Top             浮世絵文献資料館            浮世絵師総覧               ☆ うぐいす 鴬             浮世絵事典  ◯『江戸名物百題狂歌集』文々舎蟹子丸撰 岳亭画(江戸後期刊)   (ARC古典籍ポータルデータベース画像)〈刊年未詳。選者葛飾蟹子丸は天保八年(1837)没〉   〝鴬    花の香は梅見の客にとめさせて羽袖をふるふ枝のうぐひす    花笠の雨にぬれてやうぐひすの柳のみのをかりにきてなく    舟板をもて作りたる床の間に琴ひきそむる篭のうぐひす    是もまた壺の中なる天地や月日のめぐるうぐひすの篭    鴬は口にふくめる玉つしまかすみの衣をすきとほるこゑ    所がらねぎしの里のうぐひすにぬはせて見たき園の竹笠    青柳のいと一筋にとまりてや須磨琴ひきてあそぶうぐひす    唐うたを教へし蜘を餌にはみて大和哥よむ春のうぐひす    鴬の籠はゆかしき格子窓琴ををしゆる家にやあるらん(画賛)    汝がぬふ笠も名におふかゞやしき梅もゆかりにき来なく鴬    枝葉しげき竹の根岸の隠家も月日はめぐる鴬のこゑ    盲から吾妻の森のうぐひすははたはりのある声をたてけり    夜飼せしくせのつきてやまど近く火ともす梅に鴬のなく    うゑ木やの手入の梅にうぐひすの声も高田のほとりにはなく    雪ふかき山も春来てうぐひすのこゑよりこぼす瀧のしら玉    花笠をぬはでやあらんうぐひすよのどけき空にいとの◯へば    梅がゝをふきしく風に素直なる柳の笠をぬふかうぐひす    あれはてし賤がわら屋もうらやまし鳴うぐひすの月日もるれば    竹のはのしげみになけばうぐひすの声の月日も朧なりけり    漸々とおさなき春の立ころはまだ舌足らぬ藪のうぐひす    梅に来て旅うぐひすはひと夜さの無心躰なる哥やよむらん    よみ哥は和泉式部やまねぶらん軒ばの梅になるゝうぐひす    だみもせずその音もたかき大江戸の根岸の里のうぐひすの声    江戸なれば京鴬もむらさきのうへなき色に染しはつこゑ    夜飼せし籠のうぐひす庭のこゑはるはさうしのうち外に聞    天地はとても及ばじ諸人のこゝろうごかすうぐひすのうた    ぬふ糸の雨にぬれなん柳にもはな笠きせよ梅のうぐひす    〈根岸 高田 夜飼とは鴬を早鳴きさせるために、冬の夜、灯をともしたり餌を与えたりすること〉    ☆ 天保年間(1830~1843)  ◯『増訂武江年表』2p101(斎藤月岑著・嘉永元年脱稿・同三年刊)   (天保年間記事)   〝皇朝を弄(モテアソ)ぶ事いにしへよりかはらず。然るに近年殊に盛にして、養ふ事も次第にたくみになり、    毎年正月二月、此の鳥を飼ふともがら、都下の鳥屋茶店等に会して、音声の美悪を論じ風流の名を設く。    近頃春日山と号するもの尤も絶妙にして天下第一と称し、三笠山と号するもの是れに亜(ツ)げりとぞ。     筠庭云ふ、鴬はむかしより付子(ツケコ)と云ふ事をして育すれば、よき鳥一羽あれば、又もよき鳥出来     し故に、むかし鶉飼はそれを譏(ソシ)れり。鶉は如何程よき鳥にて高金なるも、それ一つにて他にうつ     すことならぬものにあればなり。然るを近時のやうを聞くに、これも今は卵をとりてかへさするとい     へり。天工を奪ふが如し〟