◯「大坂芝居看板絵」(木村捨三著『集古』所収 昭和十四年一月刊)
(国立国会図書館デジタルコレクション『集古』己卯(1)10/16コマ)より収録)
〝寛政七年三月版『役者時習講』は一名を『劇場一覧』といつて、演劇に関する所要の項目を記してゐる
が、その巻下の大坂の部に「看板画工方」の條があつて
【角の芝居 角丸 荒木 若太夫】北ほり江宮川町 堀尾杢兵衛
【中の芝居 東竹田芝居】 生玉鳥井東 岡山丸右衛門
【大西芝居 からくり】 唐物町筋渡辺筋西へ入 曽根利八
と記してゐる。右の内「若太夫」は豊竹座人形芝居のことであるから、この堀尾杢兵衛は、元文二年の
「安倍宗任松浦簦」と「釜淵双級巴」同五年の「本田善光日本鑑」の絵画を画いた堀尾新九郎保守の家
であらうか、「曽根」は「道具彩色方」にも同姓の人があるから、これもまたその一家であらう〟