オムニ今そこにある危機−2

10月10日 AM1:00 オムニ アルゼン空軍基地 戦略空軍空挺ミサイル大隊

風こそ無いが強烈な雨が降りしきる暗闇の中、爆撃機格納庫のマンホールの蓋が静かに開く、黒い三つの
影が音も無く飛び出した。
「中佐こちらです」
格納庫の隅より現れた二つの影
「上手く配線切った様だな」
「ハッ」
五つの影はある爆撃機の前で立ち止まった、一人の男が
「カルツォ−ネ中佐.、約束の物を」
「そうだな」
刹那、手を出した男は後から羽交締めにされ口をふさがれた、もう一人の男はカルツォーネの傍らによる

「すまねーな、金で裏切る奴は信用ー出来ねーだよ、おれか?おれは地球移民のまだ2世でな地球の為だ
我慢したんだぜかなりよ」

銃のさきにサイレンサーを取り付けると男の眉間にあてがい引き金を引いた

「中佐サー行きましょう」

三人は爆撃機に乗り込み機関士は、エンジンの低速回転によるエージングを行なう
エンジンの温度を見計らい格納庫の扉を手動で開ける、静かに出来るだけ静かにそして、素早く
一気にエンジンをマキシマムに上げ格納庫から爆撃機は滑り出す、一斉に鳴り出すサイレン
武装兵士が銃を連射する、装甲車が後を追い機関銃を放つ!だが遂に爆撃機は離陸した。

「なんだ、何事だ!」
「中将!爆撃機 B−3、機体ナンバー111が奪われました!」
「なんだと!」
慌てて格納庫に行き確かめる、一人の兵士の亡骸が有るだけだった。
「航空部隊に連絡!撃墜させろ!」
「ホットラインで軍総省、土田空軍司令を!!!」

やがて機は、晴れの区域へ出ると
「さてカルツォーネ中佐、防空軍が上がってくるころですが」
「デコイがやってくれる」
カルツォーネが下を見るとほぼ同じ大きさのジェット機と高速戦闘機が飛んでいる
「レーダー高度以下に下げるぞ、うまく入れ替われよ」
三機は上手く高度を入れ替えた、
「これからが見物だ、一寸驚いてもらおうか」

ジェット機の下にいた高速戦闘機が吹き流しを出し、やがて徐々に後方へ下がって行く

「中将!大変です!敵が弾道ミサイルを発射させています!」
「なに!!!」

レーダーに映される機体その機体の影が伸び出し、やがて二つに分かれた一つは高度をグングン上げていく
もう一つは空中で突然消滅した。
「こちら防空軍スクランブル01、目標の機は空中で爆発、目視確認した、今後の指示を待つ」

「こちらアルゼン空軍基地了解」

「中将スクランブル01の指示をお願いします。」
「スクランブル01に破片の確認を・・・・・」
「スクランブル01破片の確認をお願いします。」

「01了解」

「弾道弾はどうした?そろそろ大気圏を出る筈だが」
「それがおかしいんです。大気圏内で水平飛行に入りました、弾頭の大きさは合うのですが、飛行速度が遅
いんです。」
「まさか!01はどうなっている!!」

「こちら01、破片の形状を確認した、墜落したのは輸送機の様だ、胴体が爆撃機にしては太すぎる、それか大型旅客機だ」

「やられた・・・・うばわれた・・・・」
この大隊司令官 ジェノバ中将は崩れ落ちた。

「小杉中尉、君を歓迎する。」
操縦席より振り向きカルツォーネは握手を求めた

オムニ今そこにある危機−2 第一話 もう一つの顔

あれから100日が経過しようとしていた

巨大な滑走路を背に3隊合同の朝の訓練が行なわれている

「ハァ!ハァ!ハァハッァ!」
「ハァ!ハァ!ハァハッァ!」
「ハァ!ハァ!ハァハッァ!」

240名の突きの訓練、映画少林寺を彷彿とさせる景色だ、禾人は窓辺より離れ木人に向かい合うと打ち込みを
始めた、ヤオ教官が昨日相談に来た、「特別訓練に参加してくれ」と言う言葉に、はしゃいでいるのである。
中将になったからと言って訓練を休んだことはない、ただ自分と戦闘訓練で戦ってくれる相手がいなかった
3対120の要塞防衛訓練、禾人の戦闘本能が歓んでいるのである。

「集合!」
突きの練習に広がっていた隊が集まり整列する
「気を付け!!」
段上にヤオ教官が腕を組んで立つ
「本日の早朝合同訓練を終了するが、今日は夜間特別合同訓練を実施することにした、私が就任して100日、君たちの訓練結果を試してみようと思う、内容は120人による要塞の防衛、攻め込むのは私とノルン少将、土田中将の3人、君たちは私たちの侵入を確認後無線で連絡、90分間防衛すれば良い、21:00作戦開始とする、各隊長は人選の為作戦室へ集合その他の者はいつもの訓練を以上解散!」

「ヤオ中佐」
「なにセルマ?」
「たった3人に120人じゃ話になりませんよね」
「そうね、でもお兄ちゃん達の実力は、解らないからちょっと気を付けないと痛い目見るかもね」
「そうですか?」
等と言う話しがあちらこちらから聞こえてくる中、ヤオフェイロンは基地内へと入っていった。

「禾人」
「ハ!ヤオ教官」
「今夜の演習は、派手にやれそうだな」
「はい、久しぶりに楽しめそうですね、私が60、教官が40、ノルンが20てとこですか」
「良い読みだ、しかし私が60かも知れんぞ、いま人選で言っていたが三人相手じゃ物足りないそうだ」
「いや120じゃ物足りないでしょう私たちが。」
「違いない、読み違えるとどれだけ痛い目にあうか、わからしておく必要が有るな、死なせない為にも」
「はい・・・」
禾人が話そうとした時、空軍ホットラインが響いた
「土田です」
「禾人、直ちに軍総省の空軍司令部まで出頭しろ緊急だ以上!」
ガチャン!受話器の向こうでかなり大きな音で響いた。
「禾人何だ今の電話は?」
「くそおやじですよ。直ぐこいとか」
「そうか、お前のおやじが一番呼びたくないお前を呼ぶなんて、何か非常事態でも起きたかな」
「一寸行ってきますよ。」
「21:00までに戻ってこなかったら先に始めてるからな。」
「そうですね、お楽しみを逃したくないが仕方ないですね。」

「ハーディ大佐私の戦闘機を用意させてくれ、これより軍総省に出頭する」
「わかりました直ぐ準備させます。」
「頼む」

「禾人時間どうり帰って来いよ、私たちだけ楽しんでも仕方ない」
「でも2回目の方がおいしいかもしれませんよ、油断の無い分」
「では!」
「ああ、気を付けて行って来い」
服を着ていなければどちらが中将で部下か解らない光景だ。
やがてパイロットスーツに身を包み禾人が滑走路に現れる
「中将、用意完了しています。」
メリサがジープで滑走路の端まで送っていく
「あ?俺の機じゃないな?最新鋭偵察戦闘機SRF−2か?」
「ハイ!この前来たばかりの凄い奴です」
ふと声の方を見るとリサがパイロットスーツで立っている
「お急ぎのようなので私がこれで送っていきます。」
乗り込むとすぐさま離陸一気に高度を上げていく
「高度1万!」
「ホォー凄いな、1分弱か」
「何とも無いんですか?」
「ああ、何でだ?」
「何でもないです・・」
「この前のお返しか?残念だなマッハ6程度じゃ大丈夫だ、ガタイがでかい俺ならGに弱いと思ったか」
「ははは・・・」
「リサとミノルぐらいだろこの機体乗れるの、体の小さい方がGに強いからな」
「ちょっと気になりますね今の言葉!」
「気にするな、ガタイがでかい俺から見ればパイロット向きのおまえ達が羨ましい」
「最高速度で総省まで行きます。」
「なあ、リサちょっと変わってくれよ」
「え〜だめですよ」
「いいだろ、後3時間まだ飛行時間足りてないんだ」
「チョットだけですよ」
「あぁ!」
「You Have Control!」
「I Have Control!」
操縦の引継ぎを行なうと
「ヨッシャ!行くぞー間欠泉アタック!!!」
「イヤァ〜〜〜〜!!」
この後リサがどうなったか言うまでもない

「今日の夜間訓練各隊の人数割りは、ドールズ18+2、スコルピオン50、スパイダー50で計120名」
「ちょっと待って、ハルゼー大佐、何でうちの隊は18+2なの?」
「ヤオ中佐聞いていないのか?タカス中佐の隊が抜ける分、ニューランド大佐とイグナチェフ中佐が加わるって」
「全然、ハーディはともかくとして何でエリオラが!」
「チョット本気で格闘してみたくて」
後ろからハーディとエリオラが現れた
「たまには良いだろフェイ、身体が訛ってしょうがない、フェイのお兄ちゃんが総て基地の仕事、押し付けてくれ
るからな」
「お兄ちゃんですか?我々も馴れましたが、ちょっと作戦会議中は止めてもらえませんか」
「土田中将の昔のイメージが無くなっていきます。」
「私が幾ら言ってもフェイは直らないな!」
「でも今のうちだけでしょう、実戦になったらお兄ちゃんなんて中将は呼ばせないはずです」
「では今日の作戦は、ニューランド大佐の指揮で行ないたいと思いますのでヨロシク」
「私が何でだ」
「あなた達の実力を見てみたい」
「解った、では作戦を組むとしよう、その前にスコルピオン隊でブラックスコルピオンと言う命知らずの小隊が
有ると聞いたが隊長は」
「ハーディ大佐その様な隊は存在しません」
スコルピオン隊指揮官が答えると、ヤオが
「私も聞いたことがある、禾人兄ちゃん直轄の部隊でかなりダーティだって」
「有りません!私の知らない隊が有ってたまるか!中将が大隊の実質の隊長であっても!レッド、ブルー、グ
リーン、クリアー、シャドーの5隊のみです。更に言うならレッドが突入制圧隊、ブルーが航空隊、クリアーが
ローダー、グリーンが戦車隊、シャドーが狙撃隊です」
「ならば今回の作戦は、レッドとシャドーが出るのかな?」
「いえ各隊の兵は総て経験してますし、ローテーションを組んでいますので、各隊から人選します。」
「解った、スパイダーも同じと考えて良いのですね、ジェファニー中佐」
「ハイ構いません。」
「では各隊の分担に着いて決めよう」
作戦会議が始まった。各司令との真剣勝負だ!

「中将!」
「何だキム大尉」
「約束が違いますチョットだけって言ったじゃないですか!」
「たかだか3分じゃないか」
「長すぎます!さて中将着陸しますので!」
エアブレーキを掛けながらSRF−2が着陸する、リサはタッチダウンと同時にリバースを入れ定位置で停止しさ
せた。
「さてリサ、君はティルームで待ってるか?それとも総省の私のオフィスが良いか?どっちにする」
「ティルームで待ってます、誰か知っている人いるかもしれないし」
「そうか、では行ってくる」
「ハ!」

軍総省の執務室でパイロットスーツから第一種制服に着替えると空軍司令官室へと入っていった。
「来たか!」
「ハ!」
敬礼をする、司令の傍らにはジェノバ中将が佇んでいた。
「挨拶は後だ、お前を呼んだのは他でもない、ブラックスコーピオンに頼みごとがある」
「ジャンに」
「ああ!」
「司令、なにをそんなに焦っているのですか?我々を使えば済むのでは無いのですか?」
「表立って出来ないから、お前を呼んだんだ!」
ジェノバ中将が話し出した
「土田中将、非常に恥ずかしい話なのだが、B−3と大陸間弾道弾が昨夜奪われた」
「お前の隊を動かせば、他の軍に知られる、空軍の恥は知られたくない!」
禾人は大きくため息を吐くと
「そんな事を言っていっている場合ですか!それで弾頭の種類は!」
ジェノバ中将は、口を濁しそうになったが、土田空軍司令は
「気化弾頭だ」
「貧者の核兵器とも言われる、気化弾頭ですか!何時からそんな物を!」
「例の話の件以後だ、地球のローダーごと吹き飛ばす為にな」
「解りました、ではジャンに頼みましょう、それで見返りは?」
「100万$用意する。」
「解りました、ただし貴方たの話の内容に、偽りが有れば私が直に動きます、良いですね!」
「かまわんよ」
敬礼をすると自室に戻る
「司令、ブラックスコーピオンと言うのは、空挺機甲師団とは違うのですか?」
「ああ!禾人の私設軍隊と思ってくれ、非合法組織、ジャン コルリオーネ、禾人の幼なじみだ、まさか彼に頼
まなければならないとは、ジェノバ、其れなりの覚悟を決めておけ良いな!」

禾人は自室に戻ると背広に着替えた
「これを着るとまるで、ハ−ディ大佐だな」
ぽつりと禾人はつぶやいた、黒を基調とした背広、そして濃紺のネクタイ、黒のサングラス
着替えが終わるとリサのもとへ向かう、途中ジュラルミンのトランクを受け取った、100万$だ
「久しぶりだな、ジャンと会うのは」
ティルームに行くと
「リサ・・・・あぁ〜?」
空軍兵士とリサが言い合いをしている、どうも小さいことをからかわれたらしいのだ
「だったら、勝負してみる。お嬢ちゃん」
周囲が笑い出した、『勝負してやる!』とリサは言いたかったが禾人のお付き、勝手なことは出来きない。
涙こそ浮かんでいないが、握り締めた拳が悔しさを物語っている。
「5分だ!其れで撃墜しろ!リサ!いいな!」
突然、禾人が声を張り上げた、部下を愚弄されるのは、自らを愚弄されるのと同じ、まして直轄の航空部隊なら
なお更である。リサは声の方を見ると
「イエッサー!」
リサの声が弾む周囲では何が起きたか解らない、知らない人間が許可を出しただけ、禾人を知る兵がいな
かったのだ
「ほーあんたがお嬢ちゃんの上官、勝手な事して大丈夫だと思うか、この隊は防空軍第三戦術戦闘航空隊、
空軍のエリート部隊だ」
「ほぉーエリート部隊が女の子からかって歓んでるのか?大した部隊じゃないな」
「なに!」
「リサと勝負する度胸も無いくせに」
「やってやる!F231を二機用意しろ」
禾人とリサは心の中で舌を出した、禾人がリサに言う
「ティールームで待ってる、構わんから上がってくる奴を片づけろ、3分で済む」
「ハッ」
リサは解き放された矢のように、用意された機に走っていく
「いいか?お嬢ちゃん、彼のコインが落っこちたら発進だ」
「いいわ、ぼくちゃん」
決して言い合いでも負けない、ドールズの戦士、リサ
フルスロットでブレーキを掛け待機する、目はコインを見つめる。
投げられたコインが地に着く!一気にブレーキを解き放し発進!機体が浮くと同時にリサは車輪を収納した。
「よし、勝負がついたな」
禾人が一言言う、リサの機体は遥か上空に、相手の機体は遅れて後を追う、既にリサは相手の後方を取った。
「早く足あげた方が、やっぱり加速が良いんですよ!」
後方で既に相手を照準内に収める
「なに!」
「ファイアー!いっただき!」
機体に衝撃が走る、ペイント弾が機体を直撃した。さっさと機体を着陸させ、意気揚々と禾人の前にリサが現
れ敬礼をする
「2分50秒、良くやった」
「ハッ!」
「コーヒーだ、で呑み終わったら基地に帰って、私は今夜の訓練に出られないと伝えてくれ」
コーヒーをすすりながら
「私だけでは帰れません!何が有っても中将に付いてこいと、基地司令より命令を受けています」
「私の命令でもか?」
「はい!」
「プライベートタイムになるから勘弁してくれ」
「一度中将とデートしてみたかったんです、其れと護衛です」
「私がリサの護衛か?」
「私がです!」
「何が有っても知らんぞ、お前を売り飛ばすかも知れんぞ」
「そんな馬鹿な。何が有っても自分で責任も持ちます」
「わかった連れていってやる、着替えてこい、せめてGパンとジャンパーぐらいにしろ」
「ハイ!」
ティールームからかけて出て行く、禾人はドールズに甘い

