ねじまき鳥クロニクル新潮文庫 1997年

クラシックの、それも知らない曲ばかりなんで、表現がいまいちピンときません。

エリック・ドルフィー第1部 147ページ

死の床にあるダライ・ラマに向かって、エリック・ドルフィーがバス・クラリネットの音色の変化によって、自動車のエンジン・オイルの選択の重要性を説いている方が、あるいは我々の会話よりはいくぶん有益で効果的だったかもしれない。

Outwardbound

Eric Dolphy

Outwardbound

Eric Dolphy (as, bcl, fl), Freddie Hubbard (tp), Jackie Byard (p), George Tucker (b), Roy Haynes (ds)

Dolphy のものでお気に入りの作品を挙げてみた。全6曲のうち2曲がバス・クラリネットで、特に Green Dolphin Street でさまざまな音色が聴ける。まあとにかく物凄く無意味であるという例えなわけです。ダライ・ラマに説いているのが Miles でも Sinatra でもなくて Dolphy なところがいい。

1960.4.1録音

アルバート・アイラー、ドン・チェリー、セシル・テイラー第1部 152ページ

アルバート・アイラーやドン・チェリーやセシル・テイラーの熱烈な信奉者が駅前の商店街のクリーニング屋の主人になるというようなことは果してあるのだろうか、と僕はふと思った。

My Name Is Albert Ayler

Albert Ayler

My Name Is Albert Ayler

Albert Ayler (ss, ts), Niels Bronsted (p), Niels Henning Ørsted Pedersen (b), Ronnie Gardiner (ds)

アヴァンギャルドな御三方。中でもお気に入りの Ayler のこのアルバムは、サックスがまるで唸り声のように聞こえ、なんとも言えない不安感に満ちている。初めて自分の部屋に女の子を呼んだときに決してかけてはいけないCDランキング第2位(1位は John Lennon "Double Fantasy")。そんな音楽なんで、駅前とか近所のクリーニング屋でかかっていたら、そらあもう当然びっくりすることでしょう。

1963.1.14録音

フランク・シナトラ「ドリーム」「リトル・ガール・ブルー」第2部 352ページ

そのプールではいつもバックグラウンド・ミュージックが流れているのだが、その時にかかっていたのはフランク・シナトラだった。『ドリーム』とか『リトル・ガール・ブルー』といったような古い唄だ。僕はそれを聴くともなく聴きながら二十五メートル・プールをゆっくりと何度も何度も往復していた。

残念ながら、私はこの2曲の入っているCDを持っていません。

キース・ジャレット第3部 92ページ

あちこちに観葉植物の鉢が置かれ、天井の真っ黒なボーズのスピーカーからはキース・ジャレットのいささかまわりくどいソロピアノが小さな音で流れていた。

Facing You

Keith Jarrett

Facing You

Keith Jarrett (p)

Keith のソロピアノと言えば Köln Concert が有名だが、まわりくどいという点ではこちらがはるかに上。左手が妙にうるさい。それよりなにより唸り声がやかましい。

1972年録音

この小説中に出てくる他の音楽・ミュージシャンなど
  1. 第1部 泥棒かささぎ編
  2. 第2部 予言する鳥編
  3. 第3部 鳥刺し男編