Top 浮世絵文献資料館浮世絵師総覧 ☆ たけざわ とうじ 竹沢 藤治 二代浮世絵事典 ◯『明治世相百話』(山本笑月著・第一書房・昭和十一年(1936)刊 ◇「曲独楽の竹沢藤治 芝居がかりで得意の早業」p167 〝曲独楽で鳴らした竹沢藤治 、芝居がかりの大仕掛けで大した人気。初代は両国の定小屋で錦絵にまで出 た大当り、その親譲りの二代目藤治が明治初年に浅草奥山を始め、猿若町の芝居小屋などで華々しく興 行、本芸の独楽のはか、早変り、宙乗り、水芸等のケレソで大受け、十五、六年頃を全盛に満都の絶讃。 当時は四十五、六の男盛り、若太夫の頃から美少年で知られた男前、太い髷に結ってきりっとした顔立 ち、華やかな裃(カミシモ)姿で押出しの立派さ、ちよっと先代片岡我童の面影。舞台はすべて芝居がかりで 粗末ながら大道具は金襖や夜桜などの書割、幕が明くと口上につれて太夫お目通り、お定まりの衣紋流 し、扇子止め、羽子板の曲、大小の独楽の扱いは多年の手練、一尺八寸の大独楽を手先で回し、中から 十数個の独楽を取り出し、舞台に置くとそのまま回る手先の早業、これらは前芸。 一尺の提灯独楽、心棒を引き上げると二尺余りの長提灯になったり、正面に四方開きの花万灯、独楽が 欄干づたいにその中へことりと消える。万灯はパッと開いて真白な鶏に変ったり、まずこの種の華やか な芸当、その問にちょいちょい得意の早変り、水芸には女の弟子が二人左右に並んで、独楽を使いなが ら扇子の先や独楽の心棒から盛んに噴水、私は見ないが水中飛込みの早変りも藤治の十八番。 大切りには宙乗り所作事、奴凧や雷公が呼び物、もちろん本衣裳で振りも確か、奴凧の狂いなどはらは らさせた。それが花道上から舞台上の幕霞へ消えたと思うとたちまち変る裃姿、大独楽を手にして舞台 に立つその速さ、さすがに早変りの名人といわれただけに超高速度、当時の見物は全く堪能した〟