「おい!」
禾人は、いきなり胸元を捕まれた
「さっきのドックファイトは無効だ!」
「ナニ言ってる、リサの勝ちだ、無効か撃墜された死人の話は聴けん」
一人の男が割って入った第三戦術戦闘航空隊隊長だ
「何をもめている」
「ハッ!隊長なんでも有りません」
「何を言っている!先ほど許可も無く機を飛ばしたではないか!」
禾人が珍しくいやみを言い出した
「え、女に負けたから勝負を無効にしろだの、女の子からかって喜んでるだの、全く下らん隊だ」
「何、貴様、何時言った!」
「ホー呆けるのか」
戦闘航空隊長はじっとサングラスを掛けた禾人の顔を見て、姿勢を正すと敬礼をし
「失礼致しました!土田隊長!」
禾人は立ち上がると
「第三戦術戦闘航空隊は紳士の集まりだと思っている、私が隊長を務めてるときも今もだ、あんまり
下らんことさせるな」
言い残し部屋を出る
「ハッ!」
隊長以外は顔が青ざめている、禾人がどれだけの男か知らない航空兵はいない、伝説なのだ良くも悪
くも
「貴様達!よくも俺に恥じ欠かせたな!覚悟しておけ!」

「リサ準備できたか?」
執務室で着替えるリサに声を掛ける
「ハイ」
「じゃこれをもって付いてこい」
「何ですかこれ、結構重いです」
「100万$だ」
「又、中将は冗談言いますね、新兵器ですか?」
禾人はトランクを開けリサに見せる
「ほら」
リサは目を白黒させ
「行くぞ」
「は、はい!」
シルバーのオープンカー、後ろ座席に無造作に置かれたトランクが気になるのか、ちらちらリサが見る
「どちらに行くのですか?」
「あの丘の上の屋敷だ」
丘の上にそびえる巨大な屋敷、鉄柵に沿って車を走らせる
「大きな門!」
リサが目をまた白黒させる
「あんまり驚いていると限が無い」
「一体誰のお屋敷なんですか?」
「テレビによく出るぞ」
「へ〜〜え」
誰かスターの家とリサは勘違いしているようだ、門が開き車を邸宅の前に着ける
「リサ両手を挙げて」
「え?」
黒服が禾人の身体検査をする、続いてリサ、そしてジュラルミンケース
「一体どういう処なんですか?」
「少し黙ってろ」
初老の男の前に立つと、男の右手を執りキスをする
「お久しぶりです、ファーザーコルリオーネ」
「久しぶりだ禾人、ジャンに何か頼みごとが有るのか、あまりお前が今の立場で来られるところではないぞ、我
が家は」
「ハイ、どうしても頼みごとが有りまして」
「そうか、しかし、我々に頼みごとをする時は気を付けろ、だがお前は我が息子の一人でも有るから、時々は
来てもらいたい」
「其れでは、後程」
「禾人よ今日は泊まっていくのだろ。」
「ハイ、ファーザーお世話にならさせて頂きます」
「ウム、ゆっくりして行くが良い、敵もいなければ、気を使う物もいない」
部屋を出てジャンのもとへと向かう途中、後ろからリサが小声でたずねた
「中将、ひょっとしてですがここは、オム二最大のマフィア、コルリオーネ一家ですか?」
「そうだけど」
「え!」
ドアをノックする
「入れ」
中から返事がした
「ドンコルリオーネ、お久しぶりです」
また、右手を取りキスを使用とする
「止めろ、お前と俺は、五分の兄弟だコーザノストラの儀式で結ばれた」
「そうだったな、あんまり回りくどい事は言いたく無い、頼みがある報酬は100万$だ」
「俺は、100万$よりお前の連れてきた、その子が良い」
「あ〜、リサが良いって」
「どっからでた金か知らんが、100万$出すより簡単じゃねーのか」
「どうせ軍から出た金だ構わんよ、おやじが用意したもの出し困るのは糞おやじだ」
「とは言っても、空軍の金、監査で引っかかるぞ、其処にいるのは、軍人だろ死亡通知と遺族に対する保証だ
けで済む、軍は汚れん」
禾人は、考え込みリサの方をちらりと見る、後ずさりをするリサ
「リサ悪いが、軍の為だ、そして俺の裏を見られた、だから付いてくるなと言っただろ」
「契約成立だな」
「ああ」
「いや、嫌です」
目に涙が潤む逃げようとするがあっと言う間にリサは、黒服に押さえられた、口に麻酔薬の付いたハンカチを
宛がわれる、薄れ行く景色の中で聞いた言葉は、禾人の 「ゆっくり眠れ、起きたらパー・・・・・・・・」 だった。
「禾人、俺はマフィアだ、だがな女の子虐めて歓ぶ趣味無いぞ」
「あー悪かった、あんまり俺に付いて来ると碌な事が無いと、脅しておかないと裏での動きが取れない」
「お互い因果だな」
「で本題だ、実は爆撃機が大陸間弾道弾搭載のまま盗まれた、で行方を組織を使って情報を集めて欲しい。
これが100万$の内容だ、其れと俺からだ、ジアスの将校カルツォーネとか言う奴が地下に潜ったまま、見つからんこれの情報が欲しい」
「引き受けよう、だが男の方は一体何なんだ」
「恥をかかされた、不要になった3人を俺に始末させられたんだよ、かたをつけたい」
「お前の恥は、おれの恥でもある、情報だけか?なんなら生死問わないなら殺っちまうが」
「情報も欲しいから、生きたままだ」
「解った」
手を3つ叩くやがて部下が現われ、耳打ちをすると深々と頭を下げて部屋を出て行った。

「処で新しい弾丸が出来たんだが、撃ってみるか」
「面白そうだな撃ってみたいぞ、しかし、俺の軍歴はここの射撃場からだな、ここで銃の扱い教わってなかったら
俺もノエルもキリカもフェイも生きて要られなかった。」
「あの当時親父が言ってたよ、中学生に銃を教えて良かったのかって、お前が最初に殺っちまうとは想わな
かったけどな」
「違いない、俺だっていまだに夢のようだあの時は」
「さて、この弾丸だが外は炭化タングステン、中に水銀もしくは鉛、用途によっては劣化ウランを詰められる」
「何と無く分かってきたぞ、だが其れは軍では非人道兵器だ」
「我々には関係ない、見てろ」
鉄板の向こうに牛が用意される、発射された弾丸は鉄板を貫通したところで止まり内部より鉛が飛び出し、
牛を直撃、見る姿も無くなる。
「趣味じゃない」
「禾人、こっちじゃ何時もこれだ、イリーガルだという事を・・・・・」
「解ってる、殺ってる事は俺の方がエグイ、一人殺せば殺人者、千人殺せば英雄だよ軍隊は・・・・・」
「そろそろお嬢ちゃん起きるぞ」
「二三発ピンタ食らってくるか」

「リサ、起きたか」
部屋に入った瞬間、禾人めがけて花瓶が振り下ろされた、慌てて両手で受け取ると、次に急所めがけて
蹴りが入った。
「待て、リサ・・・・・・・」
花瓶を下ろし、股間を押さえ飛び跳ねる。
「待ってられますかていうの!」
逃げようとするリサを黒服が取り押さえた。
「おい、俺の大切な部下だ手荒の真似をするな」
「解りました、ドン禾人」
「どういう事ですか!」
「あまりあっちこっちにお前が付いてくるから、俺の動きが取れんのでちょっと脅かすつもりだった、特に
今日の話は特別だし、聴いてもらっては困る」
「其れなら其れといってもらわないと」
「行ったら付いてこないか?」
「いいえ、中将付きの秘書兼ねろとハーディ大佐から言われてますので、それは出来ません」
「ほんとに売るぞ」
「もう、脅しは駄目ですよ。」
リサの持ち前の明るさに、禾人は諦めた
「ハァ、リサ今夜、パーティがある、私のパートナーとして出ろ。、ドレスは用意してある」
「はい!」

リサと禾人はダンスパーティ、ドールズは戦闘パーティで、120対2の戦闘は120名の戦死で教官チームの
圧勝であった。

10月31日19:00 S・D・S大隊(スパイダー、ドールズ、スコルピオン)基地

あれから更に20日が過ぎた、禾人のもとには毎日ミサイルの行方を、問い合わせてくる。
「まったく、そんなに急ぐなら俺の部隊を使えて言うのだ。」
ぽつりと禾人がこぼした。
「何、お兄ちゃん?」
パリッ!ポリッ!フェイが禾人のベッドの上から声を掛けた、
「フェイ!人のベッドの上に・・・・・」
ガッチャ〜〜〜ン!!
「ウキュキュキュキュ〜〜〜」
簡易キッチンから声がした、エイミーが何か割ったのだ
「まったく!フェイは、人のベッドにポテトチップスこぼすし、エイミーは、もの壊す!」
禾人は怒ろうとしたが、フェイとエイミーの額に赤く残るペイント弾の跡を見るとつい笑ってしまう。
昨日の要塞防衛演習で禾人がヒットした名残、時間で消える為、後三日は残る。
「昨日のスコアーも酷かったし、時間外で俺の部屋に遊びにくるのは良いが、大丈夫なのか?」
「強すぎるのよ、180対3でもかなわないなんて!」
「少しは隊で夜ミーティングして、我々に勝負挑んでくるとか、スコルピオンとスパイダーとで自主訓練するとか」
「それなりに考えているけど、なかなかね」
「フェイも普通の女の子か、優秀なドールズの中佐とは思えんな」
フェイが顔を向け怒鳴った
「禾人兄ちゃん!最近嫌味ぽっくなってるわよ!」
確かに、最近の禾人は嫌味が多い、ミサイルの性かいや、何かが引っかかったままなのだ
「おかしいんだよな、何か違うんだよ」
禾人の元へエイミーがコーヒーを持ってきた
「ありがとうエイミー、フェイもこの位出来れば善いんだが」
「また!」
フェイがたまらず寄ってきて、机を叩いた
「あ!あちぃ!」
カップが跳ね、禾人の股に落ちた!白いズボンが茶に染まる
「早く脱いで!」
エイミーが声を掛けながら、濡れタオルを持ってきた。
「フェイ、そこからズボン出してくれ」
フェイは、洋服ダンスからズボンを出し、投げてよこした。エイミーは染みにならぬように、ズボンを叩く
「ごめんなさい」
「ま、しょうがないな、身内に殺られ、身内が後始末、コーヒーカップにジアスとでも書いてあれば…・・」

『待てよ、フェイが姿を隠してコーヒーカップを投げつける、ジアスが使う物だったら疑いは敵に行く、そして味方が後始末する、戦争のキッカケにもなるその時は、此方側に利が或る』

「何なのよ、お兄ちゃんまた嫌み」
「オムニが先に条約を破ったように見せかけるとしたら、しかし、気化弾頭は目立つほどハデでは無いし、かといっ
て、テロに使われたわけでは無いし、では何故必要だったのか?」
考えあぐねる、『そう言えば、弾道ミサイルの構造は…・』電話をすると
「ハルゼー、李大尉を連れて私のオフィスへ」
「イエッサー」
タバコに火を付け深く吸い込む
「中将、気化弾頭って何ですか?」
エイミーが声を掛けた、ゲホ!ゲホ!フェイ達の存在をすっかり忘れていた、考えると周りが見えなくなる。
「そんな事言ったか?」
「いま言いましたよ」
「その事は如何でも良い、二人とも悪いが部屋から出てっいってくれ、重要な打ち合わせが或る。」
「あたし達も聴けない?」
「駄目だ、第一おまえ達は勤務外だろ、聴く暇あったらチョットは鍛えろ」
「ケチ、解りました出て行きますよ、行くよエイミー」
「エイミー又、おいで」
「私は?」
「鍛えてろ!」
「馬鹿!!!」
ダン!!思いっきり戸を閉めるフェイ

「フッ、全く人の気も知らんと」
ガチャ 「中将、失礼致します。」
「来たか、待っていた」
「何かありましたか?」
「李大尉、君は確かミサイル大隊に居たな?」
「ハッ、所属していました」
「今、戦略空軍空挺ミサイル大隊で使用しているミサイルの構造に付いて、詳しく知りたいのだが」
「タイプは?クルージングタイプでしょうか?対地攻撃用でしょうか?」
「どちらでもない、B−3が搭載できるタイプだ」
「空中発射型大陸間弾道弾!」
「そうだ」
「何故でしょうか」
「上官の質問に訳が居るのか?」
「失礼致しました」
ホワイトボードに構造を書き出した。
「先ず、推進部ですが搭載の関係から、固体燃料を使用3段式になっています、弾頭は24発に分裂8個所の目標に向かいます、1個所に3発うちダミーが2発」
「で、弾頭の種類は?」
「通常弾頭は、TNT400K/T、特殊として胞芽熱細菌弾頭です」
禾人はため息を吐くと
「取りあえず、大量殺戮兵器では無さそうだな、だがもし気化弾頭を積んだとしたら如何だ」
李大尉は、怪訝な顔をして
「気化弾頭をもし積むとしたら、弾頭は其れ一発になりますね、ダミーを入れて3発それ以上は積めないでしょう
気化弾頭は、或る程度どうしても容量が無ければ威力はないですから」
「わかった、ありがとう李大尉」
「其れでは失礼致します。」
「ハルゼー大佐!」
「何でしょう?」
「ひょっとして緊急の出動があるかも知れんからそのつもりで居ろ」
「ハッ」
禾人は、缶ビールを取り出すと一気に飲み干し、ベットに横になる『では、何故』、考える暇も無く深い眠りへと
入った。

