◯『娯息斎詩文集』(闇雲先生作 当筒房 明和七年(1770)刊)
(新日本古典藉総合データベース画像)
〝墨水(すみだかは)に過(よ)きる
秋葉三囲(みめぐり)梅児塚(むめわかづか) 下戸も上戸も相与(とも)に群がる
独り羨む屋舩(やねふね)二上(あがり)の節 焼餅胸を焦がして未だ聞くに堪へず〟
◯『江戸名物百題狂歌集』文々舎蟹子丸撰 岳亭画(江戸後期刊)
(ARC古典籍ポータルデータベース画像)〈選者葛飾蟹子丸は天保八年(1837)没〉
(隅田川)
〝柳 隅田川水に影うく月の猪口ゆふ日の紅に筆のあを柳
のどけしなそよ吹風の手伝てあらひ髪する角田の青柳〟
〝花 家根舟のすだれの霞渕ちかくたゝみてしるき隅田の桜見
けふは隅田あすは飛鳥の花見時霞の衣たゝむ日ぞなき
隅田つゝみめをすり出すわか草もちりし桜の雪の下もえ
水上にかねをしづめて此方は花にのどけき隅田の夕くれ
さく花の雪のおもりし片のりに家根もかたぶく隅田の川舟
角田川花にくもりてさだめなき空生酔もうかれ出けん〟
〝蛍 ほたる狩隅田の堤に煙草のむ火だねは風につい取られけり
にごりなき子供こゝろのすみだ川蛍おさへて堤ゆきけり〟
〝納涼 角田川団扇も風に吹あげて月とみまがふ夕すゞしき〟
〝家根舟 吉野より花のさかりのすみだ川ひとめ千そうつゝくやね舟
屋根舟にすゞしき風のさわぎうた浪に月までをどる川の面
あぶなしと手をおさへたる生酔にあしのゆらつく隅田のやね舟
かげうつる月の兎にすだれをもはねてすゞしき角田の屋根舟
〈花見 納涼 棹 青簾 芸者 住吉踊り〉
〝屋形舟 手弱女にきしのさゝつま吹あぐるやかたすゝしき隅田の川風〟
〈笹の形をした褄〉
〝蜆 隅田つゝみ小町さくらの花見づれ業平しゞみいざ土産にせん
角田川遠くもきぬる旅人は業平しゞみ登るなるらん〟
〝都鳥 みやこ鳥羽根の白さよちる花の雪に見ならす隅田の夕ぐれ
都鳥ながるゝ浪にすみだ川夕日のあしの赤くうつりて
水鳥の鴨川よりもわびて猶すみだ川原のかもめ名高し〟
〝紅葉 隅田つゝみ夕日にてらすもみぢばは江戸むらさきの下染のいろ
客を呼もみぢのひてりつゝきてや茶の水つきる隅田のかけ茶や〟
〝雪 家根舟の足あとならんすみだ川一すぢ黒き雪のゆふ暮〟