5月6日 晴れのち曇り
今日は今までで一番天気が良さそうだ。それでも西から下り坂で、このあたりも夜には雨が降るという。風が少し強く、あいかわらずブナの芽の外皮が花びらのようにひらひらと舞っていた。チェックアウトして板とブーツの宅配を頼み、歩いてセンターに行こうとすると、「センターなら送りますよ」とのこと。歩くつもりで1時間早く準備をしたのだが、これで思わず時間ができてしまった。
出発まではフロントに置いてあった月山やらの写真集を眺めて過ごした。
散策スタート
9:30の回の参加者は我々を含めて6名。他の4名は50歳くらいの2組の夫婦だった。ガイド氏は東北弁で、地元の人のようだ。総勢7名、準備体操をしてから出発。落葉松

この周辺のブナは、曲がっているため木材に適さないという理由で過去に伐採され、そこにカラマツが植えられた。しかしカラマツは弾力性に乏しく、雪の重みに耐えられず結局つぶれてしまう。そして再び、豪雪にも耐えうる弾力のあるブナの森に返る最中であるということだ。原生林に対して、このような林を二次林という。
なかなかお目にかかれないというカラマツの花も見ることができた。
ウサギ

ガイド「さてみなさん、ウサギはどうやってこの枝を食べたのでしょう」
参加者「そこまで雪が積もってたのでは」
ガイド「・・・正解。誰かに『ウサギが跳び上がった』とか言ってほすかったな〜」
そう、そんな高いところにまで雪が積もっていたのだ。今現在も雪は2mは積もっている。ということは冬には4mほども積雪があるということだ。
このような食痕はあちらこちらに見られた。
ブナの花

まだほころびかけの花が多かったが、これからばんばん咲くことだろう。完全に花開くと雄花がさくらんぼのようにぶら下がる。
ヤドリギ

「口の中に入れて、手を使わずに種を口から吹き出してみてください」
やってみると、強力なネバネバがあって口の中にくっついて出てこない。ヤドリギの実は地面に落ちると発芽しない。鳥に食べてもらってフンとして落としてもらい、そのときに持ち前のこの粘着力で木にくっついて生きていく。
ウサギのフンは普通丸くコロコロしているが、ヤドリギを食べたものはネチョネチョとしてくっつき合っていた。ウサギは臭いのまったくないフンをするくらいの強力な消化力を持つのに、それでもヤドリギのネバネバまでは分解できない。このようなフンが多いのも今年の特徴ということだ。
弾力

そんなブナの弾力の実験。斜めに向いている幹に木登りをしていく。大人ひとりくらいが登っても絶対に折れない。かなり先の方まで行っても大丈夫。よっぽど細いのはまずいが。
周海沼


「神秘的なブルーをお見せします」ということで案内されたのは周海沼。なかなか美しかったが、残念ながらこの頃から曇ってきたので光がイマイチ。このブルーの写真をきれいに撮りたいと言っていたガイド氏も不満だったようだ。
マンサク

近くに動物のフンがごっそりあった。カモシカのものということだ。カモシカは繰り返し同じ場所にフンをするという。ウサギのは丸いがカモシカはアーモンド型。
オレンジ色のかわいらしい鳥を見つけた。偶然にも参加者のひとりが鳥ヤさんで、ルリビタキだと教えてくれた。ルリビタキはその後もちょくちょくその愛らしい姿を見せてくれた。
湧き水

10年前を思い出す。下山時に水を切らしてしまい、真夏の日差しにあぶられ強烈に渇きながらの歩きだった。下山して、ここではないが湧き水をむさぼるように飲んで癒された。それ以来、月山の湧き水は自分の中ではナンバー・ワンの水だ。テルモスに入れて持ち帰ることにした。家でコーヒーでも淹れて飲もう。
付近にはサワグルミの木もあった。この木の芽は外皮をまとわずに冬を越す。葉っぱが外皮そのものなのだ。
原生林

幹を見ると、どの木もある一定のラインより上が黒っぽい。苔がついているのだ。おそらくそのラインより下は、積雪があるので苔がつかないのだろうと思った。
こういう森を歩きたかったのだ。前日・前々日は若い木ばかりが目立っていたように思う。二次林ばかり歩いていたのかなあ。初日にこのツアーに参加していたら、もっといろいろ楽しめたかもしれないなと思った。
大ブナと大トチ


ブナのような寿命の短い木は集団で生活するが、トチは寿命が長く、ひとりで生きていく。ひとりなので立派な木になる。
終了
最後の方は他の参加者からの質問が相次いでなかなか進まず(「あの山はなんだ」とか)、バスの時刻が気になってやきもきしながら11:45頃センターに帰着。整理体操をする他の5名をよそに、大慌てで身支度を整え挨拶もそこそこにバス停へと向かった。センターの管理舗道から県道に出たときは11:59。月山荘バス停まで歩く途中でバスがやってきたので手を上げて停めた。自由乗降区間でよかった。帰宅

東京は雨が降っていた。普段の山歩きでは必ず持っていく傘を、いつもどうせ使わないからと今回は持っていかなかった。そういうときに限って降る。