「ハルゼー大佐、われらの司令殿は最近何を考えているのでしょう、体調が悪いのでしょうか、ドールズと一緒になってから、総てに甘くなった気がします」
「色々とあるんだろ、今まで突っ張り通していたんだ、ジアス戦が終わって、諜報活動や制圧戦闘から開放され気も
抜けるさ、なにせお兄ちゃんだから」
二人は自室へと戻って行った。

その頃、戦略指揮司令室
「ファン中佐、今年のオムニ気象データーです。」
「ありがとう、オムニの赤外線写真もあるの?」
「ハイ、頼まれました物は、総てそろえてあります。」
ファンは、マイクロフィルムをセットすると確認を始める。
「えーと、オムニは今日も元気?あら、ここの海水温チョット高いわね?BK21」
ブロックK21地区、ファンは一気に青ざめた『まさか!』
「ミリー此処一年間のK−21地区、海水温の変異調べて、中央データーベースに赤外線写真がある筈よ」
「はい解りました。」
「私は、ノエル少将のところへ行ってくる。」
「ジェファニー中佐実は、……」
「ファン中佐其れは、何かの間違いじゃないの?」
「しかし、あの辺りであれだけの海水の温度を上げるのは、あれしか考えられません」
「そう、其れならば資料を集めて、その後少将に」
「ハイ」
すぐさま、K−21地区に関する資料を集め始めた。
「あの作戦プランファイルは、此れも要るわね、ミリー温度の変化解った」
「ハイ、6ヶ月前から上昇しています」
「6ヶ月か」
ジェファニーの元へファイルを抱えたファンとミリーが現れた
「そろったの!」
さっきの話から30分も立たずに資料をそろえた
「ハイ、早い方が良いと想いまして」
三人は、ノエルの部屋に入ると机の上に写真をならべて、ファンが説明を始めた
「では、この施設が稼動し始めているというのですね」
「ハイ、但し一基もしくは、試運転中だと想います」
「そうですか、しかし、もしそうだとしてもオムニがおこなっているのかもしれませんよ」
「でもその様な、発表はありません」
「では、土田中将の意見も聞いてみましょう」
幾ら電話しても出ないので、直接禾人の部屋に行く事にした。
ドアを叩くが返事は無い、ドアが開いているので入るとベットに寝ている禾人を見つけた。魘されている
「土田中将」
ノエルが起こそうとすると、いきなり抱き付き振るえ
「こえぇ、こえぇよ」
ノエルはそっと抱きしめると
「あの夢を見たのですね、大丈夫ですよ」
禾人は、やがて誰かが周りに居る事に気が付いた、ちょっと顔を上げにくい
「ミリー悪いけどお水持ってきてくれる」
ノエルが頼む
「はい」
ミリーは禾人にグラスを渡した。
水を一気に飲み干す。
「ハッァ〜、なんで今ごろあの夢を……・」
「処で中将、ファン中佐が気になる地域を見つけましたので、ご報告に上がりました」
よろよろとベットから立ち上がると、並べられた写真を見始める
「此れか、引っかかっている物は……・・」
「何ですか?」
「いや、もし此れが動いているとすれば、オムニ政府が知らないわけが無いしかし、情報が無い」
一息いれて
「軍か?」
「何の為ですか」
「解っているだろ」
さてどうした物か
「ファン中佐、潜入偵察隊を組んでくれ、ヤオ中佐とパーシング大尉、李大尉、ファン中佐、エバンス准尉の5人だ
直ぐにバックアップ体制を、22:00に発進してくれ」
「イエッサー!」
禾人は、一人になると
「やっぱり彼女に頼むか」
「ハーディ大佐、マークピアスン少佐を私のオフィスに出頭させてくれ、それとBK−21に一番近い潜水艦に協力を依頼してくれ、ファン達が潜入偵察に出る」
「かしこまりました。」

「あの付かぬ事をお聞きします、ノルン少将先ほどの中将・・」
「夢ですよ、14の時の・・」
「あの、テロの・・」
「ハイ、まだ魘される見たいです、目の前で銃が暴発して、相手の頭が粉々に飛び散ったのですから」

「マーク、解ったか皆には、内緒だお前だから話した」
「ハイ、司令このまま上がりたいと想います」
「ああ、ミノルとリサにSRF−2で援護させる」
「司令、行ってまいります」
禾人は、身を正し敬礼でマークを送り出した。
「さて、ファン達だな」

「こちらSDS大隊、スキップジャック応答願います」
「此方、スキップジャック感度良好」
「当大隊5名を貴艦に乗艦させBK21に潜入偵察を行ってもらいたい」
「軍の正式任務か」
「それは・・」
「それは、緊急事態省の安全保障局の調査任務だ、司令官は土田禾人私だ」
「解りました、艦長が了解したようです、燃料は緊急事態省に付けておくそうです。」
「では、BK20−A2に隊員をパラシュート降下させる拾っていってくれ、潜入場所はファン中佐に
指示を仰いでもらいたい、以上」
「それではランデブーポイントで、23:00にお待ちしています」
「了解、ポリスキー艦長に今度呑みましょうと伝えてくれ、それでは良い夜を」
「了解」
アヤセ中尉、キム大尉両名を前に
「アヤセ中尉、強襲機で五人を運んでくれ、海面ギリギリで行けば他の部隊のレーダーには、引っ掛からないだろ
う。降下地点で高度500まで上げ捨ててこい」
「イエッサー」
「キム大尉、作戦終了時間に飛行艇で迎えに行ってくれ、5:00で良いだろう」
「ハッ」
禾人の命令にすぐさま、機の整備に二人は司令室を飛び出す
「さて5人だが、今更説明は必要無いだろう、いつもの訓練どうりやれば良い但し、潜入後相手の正体を確認するまで、発砲は許さない。此方が撃たれようが、交戦するな!味方だったら写真を撮影して帰ってこい」
「では敵だったら?どうするのお兄ちゃん」
「ヤオ中佐!!此れは正規任務で私は中将、お前は中佐言葉に気を付けろ!」
ヤオの方をちらりと見て
「もし敵だったら、此れで連絡を」
ファンとヤオにD・Cを渡す、SDS大隊、禾人ダイレクトコールユニット
「すぐさま制圧部隊を送り込む、ハルゼー大佐解っているな」
「イエッサー!」
「では、良い夜を!」
五人が敬礼をして格納庫へと向かう、途中武器の選定をする、銃弾はパラフィン弾頭、鉄鋼弾頭の二種類
アクアラング、ハッキング用器材、光学迷彩幕、ノクトビジョン、パラシュート、ect
「結構大きい荷物になりましたね、ファン中佐」
「ええ、フェイの方準備大丈夫?」
「いつでも行けるわ」
「ノクトカメラ、デジタルビデオ、総てOK」
「李大尉、貴方は何の為に?」
「製造施設の規模から、生産能力、貯蔵の有無、性能の確認です」
5人はアクアラングに着替え、強襲機の格納部へと入っていく
ミノルがアナウンスを入れる
「当機はBK20−A2に、45分で到着予定」
ハッチが閉まると、すぐさま離陸
禾人は、発進を見届けるとコマンダーシートに身を委ね、眠り出した。

「後、3分で降下位置、総員準備せよ」
パラシュートのチェックを行いフックをワイヤーに掛ける
「さて行きましょう」
ヤオが最終降下を受け持つ
「格納ドアオープン」
「サー急いで」
ヤオが一人一人の肩を叩き降下を促す
飛び出すとすぐさまパラシュートが開く、海面ではスキップジャックが信号灯を点灯させて待っていった。
海面1mでパラシュートを切り離し飛び込む
5人がスキップジャックのハッチから艦内に入ると、警報が鳴り潜航を開始した。
「艦長御久しぶりです」
「………」
「侵入位置ですが、この港が目標です、BK−21・B21からマ−リンで出ます」
「………」
「ファン中佐、約20分でBK−21・B21に着きます、その後4:00まで同位置で当艦は、待機します」
「解りました」

「禾人中将、スキップジャックは予定位置へ」
「解った、偵察衛星をBK−21に固定、何かあったら即時制圧隊の出撃を」

「着艇、深度50m」
「では、行ってまいります」
「気を付けて、行ってこい、コーヒーを入れて待っている」
艦長が喋った、それだけドールズが気に入っている
ハッチが開き水中へマーリンに荷物を積み、5人が引き摺られるように静かに進む
やがて、岸壁に付くとマーリンを固定、モンキーラダーを登る
ヤオがノクトビジョンを付け、辺りの様子を伺う
周りに警報装置は無い、合図を送り4人が上がってくる
二つの荷物を、二人ずつで建物の影まで運びいれた
「ヤオ中佐、建物に耳を付けてください」
「李大尉、何の音?」
「2次冷却水用大型ポンプの音だと思います。」
「では」
「はい、間違いなくこの原子炉は、運転を開始していると見て間違いないです。」
そう、5年前ヤオたちが、破壊したプルトニウム爆弾製造用原子炉だった。

ヤオと李は更に周囲を警戒する。
ファンは、衛星通信ユニットをセット、本体を木の上に隠した
エイミーは、ドアロックを外す。
ミリセントは、ファイバースコープで隙間より内部の確認をする
「ヤオ中佐、内部に監視カメラ、10秒で左右に動いています」
「侵入は無理かな」
「待ってください」
ファイバーの先端アダプターを望遠にセット再度挿入する
「50mmレンズ、死角が出来ている筈です」
「ミリー筈では、決行できない」
「すみません、カメラが此方側を完全に向いた時、2秒停止します。」
「解った。」
ファンが内部図面を出した。
「カメラを掻い潜って正面の通路に入れば大丈夫」
「はい、カメラはこの入り口のみで、奥の通路にはありません」
「奥の通路まで、4m、2秒」
「何とか行けるわね」
エイミーがロックを外した。
「さて腹決めましょうか」
ヤオがバックを担いだ、続いて李大尉が担ぐ
ファンがしんがりを担当
「じゃエイミーは、李大尉の荷物を押して、ミリーは私の」
ヤオの荷物にミリーがタックルをかます形になった。
ファンが合図する、二人は一気に前の通路に駆け込む
今度は、李大尉エイミー再びファンが合図する
「さて、私ね」
ファンは、深呼吸すると、一気に駆け込んだ。
こんな処で失敗する様じゃSDSでは勤まらない
「確かこの部屋ね、ケーブルダクトが或る部屋は」
ファイバーで中の確認をし、電子ロックを外す、5人が部屋に入る。
再びファイバーを廊下に出し様子をうかがう
「エイミー、配線解った?」
「ハイ、監視カメラ、メインコンピュター、総てそろっています」
「ファンと私は、廊下の監視ね、エイミー、ミリー、李大尉は、ケーブルの接続」
ファンとヤオは、ファイバーを使って廊下の監視を始めた。
ケーブルをナイフで裂く、中より細い線が露出する。
エイミーは、切断しない様にストリッパーで線をむき出した。
「何分ぐらいで終わるの?」
「20分で終わらせます」
ファンは、ヤオに話しかけだした。
「ねぇ、フェイなんでお兄ちゃんなの?兄さんとかじゃ駄目なの」
意外な答え
「お兄ちゃんの方が、かわいく見えるじゃない言った人間が」
「何でかわいく見せる必要があるの?」
「お嫁さんになる為」
一瞬皆の手が止まった
「だれの?」
「決まっているじゃないお兄ちゃんの」
「でもノルン少将が」
「私は、お兄ちゃんの許婚よ」
「うきゅ!」
エイミーが配線の一本を謝って切断しそうになった
「親同士が決めただけだけど…」
「今の話は聞かなかった事にする」
ファンが言うと3人がうなずく
「別に良いわよ、ほんとの事なんだから」

ハッキングが始まった、通路の監視カメラを掌握
原子炉の状況をモニター
「おかしいですね?各炉とも制御棒が降りています。」
「温度、圧力共に常温常圧です」
「循環水ポンプは動いていません」
「監視カメラの映像は、何故か映らない場所があるようです、地下15階」
「地下15階に実験プラントがある筈よ」
「あの実験プラント?」
「ええ」
「でもあれって、実験プラントって言うより、完全な炉よね」
「ええ、高速増殖炉アポロン」
「この中に高速増殖炉が!」
李大尉は、驚きを隠せない
プルトニウムを純粋に生成するのに手っ取り早い方法である。
「仕方ない、地下十五階まで行きますか」
「ファン、エイミー、ミリーは残って、私と李大尉で行きましょう」
フェイは、廊下に出ると銃を構える、手で合図を送り李が後に続く
階段の監視カメラに近づくと、立ち止まる
カメラの作動ランプが点灯を繰り返す
「モールスですね」
「ええ李大尉、読めるの?」
「中将から、モールスと手旗は覚えておけと」
「手旗までやるの?」
「ええ」
フェイがライトで返事を返し、作戦開始である
フェイ達が階段を降りるのに合わせ、録画画像と切り替えを行なう
「地下15階、上がるのが大変」
「そーですね」
二人は巨大な空間に出た
先ほど映し出していた扉が有る
「横に人用の扉が有りますよ」
ノブをフェイは回した、幸い鍵はかかっていなかった様である。
「不用心ね」
「流石に15台の監視カメラを掻い潜って、ここまでくる奴は居ないでしょう」
「そうね、ここが動いているのも、知られているわけ無いから安全てこと?」
ファイバースコープで中の様子を確認する。
「何でこんなに不用心なわけ、カメラも赤外線探知器も無いわ!」
「大量の物資が動けば、感づかれる、最小で済ませたのでしょう」
李は、ポケットからTLDを出すとヤオに渡す。
「何?」
「熱ルミネンス線量計、被曝量を測定する。」
二人は、這いながら侵入した。
通路は宙を浮く形に作られ、下半分はコンクリート、上半分は鉛ガラス張りになっている。
「しかし、警備が居ないわね」
「危険だから近寄らない」
李は、PLD(ポッケト線量計)をのぞくと、
「60分ですね、」
「何が?」
ヤオが聞き返した
「被曝の許容時間です、シールされていて放射能を吸入する事は無いのですが、放射線の被曝は、有ります」
「じゃあ、さっさと片付けましょう」
腕を伸ばし、デジタルビデオをガラスから下に向け撮影をする。
「李大尉、カメラ大丈夫なの」
「対放射線シールド構造になっています」
カメラによって録画された映像をその場で見る
「戦略空軍ミサイル大隊、技術開発部将校」
「知り合い?」
「ええ、嫌いですがハイドリッヒ大佐、お兄ちゃんも嫌いな筈ですよ」
「禾人お兄ちゃんも?」
「ええ、やり方が好きません、化学兵器、生物兵器をオムニ軍が持つようになったのは、奴のせいです」
ビデオを見ながら
「プロトニウム爆弾、まちがいありませんね、」
「あとどのくらいかかるの?」
「2.3分」
ファイバーをのぞきながら
「警備員が降りてくるって、今8階」
「こっちも下から上がってきますよ」
二人は、扉より出ると荷物の陰に隠れる
ファンよりのモールスによって、死角になる事が解った
足音が聞こえてくる

