Top 浮世絵文献資料館 浮世絵師総覧
☆ たなばた 七夕 浮世絵事典
◯『江戸名物百題狂歌集』文々舎蟹子丸撰 岳亭画(江戸後期刊)
(ARC古典籍ポータルデータベース画像)〈選者葛飾蟹子丸は天保八年(1837)没〉
〝七夕
手向ぬる琴は登れど天の川岩越す浪はいとふなるらん
天の川みえすく星のさゞれ石わたりあふよの浅瀬なるらん
おり姫に天向しきぬの空いろに星縫みする袖のかちの葉
蜘のゐに似し麻のはの模様衣さゝがに姫に今宵手むけん
夜のあけぬうちをさかりとひさぐなり朝㒵姫にそなふ竹売
二十八の宿はあるにひと夜とはうすきちぎりと星やかこたん
切立の小袖うすのは世にとめるあきびとよとてちぎる七夕
たまにあふ星やわかれを惜みけんぬれかへりたる笹のたんざく
朝風に空の真袖のわかるゝは今ごろ星のかへさなるらん
たなばたに手むけのうたも雨こひの小町がふりはこのまさりけり
わらはべもいろはを書て角文字の牛ひくほしに手向てしかな
一夜をば惜めるほしのかし小袖ふた藍そめやかなひたるらめ
ほし合にわたせる天のうきはしもなかだちするは鳥のこそあれ
まれにあふほしにその侭さゝげばやふし間も長く生ふるわか竹
くもりてはあはれぬほしの手向にはこよひはれぎの小そでかさばや
芋のはの露もてうたをかゝばやなまろびあふてうほしの手向に
子の多き芋の露もてたなばたにかく短ざくは誰かはらみうた
たなばたのはしとたはむやかさゝぎのはに葉かさねてひさぐ竹売
命さへ逢ふにかうるを彦ほしはいそがぬ顔に牛をひくらん
手向つる朝㒵姫に似気なきは日のもるばかりなつのうす衣
ほし合にわたせる天のうきはしも媒(なかだち)するは鳥にこそあれ(画賛)〟
〈琴 朝顔姫(織姫の異名) 織姫にさゝがに姫(衣通姫)のイメージを重ねる〉
◯『絵本風俗往来』上編 菊池貴一郎(四世広重)著 東陽堂 明治三十八年(1905)十二月刊
(国立国会図書館デジタルコレクション)(67/98コマ)
〝七月七日 七夕祭り
例年七月七日は七夕祭とて、色紙結ひ付けたる竹に、酸漿(ほうづき)を幾箇(いくつ)となく数珠の如く
つらねたるを結び、又色紙にて切りたる網幷に色紙の吹き流し、扨(さて)は紙製の硯・筆・水瓜の切口
・つづみ・太鼓・算盤・大幅帳などをつりて、高く屋上に立つること昨日よりなり、勿論、今日夕(ゆ
ふ)には一本残らず取り払ふて、川に捨つるの習ひなり、其の立てつらなりし様は実に見事にして、空
もおほふ斗(ばかり)なるは、大江戸の大平、繁昌なるを知られたり
此の数日以前より、幼童筆学の師は七夕の詩歌を手本に書して習はしめ、七夕を立つる色紙へかきて
上る時は筆道の上達するなど申伝へたるなり、又忌服ある家にては、七夕を立つることを忌むの習ひ
なり〟