無いがオムニのクソ将軍どもに銃殺などされて堪るものか!」
「雪兄ィ・・」
「後5分でハーディ達が来る!雪人を押さえ込め!」
返事が返ってこない
「回収開始します、牽引ビーム照射ナギサ機の回収固定作業開始」
ナギサの機体が引き上げられ後部格納ユニットに固定された
禾人は無駄とは知りつつP−9をガリバルディに連射する
「フェイルンじゃあまたな」
「雪兄ィ!!!!!!」
「雪人機回収完了」
「雪人をすぐ医務室に連れて行け!」
「イエッサー」
雪人は全治2週間骨には異常なし

「畜生!!」
ヘルメットを叩きつけ禾人は降機し、ウィンドの割れた誰も居ないハンバーガーショップに入ってコーヒーとハンバーガーを手に取る
「ハンバーガーとコーヒーで1ドル25セントか」
禾人がポケットから小銭を取り出しカウンタ−に置くと椅子に座りハンバーガを齧りコーヒーを飲みだした
「中将!中将!」
「何が中将だ・・」
フェイルンの呼ぶ無線に出る気にもなれない
「やはりムリだったな・・」

「高速展開急げ!」
ハーディ達の到着である
「ファン!北側ゲートを塞げ!ジュディは4人を連れて北壁から狙撃の準備!WRを忘れるんじゃないぞ!」
「サー!」
「フェイ!中将は何処にいる?」
「解からない・・」
ハーディはフェイルンの力のない返答に一瞬呆気に取られた
「お前は、ファンの指揮下に入れ!」
「サー・・」
「こちらミノル、敵部隊と交戦C559を2機撃墜したが2機撃墜出来ず其方に向かった現在FK17Cと交戦中」
「解かった」
禾人を探し回るハーディ、やがて腹部で破壊されたX32を見つけると降機して禾人を探した
「此処でしたか」
「展開は終わったのか?」
「はい」
「そうか、悪いが俺の機を空港に運ぶあそこに置いたホバーに積んでくれ」
「イエッサー」
「リサの559が到着したら総員撤退だ時間合わせさせておけ」
「撤退ですか?」
「ほかに救援予定があれば別だが」
「支援砲部隊の展開があと10分で完了予定です」
「郊外に落とすなら遠慮は要らんが市街地に落とすなら最小限にしろ住民の生活がある」
「イエッサー」
「敵接近中!エクトール2機、距離3000」
「支援要請!アスクル北壁から北へ2500」
「支援砲部隊展開中、射撃開始までまで5分」
「ラジャ」

「ゲートを閉めたのか」
「なめられた物ねぇ防げると思っているのかしら」
「あんなゲート吹き飛ばしてやる」
接近しなければ爆薬も仕掛けられない
「カワサキ中将スーパーポジトロンライフルの使用許可を」
「まだ試験段階だぞ」
「テストを兼ねて使用をお願いいたします」
「許可しよう」

ガリバルディからポジトロンライフルユニットが落下された
ライフル部とジェネレーター部から構成されかなりの大きさが確認できる
「何かしら?」
「ミチコ!WRの望遠カメラで見える?」
「ライフルみたい?」
「ライフル?」

「クーリングユニットマックスドライブ、ジェネレーター及びサイクロトロンドライブ、バレルクーラー作動ペルチェファンマックスドライブ」
「ジェネレーター臨界突破、サイクロトロンマックスドライブまで20秒」
「ターゲートスコープ」
スコープの中でジェネレーターのゲージが上がっていく、既に照準はロックチャージまで10秒を切った
「カウントダウン5・4・3・2・1・0」

「高エネルギー接近!」
強力なビームがゲートを直撃、瞬時に蒸発させ更に北壁に亀裂が走った
「緊急点呼!ミチコ!」
「サー!WRオールグリーン」
「ジュディ!」
「サー!X4SグリーンP−9バレル溶解放棄する」
「ミリー!」
「アーイ!VP1電子走査破損」
「アニタ!」
「サー!X4オールグリーン!」
「来るわよ!」

「チィ!1発でジェネレーターが焼切れるとは参ったな」
「試験機だから」
「さて、城壁上の馬鹿どもも降りたし、乗り込むか」
「行きましょ」

「先程の衝撃波は何だったのだ?」
「ファンに報告させます」
ファンの報告にハーディが声を荒げた
「なに!どうなった!第二波は!」
「どうした?」
「ポジトロンキャノンが完成していたようです」
「参ったな・・WRの偵察画像は送られてきているか」
「はい」
「このライフル放置されたままか?」
「そのようですね・・やりますか?」
「ハーディお主も悪よのう」
「中将ほどではありませんがねぇ」
二人の意見が一致した、かっぱらう!
「アリスにホバーの砲手を頼むこっちに来る様に言ってくれ」
「サー!」
禾人は自機を空港に下ろすとホバーの操縦席に腰を降ろしハーディの搭乗したX4Sを載せた
アリスがやって来て砲座に着く
「支援砲第一波は終了したよな」
「はい」
「半径6Kにスモーク展開要請しろ」
「ラジャ!」
「こちらリサ3機で急行中到着まで30分!」
「早いじゃないか!」
「エアベース1までSRFで来ました、土田空軍指令がC559にブースターを付けて用意してくれました」
「判った、こちらも面白い物を土産に出来そうだ」
「総員!時刻合わせ!30分カウントダウン開始!」
「ラジャ!」
「さあやるぞ」
禾人の掛け声で走り出すホバークラフト
「そりゃ!エアードリフト」
横滑りをさせながら町の大外を周り北ゲートへと向かっていく
既にエクトール2機は町の内部に入りドールズと戦闘状態になっている
「ドールズは市街戦に弱いようだな」
「そうですね、近接射撃訓練は不十分でした白兵なら負けませんけど」
「16m対6mでは勝負に成るまい」
「確かに」

