◯『浮世絵年表』(漆山天童著・昭和九年(1934)刊)
◇「宝暦二年 壬申」(1752) p105
〝此年、劇場にて販ける所謂芝居番附と称する狂言絵本出づ。中村勘三郎座の七月狂言『諸たつな奥州黒』
二冊あり。鶴屋の版にして画工の署名なし。蓋し鳥居清倍に似たり。
◯『世界百科事典』23巻「番付」鳥越文蔵著
(歌舞伎に関する番付の種類)
◇「顔見世番付」(一枚摺)
〝「役者付」とも「面付(つらづけ)」とも。向こう1年契約をした役者をはじめ、狂言作者、囃子方、
振付師などを連記し、顔見世前に刊行。大判一枚摺で、下半分はおもな役者の姿絵が描かれている〟
顔見世番付 鳥居清長筆(中村座 村山源兵衛板 享和1年11月)
(東京大学文学部所蔵資料デジタル画像公開「芝居番付画像データベース」)
◇「辻番付」(一枚摺)
〝「櫓下(やぐらした)番付」とも「配り番付」「辻ビラ」とも。開場前、市中や湯屋など人の集まる所
に貼る。一方、贔屓先に配る。江戸は大判一枚摺。右方に狂言の大名題・小名題などを記し、以下上
下に分けて、上部はおもな登場人物の絵を描き、それに扮する役者の定紋を付ける。下部は役人替名
(配役)を記す。
辻番付の一種に「追(おい)番付」がある。小型が多いので「小番付」とも。狂言の差替えなど変更が
生じた場合に出す
辻番付 鳥居清峯筆(河原崎座「慙紅葉汗顔見勢」小川半助板 文化12年6月)
(東京大学文学部所蔵資料デジタル画像公開「芝居番付画像データベース」)
◇「役割番付」(小冊子)
〝江戸では「紋番付」とも。半紙6ページ。第1ページは中央に櫓紋、座元名。左右は五段に分け、役
者名と定紋を記す。(中略)第2ページも中通り以下の役者と定紋を規則通りに記す。第3ページ以
下は大名題、小名題、浄瑠璃名題など。まだ役割のほか浄瑠璃太夫、三味線、狂言作者の連名があり、
最後が座名〟
役割番付(森田座「冬至牡丹雪陣幕」小川半助板 文化11年11月)
(東京大学文学部所蔵資料デジタル画像公開「芝居番付画像データベース」)
◇「絵本番付」(小冊子)
〝「絵番付」「芝居絵本」とも。芝居の内容を絵にし、簡単な文章を散らした20ページ前後の一冊本。
興行が始まった後、劇場や芝居茶屋で売り出された。江戸のものは小ぶりの半紙判、共紙の表紙に櫓
紋と狂言名題、裏表紙に狂言作者名。その間が絵、大坂は半紙本で、鼠色の厚表紙に狂言外題と座本
名を記した題簽を貼ったものと、共紙の表紙に色刷のものと2種類ある。内容は江戸と同じく絵を主
にし文章を散らしたものであるが、江戸と違って狂言作者は記さない。京は大坂とほぼ同じ〟
〈これら番付の挿絵は江戸では鳥居派がおもに担当した〉
絵本番付 清たね画(市村座「梅初春五十三駅」版元未詳 天保6年2月)
(東京大学文学部所蔵資料デジタル画像公開「芝居番付画像データベース」)
参考資料
芝居番付年表(浮世絵文献資料館作成)