◯『江戸名物百題狂歌集』文々舎蟹子丸撰 岳亭画(江戸後期刊)
(ARC古典籍ポータルデータベース画像)〈選者葛飾蟹子丸は天保八年(1837)没〉
〝朱座 もみぢ葉をからにしきともみはやさんうるまの国の朱座の内連
名にたかき朱座はなか/\紫の江戸の色をばうばゝざりけり
光明とかゝやきてみるふんどんも皿も手すれて朱座のはかり目
(京橋竹川町)〈分銅(ふんどん) はかり目〉
〝秤座 秤座にはかりしられぬほどひさぐ御代に守随の名社(こそ)めでたき
春の野に落せし鹿の角棹に若草の目ももりしはかり座〟
(未詳)〈守随家 棹と皿の棒秤〉
〝金坐 金気ある秋の銀坐やふいごもて小判の桐の一葉ふきけり
世の宝あまる金坐のこぼれ種?桐の実生の出し壱朱判
一分金二分金もふく手細工に扇の風もいとふなるべし
切れさへもみえず小判にうつ槌に雨だれ◯◯さみだれの空〟
(日本橋本町)〈「扇形に桐」印は金貨の鋳造の当たった後藤家の紋〉
〝銀坐 大こくの名ある銀坐にまん億の宝うち出す小槌なるらん
時しらぬ不二を見ながら銀ざにはしら雪と呼ぶ南陵の山〟
(日本橋蛎殻町)
〈「大こく」は銀貨にある極印で、銀吹役の大黒常是(ダイコクジョウゼ)に由来する。これを大黒天に見立てた〉
〝銭坐 けぶり立民のかまどに並ぶらし銭坐のうらの浪のしづけさ
吹直す大仏銭の職人もあつさに汗のぬれぼとけなれ
これもまたふいごの風やつよからんふき出す銭の浪の高くて〟
(未詳)