「一機郊外に向かっています」
「郊外?」
「止めろ!ウッ・・」
雪人が痛みを堪えて叫んだ
「ライフルを・・狙っている・・」
「あれを奪われる訳には行かんぞ!」
「ジアスはライフルの保護に当ってください」
「判った」
C559からジアス軍が飛び出しライフルの周りを固めたその数12機
「ハーディ!6機殺れるか?」
「任せてください、降機します」
「アリス!6機仕留めろ」
「中将次第ですよ」
「任せろ!」

「12対2なら負けまい」
「なら良いのですが・・相手が誰かわからない以上更なる警戒外必要です」
轟音と共に一機が破壊された、ホバーキャノンの餌食になったのだ
更にハーディのリニアキャノンで一機が破壊された
「慌てるな見えている以上此方にもチャンスがある確実に狙え」
ジアスの将校は落ち着き指示を出していたが目の前が一気にホワイトアウトすると慌て出した
「支援砲遅いなぁ」
「回避運動していましたから次弾射撃に時間がかかったのでしょう」
ホバーのタービンで更にスモークが拡散する
「ハーディの位置は判っているな」
「はい」
「ハーディ閃光弾をあいつ等の裏へ打ち込むぞ!」
「ラジャ!」
閃光弾数発が敵の後部に落ち発光を始めるとスモークに敵の影が映し出される
「此方からは丸見えだ、エクトールが来る前に片付けよう」
影に向けて乱射が始まった
敵のミサイルにはチャフで対抗
ホバーがスピードを上げてライフルに近づき奪取にかかった
「アリス目を回すなよ!」
「何をやるんですか!」
ホバーが高速で回転、周囲の敵の確認に当る
「中将!45度で固定してください!敵影砲撃します!」
禾人が機体を固定するとアリスは空かさず砲撃で敵を沈めた
「ハーディ!すぐにライフルとジェネレーターを積み込んでくれ!」
禾人はある誤算をした
「重いな」
「大きさもかなりあります」
「ハーディ!乗れるか!」
「ムリです!機体放棄します!2分後に爆破します」
ハーディがホバーに乗り込んでヘッドホンをつける
「ご苦労」
「フォックスリーダーより全部隊へホバーの援護に当れ滑走路に向かう」
「ラジャ!」
「リサ!後どの位だ」
「3分です、ただし滑走路上視界不良」
スモークが滑走路まで及んでいるのだ
「リサなら大丈夫だろ」
「任して置いてください!」
「ホバーと俺の32を積んだら直ぐに飛びたて!」
「ラジャ!」

「ホバーの撃破を優先しろ!」
「判った」
エクトールが飛び上がりホバーの行方を捜し始める

「マーク!」
両用弾頭を積んできたのはマークだけだった、慌てて出た為何時ものように対地弾頭を積んできたのだ、エクトールが飛行できるのを考慮していなかった
「ロックオン、ファイア」

「小癪な」
AMMを発射、ミサイルを打ち落とした
マークの第二射も撃破された
マークは空かさず対空射撃を始めた
「何処撃ってんだか」

「なにやっているの!無差別に撃ったって無意味でしょ!」
フェイルンが叫ぶ
エクトールの前方50mに打ち込んでいるスモークの影響で無差別乱射に見えるのだ
「良いのです、時間を稼げば」
「弾幕を張って行く手を阻むのね」
ファンが更に射撃に加わった
「フェイ!もう一機を探して」
「判ったわ」
ホバーを持ち込んだのは禾人とフェイルンだけ
汚名返上を賭けて高速で動き2機目のエクトールを探す、自分が呼んでも禾人が答えない禾人が激怒しているのが手に取るようにフェイルンには判っていた
滑走路ではC559に32が積み込まれている
「此れで済んだわ」
フレデリカは搬送を終えると輸送機の警備に移った

フェイルン目掛けビームが走った
「なに!」
スモークが思わぬ効果をもたらした、ビームの減衰である
「チィ!ガンにパワーを廻さねばならないか」
ビームのパワーを上げる為、エクトールのバーニア出力を押える
「あそこか」
スモークを巻き上げ走るホバークラフトを一機のエクトールが追跡し出す

「此方には来ないな」
禾人のホバーは出来るだけ大外を回り滑走路へ向かう
「フェイルンのホバーが囮に成っているのでしょう」
「兵士としてそれぐらいはやって貰わないとな」
禾人が冷たく言い放った
「もう一機居るはずだ、ハーディ、アリス、索敵に全力を尽くせ」
「イエッサー!」
スモークの影響で視界200m
「チャフ入れてなくて正解だ、レーダー効かなくなったらおしまいだったな」
「あと2キロで空港ゲートです」
「逃げ切れるか?」
「無理な様ですよ」
レーダーには巨大な影が映し出されていた

続く