Top 浮世絵文献資料館浮世絵師総覧 ☆ たからぶね 宝船浮世絵事典 ◯『絵本風俗往来』上編 菊池貴一郎(四世広重)著 東陽堂 明治三十八年(1905)十二月刊(国立国会図書館デジタルコレクション) (15/98コマ) 〝正月之部宝船 七福神乗合船の図の上に「長き夜のとおの眠りのみな目ざめ、波のり船の音のよきかな」といふ歌を、 当時駿河半紙といひし紙半枚に墨摺にしたるを売り来たる、二日の正午(ひる)過ぎる頃より夜にかけ て売る者繁し「お宝/\エー宝船/\」と呼ぶ声、町、屋敷前共聞へざるはなし、此の宝船を枕の下 へ敷きて二日の夜に眠れば、初夢の吉兆を見(み)、今年の開運といふ、又宝船を売り歩けば、身の幸 福を得(う)るとて、随分身柄よき若旦那達の道楽に出でけるもありて、知れる家に呼び止められ、互 ひに笑ふなどもありたり、又は職人衆の宝船売りのお得意へ呼び入れられ、御酒の幸ひに預かりて端 歌清元の隠芸の役に立つなど二日の宵の口にありたり〟 ◯『浮世絵』第弐拾号 (酒井庄吉編 浮世絵社 大正六年(1917)一月刊)(国立国会図書館デジタルコレクション) (19/26コマ) 〝宝船の川柳 数万艘鱗形屋は暮に擢(こ)ぐ (正月に売出さむとて年末に仕入れ置く事例の鱗形屋か) 宝船日本(ひのもと)からも一人乗り (七福神は支那天竺の寄集り者 其中に恵美須のみ日本也) 宝船逆櫓にしても同じ夢 (ながきよの云々の歌は首尾何れより読むも同じとの意)〈回文歌「長き夜の遠の眠りの皆目覚め波乗り船の音の良きかな」と同じで、逆さに敷いても見る夢は同じ〉 四十二の灘を乗抜く宝船 (四十二の厄歳男 今年こそは無事息災にと祈願の体なり) 紙屑のたまり初めは宝船 (錦絵ならば保存せしならむが呼売の物はあるべし) ◯『川柳江戸名物』(西原柳雨著 春陽堂 大正十五年刊)(国立国会図書館デジタルコレクション) 〝鱗形屋の宝船 151/162 大伝馬町の絵双紙屋である 数万艘鱗形屋で暮に摺り(天明) とある通り、元日の夜の枕の下に敷いて初春の吉夢を祈る 例の宝船とて舟に乗りたる七福神の絵は、 元日早々に売出したものである 竜宮武鑑板元は鱗形(不明) 竜宮は鱗族の王城であるから、若し武鑑が出るなら 鱗形屋が専売店となるだらうとの穿(うが)ち〟