「ハイドッリッヒ大佐!」
「ご苦労」
「これで、8基完成ですね」
「ああ既に3基配備を終わっている」
「オムニもこれで更に強くなる」
「核が駄目、生物兵器、化学兵器も…オムニが強くなる事が嫌なのでしょうか」
「考え方が違う、オムニの自然を維持しようとするのが土田だ私は、多少の犠牲はやむおえないと思っているだけ
だ」
「しかし…」
「敵の手に我々の施設や開発データが渡のを恐れている」
「その点、雪人少将は理解が有りましたね、大佐」
「私が見た感じでは、単に兄弟で意地の張り合いをしているようにしか、見えないが」
「そーですか?、あ!だから、少将は、禾人に飛ばされた!」
「滅多な事を言うものじゃない、そんなに、ケツの穴の小さな男じゃない」
「大佐は、認めているのですか?何も無いまま中将になった男を」
「中将にした理由は、「敵がかわいそうだから」だと言う噂だ、味方には「大天使ルシファー」と呼ばれ、敵には
「大魔王ルシファー」と呼ばれた」
「?」
「味方にはやさしく、敵には残忍、皆殺しにした噂もある」
「では、実績は」
「ある、とてつもない作戦ばかりだ、だから特殊空挺機甲師団は、最強と呼ばれた」
「しかし、それならば、オムニが強くなる為の行為を認めても良いのでは!」
「だから、考え方が違うと言っている!…一寸考えてくれ」
一息いれると
「ナイフならば、ナイフ・素手ならば、素手・核には、核…・使う物によってエスカレートする、抑止力に終わらせれば
良いが、どちらかが使えば悲惨だ」
「では」
「土田禾人中将はそれを知っている、信長の摂った一罰百戒を実戦しているのもそのせいだ、抑止と降伏」
一人の将校が、駈け寄り敬礼をする
「ハイドリッヒ大佐、荷物と出発の用意が出来ました」
「では、行こうか」

足音が聞こえないようになると、監視カメラのランプが点滅する
「行ったようですね」
ヤオたちは、地上へ向かって歩き出した
「ハイドリッヒ大佐て、悪く思えない」
「さっきの話ですか?」
「ええ、お兄ちゃん、彼の事好きじゃなのいかな?」
「中将が」
「碁敵は、て言う奴よ」
「ああ、さて急ぎましょう」

「中将」
「セルマ大尉、どうした」
「打電が来ています」
「読んでくれ」
「それが…」
「銀髪のコンピューター海軍将校がモールス読めんと困るぞ」
「いえ、句とか、短歌みたいなのですが、軍の物と違うので」
「構わん読んでくれ」

「寒き冬、来足りて降らす、白き雪、我溶かさんと、欲すれど、この雪溶かすに、溶かせず・ 白原」

「そうか」
「何ですか、これは」
「歌だ、悲しい意味を持つ」
大きく呼吸をすると
「ところでヤオたちは、どうした?」
マフィが振り向くと
「ハッ、只今李大尉よりの、画像データーを受信中であります。」
「そうか」

「李大尉、データーは」
「いま、衛星通信システムにセット転送中、ヤオ中佐の方は」
「回線復旧中、エイミーどのくらいで終わる」
「後5分です」
「後5五分、要らない荷物を搬出するわ」
「了解」

「中将、データー出ました。」
写真を見ながら
「アイクマン大統領補佐官を呼び出してくれ」
暫くすると
「禾人、何時だと思っているんだ」
「ジョニー、済まんが至急大統領と空軍指揮官の招集を頼む」
「なぜだ」
「通信では言えん」
しばらく沈黙するが
「しょうがない」
「悪いな、後、緊急事態省長官に連絡したいのだが」
「お前、自分の親方の行方ぐらい掴んでおけ、ニュースも見てないだろ、台風とかで長官も急がしんだよ」
「それで連絡付かないんだな」
「ダイレクトで繋ぐから話せ」
「ああ」
「禾人か」
「ハイ、起きておられたんですか」
「今、ハリケーンの真っ只中だ、今年最大級の被害だからな」
「本業ですね」
「処でどうした」
「ロストサンです」
「で、どうする」
長官は、あまり驚かない
「空軍の配備、長官は知っておられたのですか?」
「なんとなく、噂はあったが空軍か」
「大統領は、当然知っているのですよね」
「ああ、予算の関係が有るからな」
「関係者の招集を頼みましたので」
「解ったが、このハリケーンでは私は戻れない、D3はお前が決めて良いぞ」
「イエッサー」
「くれぐれも問題ない様頼む」
長官との話が済むとジョニーが
「何処にする」
「砦の私の部屋へ」
「解ったでは1時間30分後に」

「エリオラ直ぐに私の機を用意させてくれ」
「わかりました」
禾人が滑走路に出ると、SRF−1が用意されていた
「リサのか、悪いような気がするが」
誘導員が、ライトを振りながら現れる
「SRF−2ファイヤーフォックスSDS管制、発進許可願う」
「SDS管制許可する、良い旅を」
「ありがとう」
補助ジェットをフルパワーにする。
「速度マッハ1.5、パルスジェット切り替え」
一気にマッハ4を記録、
「ラムジェットスタート」
マッハ5.5
「さて、10分で着くが」
オートパイロットにすると、目を閉じ
『最近夢見が悪いと思っていたが、だからあれほど俺が外に出すなと言って居たんだ、俺が殺るしかないか』
『その前にやる事が多いか、フェイはこの事知ったら嘆くかな』
機械音声が基地に近づいた事を報せる
着陸するとジープが迎えに来る、整備を頼むと禾人は、最後の砦に向かった。

「それでは、艦長お世話になりました」
「…………・・」
「失礼します」
「………」
「コーヒーご馳走様でしいた」
五人は、飛行艇に荷物を仕舞い込む
「お疲れ様でした」
リサが笑顔で迎える
「簡単でした、あんな警備じゃあそこは、何が有ってもおかしくないね」
「まったくです」
「離水しますのでご注意ください」
五人は、気が抜けたのか、席に就くと眠り出した。

禾人が軍総省へ入ると声を掛けてきた人物が居た
「禾人中将!」
振り替えると
「ハッドリッヒ大佐久しぶりだ、一寸話が有るが付き合えんか?」
「原子炉の事ですか?」
禾人は一寸驚いたが
「望遠のサーモビジョンか?」
「ああ、進入者をすぐさま特定できた、お前の部下だと直ぐ判明したので好きにさせたが」
「あいつら、一寸お仕置きが必要か」
「雑だな」
「おまえ相手じゃ仕方ないと思うが」
「処で、原子炉の話なら貴方の管轄じゃないので断わる。」
禾人は、爆撃機の写真を出した。
捜索依頼の出ていたB−3・111号機、
「何だ、これは」
「核爆弾を積んでいるな」
「さあ…」
見事な軍人ハイドリッヒ相手に、禾人は駈け引き無に喋り出した
「呆けていても良いが、これだけは言っておく、もしオムニ上で核爆発が起きれば大変な事になる」
「そんな事解っている!」
「私は、2時間後に、我が隊にデフコン3を発令し、奪われたこの機の捜索に全力を挙げる」
ハイドリッヒの動きが止まった
「悪い事は言わない、原子炉を止めろ、さもなくば制圧隊を送り込んでも止めさせる」
「私は、奪われた事は聞いてない!」
「かれこれ20日以上前の話だ、弾頭は・・」
禾人が言おうとすると
「プルトニウム爆弾、1メガトンクラス8発搭載」
「そうか」
「貴方が一番恐れている事が起きた・・」
「ああ、総てのデーターを此方に渡してくれ、空軍司令には、私が話を付ける」
禾人は、其の侭地下へと降りていった

大統領が口火を切る
「禾人中将、何だね緊急の招集とは」
パイロットスーツのままで立つ禾人に、大統領は怪訝な顔をした
「空軍司令から言って頂けると助かるのですが」
「何の事だ」
「核爆弾搭載の爆撃機が奪われた事です」
「禾人、ほんとか!」
ジョニーが驚く、ほんとに知らなかったのだ
「どう言う事だ!土田司令!!」
「ハッ、10月10日 AM1:00 にアルゼン空軍基地 戦略空軍空挺ミサイル大隊よりB−3爆撃機、機体ナンバー
111が奪われました、搭載弾頭は1メガトンクラス、プルトニウム弾頭、あと手引きをした者が」
「何故すぐさま、連絡をしない!」
「ハッ、空軍内の事ですので」
「内部の事で済むか!」
「で土田中将、状況はどうなっている」
「気化弾頭と聞いていたのと、我が軍には動かないでくれと言うので、友人のジャンに頼んでいます。」
「禾人、コルリオーネ一家に頼んだのか!」
「ああ、そういう要望だったからな」
「何で今更」
「嘘が有れば俺が動くと」
「そうか」
「我が隊にデフコン3を発令します、防空軍レーダーサイトと戦略空軍ホライゾンレーダーサイト、総ての
データーの無条件使用を」
「解った大統領命令で、発動を許可しよう」
「残った核爆弾は、我が隊の凍結兵器兵器庫に預かってよろしいでしょうか」
「その方が安全そうだな」
「ハッ、それでは作戦にかからせて頂きます」
「土田中将、いっそ戦略空軍の司令に成ったらどうだ」
「中将でも嫌なのに司令なんて柄じゃないです」
「土田司令、戦略空軍空挺ミサイル大隊司令官の解任を あと暫く禾人に任せておけ」
「解りました閣下」
空軍指令が出ていく

「禾人、何故早く報せなかった」
「その前に大統領、核の話をして頂いていれば直ぐ分かったのですが」
「済まんな、お前に話せばすぐさま反対すると思ったのでな」
「こうなると思っていたからです、前から言っていたではないですか」
「ああ、予見はしていたな」
「取りあえず、基地に戻り作戦会議を行ないたいと思いますので」
「他の軍に着いては、どうする」
「報せれば、パニックを起します、家族に知らせる者も居るでしょう」
「わかった」
「敵の目的が分かれば簡単なのですが、では失礼します」

廊下に出ると、ジョニーが追いかけてきた
「禾人、とんでもない情報を持っていたな」
「知らなかっただけだ、核を持っているのが解っていれば、対応が違った」
「ま、報せなかった俺にも責任が有るか」
「当たり前だ!こそこそやりやがって」
「マフィア使うとは」
「ジャンと俺は義兄弟だ、頼みごとが有れば聞いてくれる」
エレベータに乗り込むと、禾人の顔色をうかがう様に
「そーいえば、最近ニュース聞いてないって言っていたな」
「ああ」
禾人は、上の空で話を聞く
「最近、移住民の地区で暴動が有ったり、大学から女、子供の献体を盗む奴とか、変な事件ばかりで
頭痛い、治安の問題でマスコミに会見ばかりだ」
「安心しろ、核爆発が起れば、それ以外でマスコミに追われる事は無いぞ」
「皮肉を言ってくれるな」
エレベーターを出て自室へ戻った、タバコに火を付け、椅子に座る
誰かが扉をノックした
「どうぞ」
「失礼致します、中将」
「なんだ、ハイドリッヒ大佐改まって」
「これが111に搭載されていた弾道弾の資料だ、それと出来た弾頭を渡せと」
「ああ、基地に運び込んでくれ、−273℃で凍結保存する」
「解った、明日にでも運ばせよう、あと記念写真だ」
「ハッキリ、写っているな」
ヤオたちが基地内に侵入する所が写った写真と、サーモビジョンによる熱映像
「ああ、では明日」
「ハイドリッヒ、私の隊に来ないか」
「やり方が、お前と俺とじゃ違いすぎる」
「そうか」
ハイドリッヒが出ていくと、大きなため息を吐き
「7:25分戻るか」
滑走路にむかって、歩き出した。

「此方、SDS基地ファイヤーフォックス着陸を許可する」
「ファイアーフォックス了解」
滑走路に滑りこむ機体
轟音を放ってリバースが掛かり停止、はしごが掛けられた
「中将お疲れ様でした。」
リサが敬礼で迎える。
「リサ悪いな借りたぞ」
「ハイ!構いません、コンピュータに操作が残るので練習に使えますから」
禾人を載せ、リサはジープを走り出させた。
「中将、ヤオ中佐が意気揚々報告するのを待っています」
「何か言っていたか?」
「はい、『旨く言ったので五月蝿く時間外まで訓練しろとは、お兄ちゃん言わなくなる』と、相当スムーズに行ったようで」
禾人は、自分の隊にフェイルンを入れたのを、多少後悔し出した。
「リサ、訓練だけは怠るなよ、今でもそうだが時間外でもやる気が有るなら、色々対処について訓える、俺は航空部門が本業だからな」
「はい?今以上に訓えて頂けるのですか」
「もちろん」
「ハイ!宜しくお願い致します」
リサは、不思議と禾人の話を真面目に聞く、覚えも良い
「あの、ミノルちゃんも一緒でも良いでしょうか?」
「みんな一緒で来い、エリオラには、格闘技も訓えると」
「はい!」
ジープから降りると一言呟きパイロットスーツのまま、作戦司令室へと向かった
「では、ヤオ中佐にハイドリッヒの手の大きさを伝えるか」

