☆ 文政十三年(1830)
◯『きゝのまに/\』〔未刊随筆〕⑥128(喜多村信節記・天明元年~嘉永六年記事)
(文政十三年記事)
〝これより已前に宇祢次と云細工人有て、種々奇怪の物を造れり、木彫のみならず、絹或は獣皮諸物を用
ひて作る、一年葺屋町河岸に奇怪の物を数多みせ物に出せり、又其後浅草奥山に人魚の五尺ばかりなる
を出す、是等は獣皮魚皮をあはせて作れり、其頃玄冶店に丸屋九兵衛といふ道具中買する者、彼ふき屋
町にてみせ物としたる内の徳利子といへるをもて来て、余にみす、面部は薄き皮にて張りて、内に牽糸
を設て面皮延び縮みをなす、生るが如し、髪は獣毛をさながら用たれば細工の跡しれず、俳優尾上松緑
なども、これが細工を用ひけると也〟