Top浮世絵文献資料館浮世絵師総覧
 
☆ してんのうとのい よりみつこうごのうのず浮世絵事典
☆ 四天王直宿頼光公御脳の図
 ☆ 天保十四年(1843)<十月>       筆禍 錦絵「四天王直宿頼光公御脳(ノウ)の図」三枚続・歌川貞秀画       処分内容 ◎絵師   歌川貞秀 過料三貫文(『続泰平年表』は五貫文)            ◎板元   山本屋久太郎 手鎖二十日 家主預け 過料三貫文(『続泰平年表』は五貫文)            ◎絵草紙屋 桜井安兵衛 売上げ金没収、過料三貫文(『続泰平年表』)       処分理由 無断出版    ◯「流行錦絵の聞書」絵草紙掛り・天保十五年三月記(『開版指針』(国立国会図書館蔵)   〝(天保十四年)閏九月中の由、間錦(アイニシキ)と唱候小さき絵ニて、四天王直宿頼光公御脳(ノウ)の図、最    初と同様ニて後◎一図、土蜘居候図ニて、堀江町【右は里俗おやじ橋角と申候】山本屋久太郎板本、本    所亀戸町画師歌川貞秀事伊三郎【貞秀は歌川国貞の弟子ニて前出国芳より絵は筆意劣り候なり】右は下    画にて御改(アラタメ)を受、相済候上出板いたし候、右へ二重板工夫いたし、土蜘を除き其跡に如何の妖怪    を画、二様にいたし売出し候、右化物は前書と少々書振を替、質物利下げハ通ひ帳を冠り、高利貸は座    頭、亀の子鼈甲屋、猿若町に替地被仰付候三芝居は紋所、高料の植木鉢、其外天狗は修験、達磨は南蔵    院、富百銭の提灯、夜鷹子おろし等、凡最初は似寄候画売ニいたし候処、好事の者争ひ買求候由、右も    同様の御調ニ相成、同年十月廿三日、南番所え【御奉行鳥居甲斐守也】御呼出の上、改受候錦絵え増板    いたし候は上を偽候事不届の由ニて、画師貞秀事伊三郎、板元山本屋久太郎手鎖御預ケ被仰付、御吟味    に相成候〟    〈天保十四年閏九月中、歌川貞秀の「四天王直宿頼光公御脳(ノウ)の図」なるものが二種類出回る。ひとつは改(アラタメ=     検閲)を経た土蜘蛛入りのもの、もう一つは土蜘蛛を削除して代わりに妖怪の図様を画き入れたもの。折から国芳の     「源頼光公館土蜘蛛作妖怪図」が判じ物としてさまざま取り沙汰されていたところなので、この貞秀の妖怪図様も判     じ物としてまた大いに持てはやされた。ところが、十月二十三日、南町奉行鳥居甲斐守耀蔵は、絵師貞秀と板元山本     屋久太郎とを突然召喚する。そして、検閲済みのものに手を加えて変更するとはお上を偽る行為、不届き千万だとし     て、手鎖・家主預けに処し、その上でなお吟味を命じた〉    ◯『藤岡屋日記』第二巻 ②413(藤岡屋由蔵・天保十五年正月十日記)   〝(天保十四年)の冬に至りて、堀江町新道、板摺の久太郎、右土蜘蛛の画を小形ニ致し、貞秀の画ニて、    絵双紙懸りの名主の改割印を取、出板し、外ニ隠して化物の所を以前の如ニ板木をこしらえ、絵双紙屋    見せ売には化物のなき所をつるし置、三枚続き三十六文に商内、御化の入しハ隠置て、尋来ル者へ三枚    続百文宛ニ売たり。是も又評判になりて、板元久太郎召捕になるなり。廿日手鎖、家主預ケ、落着ハ      板元過料、三貫文也      画師貞秀(過脱)料 右同断也〟    〈「右土蜘蛛」とは国芳の「源頼光公館土蜘蛛作妖怪図」。同年冬(十月以降)貞秀の「土蜘蛛妖怪図」が出回る。国     芳画の評判に便乗したものである。しかし出版の仕方があくどかった。検閲には妖怪のない図様で出し、通った後、     妖怪入りを密かに制作していた。そして店先には妖怪のない図様をつるして一組(三枚続)36文で売り、妖怪入りは     内密に一組100文で売った。結局は無断出版が発覚して、板摺兼板元の久太郎と絵師の貞秀が三貫文の罰金刑に処せ     られた〉    ◯『続泰平年表』p217(竹舎主人編・天保十四年十二月二十六日記事)   〝戯絵に携候者共御咎一件、(堀江町二丁目弥助店)久太郎・重蔵・(貞秀事)兼次郎・(神田御台所町五    人組)長吉、右過料五貫文ツヽ、(室町三丁目絵双紙屋)桜井安兵衛(売徳代銭取上ヶ過料三貫文 右    は(歌川)国芳画、(源)頼光四天王之上ニ化物在之、絵ニ種々浮絵を書合候、彫刻絵商人共、売方宜    敷候二付、又候右之絵ニ似寄候中、錦絵仕置候ハヽ、可宜旨久太郎存付、最初四天王・土蜘計之下絵を    以、改を請相済候後(貞秀と)見考之申談、四天王之上土蜘を除き、種々妄説を付、化物ニ仕替、改を    不請摺上売捌候段、不埒之次第ニ付、右之通過料申付)〟    〈天保十四年十二月、落着。絵師貞秀と板元山本屋久太郎は罰金五貫文(『藤岡屋日記』は三貫文)。絵草紙屋桜井安     兵衛は売上げ金没収の上、罰金三貫文(一貫文は1000文)前年の八月、幕府が定めた銭相場は1両=6500文であった〉
     「源頼光公館土蜘作妖怪図」「土蜘蛛妖怪図」 一勇斎国芳画・玉蘭斎貞秀筆     (「浮世絵と囲碁」「頼光と土蜘蛛」図版6-4・6-6 ウィリアム・ピンカード著)