ヤオが作戦パネルに敵の配置、プラントの配置を表示、ノエル、ハルゼー、マフィルがみている
禾人に気が付くと一斉に敬礼をした。
「だいぶ話が進んでいる様だな」
「はい、最初から報告します」
「いや良い、マフィル、ハルゼー、潜入工作のプロから見るとヤオ中佐の作戦はどう思うか」
マフィルが口火を切った
「先ず、兵士のパトロールが少ない個所からの侵入ですが、」
ハルゼーが
「当然の手段でありますが、この場合は、建物の内部構造から侵入と同時に、」
「隠れる場所が特定されます。」
マフィルとハルゼーの意見は一致していた
「この通路の両サイドの扉を閉鎖するもしくは、階段の扉を閉鎖すれば」
「警備の兵士に損害を出す事無く、敵を排除できます。」
「まるで、ねずみ取りだな」
禾人が呟く
「ねずみ取りなら、生かして捕らえますが、この通路や部屋に換気口が多いのは」
「ガスを使うためと考えられます」
ヤオが一寸ムッとして
「しかし、なんの失敗も無くキチンと任務をこなし、帰還できたのですから、今いわれた物は無いのでは」
禾人は、腕を組み
「やはり今度からは、ハルゼー、マフィルに潜入偵察は、任せよう」
ヤオが納得の行かないそぶりを見せた
「ヤオ中佐、ハイドッリッヒ大佐から記念写真をもらってきた」
温度画像と暗視カメラによる写真であった
「もう少し、丁寧に仕事した方が良いと注意された、ヤオ中佐私は、何も無理な注文も指示もするつもりも無いが
出来れば、ユニバーサルコマンドを目指してもらいたい、以上」
写真を見つめヤオは、答えない
「でハルゼー大佐、ニューランド大佐、当基地で明日よりプルトニウム弾頭を預かる事に成った」
一瞬にして全員が表情を変えた、しかし禾人は気にせず話を続ける。
「液体ヘリウムを魔法瓶から抜いてウォームアップをしておいてくれ、凍結保存兵器とする」
「ハッ、搬入は何時でありますか!」
「明日くる。此方から護衛機を出す」
「解りました」
「其れでは、解散各自休憩に入れ」
「ハッ」
やや俯き加減で部屋を出る偵察メンバー
禾人は、ヤオの後を追って部屋を出た。
「フェイ、珈琲でも如何だ」
肩を叩く
「落ち込んでるわけじゃないだろ」
「チョットは落ち込んでいるわ」
「じゃチョットだけ話をしないか」
フェイルンは、禾人に付いてブレイクルームへと入っていった。
椅子に座り神妙なフェイルン、禾人が自動販売機に金を入れている
『怒られるだろうな・・お兄ちゃんの言う事聞いておくんだった』
「ほら、珈琲だ」
「いただきます」
珈琲を飲みながら
「これで、一寸は懲りただろ後は、フェイルンおまえ次第だ」
何時になく禾人は、やさしくフェイを見ている
「お、お兄ちゃん!」
「なんだ?」
「なんで、そんなにやさしくしてくれるの?もっと怒られると思ったのに」
フェイが見た禾人の顔は、幼い頃見た禾人の笑い顔だった
「死ななきゃOKだ、でも今回は、ハイドリッヒだったから良かったが敵だったら…気を付けろよ」
「うん」
禾人は、一呼吸置いて笑みを浮かべながら
「で、次に失敗したら、SDS大隊より別の部隊に移ってもらう」
フェイルンの顔が一転して曇った
「あと150日ぐらいしかない、ドールズは適任だと思って引き抜いたが」
フェイルンの顔を見つめながら
「ドールズの実戦隊長である前に、私の妹で有ってもらっては困るのだ」
禾人は、静かに席を立つと自室へと戻っていった
フェイルンは、空缶を握り潰すと
『冗談じゃない、私はドールズのヤオフェイルンだ!二度と失敗は、するものか!』

部屋に帰るとすぐさまシャワーを浴び、昨夜から伸びた髭をそる。
黒の戦闘服に身を包み、腰にはモーゼル、旧式ながら連射性能、狙撃性能抜群なのだ。
右足首に、ダマスカススチール製の大型ナイフ
部屋を出ると黒のベレー帽をかぶる、新しくSDS隊章を付けて
両の手で顔を思いっきり叩くと
「よし!」
気合をいれ司令室へと入っていった。

フェイルンは、シャワーを浴びスウェットに着替え、休む。
夜間作戦後は、12時間の休憩が与えられるのだ。
ベッドに入るとすぐさま、まどろみの中へと入っていった。

禾人が司令室に入ると、禾人のいつに無い姿に、周囲に緊張が走る。
「ノルン少将、ヤオ中将、少々話が有ります」
「はい」
「禾人、私は中将では無いぞ」
「ヤオ教官、中将に復役して頂きたい」
「なぜだ」
「私が、いつ退役してもこの隊を存続させる為ですです。」
「辞めるのか?」
「二階級特進で」
「ま、冗談として聞いて置こうもし、二階級特進で退役の時は引き継ごう」
ヤオ教官は、笑いながら答えた
「で、禾人本題は何か」
「10月10日にアルゼン空軍基地の戦略空軍空挺ミサイル大隊より、B−3爆撃機111号が大陸間弾道弾搭載のまま、奪われました」
「お前の態度がおかしかったのは、このせいか」
「はい、弾頭は・・」
「核弾頭ですね」
「ああ」
「でどうする気だ」
「パニックを防ぐ為に、我が隊のみで探します、空軍のすべてのレーダーサイトが使用可能に成りました」
ヤオは腕を組み
「間に合うと思うのか」
「間に合わせれば良いです」
「では、交戦準備をさせましょう」
ノルンが一言いうと
禾人が首から掛けていた、キーをノルンに渡した。
キーを受け取るとコンソールに自分のキーと一緒に差し込み、コードを打ち込む
禾人は眼網チェックを受け、コードを打ち込む

けたたましい、サイレンと共に機械音声による警報が響き渡る

「デフコン3ハツレイ、ソウイン、セントウジュンビニカカレ」

警報は数回に渡り繰り返され基地内は、蜂の巣を突ついた状態に成った。

格納庫では、ブルーリボンの模擬弾から、レッドリボンの実弾へと交換が行なわれる
走り回る、隊員
制圧部隊のローダーがC−559、AC17に積み込まれる
早期警戒機の発進準備が進む
戦闘機が滑走路に引き出され発電機に繋がれる。
次から次へとエレベーターで実弾が運ばれ、戦闘車両に装備

フェイは、慌ててベッドから飛び出し戦闘服に着替える。
「なんなのよ!休めると思ったら、もう」
フェイだけではない、全隊員何が始まったか解らないので有る。
デフコン3発令より、3分で全戦闘員集結、5分で交戦準備を完了しなければ成らない。
作戦司令室には、各隊指揮官が集合していた。
「全中隊長、集合完了しました!」
肯く禾人、大型パネルに爆撃機の写真が映し出された。
「本大隊は、これより奪われた核弾頭の捜索・奪還作戦に入る」
全員の顔に驚きが走った。
「10月10日にオムニ アルゼン空軍基地より核弾頭型大陸間弾道弾搭載のB−3が奪われた、犯人からの
要求は無し、目的はテロの為と想われる」
一呼吸おき
「全隊員は、交代で24時間の捜索活動に係る!スコルピオンはクリアー、シャドー、グリーンを航空隊に編入、ス
パイダーは、レーダーシステムとデーター分析、ドールズはレッドと突入制圧に備えろ、各隊に別れ各隊長は
兵員に作戦説明をこの中に概要が入っている、では総員係れ!」
禾人の言葉に合わせるように、身を正し敬礼、各隊の集合場所に走り出した。
「ハルゼー!」
禾人が慌てて呼び止める
「ハッ!なんで有りましょうか!」
「明日の搬入は、予定どおり最強の護衛を付けろ」
「解りました!中将!」
流石に戦略空軍最強部隊、実戦ともなると気合いが入っている。
禾人とノルンは、作戦司令室を出ると指揮管制センターに移った

「どうだ、現在の進捗状況は」
航空管制より報告が始まった
「現在、AWACSが全て発進しました、タンカー8機此方へ向かっています。」
「ローダー制圧部隊搭乗準備完了、隊員はブリーフィングルームで待機中」
「SFR−2、現在整備班によってブースター、気密補強を行なっています。」
「全てのレーダーサイト、情報を送ってきています。」
「海軍、艦艇レーダー情報を供給してくれています」
「艦艇レーダー?約束に無いが?」
振り向くと腕を組みニヤリとヤオフェイロンが笑う、元海軍中将が頼んでくれたのだ
フェイロンに禾人が深々とお辞儀をした。
なおプレッシャーが掛かる。
「息が詰まるな」
「貴方でも?」
「実際、戦争に核を使われたのは、地球で第二次世界大戦だけだ、ここで使われれば、数百年ぶりになる」
禾人は遠い目で、オムニの行き着く先を懸念している
「ジェファニー中佐、此方へ来てください」
「少将、何でしょうか」
「数人を選出して、オムニのニュースを分析してください、どんなに些細な事も逃さない様に」
「解りました」
ジェファニーは、別室へ移って行った.
「こんな時雪人さんが入れば、どんなに楽か」
「ああ戦略解析は、奴が一番だ、地球なんかに送り出したくなかったが」
「あの時なんで雪人さんだったんですか?」
「親父の一声であいつは行ったんだ、俺が行きたかったんだけどな」

「中将、戦闘機部隊発進できます」
「予定どおり、各ブロックへ向け離陸させろ、各基地に補給と休憩の連絡を」
「イエッサー」
「此方、SDS管制全機、離陸を開始せよ」
「SDSより空軍全基地に依頼、我が隊の航空機に援助を請う、補給およびパイロットの休憩を この依頼は
空軍土田中将によるものです。」

「これで取りあえずの、準備は終わったな」
「ハイ」
「ちょっと制圧隊の様子を見てくるか」
「何か有りましたら・・」
「構わん何時もどおり好きにやってくれ」
「わかりました」

禾人が司令室を出て、ブリーフィングルームへと行く
ブリーフィングルーム後部ドアよりそっと入る
「で、レッド部隊は、PLDによる敵機甲部隊制圧後侵入、基地の制圧を行なう」
ハーディにより、作戦説明が最終に入っていた
「制圧後は、李大尉のチームにより、核弾頭の分解作業になる、注意事項として爆撃機には、絶対に被弾させる
な!」
ヤオが手を上げ質問する
「飛び立つ寸前の対処は」
「エンジンを破壊しろ、ヤオ中佐得意の白兵戦でだ、+Cが役に立つ」
「では、飛び立ったら」
「ミサイルによる攻撃で、撃墜して良い」
「核爆発の危険性は、無いのですか」
「1000000分の1だそうだ」
「では、何故最初からミサイル攻撃をしないのですか」
「説明によると弾道弾のタイプが、液体燃料の新型で液体酸素とケロシン、万が一爆発した場合、制圧隊に
かなりの被害が出ると言う事だ、ヤオ中佐現場の指揮は総て任せる、失敗の無い様に」
「解りました、必ず制圧隊には、被害は出しませんし、ミサイルも必ず無傷で回収いたします。」
「他に質問が無ければ、本隊は24時間出撃体制に入る。交代で休憩に入れ以上、かい…」
ハーディの言葉を遮り、禾人が声を掛けた
「ハーディ大佐!」
「中将」
全員が振り返り、一斉に敬礼をする。
「タカス中佐の隊は本作戦から外し、あの計画の続行を」
「解りました、タカス中佐、開発作業の継続に戻るように、以上解散」
「ハッ!!!」
全員がハーディ敬礼をする。
それに答え、ハーディが敬礼を返した。
禾人が制圧隊に対して、一言注意を促した
「いつ見つけられるか解らんからゆっくり休んでおけ、気ばっかし張っていたら疲れるぞ」
「しかし、核爆弾で気を抜けって言っても抜ける物ではないです」
ミリィが言うと
「フェイスのようにのんびりしていれば良いじゃないか」
フェイスを見るともう腕を組んで、舟をこいでいる。
度胸が据わっていると言うか。
リターニングの渾名は伊達ではない。
「フェイスたら」
「良いじゃないか、あの位の方が頼もしい」
「では、航空部隊に行ってくる」
「お、おにい・・コホン!中将!」
あちらこちらから、クスクス笑い声が聞こえてくる
「何だ、フェイちゃん」
かなり皆がこらえている、真っ赤になるフェイルン
「チョット、お話があるのですが」
「良いぞ、ここでは駄目か」
「はい」
「じゃ、歩きながら」
「解りました」
部屋を出たとたん、爆笑が聞こえる
「な、なんだ」
フェイスが目を覚ました。

