◯『此花』第九号(朝倉亀三著 此花社 大正二年(1913)六月刊)
(国立国会図書館デジタルコレクション)
◇「江戸の祇園会」菊池広重
〝毎年六月五日は大伝馬町、同七日は南伝馬町、十日は小舟町の天王宮みやだしなり、三所ともいづれ劣
らぬ賑ひにして、造庭などの妙をこらし金銀を惜まず競ひける、先評して申さば、大伝馬町は大様にし
て物持風あり、中橋は勇み肌にして職人風あり、小舟町は商人気質に勇みを加へたるものとす、
三祇園の名物は、大伝馬町は亀田鵬斎先生のかゝれし大幟。小舟町は中村弥太夫氏がものせし天王おま
つりの仮名文字幟、紙製の山門、大〆(おほじめ)、橘町は二王尊の大幟、南伝馬町は鞘町の四方大行灯、
同町の大幟なんど例年のものなり、
この四方大行灯は、鞘町又は大鋸町の四ッ辻一杯にかゝるものなれば、全く巨大なる絵にて、当時北斎
又は北鵞、扨は国芳又芳虎などの筆になりしかば、人々待兼て見物せし事なりし〟