スプートニクの恋人講談社文庫 2001年

ジャズは少ないです。つうか、ミュージシャンが「誰々みたいな顔」のような比喩に使われているだけで、音楽じたいは引用されていないです。ちょっと寂しい。

ディジー・ガレスピー11ページ

視力はとくに悪くなかったのにディジー・ガレスピーみたいなセルロイドの黒縁の眼鏡をかけ、むなしく空をにらんでいた。

Charlie Parker

Bird And Diz

Dizzy Gillespie (tp), Charlie Parker (as), Thelonious Monk (p), Curley Russell (b), Buddy Rich (ds)

ジャケ写の向かって右側の人が Gillespie さんです。ええ、そうです、メガネのモデルなだけで、音楽の引用じゃあないですね。
"The Genius of Charlie Parker" のシリーズなんで、Parker のアルバムと言える。ただ小説を読んだとき、このジャケットが真っ先に思い浮かんだわけで。実はこのアルバムは Parker と Monk が共演した唯一のスタジオ録音盤なんだとか。演奏では、"Leap Frog" の疾走感がいい感じ。4バース・チェンジはなかなかの迫力だ。

1950.6.6録音

「マック・ザ・ナイフ」102ページ

「君のいないぼくの生活は、『マック・ザ・ナイフ』の入っていない『ベスト・オブ・ボビー・ダーリン』みたいなものだ」

Ella Fitzgerald

Mack The Knife -- Ella In Berlin

Ella Fitzgerald (vo), Paul Smith (p), Jim Hall (g), Wilfred Middlebrooks (b), Gus Johnson (ds)

ジャズ・スタンダードの王道的な曲だけど、ボビー・ダーリンなんてジャズシンガー知らないなあ、と思ったら、アイドルさんなのですか。え、これでビルボード1位獲ったんですか。へえ。
とは言っても、さしあたって聴く気もおきないので、とりあえず "Mack The Knife" の定番をあげてみた。だんだん盛り上がっていく展開がイイ。

1960.2.13録音

ベン・ウェブスター277ページ

信号で停止する大型トラックが、晩年のベン・ウェブスターのテナートーンを思わせる、かすれたエアブレーキの音を立てた。

Ben Webster

Soulville

Ben Webster (ts), Oscar Peterson (p), Herb Ellis (g), Ray Brown (b), Stan Levey (ds)

ものっそい低いかすれた音でボーボー吹く人。ええ、そうです、音の比喩なだけで、音楽の引用じゃあないですね。
これは Ben の代表作。"Lover Come Back To Me" の朗々とした演奏が何とも言えず良い。Oscar Peterson はあまり好きなピアニストじゃないんだけど、ここでは聞ける。
ところで、Ben が亡くなったのは'73年なので、'57年録音の本作は晩年とはいえないと思うのだけど、後の作品はもっとブレーキ的な音なのかなあ。

1957.10.15録音

この小説中に出てくる他の音楽・ミュージシャンなど