「ハハハハハ、なかなか上手いじゃないか、あれで皆リラックスできる」
「そんなつもりじゃなかったんだけど…」
「ま、良い」
「でなんだ」
「マーク少佐は」
「ああ、お母さんが具合悪いと・・」
「うそ!」
「全体の士気に関わる事だ、黙っていられるなら話す」
「お約束します」
「では、一時間後に私のオフィスに来てくれ」
「解りました」
禾人は、航空部隊最終戦闘班の元へと向かった
最終戦闘班、ミサイルが発射された場合、ミサイルの撃墜を担当する
「中将!」
8チームが作戦会議を終了して、離陸準備に係っている。
「だいぶ進んでいる様だな」
「ハッ、既に、SRF−2にブースターユニット取り付け完了しています」
「これで、マッハ9.2までは加速可能になりました」
「そうか、発射から1分30秒が勝負だな」
「はい、弾道弾の地上発射が不可能なら爆撃機が飛び立った瞬間に、追跡開始発射準備中に補足、パラシュー
ト切り離し後に攻撃、以上が行動予定になります」
「確かに、弾道弾の地上発射は、不可能と言っていたが」
「気になりますか?」
「ああ、しかし、発射システム自体の問題だからな、発射台でも作っていられたら」
「気楽に行きましょう!今から気にしていたら疲れますよ中将」
リサが言った。
さっき自分が制圧隊に言った言葉を返された、何だかおかしくなってくる
「クククク・・そうだリサの言うとおりだ」
「さて、君たち24名にいざという時を任せるわけだが、自信は!」
「イエッサー!気合も自信も十分で有ります!」
「では、全機離陸各担当ブロックへ!」
「イエッサー!」
24時間空中で過ごす、食料と汚物の処理以外地上に降りられない
燃料はタンカーが運ぶ空中給油、気密服を着用
二人組みで、交代飛行となるが幸い後部気密室で休める。
元々SR−71を元に開発されたものだけあってガタイがでかいのだ。
「さてと、アヤセ中尉ヨロシクね」
「これから、三日間、6時間交代でヨロシクお願いします。」
「ファイヤーフォックス離陸準備完了!」
「ファイヤーフォックスって中将がつけたんでしょ?地上部隊のシルバーに対してですよね?キム大尉」
「違うみたい、エリオラ中佐にロシア語習えって」
「それって、イーストウッドですよね」
「そうね、でもシルバーにかかってるから善しとしましょう」
「さっさとコードネーム決めないと中将に変に付けられちゃう」
「中将、ハイパーAカップとか言ってたわよ」
「それは、無いです」
「こちら管制、楽しい会話ありがとう、では離陸の番です」
しまった、マイクが入っていた!
ミノルはリサに怒ったしぐさをした
管制は爆笑
「V1」
「速度計、燃量計、電圧、タービン圧全てグリーン」
「V2」
「ロ−テーション」
リサとミノルを乗せたSFRは作戦空域へと飛び立った。
「さて、フェイルンか」
約束の時間まで後10分禾人は自室へ戻る
禾人の部屋から指揮管制室が一望できるオフィスへと入れる
ガラス張りの向こう、下のフロアーで忙しく動き回る兵士の姿が見え
また、作戦の進行状況を映す巨大なスクリーンを正面に見る事が出来るのだ
それ以外に禾人のオフィスには、オムニ非常事態分析指揮管制センター直の映像
大統領ホットライン、非常事態省ホットライン、軍のホットラインが備えられ
さらに、交信回線はスペースステーションとも行なえるレーザー通信ユニットを装備
ここにいると、オムニを掌握した感じになる、軍ではきっとそうはならない
非常事態省が絡んでいるから出来る事なのだ
やがて、ノックの音が響きフェイルンが入ってくる
「失礼します」
禾人がタバコを咥え火を付ける
「座ると良い」
「はい」
「でマークの事だったな」
「はい」
「処でヤオ中佐、何でマークが少佐だか知っているか」
「ハッそれは、初等宇宙軍学校を経て士官学校に進んだからで有ります」
「表向きはしかし、ただそれだけでは少佐には熟れない」
「?」
「じつは先の戦争で敵地球軍は、原爆を既に開発大陸間弾道弾に積み込んでいた」
「チョット待ってください、私たちは原子炉を破壊したんですよ!」
声を荒げて抗議した
「勉強不足だ!原子炉で、出来るのはウランを燃やしたあとにプルトニウムが形成される
それを使うのがプルトニウム爆弾」
「だからそれの元を壊して!」
「では、それを作るのに必要な物は」
「あ!」
「そうだウラン235!純粋に抽出濃縮ウランとして核爆弾が出来る、広島型という奴だ、奴等は、原子炉を破壊さ
れて仕方なくウラン型を作った、オムニもこれに気づかずにいたお前と一緒だ、大量に作るなら原子炉で燃やしプルト二ウムを作るか、高速増殖炉で増やすと考えていたからだ」
一息いれ
「そして、奴等は考えもせず、ぶっ放した」
「その様な、ニュースも情報もありません」
「トップシークレットだ、こんな事がばれれば、オムニ劣勢といわれかねない、核が核を呼びオムニは住めなくなる」
「まさか!弾道弾を」
「大気圏再突入前に宇宙空間へ弾き飛ばしたのがマークだ、宇宙軍エースパイロット3発弾き飛ばした」
「では、マークは現在」
禾人の指が天を指す
「黙っていろ、マークだって完璧じゃない地上部隊が失敗した時の保険だ、皆が気の抜きやすい状態を作る訳には行かないのだ」
「解りました、士気の低下になる事は広言致しません」
「そうしてくれ」
「それでは、失礼します」

扉が閉まると、スペースフォースを呼び出す
カメラに映し出されたのは、禾人の同期でスペースコマンダーのファーガーソン少将
「よ!エリートどうだマークの調子は」
「極道、今練習中だ大分感が戻ってきている、戻ってきて1時間程度で、隕石の破砕率90.5%おまえの撃墜率より」
「良いな、帰ってきたら航空部隊へ編入させるか」
「それよりスペースフォースへ還してくれないか?」
「冗談じゃない、こんな逸材我が隊に絶対に必要だ」
「現在は、我が隊だよな」
禾人がムットする
「我々は、軍総省と非常事態省の合同部署だ、お前の隊ではない、今回の依頼も」
「解っている!大統領命令だ」
「すまんな」
「だが口説くぞ」
「マーク次第だ、どちらにしても」
「ああ、マークが休憩に入ったらしい、通信を繋ぐ」
マークの姿がモニターに映し出された、真紅のスペーススーツを着て手には真紅のヘルメット
「中将!」
マークが敬礼をした、禾人が敬礼を返す
「調子が良い様だな」
「ハイ!直ぐに身体が元に戻りましたから、それに昔の仲間や両親もいますし」
「何だったっら、其方に移るか」
「いえ、ローダーパイロットして自分自身まだ、納得していませんので地上部隊に居たいと思います」
「そうか」
禾人の口元が緩む
「ところで地上の方は、どうですか」
「全て完了した、君の調子が戻っているなら問題が無い」
「ハイ!中将、そろそろ訓練に戻りたいと思いますが」
「すまん大事な休み時間つぶした」
「いえ、それでは、失礼致します」
マークが敬礼をした、禾人が敬礼を返し通信が切れた
タバコに火を付け椅子にもたれ掛る
「これから、長い日が続きそうだ」
禾人の見つめるパネルには、現在の進行状況が刻々と変わっていく様が映し出されていた。

あれから10日が過ぎようとしていた。
「これだけの部隊が動いていると言うのに、見つからないとは…」
疲労の色の見え出した禾人
座って指示を出すだけだが精神的に参ってきたようで有る
「中将」
ノエルが声を掛けてきた
「何だ」
「部隊内部にかなりのイラツキが出はじめているのですか」
「たかだか10日だと言うのに」
「物が物だけにプレッシャーが凄いようです」
「そうだな、休養を兼ねて全機を引き上げさせるか?」
「?」
「出てこないなら、誘き出す」
「大丈夫でしょうか」
「隊員のプレッシャーが大きいのならしょうがない、多少休ませないと」
「貴方も疲れているのでは?」
禾人がニッコリ笑うと
「その心配は」
「妻としてです」
「ありがとう、だが大丈夫だ、君こそ大丈夫なのか?」
「ハイ」
肯く禾人
「処で、ジャンさんの方はどうなっているのでしょうか」
「何の連絡も入らない、闇を仕切る奴でも探せない、些細な事で良い突破口が欲しい」
「そう言えば、ジェファニー中佐が三個所の町が地球移民によって制圧されたと」
「制圧?そんな馬鹿な、第一武器や制圧理由が無いじゃないか」
「制圧と言うよりも占拠に近いと思います」
「そんなに抑圧してないだろう」
「それが、地球移民に重税を掛けているとか、移民法制定によって地域封じ込めをしようとしているとか
デマばかりなんですが、指揮が取れていて武器も」
「大統領は何と」
「テレビやラジオで呼びかけているようですが、一切聞かないようです」
「町の名前は」
「ウェストイッド、ニューエルドラド、スカイウォーク、発生しそうなのがサンアイランド」
「そこは!」
「ミサイルの弾着点です」
禾人の予測が付いた全てが繋がる
オムニ政府が開戦の発端、利権の為なら核をも使用する
「我々が悪になるか?」
「はい?」
「構わない、全機を引き上げさせ休暇を与えてくれ」
「解りました」
「それとデフコン2に移行、全員引き上げたら小隊長以上の者を作戦会議室に集合させてくれ」
「イエッサー!」
管制室に指令が伝わり全機に帰還命令が発せられた、
約4時間で全隊が揃う
デフコン2に移行、制圧隊もカンズメ状態から解放された。

「見つかったてことかな」
「それっだったら、制圧命令が出ていると思うわ」
「じゃあなんで?」
「まさか、お兄ちゃん誘き出すつもりかな?」
「手薄にして?」
「ええ、そおなると一番負担のかかるのが」
「航空部隊ね」
「ええ」
「敵の目標がわかったから」
「そうだと思うわ」
「ヤオ中佐!ファン中佐!」
「ハッ!」
「集合だ、14:00に作戦司令室へ」
「わかりました、ニューランド大佐」
「いよいよ、結果発表てこと」
「制圧隊直ぐ出撃てことは無いよね」
「ええ」
「後3時間もあるわ」
「コーヒーでもどお、フェイ」
「ゆっくりお風呂入りたいからパス」
「そお」
「じゃあとで」

「はい大統領、敵の目的は核による内戦の誘発だと想われます」
「いまその都市に派兵するのも同じ効果だと言うのだな」
「はい、オムニによる地球移民に対する、差別を理由として戦争を起そうとしているのは、間違い在りません、
こちらが派兵をしても敵が核を使っても、内戦になります、そこへ地球の軍がくれば」
「我々が悪か」
「はい」
「で、撃墜の可能性は」
「90%です」
「90か、此方が派兵した時の危険度は?」
「8発の核弾頭が敵に残ります」
「では、90%に掛けよう」
「ハッ!」
「各都市に対しては、説得は続けて行なうが」
「その方が良いでしょう、少しでも長引けば敵が焦り出すかも知れませんし」
「そうなれば、安全に回収できるか」
「はい」
「解った、くれぐれも核爆発だけは起さないでくれ」
「イエッサー!」
禾人のオフィスに久々の静寂が訪れた、核と言う危険を背負ったままだが
「さて、タカス中佐の進捗状況も最近見てないし、様子だけでも見ておくか後2時間もある」
開発室へと向かい歩き出した

「マーガレット、プログラムは終わった?」
「はい」
「エリィ、充電はどのくらい終わった?」
「98%完了です」
「キリカこれで上手く行けば試作ね」
「大分遅れたけど」
現在、200分の1スケールモデルによる開発段階からまだ抜け出せないでいた
「どうだ」
「中将!これからモデルによる噴射実験です」
タカスは、そのシステムに付いて説明を始めた
「まず噴射ですが、ジェットエンジンを使わず圧縮空気の噴射にしました、燃量搭載によるデメリット、熱によるロー
ダーへの影響を考慮いたしました、圧縮タービンは超音波モーターを使用重量にも自信が在ります」
「で使用時間は?」
「フル噴射で5分」
「方向転換は?」
「スライド用のエアーノズルを側面に取り付けました。」
「タカス中佐、不眠不休で取り組んでくれている君のチームにはすまないが」
一息ついて
「短い時間と方向転換の方式に疑問がある、敵の機動力について行けるだろうか」
「それは…」
「せめて方向転換でも、まてよ…・・FX−75!」
FX−75オムニ空軍が可変ノズルを採用、開発途中にその運動能力から発せられるGの為に失神者続出、命を失
った者も少なくなかった、ついには開発を断念した曰く付きの戦闘機で有る
『あれが在れば』
「タカス中佐!空軍からノズルの設計図を取り寄せる、使えるか試して見てくれ」
「は?ハイ」
禾人は、慌てて開発室を飛び出した。
「はじまちゃった、兄さんの猪突猛進、前しか見えなくなるのよね」
「昔からなの?」
「変わらないわ、司令と言うよりも兵士の方が在っている」
キリカは両手を挙げて首を振った

自室へ飛び込むと電話を慌てて掛ける
「こちら空軍開発局です」
「戦略空軍、土田だ」
モニターから禾人の顔が映し出された
「中将、どちらへお繋ぎいたしますか?」
「航空エンジン開発部のFX−75に携わっていた、人間に」
「どなたでも?」
「出来れば大佐クラスが良い」
「かしこまりました、バイス大佐にお繋ぎいたします」
モニターが切り替えられると一人の男が近づいてくるのが見えた。
「中将、バイスです」
「大佐、頼みが在るんだが」
「何で有りますか?」
「FX−75の設計開発資料がすべて欲しい」
「あれは、プロジェクトが中止になったのでは」
「別のプロジェクトに使いたい」
「オムニマイスター2ですか?」
「何処でそんな事を?」
「いや、戦略空軍で新空挺ローダーの開発をしていると言う噂です」
「噂でしかない」
「解りました、資料だけでよろしいのですか?何でしたら試作機も在りますが」
「それも貰おう」
「かしこまりました、6時間以内にお送り致します」
「頼む」
「それでは失礼致します」
モニターが消えた
「オムニマイスター、ファレル中将が担当だったな」
『あのおっさんの為に、防空軍から戦略空軍に移されたんだよな』
ふと呟くと 作戦会議室へ向かう

全ての部隊が帰還、各小隊長が揃い出した、ざわめく会議室
「全員揃ったか」
「はい、各小隊長点呼確認終了しています」
「それでは、作戦の変更に付いて説明するが、その前に現在の状況として弾着点の都市が地球移民によって占拠
されたこれは更に広がる傾向に有ると考えて良いまた、敵の狙いとして開戦の発端がオムニ側に在るように仕向
けるのが目的だと考えられる」
「司令、其れでは、敵は自分の味方を犠牲にして開戦させると言うのですか」
「其れが一番手っ取り早い、核を使えば視覚的にも効果的だオムニは悪、地球移民に対して核を使用した事実が
出来ればオムニ政府に対する反感、不信感を煽る」
「逆にそれが囮で他に目的があるとは、考えられないのですか?」
「今の状況では、核の使い道が見当たらないのだ」
禾人が一息ついて
「ジアスが核を使ったとなれば、地球側が不利になる。更にジアスの残党狩りが始まる中にはジアスを裏切る者も
いるだろう。今奴等はそんな危険を犯さない、オムニの内部崩壊を狙った方が確かだ」
ハルゼーが腕を組み
「中将、それではあくまでも、オムニ側からの攻撃による開戦、奴等にとってジ・ハード」
「オムニリンクの中にも核の使用によって揺らぐ者もいるだろう」
「たった一発でそんなに影響が?」
「小さな一発だが強烈な一発だ」
「で、作戦変更だが、奴等にミサイルを発射させる、ミサイルは航空部隊によって撃墜、爆撃機の発進位置を特定、
制圧隊による攻撃とする」
「ちょっと待ってください」
「何だ」
「撃墜の可能性は、あるのですか?」
「90%を予想している」
「90%ですか」
「この確立は君たち次第で決まる、あと目標が決まった事によって索敵範囲の絞り込みも出来る、よって
発射前に敵の特定が楽になる」
「その間私たちは」
「待機だ、好きにしていてもらって良い、休暇の欲しい者には与える、但し余計な事は外で喋るな」
「航空部隊は、AWACSとレーダーによる索敵を継続、迎撃部隊は交代で空中待機、以上だ」
周りを見渡し
「何も質問が無い様なら解散!」
「ハッ!!!」

薄暗い洞窟の中で奴等は、息を潜めていた。
「現在の作戦進行状況を」
「ハッ!中佐、地球移民の扇動旨く言っています」
「そうか、ところで例の者は揃ったのか」
「ご注文どおり250」
「そろそろ、詰めに入るか」
「はい、サンアイランドも今日中には落ちます」
「後4都市、20日以内に落せるか」
「大丈夫です」
「地球、カシアス連合軍が来るまでに下準備をしておかなければならないからな」
「強いんですか?」
「ローダー自体2倍近い機体に強力なエンジンを積んでいる、我々の時代が来る」
薄気味悪くカルツォ−ネは笑う
「奴等の動きが止まったのですが?」
「それで良い、何処まで読めるかなオムニ軍」
狭い洞窟の内部にカルツォーネの甲高い笑いが響き渡った。

