7月16日 曇りときどき霧

7:38 上ホロ小屋発(高度計:1815m, 温度計:18.9℃)


歩き始めると、道の左(北)側は火山の荒々しい眺め、右側は広大な花畑と、まったく対照的な光景が不思議だ。行く手には道がすうっと伸び、雲の中へ消えていた。大砲岩までは数十分だったが、その間に周辺はすっかりガスに包まれてしまった。小屋からは見えた1921mのピークももうわからない。花も乏しくなり、道はザレた痩せ尾根に変わった。空は黒っぽく、北からの風が強い。あまり良い傾向ではない。
8:12 1921mのピーク(1895m, 15.5℃)


8:46 十勝岳登頂(2050m, 16.1℃)
山頂には10人ほどの人がいて、まあまあの賑わいだった。まともな山頂標識がないのが意外だった。風下側に陣取ると風は見事にブロックされ、空も明るく、暑いくらいだった。コーヒーを飲んだりしてゆっくりと休んだ。
山頂発


この先は砂礫の道となり、悪天時は迷いやすいとガイドブックにはあるが、踏み跡もしっかり付いているし、10mくらいの間隔で道標もある。少なくとも、今日のような明るいガスならば、よほどのことがなければ大丈夫だろうと思った(念のために合わせたコンパスも見る必要がなかった)。むしろ、ルートファインディングで一番難しかったのは、山頂からの下りがどこから始まるのかわかりにくいところだと思った。実際、望岳台に下りようとして上ホロ方面に行ってしまった人がいたくらいだ。
下る

10:33 最低鞍部(1790m, 18.5℃)

我々が歩いているのは鋸岳から張り出した小さな尾根で、ここを下りきれば最低鞍部だ。このあたりから周りに植物が見られるようになってきた。行く手が明るくなってきて、これから歩く道が見えた。外輪山の外側斜面を斜上していく。
斜上の終わり


だんだん明るくなってきて、時折、雲の中から十勝岳が見えたりした。ずいぶん遠い。鋸岳の雪渓がおもしろい形をしていた。クリオネみたいだ。先ほどずうっと下った道も見える。
斜上を終え稜線に出たところは平坦だったので、岩の上にザックを降ろして休憩した。その間、美瑛岳方面から山岳マラソンらしき集団が2組も通り過ぎた。
12:06 美瑛岳への分岐(1990m, 19.3℃)


登りきった頃からまたまたガスが濃くなり、風はそれまでにないほど強くなってきた。道はまたトラバースになった。そしてこの周辺は花がきれいだった。雪が解けたばかりと見えて、チングルマやエゾツガザクラの群落が斜面を埋めていたのだ。
12:24 美瑛岳登頂(2035m, 17.5℃)

10分ほど歩くと、突然風が弱くなった。そういう地形なのだろうか。なおも進むと深い霧のなかにぼうっと岩峰が浮かびあがり、標識があるのが見える。それが山頂だった。
山頂周辺はなぜか風が弱かった。こんなことなら飲み物くらい持ってくりゃよかったと思った。証拠写真だけ撮って、深い霧の中を分岐へと戻る。ここでまたしても山岳マラソンパーティに出会った。十勝岳以降は普通の登山者とは1組しか会っていなかったので、なんだかヘンな感じだ。
12:43 再び分岐(1985m, 17.5℃)

重いザックを背負い、ガレた道を下る。風は一向に収まる気配はない。湿り気を含んでいるので、メガネがあっという間に曇り、そして水滴だらけになった。行動時間はまだ5時間ほどだというのに、足取りも気分も重苦しい。一心不乱に足元を見つめながら進む。ペンキ印を逃したらたいへんだ。
下っている間、かつりんの頭を支配していたのは「この強風でテントが張れるか」ということだった。今日は3連休の初日で、小屋は混雑するだろう。美瑛富士避難小屋は平屋建てでかなり小さく、満員になるのは目に見えている。小屋に避難することになったら、全員で膝小僧を抱えて眠れぬ夜を過ごすことになるかもしれない。
13:28 美瑛富士分岐(1720m, 16.7℃)

美瑛富士の裾を回るようについている道はハイマツの中の刈り払いの道で、根っこに足をひっかけないように注意しながら歩いた。山の風下側にまわり、さらにハイマツに囲まれた道は今までと打って変わって無風状態。日ごろ鬱陶しいハイマツのなんとありがたいことか。分岐にごく近い地点で残雪をトラバースし、その後も刈り払いの道を進む。小屋が満員かつ強風でテントが張れない場合を想定して、途中にテントを張れそうなスペースがないか注意深く観察しながら歩くが、さすがにそれは不可能なようだった。オプタテシケ方面への道を分けて数分すると小屋とテントが見えてきた。
14:10 美瑛富士避難小屋着(1645m, 18.5℃)

風の機嫌が悪くならないうちに素早くテントを張って中でくつろぐと、テントで良かった、とつくづく思った。小屋の周辺は花畑が凄い。チングルマやハクサンチドリ、ウコンウツギやエゾヒメクワガタなどが文字通り咲き乱れていた。ハクサンチドリは、ノーマルのものとウズラバが混生していた。チングルマは花期の終盤のようだった。ナキウサギが頻りに鳴いていた。
水場はかなり遠く、涸沢林道方面に下ったところか、先ほど通ってきた美瑛富士の南側の雪渓からとる。どちらも遠く、前者は往復30分、後者は40分くらいかかる。いずれも8月には涸れてしまうようだ。かつりんは前者をとった。小屋から下って最初の雪渓では水をとれるところがなく困ったが、そのままさらに登山道を下ったら道端に雪渓尻がかかっているところがあり助かった。でも流量はかなり少なかった。
夕食はカレー。初めて「山岳グルメ」シリーズを使ってみた。野菜カレーに鶏肉を入れてみたが、なかなかスパイシーで、レトルトとは違う風味が楽しめた。調理に時間がかかるのが難点だが、今日は時間はたっぷりあるのでまあいいだろう。レトルトよりも水を多く使うのは仕方のないところ。次の機会にはクミンとかのスパイスを足してみよう。
その後テントは増えて12張となった。それでもまだスペースはあった。小屋は超満員だったようだ。