◯『江戸名物百題狂歌集』文々舎蟹子丸撰 岳亭画(江戸後期刊)
(ARC古典籍ポータルデータベース画像)〈選者葛飾蟹子丸は天保八年(1837)没〉
〝新酒
霜よけの綿にはあらぬ菰きせてきくと名づけし秋の新酒(注1)
梅の花しるしにつけし今年酒ひらけばかをる南新川(画賛)
又六が門の杉のは若葉して松魚恋しく思ふ新酒(画賛)(注2)
海はらにのめし?紙屋のことし酒くみてひたひの皺ものばさん
しん酒舟波をもきりし剱菱はくだりてつよき江戸の気にあふ
江戸川の汐のそこ(底)りて新酒のふねのそこまで砂こしにつく
集りし人に酔てや新酒樽よろけてかたにもたれかゝりつ
新酒に酔ぬ男の子も蔵入に目のまはるほと世話しかりけり
つみ入て難波を出し舟あしもみぢかく江戸へくだる新酒
新酒も下戸の口にはから崎や名に老まつの一本木とて
〈日本橋新川 下り酒 銘酒 剣菱 老松 一本木(男山?) から崎?〉
(注1 菰樽に印の商標 (注2 又六は酒屋 杉玉は新酒入荷を知らせる看板)