さらに10日が経過しようとしていた。
「既に七都市が占拠され、都市からはオムニリンクが難民として流出、政府に対し強行手段に出るように
要求しています」
「判った」
あと一都市で何かが始まる、それは、禾人の予想にあう物か
「中将」
「あ?」
「なに、気が抜けたような返事して、お兄ちゃんて、呼んだのと変わらないじゃない」
「ああ、で何だ」
フェイルンは身を正し、敬礼をすると
「制圧隊の準備完了いたしました」
「早いな」
「制圧隊隊長として準備をさせたのはまずかったでしょうか?」
「別に構わん」
「何時ごろになりそうですか」
「この分でいけば5日以内に動きが在るだろう」
「解りました、待機しています」
「頼む」
一息いれて
「で、お兄ちゃん」
「いきなり変わるな、おまえの猫なで声は、とんでもない頼みごとが在るから嫌だ」
「この戦闘終了したら休暇貰えるんでしょ?」
「ああ」
「それじゃ、買い物付き合って」
「いやだ、なんか高い物買わされそうで」
「なにいっているの、お姉ちゃんの誕生日じゃないのプレゼント買うの」
「そうかここ五年何にも買ってなかった、ちょっと待て、フェイの誕生日も1日違いじゃなかったっか」
「おもいだした?」
「やっぱり高い物買わされそうだ」
「だめ?」
「いいよ、でもノエルも一緒にいくんだぞ」
「約束よ」
「ああ」
にこにこしながら、司令室を出て行くフェイルン
「仲がよろしい事で」
「昔からだ、何か頼みごとを聞いてやると嬉しそうにする」
「中将、最近何か悩みでも在るのですか、遠い目をする事が多くなっているのですが」
「ハーディ大佐よく見ているな」
「ドールズは、意外と一癖も二癖も或る人間の集まりです人の観察は、嫌でもしなくてはならないので」
「うちの連中に比べれば、ドールズもスパイダーも癖なんて無いと思うが」
「でなにか、相談に乗れる事でもあれば」
「いや、大丈夫だ、一寸疲れたのかもしれない」
静かにパネルを見つめる、その目は今を見ていない、見ているのは未来なのか、過去なのか
「ついに、最終目的都市の暴動が発生しました」
「そうか、デフコン3発令総員戦闘体制に移らせろ」
「判りました」
「計算ではいつ頃になる」
「2日で占拠されると思います、オムニリンクの流出は占拠から2日で終了します。」
「では、航空部隊、明日より24時間警戒体制、レーダーサイトは、発射可能エリアの監視を強化」
「判りました」
携帯電話の呼出音に禾人が慌てて答える
「禾人!俺だ」
「ジャンか、見つかったのか!」
「いや、」
「では、なんだ」
「奴が居た」
「どこだ」
禾人の声のトーンが変わった
「ウォーターアイランド」
「そうか、やつが今回の黒幕」
「爆撃機の方だが」
「その件は、中止してくれ」
「核だからか?」
「何故、知っている」
「お前も裏なら判るだろう」
「大統領の直轄か、非常事態省のかなり上にいるのか」
「あっちこっちに居る、あんまり一人で背負い込むなよ」
「ああ」
「お前のシノギもあるんだ、いつでも帰ってこい、じゃあな」
「ああ」
ハァ〜、大きなため息を吐くと『行くか』
「いや駄目だ」
「どうしたんですか?」
「奴が居た、どうも今回も奴が黒幕らしい」
「で、どうしますか」
「ほって置こう」
「珍しいですね、貴方が飛び出さないのは」
「仕方ない、行くに行けない状態だ、奴の出方を見よう」
「判りました」
ウォーターアイランドの情報が刻一刻と変わって行く

「セル、出撃の用意総て完了した?」
「はい、WR2機X4S6機、地上発射型カーゴバードに搭載、X4SはVPとリニア装備ポケットにプローブ、スタッド」
「ローダー部隊はそれで良いわ」
「李大尉其方は、準備良い?」
「いつでも出られます、貴方達がローダーや戦車を片づけてからの基地への突入になりますから、みんな安心して
ますよ」
「お世辞ばっかし」
「こちらのローダ−部隊がすべて航空隊に編入されて、貴方達が頼りです」
「判りました、頑張ります」
フェイルンがモニターにウィンクする
「李!」
「ハルゼー大佐」
「どうした?」
李の憂鬱そうな顔が気になり声を掛けてきたのだ
「ちょっと気になるのですが」
「他の隊と組む事がか」
「いいえ」
「じゃなんだ」
「なにか、こう蠢くような」
「おまえの感はよく当たる、一寸注意していれば良いじゃないか」
「はい」
一言いうとハルゼ−は航空隊の交代へと向かった。

36時間が更に経過した。
「動きはどうなっている」
「思ってより早い展開です、ウォーターアイランド市庁舎占拠されました」
「軍施設も既に占拠されてますし」
「いよいよ動きが出るな」
「はい、先ほどより監視の強化に移って居ます」
「そうか」

薄暗い格納庫の中で走り回る人間達がいた
巨大な翼にブースターを取り付ける整備員
「短距離でこいつを離陸させられるかで勝負が決まるぞ」
「任せてください」
「液体酸素は段取り付いたのか」
「ガス切断用と偽って液体カードルで足していましたから、問題ないです」
「そうか」
カルツォーネは腕組をして、
「自動操縦で最後はアルゼン空軍基地に着陸させる」
「判っています、プログラムも完成、テストも成功しています」
「そうかでは、あと2時間で作戦を開始するよしよう」
「イエッサー」

ゆっくりコーヒーカップに口を付ける、目はスクリーンより離さない
ホライゾンレーダーを見つめる隊員の目に地上を滑るように、走る巨大な影
「何、今の?ねぇそっちのレーダーで何か確認できない」
通常レーダーを見つめる
「爆撃機!」
「そんな、短距離過ぎる」
「上昇スピードも速い!、中将!L−15ブロック、コールヒドラ島より爆撃機離陸しました!」
「デフコン4、各機撃墜体制に移れ!」
けたたましいベルの音が交戦を伝える
全ての隊員に警報が届く
全航空機が、敵の補足に躍起になる

「リサ!」
「OK」
空中給油パイプが切り離され、SRF−2がフルスロットルで敵の追跡を開始した。

「こちらスペースファイター01、SDS応答願います。」
「禾人だ」
「中将、敵に動きが」
「ああ、マーク頼んだぞ」
「イエッサー」
「燃量パイプ、酸化剤パイプ、切り離し、これより所定の位置へ移動静止、待機します」

「カーゴバード1番〜4番敵格納庫前に、5番から8番島の裏側へ」
「制圧隊隊長より発射管制、こちら準備完了」
「L−15ブロック、コールヒドラ島へ発射5秒前4・3・2・1」
「ファイアー」
トレーラーの後部に詰まれた、カーゴバードが次々と発射されていく
強力なGが襲い掛かる
コールヒドラ島まで約3分

「くそ!ブースターだ!どこで手に入れやがった」
禾人が汚い言葉を吐く
メインスクリーンに映し出される、レーダー映像
巨大な影を追う、戦闘機
超音速で追跡するやや大き目の影、レーダーに機名が出る『SRF−2ファイヤーフォックス』
リサとミノルだ
「追いつく!」
しかし、巨大な影が更に伸び出した
「ミサイルの発射準備を確認!」
パラシュートに引き出されるミサイル
台車が次から次へと捨てられていく
「見えた!」
リサが叫んだ
だが既にミサイルは、直立状態になっていた
「間に合って!」
ミノルが叫ぶと同時にSFR−2ブースターに点火
刹那、パラシュートが切り離され、メインロケットが噴射
加速にリサ達が失神しそうになる
「この!やろろう!」
ミサイルに近づくが距離を縮められない
「照準確認!」
「オールグリーン」
ミサイル発射より1分経過
「もっと寄って!」
40mmガトリングガンが火を噴く、設計上これしか詰めない
ミサイルの下部にヒット胴体を打ち抜いた、しかし爆発が無い
「やった!」
歓んだのもつかの間、ミサイルは第一段ロケットを切り離した
「リサ!回避!」
落ちてきた、ミサイルの胴体に巻き込まれそうになったが、運良く交わしたが

この回避運動によって、2度目のチャンスは無くなった
未だ追おうとするリサとミノル、禾人が
「よくやった!戻ってこい、無駄な事はするな」
「しかし!」
「その機の限界だ、おまえ達が危険になる」
「判りました」
涙声になっている、『あのリサが』
「泣いている時ではないぞ、仲間の行動を見ておけ、マークが大気圏外で撃墜体勢に入っている」
「え!マークが!」
モニターにマークからの映像が入る

「相対速度調整、ソーラーパネル全開、100mmCO2レーザー照準調整開始」
既にマークは、弾頭がゼロスピードになる、すなわち弾道の頂点の割り出しに終了していた
「レーザー充電開始」
マークの淡々とした声がやけに緊張感を煽った
「ミサイル第二段切り離しました!」
「CO2分子振動開始、補助ルビーレーザ−クセノン管発光開始」
「ミサイル第三段切り離し、弾頭軌道に乗りました!」
「照準確認、レーザーシステムオールグリーン」
「軌道誤差修正」
「ガイドレーザー照射開始」
「レーザー発射まで10秒」
司令室が静寂に包まれた
「弾頭確認」
トリガーを引くマーク
見えない赤外線の束が弾頭のオムニ側、側面にヒット
弾頭が頭を持ち上げた
「弾頭、角度変更確認」
第二射の準備に入った
「ルビーレーザー照準」
今度はジョイステックのボタンを押す
紅い閃光が弾頭に当たると、金属とレーザーのスパークが発生
弾頭は宇宙空間へと弾き飛ばされた
「任務完了、このまま弾頭の回収作業をモニターします」
マークの声は、変わらず淡々としていた
「マーク、よくやったご苦労」
「いえ」
相変わらず淡々とした口調のマーク
自信の現われだろうか
「マーク少佐、君を中佐に任命する」
「え!」
これには、マークも流石に驚いた
「リサを少佐、ミノルを大尉に」
「私たちもですか?」
「ああ当然の報酬だと思ってくれ」
「一寸考えて良いですか」
「良いが、嫌なのか」

マークはオムニを眺めながら
『わたしが中佐!柄じゃないわよねどうしよう』
ボーッと見つめるオムニの海に突然閃光が走る
「なに!今の!!」
閃光が消えるに従い
凶悪な原子曇が姿をあらわした
そこは、ヤオたちが降り立った島
コールヒドラ、まさに海蛇の心臓が破裂した様で有った。

「どうした!!!」
「コールヒドラで核爆発確認!」
「第一級非常事態発令!!」
「大統領に報告してください」
出動しようとする禾人をフェイロンが止めた
「行かせてください!」
「司令としてここにいろ!」
「フェイが心配ではないのですか?」
「それとこれは、別だ!司令の本分を護れ!」
声のトーンを落して
「直ぐに大統領直下のNSCが動く、我々の仕事はここまでだ」
「しかし、フェイが呼んでいる!」
「フェイルンは、諦めろ」
「なぜ自分の娘を諦めろ言い切りますか?」
「軍人はその様に出来ている」
「私はその様に出来てない、それに、昔フェイが迷子になった時のように、俺を呼んでいる気がする」
「だったら逆に、静か待っている方が良い、情報が入るまで」
納得できなかったが、フェイは禾人との約束を守る。
次の休みは「買い物に付き合って」と約束した、それを拠り所に
「解りました」
禾人は席に着く
一息いれ
「弾頭回収部隊、現状を報告せよ」
「こちらマーク、現在弾頭解体終了、プルトニウム7台回収しました」
「了解した」
「処でヤオ中佐のチームは?」
「不明だ」
「そうですか」
マークの言葉が途切れる
空白を生めるように
「AMM部隊に撤収命令を出してくれ」
「第三迎撃地対空ミサイル部隊、草薙、エクスカリバー、作戦終了撤収願います」

「ハルゼー制圧突入隊はどうなったか解らないか」
「降下した様子はありません」
「中将、電磁障害が直ってからの通信を待ってください、セシルが送っていってますから」
「解った」
「中将!大統領からです」
「ハイ禾人です」
「大統領」
「しかし!」
「解りました…」
受話器を置くと
「本時刻を持ってこの核演習は終了、なお演習の内容を他言してはならない以上!」
周囲のざわめきは、徐々に沈静化していく
「中将、大統領命令ですか」
「ああ」
「辛い役目ですね」
「慣れっこだ」

その頃
「ミリー、落ち着いたか?」
「ええ、みんな無事かな」
「大丈夫だと思うわ」
ヤオが答えた
「ヤオ中佐、やはりシェーレ小隊との連絡が取れません」
「そう、やはりローダーでの海中通信は無理かな」
海中でローダー同士接触による通信をしているヤオ小隊
「フレデリカ悪いけど連絡は、無理でも良いから続けて」
「はい」
逆側に降りた四人が心配なんのだ、ギリギリで中止命令を出し海中へ退去命令を出したのだが
それに従ったかどうか確認が取れていない

約30分前
「カーゴバードPLD格納プレートオープン、敵の迎撃に注意せよ」
「敵迎撃無」
「索敵」
「敵反応無」
「格納庫確認」
「格納庫の両サイドへ着陸する、ミリーとフェイスは東側、私とアイクは西側」
「イエッサー」

「こちらセルマ、島の裏側に展開終了、索敵を開始する」
「了解」

エンジェルウィングが噴射、強力なGがかかる
Gから解放されると其処は、敵の格納庫の前
全長7Mのローダーを物陰に隠すのは至難の技だが何とかなるものである
「フェイス、プローブ」
フェイスは、ヤオに従い格納庫の中にプローブを投げ込んだ
「索敵開始します」
プローブのデーターが映像化される、超音波探査、赤外線探査、レーダー探査、テレビ映像、ect
「敵反応無、爆発物反応無」
「侵入する、フェイスWRで索敵続行、ミリーはフェイスの援護、アイクは私のバックアップ」
「イエッサー」
「セルマ、これから格納庫へ侵入する、其方の状況は」
「こちらセルマ、町があります」
「町?この島には無い筈よ」
「建物に銃撃の後がありますから、何かの演習に使われたものと思います」
「人は?」
「居ません、対人反応無」
「そう」
「捜索を続けて」
「了解」
格納庫の中を見回す
テーブルの上に作戦用のマップがある
さらに周囲を見回す
「おかしい?」
「確かにおかしいです」
「これだけの証拠を残して消えるわけ無いわね。」
「こちらセルマ、敵ミサイルを発射しました」
「着弾までは?」
「6分!」
ヤオの第六感が働きだす
『これだけの証拠、中将の言っていた開戦理由』
「ミリー!この島の最高点の高さは!」
「標高300mです」
「李制圧隊に中止命令!すぐさま引き返すように!」
「了解!」
「セルマ!直ちに岸壁まで後退!」
慌てて格納庫の外に出る
「セルマ!弾着までのカウント開始して!」
「すでにマークが撃墜体制に成っていますが」
「撃墜しても!」
「了解!着弾まで300秒299・298・・
「フェイス!グレネード発煙弾で私の投げたプローブ打てる!」
「ハイ」
フェイスはセンサーを捨てるとミリーからグレネードを受け取った。
「それでは投げるから!山頂めがけて上がるように撃って!壊さない様に弾くのよ!」

「こちらマーク、弾道弾を撃墜」
『マークの方は旨く行ったのね。』
「200・199…」
フェイスはヤオの投げたプローブを玉突きの要領で、山頂めがけて弾いた
「壊れてない様ね、探査開始」
ディスプレイに情報が映し出された、BGM代りにセルマのカウントダウンが響く
「こちらミチコ、防波堤まで撤退完了」
「150・149…」
「対人反応無、金属反応有り、火薬反応有り」
PLD搭載のガイガーカウンターとプローブのカウンターを比較し出す
「バックグランドより山頂の方が高い!」
間違いない!山頂には核爆弾がセットされている!
「B−3、111号機アルゼン空軍基地に着陸、警備班乗り込みと同時に爆発、死者5名!」
「40・39・・」
ヤオが声を張り上げて命令を下した!
「全機!海中に待避!この島において核爆発の可能性有り!」
ミリーが泣きそうな声で
「この機体、ウォーターシールドされていないですよ。」
「大丈夫、機体は動かなくなっても、コックピットに水は入ってこないわ!だから早く!」
「私だめです〜〜〜」
「20・19・」
「セル直ぐ飛び込んで!」
「ヤオ中佐!ミリーは、密閉されて閉じ込められると!」
フェイスの言葉を聞かず、遠隔強制停止ボタンでミリーのPLDを停止、海中に投げ込んだ
「後5秒!フェイス!アイク!」
言うが早いか、3機のローダーは海中へ身を投じる
カメラが停止する寸前、強烈な閃光が海上に発生した事を伝え
続いて、海水を通してPLDを衝撃波が襲う
コンソールの警報ランプが次々と点灯
ライトも非常用に切り替えられた
生命維持も最低ランクで始動開始
救助が来るまでの待ち時間を出来るだけ長くした
水深140m、15気圧の海底
ヤオたちのPLDは、折り重なるように沈んでいた

「点呼を取る、フェイス」
「サー!」
「アイク」
「アーイ!」
「ミリー」
「ヒックヒック…・」
「ミリー!!」
「ハ・・イ・・」
「みんな生きている様ね、放射線400レントゲンで致死だけど、海水で減衰されたから大丈夫だったわね」

そして、
「中佐、核爆発から45分です」
「そろそろ、電磁波障害の消える頃、セシルあの通信聞いていたかな」
「中佐、司令室でモニターされていなかったんですかね」
「フェイス作戦遂行中でオフラインモードだったでしょ、センターはマークの方に集中していただろうし」
「それじゃ私たちこのままですか〜」
「大丈夫!ちゃんと中将探してくれるから」
『そうよね、お兄ちゃんあの時みたいに』

「電磁障害回復!セシル機通信可能です」
「こ…ち・・ら・制圧・隊搬・送・・セシル・ヤオ・・制圧隊・海中に・・待・避・・」
「コールヒドラ島周辺の海図を!」
海図を広げ、フェイロンと禾人が覗き込む
「ここか」
「それとここ」
「海底140m、葉巻と人型が要るな」
「はい」
「私がやろう」
「お願いいたします」
「海軍潜水艦隊司令部へ繋いでくれ」
「判りました」
潜水艦隊作戦本部、スタルカーテイ少将が対応に出た
「少将すまないが、至急DSRL搭載の潜水艦を貸して頂きたいのだが」
「フェイロンさんそれは、非常事態省の依頼と受けて良いのですね」
「ああ」
「判りました」
「DSRVとDSRL搭載の最新鋭潜水艦をお貸ししましょう」
「搭載能力は?」
「カーゴバード8基」
「空にしてくれ」
「判りました、お届け先は」
「コールヒドラ島、南岸と北岸海底にいるPLDの回収に使う」
「判りました、最新鋭潜水艦エイプリルをポイントAW21で14:00乗員ごとひき渡します」
「それと」
フェイロンの注文を遮るように
「判っています、高圧洗浄の準備をデミムール海軍基地にセットしておきます」
「どっからだ」
「大統領から将軍以上の者に通達がNSCも出発したようです」
「わかった」
敬礼を交わすと通信を切った
「禾人、私が行ってくる」
「誰か別の者に」
「お前に言っておいてなんだが、フェイルンが心配だ」
「私も後始末が済んだら、デミムールへ行きます」
「判った」
ローダーの閉鎖循環換気システムは24時間もつ
AW21まで3時間
AW21からコールヒドラまで2時間
救出に3時間
基地まで6時間
洗浄に2時間
十分な時間だ

「中佐、もう6時間にもなりますよ〜〜」
「エアーは24時間持つんだから、準備に時間が掛かってるだけよ」

「DSRL降下準備完了、DSRVモニターの為発艦します」
DSRVから海底の様子が映し出される
折り重なり沈むX4の姿が映し出された
「ヤオ小隊確認しました、DSRLの作業モニター開始します」
DSRLがヤオ達の機体に接触する
「通信を試してみる」
「了解」
「こちらオムニ海軍、沈没船艇救出班、ヤオ中佐聞こえますか」
きた!ちゃんと気づいてくれていた
「こちらヤオ小隊、全員無事」
「了解、先にシェーレ小隊は回収しました、貴方がたで全て完了します」
「なお艦載しても外に出ない様お願いします、帰港後洗浄作業終了まで解りましたか」
「了解した」
「では回収作業を開始します」

DSRLがバルーンを機体に取り付け出す
バルーンにエアーが送り込まれ、機体が浮上
そのまま横へスライド
カーゴバード発射管が開け、機体を収納した
発射管が閉じられ、圧縮エアーによって排水される
通信が可能となった
「セルマ聞こえる」
「ハイ中佐」
「最終報告を」
「全員無事、索敵結果、敵影なし、市街地、対人反応無」
「解ったわ」
「エイプリル、超伝導推進システム作動最大船速!」
「アーイ」

「行ったか、我々の潜水艇は」
「はい、既に中佐殿の上官を待っています」
「詰めに入るか」
「これでオムニは・・」
「今の政権ひっくり返してみせる」

デミムール海軍基地
オーニングされたドックにエイプリルが浮上
気密服にガイガーを持った兵士が検査を開始
発射管が開かれローダーがクレーンで引き上げられた
多少の放射能反応があったが、簡単な洗浄で済んだ
オーニングが取り払われローダーのコックピットが開いた

禾人とフェイロンが下から見上げて
「良くやった、お疲れ!」
「お兄ちゃん!」
「2週間の特別休暇だ」
ローダーから降りてくる
8人が禾人を囲むように集まった
「ミリー、フェイス、フレデリカ、セルマ、ミキ、ミチコ、エイミー、フェイルン、無事でなによりだった」
「2週間も休暇貰えるなんて」
「ああ」
「約束果して貰えるね」
「そうも言えないぞ、フェイ」
「なんで、お兄ちゃん?」
割り込むように一人の男が
「さてみなさん、これから2週間検査の為入院して頂きます」
「え〜〜〜〜〜!」
「オムニ最初の爆心地にいたのだから当然だ」
「買い物は!」
禾人がにやにやしながら
「ノルンと2人で行ってくるから安心しろ!」
「えーそれはないよぉ」
「お見舞い行ってやるから」
ジープに詰まれ8人は軍病院へと運ばれた

数日後
「ねーフェイス」
「なんだ」
「暫く、ゆっくりできそうね」
ミチコが
「その後が大変だよきっと、後れ取り戻さないと行けないから」
「あ―今日も血取られるのか!」
「中佐は注射がきらいだもんね」
「好きな奴いるか?」
「エイミーは黙っているわ」
「アメ貰っただけで静かになる奴と一緒にするな!」

「相変わらず元気そうだな」
「ホント、体力有り余ってますね」
「お兄ちゃん、お姉ちゃん!」
「ほらケーキ」
エイミーがお茶の準備を始めた
「どうだ入院生活は?」
「体力有り余ってるわ」
「後少しで退院できるから大人しくしていてね」
「大人しくしていろってのが無理よ」
「ところで中将、あの事件はあれで事無きを得たのでしょうか」
「そうだな、敵の目的が解らないが取りあえずは大丈夫だと思う」
「ニュースにはならなかったの?」
「絶海の孤島だったからな、誰にも見られていない」
「そう」
「それとあの件は、演習だからな」
「解ってる」

静かになった病室にテレビから、臨時ニュ−スが流れ出した

『臨時ニュースをお伝えします。
オムニ空軍が反政府組織ガイアの拠点、コールヒドラ島に対して、核攻撃を実施
島民、250名を巻き添えにした模様です。』

全員がテレビに釘付けになった
禾人は窓際に立ち、下の自分のオープンカーを介して大統領官邸と連絡を取り始めた

流れる映像は衝撃的だった
黒焦げになった死体
焼け爛れた町
指先より皮を引きずって歩く男
流石これには、何人か洗面所に走り出した
禾人が
「これが敵の目的だ、総て敵側が仕組んだ芝居、オムニ政府が崩壊する」
一言いうと

「ジョニー、それでは此処のモルグにあるんだな」
「禾人、なにが気になる」
「おまえ、自分が言った事覚えてないのか」
「何の事だ」
「献体だ、盗まれたって言っていたよな、ニュースに流れているのは、女子供ばかりだ」
「その方が悲惨だからだろ」
「ちがうな、出てきた男はSFXだったし、部下の調べでは誰もいなかった!」
「見落としただけだろ」
「其れはない、みんなプロだ」
「しかし、」
「だったら、こっちに来い!」
「なにをする気だ」
「死体を調べる」
「今、大統領官邸を出られない、誰かほかの人間を送る」
「オムニが崩壊するぞ、爆撃機の離着陸シーン、発射シーン、爆発」
「しかし!」
「遺体があった事は、黙っていたじゃないか!!」
「NSCと大統領の考えで黙っていただけだ!」
「わかった、お前と言い合ってもしょうがない、あと、ハイドッリヒ大佐はどうしている」
「原子炉へ戻っているが?」
「通信は?」
「おかしいんだ、連絡が取れない」
「解った、あそこは俺に任せてくれ」

通信をSDSに切り替えると
「ハルゼー!S1だ!目標BK−21原子炉、ハイドリッヒが自刃の可能性がある」
「了解!制圧後は?」
「高速増殖炉停止、燃料棒引き抜き冷却後、コンクリートによる完全封鎖」
「イエッサー!!」

30分後、立会人が現われ地下の解剖室へ
「フェイ、セルマ、ホントに付いてくるのか?」
「ええ」
「ええ、中佐に任務を失敗したと思われてますので、汚名を晴らしたいと思います」
「フェイさっきのは、言い過ぎだ、私ですらセルマが失敗したと思ってないのに」
「でも!あの死体は!」
「仕組まれた事!」
「中将、貴方の部下で仲間割れですか」
「いいや、仲が良いだけです、じゃれあっているんですよ」
やがて、気密服に着替え、死体の前に立つ
「どうします?中将?」
「1体だけでは解らないだろう5体並べてくれ」
「五体も解剖するんですか?」
禾人は黙って注射器で胸を刺した、5体続けて5本の注射器が並んだ
「後ガスクロ斯ければ判るだろう」
「ホルマリンで」
「ああ」
死体でアンモニアは形成されてもホルマリンは形成されない
ガスクロマトグラフィーの結果が表れ、禾人の推測が的中した
「中将!至急大統領に報告致します」
「ああ、ジョニーによろしく」

「フェイ、お前が部下を信じないと誰が庇う」
「でも、」
「敵の策略にはまるなよ」
「セルマ大尉、済まなかった、私の思慮不足だ」
「中佐・・」

禾人の通信ユニットが鳴る
「何だ」
「こちら制圧隊ハルゼー」
「上手く行ったか」
「ハイドリッヒ大佐、自刃致しました」
「なに!!」
「部下が見取ったそうです、貴方当ての手紙が」
「判った、作戦を進めてくれ」
「イエッサー!」
禾人の頬を一筋の水滴が流れた
「どうしました」
「ハイドリッヒが自刃だ責任を取った、だが生きて責務を果たすのが辛くても良いのだが」
「あの方は、騎士でなく武士でしたね」
「ああ」
禾人は息を詰まらせながら
「フェイ、これで帰る」
「お、おにいちゃん…」
誰もそれ以上声を駈けられなかった

大統領官邸に押しかける、記者
テレビに弁明が続く
「これでオムニ政府も、信頼を無くす」
「これで連合軍がくれば」
「ジアースの勝利だ」
高らかに笑いが響いていた

そして、
「ファン中佐、私事でし訳ないが、この人間のやり方を読んで次の一手を頼みたいんだが」
「はい?」
ファンがその人間の生き方考え方を読んで、次の一手を考える
「先に、この手紙の一手と同じか、確認したい」
「そうですか、では3−4ルーク」
手紙を読む
「禾人、最後まで付き合えなかったが、次の1手は、3−4ルークだ、もっと辛い事があると思うが逃げるのも自由
戦うのも自由、雪を溶かして進めたら進め、雪に倒れたら・・。待っている」
「中将、其れは」
「いやなんでもない、先を続けよう」
やがて25手目でファンの勝利と成った
「おつかれさま、ウィスキーでも付き合ってくれないか?」
「たまには、いいですよ」
3つグラスを用意、カチワリ氷を入れるとバーボンを注ぐ
「このグラスは?」
「そのチェスをしていたハイドリッヒの分だ」
「自刃した」
「ああ」
「それじゃ、乾杯」
「ハイドリッヒ大佐とは仲がよろしかったんですか?」
「撃墜争いした仲だ、良いコンビだったんだぜ」
「そーなんですか」
「な!ハイドリッヒ、直ぐ俺もそっちに行くから待っていろ」
禾人がグラスを高々とあげると
反応するようにハイドリッヒ大佐に入れたグラスがなっり
「え!」
ファンの背筋を寒い物が走りぬけて行った。

第二部完